関目六左衛門氏(京都市立西京高等学校長)意見発表

 【関目氏】

 京都市立西京高等学校の校長、関目六左衛門と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、まず最初に、お手元にペーパーの資料をお届けしてございます。水色の封筒に、高等学校と附属中学校の学校案内用のパンフレットを1部ずつ。それから、A4判のとじております資料、当初のご予定でございました3月16日の日付の入っておりますものです。これは、あちこちの教育雑誌で本校の特集をしていただいたものですが、日本経済新聞社の『ducare』という教育雑誌の記事を中心に資料をおつけいたしました。それから、もうひとつ、縦長とじの資料は、一部資料が重複していますが、ただいま局長からご案内いただきましたように、平成15年に商業科の生徒の募集を停止して、今画面にございますエンタープライジング科という普通科系専門学科、これは京都市が堀川高等学校の人間探究科・自然探究科と同じような構造を持って立ち上げた専門学科ですが、これを創設したということで、少しの経緯ですとか特徴をまとめておきましたので、またお時間ございましたら、後ほどにでもご覧いただきたいと思います。
 それから、本日のためにご用意いただきました、私がこれからご披露いたします画像資料をそのまま印刷にしていただいております。あわせて参考にしていただいたらと思います。
 それでは、意見といいますよりも、それを背景にして、このエンタープライジング科という学科を立ち上げました経緯、それから、その内容と現状、さらにはどういう成果を上げているのかということを、その結果という形でご紹介させていただきたいと思います。
 まず、エンタープライジング科という学科ですが、最近やっと京都ではこの学科名が浸透いたしましたが、当初はなぜ片仮名なのか、しかもこの学科名を聞いても、何を学習する学校なのか理解できないではないかという異論を随分ちょうだいいたしました。画面下に出しましたが、「進取・敢為・独創」、これを本校は15年以来校訓としてございます。自らの意志で進んで物事に取り組むという「進取の気性」。その中で、あえて困難に挑戦して、それをよく克服する気概、「敢為の気概」。「独創心」、これは自らの個性・創造性を最大限重視し大切にするということです。これを校訓としておりますが、実はこれはエンタープライズという英単語の直訳でございます。その下に、ちょっとご覧になりにくいのですが、細かい英文が載っておりますが、エンタープライズを英英辞典で調べますと、中にはventure、initiative、complicationですとか、risk、それからcreativity、individualityという英単語が見受けられます。こういうことが「進取・敢為・独創」の意味するところです。こういう高校生を、高等教育にも接続して、こういう気性・気概を持った人材をつくり上げたい。そういう願いを込めて学科名をエンタープライジング科とさせていただきました。
 当初、エンタープライズ科としたかったのですが、どうも私どもの世代には、「なぜアメリカの軍艦の名前を付けるんだ?」というようなことをおっしゃる方もおられます。当時の京都市教育長、現市長もそうでありました。るる説明をしたのですが、「分かった、しかし、一定の世代、特に京都市議会の先生方にはそういう思いの強い方もあるだろうから、ingをつけて、せめて躍動感を持たせたらどうか。」というので、こういう学科名に落ち着きました。
 簡単な本校の沿革でございますが、明治19年に我が国で三番目の商業学校として創立いたしております。その後、京都市制の成立で市立学校に、それから第二商業ができ、第一商業と名前を改めまして、戦前は「京一商」という愛称で、現在の府立洛北高校でございますが、「府立一中」と並んで随分京都の中で人気を博した旧制学校であったように聞いております。戦後、旧制の商業学校のまま6カ月間、商業高校、西京商業高等学校となりましたが、昭和23年10月の京都の高校再編の中で普通科を併置して西京高等学校。昭和38年には再び西京商業高等学校となりまして、平成15年、商業科生徒の非常な就職難、特に女子事務職の求人激減ということで、地場産業が非常に脆弱な京都でございますので、そういう中で生徒の進路が保証できないというところから校舎改築を機に、商業科は当時118年の歴史がございましたが、商業科生徒の募集を停止して、ただいま申しましたエンタープライジング科を創設いたしました。翌年には中高一貫6年教育の導入で、併設型中学校を開校いたしまして、昨年度学校創立125周年を迎え、本年126年目に入ってございます。
 新しく創りましたこの専門学科について、画面上の小さな文字が私どもが教育理念としております内容です。それをさらに具体的にして、三つの教育目標をつくらせていただきました。「コミュニケーション能力の開発」、「経済センスの育成」、「継続教育の追求」、この三つの言葉でございます。この学科を立ち上げましたこと、エンタープライジング科という名前をつけましたこと、それから、この理念・目標をつくりましたことに、私は開設準備の段階から携わってございますが、当時、学術顧問としてお迎えした堀場製作所現最高顧問の堀場雅夫先生、それから元京都大学総長の西島安則先生、経済界・大学界を代表して、このお二人の方からのアドバイスの上に、こういう教育内容を決定させていただきました。昨年西島先生がご逝去なさいましたので、現在は、ご縁がありまして、名古屋大学特別教授の赤碕勇先生に西島先生に代わりまして学術顧問にご就任いただいております。
