岩手県立盛岡第三高等学校長 山田市雄氏 インタビュー概要

1.実施日

平成23年7月20日(水曜日)

2.インタビュー対象者

岩手県立盛岡第三高等学校長 山田市雄 氏

3.概要

(学校概況について)

  •  盛岡市内で3番目に創立された普通科高校である。創立以来、地域のニーズもあり、進学指導に力を入れている。現在の2年生までの募集定員は1学年8学級、320名(現1年生の募集定員は7学級、280名)であるが、例年、そのうちの200名以上が国公立大学に進学し、国公立大学合格率は80%を超えている。現役の国公立大学合格者数は、北関東以北ではナンバーワンである。

(学習方法の転換について)

  •  平成18年度に生じた必履修科目の未履修問題が一つの契機となり、授業の在り方についての議論を重ねた。従来は、詰め込み型の授業で、課題や課外授業の設定も多く、学習量で勝負してきたところ、生徒の表情からは高校生らしい明るさやはつらつさがあまり窺えなかったようである。現在は、土曜日を含めた課外授業を廃止したほか、生徒参加型であることを重視し、修得した知識の活用を図る、考えさせる授業への転換を図っている。これによって、生徒の意識も大きく変わってきたのではないかと考えている。
  •  高等学校においては、授業運営はそれぞれの教科担当者に任せられていることから、他の教科には入りにくいところがあるが、本校においては、授業を公開し、教員同士、「見せる授業」から「見に行く授業」を心がけるようにしている。

(「Dプラン」の採用について)

  •  授業と両輪をなす取組として、「Dプラン」という学習活動を展開している。「Dプラン」の「D」は、「ディベート」及び「ディスカッション」の略で、平成20年度より総合的な学習の時間を使って取り組んでいる。「食糧不足」・「尊厳死」といった一つのテーマに対し、5~6人単位のグループを作り、検索等を行って発表させている。発表した内容について相手が理解できるよう、表現力・思考力・判断力を身につけさせることが、この取組のねらいである。 
  •  扱うテーマについては文系的な内容が主であったが、本年、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けたことから理系分野についても広げたいと考えている。スーパーサイエンススクール(SSH)の導入を企図し、本年その指定を受けた。東北地方では2校である。今後は、SSHの活動と「Dプラン」を融合させて、教育活動の更なる充実を図っていきたいと考えている。
  •  こうした特色ある取組は授業にも効果を及ぼし、参加型の授業が展開されるようになるとともに、難関大学をはじめとする進学実績の向上にもつながっていると思われる。生徒の意識を高め、学習する仕掛けを作るなど、生徒の主体性を育む環境作りが、学力の向上を図る上で大切である。

(社会性の涵養について)

  •  専門高校は、常に社会を見ながら生徒の指導に当たっているが、普通科の高校においても、大学を卒業した後の社会人・人間としての在るべき姿や社会の仕組みについてきちんと教えていくことがより一層必要と考える。
  •  挨拶や身だしなみといった社会人として必要な資質について高校時代に身に付けさせるとともに、相手の話を聞き相手の立場に立って考えることができる態度を培っていくことが大切である。
  •  近年、キャリア教育の充実が重視されているが、生徒に職業観を備えさせる一方、協調性やコミュニケーション能力の向上も欠かせない。本校の「Dプラン」は、学力の充実とともに人間性を育んでいく点においても寄与している。コミュニケーション能力を養っていくには、授業に生徒の主体的な取組が採り入れられなければならない。

(組織の円滑化について)

  •  学校は、校務分掌と学年間との風通しがよく、組織間での連携がとれていなければ上手く機能しない。
  •  新年度の学校経営方針や校務分掌及び学年の具体的な目標は、生徒に対しては始業式において、保護者に対してはPTA総会において打ち出していく必要がある。そのためには、校長の経営方針を踏まえた校務分掌の方針が、学年方針に反映され、さらにその方針を全職員で共有していくことが大切である。そして、校務分掌及び学年の目標について、年度途中の段階でフォローアップを図っていくことが求められている。
  •  教員が企業研修などを通して学校を外から見ることは大切である。企業研修により、仕事に対する姿勢が備わることはもちろん、特に普通科の学校に勤務する教員は、キャリア教育を進める上で、大いに役立つものと考える。

(以上)

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年10月 --