宮崎県教育委員会からの御意見

所属・現職等

宮崎県教育委員会 教育委員長 近藤 好子 氏

御意見

・県立高等学校における障がいのある生徒の受け入れについて

1 今日の高校教育が抱える問題点

 発達障がいのように、コミュニケーションなどの対人関係において課題を抱えるものの、学力に問題が見られない生徒は、学力検査を通過し、高校に入学する。しかし、その後の適切な対応や、配慮がなされないがゆえに不登校や問題行動などを呈し、高校生活を継続することが困難となることが多くみられる。
 学校という、同一年齢の集団活動が確保され、加えて、その後の進路に関しての多くの情報を持っている場は、障がいを持ちながらもその後社会参加していくための進路を選択する生徒にとって、障がいを持たない生徒と同様、無くてはならないものである。
 現状において、高校という教育現場では、発達障がいに関しての理解や支援はまだまだ不十分な印象を受ける。そこには、発達障がいについての知識不足や、生徒への対応に困難さが生じたときに教師や、学校への支援不足など、教育行政が取り組まなければいけない課題が多くみられる。高校という教育の場が、発達障がいのある生徒にとって、社会へのつなぎ手としての役割を果たしやすくできるよう取り組むことが求められている。

2 解決策

  教育行政として

     幼稚園(保育園)・小学校・中学校から高校へと、当該生徒に関しての診断、支援、発達成長に伴う課題の変化等、共有できる記録簿の作成が必要と考える。
     それをもとに、高校入学前からの支援体制づくり、適切な助言を求める際の専門機関、専門家が明確となり、適切な支援につながる。

  学校現場として

     高校の教職員への発達障がいの理解の徹底
     障がいの特徴への理解ももちろんであるが、高校という場が、生徒を社会につなぐ、つなぎ手の役割を持っていることを理解する必要がある。

  生徒自身、保護者として

     高校生という年齢を考慮し、障がいについて生徒自身が理解する取組が必要である。
     前述したように、自分自身の診断や支援の記録を自身が所持することにより、自分自身の理解や、その後、社会生活において、本人自身が周囲に支援を求めることができ、自立できるように生徒自身が主体となって取り組む。

・高校入試の在り方について、とくに推薦入試に関して

1 今日の高校教育が抱える問題点

 本県の場合、推薦入試が導入され25年が経過した。途中、推薦の定員を各校で定めるなどの変更はあったものの、本来の推薦入試の目的を果たしているのかどうかの検証がなされているのか疑問を感じる。
 特に、進学校においては、その後の高校生活においても、また、高校卒業後の進学においてもその高校の求める学力は当然必要とされる。
 そのために、一般入試という、学力検査が行われているのであるから、推薦入試の必要性を感じない。

2 問題解決に向けた今後の方向性として

  進学校において、推薦入試で入学した生徒の入学後の学力等の情報を精査し、推薦入試が本来の目的を果たしているかどうかを検討すべきである。
 もし、継続するのであれば、その高校が生徒に求める学力(科目)を見ることができる、学力検査を導入することが必須と考える。
 推薦入試が行われない場合のデメリットを示したうえで、広く一般の意見を聴取すべきと考える。
 そのほか、産業系の高校においても、その高校が取り組んでいる課題や目標に現行の推薦入試があっているのかどうか、日々、生徒とかかわっている現場の教師の意見も広く聴取し、検討すべきと考える。

所属・現職等

宮崎県教育委員会 教育委員長職務代理(弁護士) 柏田 芳徳 氏

御意見

1 今日の高校教育が抱える問題点

 今日の高校教育が抱える問題点は様々あるが、個人的には、目的それ自体が曖昧な制度や施策が多くみられる点、このような曖昧な目的ですら、現実の教育内容等と矛盾ないし乖離が著しいと思われる点が気になるところである。高校教育における目的は、大雑把には(1)進学と(2)就職のための懸け橋となることであるが、普通科高校が進学の目的のために十分に機能しているのか、商業高校、工業高校あるいは農業高校といった産業系高校が就職や就業のために十分に機能しているのか大いに疑問が残る。以下、順不同で箇条書きでいくつか問題点を掲げる。