 では、具体的な教育内容でございます。まず、「創造的コミュニケーション能力」と私どもは名付けてございますが、内容は国際言語としての英語運用の力を開発する。アメリカ、イギリスの国語ではなくて、世界共通言語としての英語です。特に4技能のうちの、普通科目の英語の中では読む・書くという技能を、この専門学科教育の中では話す・聞くの力を特に重視したい。学校設定科目といたしまして、『ECC』という科目を開設いたしました。English Communicative Competency、英会話能力と直訳する科目でございますが、4人のネイティブスピーカー、この画面の一番左側は外国人教育免許法による京都市教育委員会の教諭でございますが、右3人は、現在少しメンバーが変わっておりますが、いわゆるローカル、JETで派遣していただいておりますAssistant LANguage Teacherでございます。新しい指導要領のねらいのひとつでもあります、一切日本語の通じない授業ということを、既に高校1年、2年で展開してございます。
 それから、国際言語としての英語が身に付けば、では、その情報の収集・発信をどうするかというので、情報活用力と名付けまして、そのために校舎改築に合わせて校舎自体のITC環境を整えて、一種のインテリジェントビルディングという形にし、その中で、入学時に生徒一人に1台のモバイルコンピューターをご購入いただく。約6万5,000円を保護者の方にはご負担いただいております。校内には無線LANのアクセスポイントを全教室に設置いたしまして、LANカード内蔵のコンピューターの購入でございますので、生徒は校舎内からどこでもインターネットに接続できる。ただ、京都市教育委員会のサーバーを経由してございますので、有害サイトには一切アクセスできないというセキュリティー面も保障してございます。全教室にプロジェクターを設置して、コンピューターを活用した授業、それから、情報活用力を持った生徒の育成を目指しております。いま画面に出ましたこれが現在高校2年生の生徒が一人1台持っておりますコンピューターでございます。毎年機種は変わったりいたしますが、共通仕様のコンピューターを一人1台購入させてございます。
 それから、こういうコミュニケーション力の上に、経済を通じて国際社会を理解させたいと存じております。これはある授業の風景でございますが、生徒が一人1台コンピューターを持っておりますので、こういう授業風景があちらこちらで見られるところでございます。いろいろな経済学習を通じて生徒に国際社会を理解させたい。日々の我々の生活の中には、国際的影響がありとあらゆるところにあふれているわけでございますが、それをいろいろな角度から生徒に理解させて、世界の一員としては独立・独自にはもう存在しえないのだということを理解させるわけです。大学・企業との連携、特にジュニアアチーブメントといいます世界的な経済教育団体でございますけれども、東京に本部がございますジュニアアチーブメント日本というところ、IBMの椎名武雄先生が主催なさっているこの団体と非常に連携を深めてございます。後ほどご紹介いたします。
 それと、いわゆる修学旅行を中国上海で、中高一貫の生徒は中学3年生で、高校入学組は高校1年生で、しかも単なる研修旅行ではなく、事前にテーマをはっきりつくって、現地調査という形のフィールドワークという形式で実施しております。このフィールドワークの研究手法を生徒が身につけるために、例えば京都大学の上海センター、現在は東アジア経済センターと名前を変えていらっしゃいますが、それから、大学コンソーシアム京都との共同開発プログラムでカリキュラムを開発するという形を取っていて、高大連携の一環ともしております。
 それと、私どもはEEPと呼んでおりますが、Enterprise Education Projectの略でございますが、著名人の方々に、いろいろな経済問題を多角的に生徒にご講演いただくという企画を、年に一度は必ず開催しております。画面左上が堀場雅夫様でございます。毎年、9年連続で、入学式後に入学生と保護者に必ず記念講演をしていただいております。西京の最初の第1日目は堀場講演会から始まるという企画です。開設以来、これを恒例にしてございます。それから、竹中平蔵先生。ちょっと角度が違いましたが、養老孟司先生。続いて、稲森財団の京都賞ご受賞をきっかけとして本校で特別授業を行っていただきました御縁で、名古屋大学の赤碕勇先生。こういうふうな方々を中心に、年に一度から二度、生徒に経済的な角度から国際社会を理解させるためのご講演を実施いたしてございます。
 ジュニアアチーブメントとの連携の内容でございますが、ひとつは、MESE、ミース選手権、Management & Economic Simulation Exerciseの略でございますが、仮想企業をネットの世界で経営して、国際情勢や経済動向を分析する中で、企業経営をいかに健全に行うかというコンテストでございます。平成15年度のエンタープライジング科第1期生から画面のような成果を上げさせていただいております。今年は大震災の影響で3月実施が、つい先日、最終ラウンドが終了いたしまして、平成17年以来久方ぶりに全国優勝させていただきました。画面のような生徒が活躍しております。
