高知県教育委員会からの御意見

所属・現職等

高知県教育委員会 教育委員長(高知学園短期大学副学長) 小島 一久 氏

御意見

 日本の社会は、情報化、国際化、科学技術の急激な進展に加え、長引く不況や少子高齢化の中で子どもたちを取り巻く環境はめまぐるしく変化し厳しさを増してきている。その大きなうねりの中で、国家的な長期計画・戦略が見当たらなくなっているなど先行き不透明な状況にある。

 特に気掛かりなのは、人間関係が希薄になっていることである。昔から家族は社会を構成する最低単位として、日本の伝統や文化、歴史を引き継ぐ機能を果たしてきた。しかし、その家族も核家族化、少子化などにより個の単位が重視され、豊かさと引き換えに今や崩壊している状況もある。そして、子どもたちは過保護の状態となり、自らの意思を言葉にして伝えたり自らの力で行動することによって培われていく、自立心や自制心さらには、倫理観や規範意識が失われている。このような現状の中で、今まさに、「生きる力」の醸成が喫緊の課題となっている。このための取組は発達段階に応じて系統的に連携して行う必要がある。

 まず、幼児期においては、「生きる力」の基盤となる自尊感情や豊かな感性、人間同士の触れ合いや思いやりの心を育てることが非常に重要になってくる。従来の幼児期の教育は、幼稚園・保育所という異なった環境のなかで教育と保育が行われてきたが、今後はそれぞれの特性を生かしながら早期に幼保一元化を実現し、幼児教育全般にわたる抜本的な改善を図ることが必要である。併せて、子育てに関する保護者への指導・支援体制の充実を図り、子育てと同時に行われていく「親育ち」の意識を保譲者に育てていくことも重要である。

 さらに、幼児期からの小学校への連携、中学校から高等学校への連携がスムーズに行われることも重要となる。基本的生活習慣の確立はもとより自らが学ぶことの喜びを見出すための学習習慣の定着化は、義務教育の時期にこそ学校と家庭が理解しあい連携を強化し、子どもたちの基礎作りに力を注ぐべきであろう。

 また、高校生においては、今、その多くが将来に希望をもてず、不安や諦めを感じているという。日本の将来を担うべき彼らが、自身の将来を考え、高い目標をもち深く学び広い視野をもつことができる仕掛け作りこそが、今最も高校教育に求められている。これらの実現のためには、教員の指導力の向上と資質の向上は不可欠の要件であると同時に、子どもたちのキャリア形成の支援も重要である。現実的に社会・職業の理解を深めることや、自分がどのように社会に関わっていくのかを考える教育活動等を積極的に取り入れていく必要がある。その際、世界におけるわが国の役割等、これからの国際化する社会の中で自らの役目も考え、国際人として世界で活躍し、その仕掛けを使いこなす力も求められるようになる。そのために、高等学校は校長を中心に、全ての教科の教員が同じ目標を掲げ、「生きる力」をもち、広い視野をもつ子どもたちを育てていく努力を惜しむことなく邁進することが求められる。キャリア教育の推進や日本の伝統文化の徹底した理解の促進、世界で活躍できる子どもたちを育てるための留学制度や教育現場への外国人の雇用、奨学金制度の拡充等、具体的で大胆な改革も求められる。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年05月 --