鹿児島県立川内高等学校 インタビュー概要

1.実施日

平成23年3月2日(水曜日)

2.インタビュー対象者

鹿児島県立川内高等学校長   山之口 大 氏
鹿児島県立川内高等学校教頭 東郷 孝仁 氏
鹿児島県立川内高等学校教頭 藤﨑 恭一 氏

3.概要

(学校の概要について)

  •  「文武両道」を校是としており、勉強と部活動を両立させることをめざしている。
  •  生徒全体の雰囲気として、ややのんびりしている感がある。生徒により一層の学習意欲を喚起させるにはどうしたらよいかが課題。
  •  本校の伝統は「最後まで徹底してやる」ということ。全ての学校行事は、3学年そろって実施している。部活動も徹底してやらせ、その後は受験モードへとスイッチを切り換えさせている。「自分がどこまでやれるか」心を鍛える学校でありたい。
  •  勉強そして部活動もがんばる生徒を、育てていくことが、公立高校の使命だと考えている。

(地域との連携について)

  •  地域の伝統行事を学習の中に位置付けるなど、できるだけ地域に開かれた学校を目指している。地域の伝統行事である川内大綱引に、1年生がボランティアとして毎年参加している。
  •  キャリア教育の一環として、年に1回、総合的な学習の時間において、地域の第一線で働く方から学ぶ取組を行っている。1学年は職業意識啓発セミナーとして、地域で活躍している社会人の方々を20名ほど招いている。2学年は、鹿児島を中心に熊本辺りまでの大学等の教官を20名ほど招く活動(大学等出張講義)を行っている。
  •  OBの方を招いての講演会を行っている。講演内容もシリーズ化し、例えば明治維新期に活躍した人物について、ということで、平成22年度は『薩摩藩英国留学生~近代日本の礎を築いた人々~』、その前は『大久保利通』、『篤姫』など、郷土教育の面も取り入れたものとして実施している。ベースにあるのは薩摩の郷中(ごじゅう)教育(薩摩の武士階級の教育。異年齢集団で、年長者が年少者を指導する教育。)である。

(特に重視している取組について)

  •  特に力を入れているのは、「文化常識を養おう」という取組。平成6年度から、朝の職員朝礼の時間を利用し、全学年で週2回(火・木)朝10分間程度の活動を行っている。
  •  火曜は職員が作成した新聞記事の切抜きについて生徒が意見・感想を書くもの(学年ごとにグレードの違う記事を使用する。)。ポイントは国語科や地歴公民科の教員だけでなく、全職員が関わること。特定の人任せにしないことにより連帯感が生まれる。木曜は現代社会の諸事象に関する副読本を使用し、各回見開き1ページの内容についてレポートを作成するもの。
  •  この取組は、作文力・論理的思考力の育成に非常に役立っている。小論文や面接で自分の考えを論理的に主張する能力が身に付いている。このようなスキルを身に付けさせながら、最終的には「志」を持たせるキャリア教育を目指している。
  •  重要なことは、最後に「振り返り」を行うこと。半期に1度(年2回、9月と2月)、総合的な学習の時間の指導計画の中に位置づけて、「文化常識を養おう」学習のまとめをさせている。この取組に限らず、他の学習においても、最後の見届け・評価・振り返りが、次の学習への動機付けとなる。
  •  キャリア教育については、教育を受ける児童生徒の立場から、小・中・高・大の各段階を振り返ってどう見えるかの検証をしたい。中学校での職場訪問・高校での外部講師招聘、というものが、受け手の側からどう見えるのか、それぞれの関連性について洗い直してみたい。また、現在や過去の人物伝なども活用し、成功例の傾向・失敗例の傾向を小・中・高連携してのキャリア教育として研究してみたい。同じ職場訪問でも、中学校での意義・高校での意義、それぞれどういうものか、この地域での在り方を問い直してみたい。

(指導上の課題について)

  •  年々生徒の学力格差が広がりつつあること。学力向上というより「学ぶ意欲」の喚起が課題。
  •  ハード面の問題として、特に鹿児島県では少子化の影響が大きく、定員確保が非常に厳しくなっている。地方の学校では特にそういう傾向がある。
  •  ソフト面の問題としては、子どもに夢を語って学ぶ意欲を引き出したいと思っている。学力格差が広がりつつある中で、教科指導等の進め方には試行錯誤しながらも前向きにやっている。
  •  学ぶ意欲の減少、という点は他の学校も同じと思われる。高校段階では学力をつけさせる、きちんと勉強させる、ということを、真剣に考えなければならない。

(高校教育の問題点について)

  •  教育の一つの大きな課題は「志」を持たせる教育が本当にできているのかということである。ネガティブな意識ではなく、志や学ぶ意欲をいかに教員が生徒に持たせるか。学校としては、生徒の学ぶ意欲・志をいかに引き出すかに力を入れるべきと考える。
  •  子ども自身の意欲の問題もあるかもしれないが、プロである教師の側の対応のまずさという面もあるのではないか。小・中・高、それぞれの段階の教師が、できることを一生懸命やるということが必要である。
  •  この問題についての特効薬はない。昔に帰るというわけではないが、教師側は便利さを求めるのではなく、子ども一人一人とどう向き合っているかを自問すべきである。
  •  教科指導の中だけで学力をつけるというやり方と、学級経営・生徒指導などすべての教育活動の中で生徒の心の中に入っていくというやり方がある。古臭い考えかもしれないが、生徒とのラポートを築くには、教科指導だけでなく、あらゆる教育活動を通して行うことが大切ではないか。
  •  本校には寄宿舎があり、寮生が50名ほどいる。寮監の他に教員が舎監として交代で勤務し生徒たちとよく話をしている。生徒と関わる時間・語る時間をより多く持つことで、生徒との信頼関係の構築・意欲の引き出しなども可能になるのではないか。
  •  教員は言わば、職人の世界である。板書の仕方・話の仕方・授業の組み立て方など、先輩のやり方を学んで成長するものである。チョークと黒板だけの時代で、先輩がどう生徒と関わってきたか、どう授業を組み立ててきたか、そういうことを学ばないといけない。ベテラン教員の重要性が鍵である。今は教育機器・機材に頼りすぎではないか。生徒の興味関心を引くことも大事だが、教育の原理原則に帰る必要もあるのではないか。
  •  生徒へは「常に声掛けを」ということを重視している。自分のクラスの生徒でなくても色々な場面で声掛けをする。自分の存在を認めてくれている、ということにより意欲を持つことができるのは大人でも同じはずである。

(以上)

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年05月 --