 それから、もう1つは、International Trade Challenge。これはすべてを英語で行う大会ですが、国内的には「英語でチャレンジ! ビジネスアイデアコンテスト」と名付けてございます。本年開催で第3回目、リーマンショックの年に一度中止になっています。第2回目の2010年度に優勝し、今年度は準優勝で終わりました。国内予選で上位3位に入りますと、アジア太平洋地域の国際大会に出場できます。画面下に書いております8カ国の参加でございますが、これは英語を国語としている国、英語を外国語としている国、いろいろでございますが、語学については一切ハンディなしに、ビジネスアイデアを競う大会。画面上段が昨年度優勝した生徒たちで、シンガポール大会に参加いたしました。上の段の真ん中二人の女子生徒が本校の生徒でございます。画面下の写真は下の段左側の女子生徒2名が本校の生徒でございます。国内で、つい先日、準優勝を決定いたしましたので、上智福岡高校、それから啓明学園高校と3校が、タイのバンコクで開かれる国際大会に、この8月下旬参加する予定でございます。
 こういうことを総合いたしまして、私なりの言葉ですが、生徒を知識メタボにしない。普通教育もあわせまして、専門教育の内容も非常に高度な内容を生徒に、言葉は悪いですが、詰め込むだけ詰め込む。しかし、それだけでは生徒が消化不良を起こしてしまいますので、できれば国際的なステージで、もしくは全国的なステージでいろいろと自らの知識を発表する機会をふんだんに持たせたいと思っています。中国とシンガポールでの友好提携校の開設。それから英語ディベート大会への参加。東京・つくばにもフィールドワークにまいります。それから、3年間の習得学力の成果を問うということで、大学入試センター試験も卒業直前に全員受験を課しまして、3年間の普通学習の成果がどうであったのか、全国ステージの中でどれだけの成果を上げたのかというのを確かめる機会にもしております。次は、本校独自の校内の研究発表大会の様子です。
 これは、上海でのフィールドワークの様子。本校生徒3人と上海大学の大学生1名にガイドをお願いしまして、4人ですとタクシーに乗れますので、上海市内を1日半にわたって、自らのテーマに基づいた現地調査ができるということです。これはシンガポールへ提携校を訪ねましたときの写真。次は、シンガポールから本校へやってまいりましたときの写真。それから、全国ディベート大会へ参加した様子。それから、東京・つくばのフィールドワーク。これは大手町の某企業で、半年前にちょうだいした企業からのミッションと呼ばれるテーマを生徒なりに研究・回答して、プレゼンテーションを企業経営者の前で行っているところです。これは校内研究大会の発表の様子でございます。これが、高校入学組が高校1年生で行います上海フィールドワークの様子。これもやはり21世紀の国際的な経済センターは上海だろうというので、保護者からは随分反対もございましたが、あえて上海を選びました。また、附属中学出身の生徒は、中学校で上海・蘇州に行っておりますので、フィールドワークを東京・つくば方面で実施いたします。文系コースの生徒は東京、それから理系コースの生徒はつくばを中心にいたします。その他にも、いろいろなプレゼンテーションの機会を、年間計画の中でつくってございます。
 部活動でございます。これも生徒を知識メタボにしないということのひとつなのですが、「文武を併修して両道を極める」をモットーといたしております。ひとつの成果ですが、陸上競技で全国優勝し、かつ現役で京大に合格したり、例えば京都市長とともにデンマークコペンハーゲンのCOP15に参加して、京都観光大使としていろいろなプレゼンテーションを行いました。これは囲碁選手権、昨年度、定時制の生徒と一緒になりまして全国団体優勝をした様子です。今年は、つい先日大会が終わりまして、確か開成高校の男子団体優勝と聞いてございます。
 同時に、継続教育ということですが、この「進取・敢為・独創」の精神で大学進学のみにおいて進路実現を図って欲しい。こういう方針で生徒を募集してございますので、学校としてもいろいろな取組を進めてきました。商業高校からの転換でございましたが、平成15年度の第1期生以来、画面に示すような実績を上げてございます。背景といたしましては、本校が普通科系専門学科校ということで、教育目標を明確にして、学校の目的をできるだけ多様化させずに、中学生に明確に提示した上で、その教育目標・理念に賛同する生徒のみを集めて、非常に高度な教育内容を与えてきました。同時に、生徒もその内容をしっかりと消化して、あらゆるステージで発表・プレゼンテーションの機会を与えられる。こういう理念で創り上げました西京高校エンタープライジング科の教育内容でございました。
 お時間でございますので、ありがとうございました。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

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-- 登録:平成23年09月 --