1)普通科における進学希望者間のレベルに応じた学校編成となっているのか、同一の学校内で習熟度に応じて生徒ごとにきめ細かな対応ができているのか。

2)普通科に進学希望ではなく、実際は就職目的の生徒を抱えている場合、現実の目的である就職に資する教育は施されているのか。目的意識が希薄なまま中途半端な教育となっていないか。総合学科については尚更あてはまる。

3)産業系高校について、現在の産業界の現実の要請や要望を踏まえた教育内容となっているのか。現実のニーズと教育内容にずれはないのか。これだけ複雑化した社会に対応するためには、何を目指すのかをより細分化して具体的に考える必要があるのではないか。

4)就職を目的とする場合に、本当に高校卒業後すぐに社会人として働けるだけの素養を身につけさせるカリキュラムとなっているのか。現実的な必要性に乏しい教養科目を削ってでも、挨拶、言葉づかい、電話、姿勢といった基本的社会人としての素養をしっかりと身につけさせることが先決ではないか。

5)全体的に社会に出れば激しい競争がまっているという現実、自ずと勝者と敗者(敗者が悪いということではないが)が生じることなどをもう少し意識させてもよいのではないだろうか。

2 解決策

  何分感覚的な意見なので具体的解決策までは考えが及ばないが、(1)普通科、商業、工業、農業等の分類の見直し、(2)現在の普通科をより具体的に進学目的と就職目的に分類する、(3)目的と関連しない教科を削減するなどが考えられるが、根本的には設定した目的に応じたきめ細かな対応ができるよう学校ごとの裁量の範囲を大きく広げることが必要と考えられる。

所属・現職等

宮崎県教育委員会 教育委員(元小学校校長) 谷口 美惠子 氏

御意見

 第34回全国高等学校総合文化祭が、平成22年8月1日から宮崎県内7市1町で開催されました。この大会は文化活動に取組む全国の高校生が日頃の成果を発表し、技を競い、交流を深める総合的な文化の祭典です。
 国内外から約2万人の高校生や関係者が宮崎に集合しました。
 公募で集まった約60名の高校生による生徒実行委員会により、演劇や合唱・美術・書道・郷土芸能など24部門で修練の成果やはつらつとした感性を披露する姿は、各県高校生の高い技術と郷土を代表しているという誇りに満ちた表情が見え感動させられました。高校生がこれほどの発表を可能にしたことで、高校教育が抱える問題を見出すどころか、将来を担う高校生に対して頼もしさを感じました。このような大規模の文化部のインターハイと言われる総合文化祭です。さらに内容を充実させ、今後とも継続実施を願うものです。

● 今日の高校教育が抱える問題点とその解決策

 定時制・通信制高等学校の現状に不安を感じています。
 例えば、ある学校では、定時制昼間部は、ほぼ全員が中学校新卒者であるが、中学時代に不登校気味だった生徒が他校より多く見られます。
 定時制夜間部は、中学校新卒者の割合が約7割で、ほとんどが全日制高校や定時制昼間部に入学できなかった生徒です。
 通信制は、平均年齢19才で無職の生徒が多く入学しています。本来は日頃は働いていて学校に通えない人たちの学びの場であるはずが、働いている人が1割しかいないことや発達障がいを伴う生徒など特別な教育支援が必要な生徒も見られます。
 このような現状の中、学校では生徒自身に自ら学ぶ意欲をもたせるとともに「一人ひとりが主人公」の合い言葉のもと、生徒の単位取得率を向上させ、全員卒業へ向けて教職員一丸となって様々な取組みが展開されているところです。
 若い人たちが働きたくても働く場が無いことも問題の一つです。大学等への進学以外は社会に出て行く生徒にとって最後の砦であるべき定時制・通信制高等学校の役割を再認識し、明確な目標をもたせ学習ニーズに応じた幅広い学習の機会を提供することにより生涯学習の基礎を培い生きる力を育み、現在以上に将来を担う人材を育成する学校でありたいと願うものです。

