沖縄県教育委員会からの御意見

所属・現職等

沖縄県教育委員会 教育委員長 中野 吉三郎 氏

御意見

1 今日の高校教育が抱える問題点

 『新規高卒者の就職をめぐる厳しい状況への対応』(沖縄県)
 
平成20年9月のリーマンショック以降続いた金融危機は、いまや当事国一国にとどまらず、世界的な広がりの景気悪化を招き、わが国でも特に雇用情勢に深刻な打撃をもたらしている。また、円高による景気の先行き不透明感から求人倍率も依然と低い状況が続くなど、特に本県新規高等学校卒業者への影響が懸念されている。

    現状:平成22年3月高校卒業者の就職内定率
       沖縄県   75.9%(全国最下位)
       全国平均  91.6%

2  その解決策

 ○各学校で取り組んでいる下記事項等の着実な実践
   ・進路指導体制の強化(就職担当)
   ・進路意識の高揚(早期決定、計画的個別指導、資格取得の奨励等)
   ・独自の職場開拓や求人要請(積極的な企業訪問)
   ・保護者への情報提供や三者面談の実施

 ○就職内定率の低い地域への雇用創出に繋がる特別支援

 ○県教育委員会、県雇用労政課、沖縄労働局の連携強化や人事の交流
   ※新規高卒者の就職をめぐる状況の改善には、行政の支援が欠かせない。

所属・現職等

沖縄県教育委員会 教育委員(沖縄県小児保健協会理事) 安次嶺 馨 氏

御意見

生徒の問題行動の対応について

■ 連携の重要性と現状
(1)連携の重要性
 生徒の問題行動の背景には様々な要因があり、その対応や健全育成には、ひとり学校のみで担うことは難しい。問題解決には関係者の認識と関係機関の間の実質的な連携が重要である。
(2)連携の現状
 1. 連携の必要性については認識しており、学校においては、警察、青少年センター、福祉機関、教育行政機関との連絡会議等を通じ、連携の努力をしている。
 2. 連携の在り方が形骸化し、地域の関係機関と広く連携を図るという姿勢が薄れたり、連携の努力を生徒指導主任や個々の教員にゆだね、学校全体として機能しないなど、必ずしも実効あるものになっていない面がみられる。

■ 今後の連携の在り方
(1)生徒の健全育成は、学校のみで行うものでなく、多くの機関がその目的を一にして活動していることを再認識するとともに、すべての関係機関に共通する重要な課題であるという認識に立ち、実質的な連携を目指すことが求められる。
(2)学校の教職員は、学校が中心になって進めるべき指導内容を把握するとともに、関係機関の業務内容について十分に把握・理解することが求められている。

■ 関係機関の具体的連携方策
(1)実効ある連携を図る学校の取り組み
 1. 関係機関との連携方策
   a 学校の指導だけでは適切な対応ができないかも知れないと状況が考えられる場合は、保護者の理解を求めつつ、躊躇なく関係機関に相談し、事例によっては主たる対応を委ねるなど、積極的な連携を図る。
   ○ 連携を行うか、どのように連携するかについては、個々の教師の判断ではなく教職員間の共通理解のもとに学校の判断に基づくこと。
   ○  関係機関に主たる対応を委ねる場合でも、学校がその機関と連絡をとりつつ、適切な役割分担の下に、一体的な指導を行う。
   b 生徒の問題行動の状況、程度等に応じ、どの機関とどのように連携を図っていくかについて、あらかじめ検討を行い、普段から事例研究を重ねて緊急事態に対応し得る体制を整えておくこと。
   c 生徒の問題行動の程度等に応じた学校や関係機関の役割について、保護者等に対して啓発を行っておく。
  2. 関係機関との情報の共有化
   a 学校と関係機関が密接に連携して生徒の健全育成を図っていくためには、情報の共有化を図り、お互いがその機能を発揮しつつ、一体となって解決に向けて効果的な取り組みを進める。
(2)学校の取り組みを支援するための教育委員会の取り組み
  1. 保護者への啓発
   a 教育委員会は、首長部局とも連携して青少年の健全育成を分担する関係機関の機能、役割について広報に取り組む。
   b 保護者や地域の人々に、学校が関係機関に生徒の問題行動を委ねる意義や意味を理解させたり、意識改革を図る。
  2. 民間活動への支援
   a 民間の個人や団体が実施する体験活動や集団活動は、生徒の健全育成の一環としての意義を持っている。これらの事業の周知や連携について、教育委員会として積極的に支援する。
  3. 学校への指導助言や支援
   a 生徒の問題行動に対する学校の判断や対応能力の向上を図るため、生徒指導主任や担任等の研修を充実させる。
   b 生徒の大きな問題行動がおこった学校に対しては、直ちに職員を派遣し、指導助言や対外的な広報活動を担うなど、学校を支える。

