聖光学院中・高等学校 校長 工藤誠一氏 インタビュー概要

1.実施日

平成23年6月7日(火曜日)

2.インタビュー対象者

聖光学院中・高等学校校長 工藤誠一 氏

3.概要

まず、私立学校であろうが、公立学校であろうが、教育の効果は息が長いものであり、10~20年先を見据えて行うものであるという立場で教育を考えることが必要である。組織の維持のために教育が行われてはいけない。

(公立学校と私立学校の違いについて)

公立学校の教育というのは、平均的な教育水準を目指さないといけない。しかし、限られた優秀な層を育てることも必要だし、学習障害等の子ども達をいかにうまく社会に溶け込ましていくかという教育もしないといけない。これからは、学校で役割を分けて教育を行っていくことが重要と考える。

(学習指導要領について)

トップの私学の役割は、日本をリードする人材を育成することである。そのためには、学習指導要領が弾力的に運用されることが必要である。細かすぎては良い意味で学校の特色が出されない。また、中高一貫校向けの学習指導要領があってしかるべきであり、さらに言えば、私学は私学なりの学習指導要領があってしかるべきだと考える。それぞれの教科の教え方も、制度に合致し、学校の目的に合致した学習指導要領に沿うものとしなければならない。

(教員免許と人材の活用について)

高校では専門知識が必要となるため専門学部出身者を採用したいが、これらの者は、多くの場合、中学校の免許を有していないため、採用後に取得させている。また、理系の優秀な人材は教員になりたがらない。優秀な人材を採用するために、例えば企業でキャリアを積んだ人材がすぐにでも学校で教壇に立てるようにすることが必要である。そのためには、免許状制度を弾力化すべきである。現行制度では、正式な免許を持たない企業出身者は専任教員にはなれず、特別非常勤講師などで雇用することになるが、企業をやめてまで非常勤で働こうとはなかなか思わない。また、生徒との信頼関係を築きながら教えるためにも、専任教員としてクラス担任を持つことが重要である。

(教員の地位向上について)

私立学校の教員の待遇を改善すべきである。通常の企業と同様の仕組みではなく、教員の地位向上のために、公立学校の教員と同様に専門職として明確に位置づけるべきである。大学の教授は裁量労働制を認められているが、学校の先生についても同様に認められるようにしないといけない。教育行政の中で考えて欲しい。

(その他)

・現代社会は、これまでのように大量生産・大量消費による画一部品生産のために、均一的な人材を社会に送り出す必要は既になくなっている。時代や現場に応じた教育に見直していく必要がある。そのためにも、ある程度、学校に裁量権があってしかるべきである。例えば、「情報」や「日本史(神奈川県では必修)」等を県内一律に必修とする必要があるのだろうか。

・教育とは型に入って型を抜けるものであり、まず型がないと高校生は入り込めない。型をどう作るかが重要である。そして、その型を経験した上で、次は自分の型に抜けることができる。

・中高一貫校の難しさは、中だるみと中学の生活指導である。公立の中高一貫校では、高校側の先生が主体となって、中学の生活指導を行うので、なかなかうまくいかない。如何に非日常を6ヵ年の中で提供するかが重要である。宿泊行事などを経験させて刺激を与えつつ育てることが必要である。

・少人数指導については、教科教育で行うことは正しいがホームルーム指導で行ってはならない。学校はクラスを中心に子どもの社会が形成されており、学級の人数が少なくなればなるほどいじめが深刻化する。

(以上)

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年07月 --