所属・現職等

宮崎県教育委員会 教育委員(会社役員) 池上 武博 氏

御意見

1 今日の高校教育が抱える問題点

 少子高齢化の進展、地方の過疎化や産業・就業構造が大きく変化してきています。これからのグローバル社会では「世界から見た日本」を考え、日本が世界でどういう位置なのかを把握することが大事です。
 高校生はどうかと現実を見れば、職業人としての基本的な能力の低下や職業意識職業観の未熟さが指摘されます。また、大学進学率の上昇に伴い、進路意識や目的意識が希薄なまま進学し、社会・職業との関わりが薄い傾向にあります。進路指導が、必ずしも将来の職業を見据えていないと考えられます。チャレンジする人生よりも平凡な人生を選び、海外への意欲も乏しく、内向きで気概のない若者が多いと言われています。
 このような中、高校生が「生きる力」を身に付け、激しい社会の変化に対応し、主体的に自己の進路や夢・目標を決定できる能力や、勤労観・職業観を身に付け社会人として自立していくことができるようにする教育が必要です。更に、人間力(やさしさ・思いやり・勇気・協調性・奉仕)・コミュニケーション力を高める教育も重要です。社会も当然のように要求してきます。そのことに対応しなくてはなりません。

2 問題解決に向けた方向性

(1)高校(普通校・専門校)において、就業体験を教育課程に位置づけ、充実を図る。
(2)小中高の各発達段階に応じて、学校の教育活動全体を通した継続的系統的な教育を展開することのできる小中高一貫した指導体制を確立する。
(3)学校と地域産業界との連携・協働をより一層高め、地域産業界のもつ教育力をキャリア教育の推進に活かす。

所属・現職等

宮崎県教育委員会 教育委員(自営業) 齊藤 和子 氏

御意見

 中学校から高等学校への進学の段階で学区制が廃止され、生徒自身がそこで学びたいと思う学校を受検することができるようにはなったが、特に普通科高校では学校の特色から生徒にあった学校を生徒自身の主体性を持って選択するというより、塾等の模試を利用しての偏差値ランクに依存した学校選びをしている現状もある。進学後、多くの生徒は自分の将来について考え、目標達成を目指し学習等に励み充実した高校生活を送っているが、成績の序列に悩み、自信を失ってしまう生徒もいる。挫けないための自尊感情を高校入学以前に育てておくことが大切だと思う。
 未来を担うべき人材を育てるといったことを考えるとき、即効性や有効性ばかりを求めてはならず、長いスパンで生徒の成長を考えていかなければならないと思う。この多感な時期にこそ知識にとどまらない様々な経験を通して、一人の人間として規範意識を高め、社会性や倫理観を身につけてほしいと思うが、大学受験のための勉強と生きていくために必要な総合的な力は必ずしも結びつかず、生きる力の形成と目先の大学受験突破のバランスをどうとるかが問題だと思う。

 完全学校週5日制となって、週あるいは1日のスケジュールが密になり多忙感があるように思われる。授業内容の継続性が2日の休みによって断たれることにも不都合があるのではないかと思うが、実際には土曜日の課外授業なども実施されている。加えて、生徒の生活面での指導や部活動指導などもあり、ゆとりを持った指導や先生同士の情報の交換や共有がしにくい状況にあるのではとの心配もある。
 子どもを地域にかえす中でゆとりをもって生活体験の充実を図り、子どもたちがゆとりの中で自ら学ぶ意欲を持ち、自ら考え、判断し行動できる力をつけることができる。そういった望ましい人間形成を図ることにねらいがあったかに思うが、その成果が得られているようには感じにくく、以前より、土曜「半ドン」の復活については、保護者間でも話題に上がっている。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年05月 --