所属・現職等

沖縄県教育委員会 教育委員(株式会社カルティベイト代表取締役社長) 比嘉 梨香 氏

御意見

1 今日の高校教育が抱える問題点

  •  中学、高校、大学の卒業後3年以内に離職する割合は、それぞれ約7割、5割、3割といわれておりますが、本県では、高校卒業後就職した若者の62.2%が3年目までに離職しており、全国の47.7%よりも早期離職率は高くなっております。(平成17年卒業生)また、年齢が下がるほど失業率が高く、25~29歳は9.5%。20~24歳は15.0%。15~19歳は22.2%(全国9.4%)と突出しております。さらに、63万人いるといわれる若年無業者(ニート)、70万人といわれる引きこもりは、全国的な問題となっておりますが、本県においても平成22年に民生委員を対象に実施したアンケート調査から、義務教育終了後、15歳から39歳の未婚の若者で、(1)就労や就学をしていない(2)自宅中心の生活で社会参加が不十分(3)軽度の病気や障害があり障害者手帳を持っていない―のいずれかに当てはまる若者は30%になることが分かりました。中学、高校を卒業後、集団や社会の一員として自立して生きることができない若者が増えていることは由々しきことです。
  •  離島県である本県には、東西1000キロ、南北400キロの広い海域に39の有人離島が存在しています。47都道府県で唯一、沖縄本島すら本土と陸路や鉄道でつながっておらず、有人離島の大半が小規模離島で、小中学校は29離島にあるものの、高校は4つの離島にしかありません。そのため、高校へ進学するためには、中学校を卒業すると親元を離れて、寮やアパートを借りて学校へ通うことになります。高校教育を受けるための経済的負担・精神的負担は親にも子にも重くのしかかっています。奨学金受給生も年々増えていますが、高校無償化による授業料の負担軽減だけでは、高校を全うできない生徒も予想されます。また、隔絶された小規模離島で素朴で素直に育った子どもが、高校進学後、遊びグループに流されて休学・退学に至ってしまう事例が後を絶ちません。

2  その解決策

  • 特別活動の充実
    ・ 活動内容の充実
    ・ 指導者の育成と体制づくり
    ・ 特別活動促進のための事業創設と予算化
  • 地域連携の強化
  • 地域性や個々の生徒に対応したジョブサポートシステムの構築
  • 優秀な生徒を飛躍させるための対策とニート予備軍の底上げ対策の構築
  • 島嶼県特別支援
    ・ 給付制奨学金の創設
    ・ 離島教育に特化したカリキュラムの研究と指導者の育成
    ・ メンタルケア体制の充実

所属・現職等

沖縄県教育委員会 教育委員(沖縄女子短期大学特任教授) 鎌田 佐多子 氏

御意見

1  今日の高等学校が抱える問題点

  「中途退学対策の強化」
 本県においても高等学校進学率が平成21年度95.2%(全国97.9%)で、高等学校義務教育化傾向が定着している。
 しかし、入学後の中途退学者は、ここ数年2%台から減少していない。
  (現状)
        沖縄県立中途退学の主な理由(平成21年度)
     ア)経済的理由   4.1%(全国 2.0%)
     イ)問題行動    5.4%(全国 4.3%)
     ウ)進路変更   57.4%(全国33.1%)
 生徒一人ひとりが「存在感や自己実現」にむけた人材育成の観点からもその対策強化の更なる充実は課題である。

2  その解決策

         ア)個別指導の充実にむけた担当者配置の充実と担当者支援
       ・中途退学者の対応・指導は、個々によりその背景は多様である。
        時には長期間・長時間クラス担任はもとより複数の担当者との連携・協働も供なってくる。
                それぞれの指導内容に応じた人的配置は欠かせない。
            イ)経済的理由者の家庭支援
              ・対象生徒はもとより、その家族(家庭)支援も課題
              ・就学奨励への協力企業の拡大

所属・現職等

沖縄県教育委員会 教育委員(沖縄県高等学校PTA連合会顧問) 新垣 和歌子 氏

御意見

1  今日の高校教育が抱える問題点

  「将来につなげる進路指導について」
 生徒が将来の夢実現についての取り組みが弱く、目前になるまで行動が遅いがゆえに、本県の就職内定率と進学率は、全国平均に比べると低く、進路先未定者が多い。昨今の社会の景気の低迷や急激な変化に対応し、社会の自立した一員として、人生を謳歌していけるために、早い段階から将来の夢実現のために進路を選択できる生徒を育成することが必要である。

2  その解決策

   ○ キャリア教育を推進し、生徒の夢実現に向けて現在行っている進路指導の強化に努める。
  ○ 保護者に進路についての意識を持ってもらうために、共通理解を図り情報の提供や啓発運動を推進する。
   ○ 小・中・高等学校が連携し、発達段階に応じた進路指導の充実に努める。
   ○ 関係機関との連携の強化を図る。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年05月 --