香川県教育委員会からの御意見

所属・現職等

香川県教育委員会 教育委員(帝國製薬株式会社専務取締役) 佐野 伸治 氏

御意見

1 高校教育の改革だけで、教育の質は向上するか?

 高校教育のみの在り方を変えることによって、教育の質的向上を図ることは難しいとまず認識すべきだ。
 我々が抱える教育の諸課題は、幼児教育から始まり、所謂、高等教育まで、一貫した理念と実践の欠如から発生したと言っても過言ではない。
 更に、家庭や地域の教育力の低さも影響しているだろう。
 しかしながら、敢えて『高校教育』に絞って意見をまとめたい。

2 高等学校の改革

(1)社会との適応力を増す
 高校3年間で、改めて、『挨拶、礼儀(マナー)、倫理観』を身につける。
 高校に限ったことではないが、上級学校を目指すにしろ、社会人として独り立ちするにしろ、『自立心』なくして、自らの生きざまを選択できず、『正義感』なくして、自らを律することはできず、『挨拶や礼儀』なくして、多くの人と社会生活を営むことはできない。
 ぜひ、授業時間をとって、生徒たちに考えさせてほしい。 
(2)基礎学力の向上
◎授業時間数の確保
   土曜日も含め、授業時間数を増やし、中途半端な授業内容、時間配分を再考し、教科指導の質を確保する。
◎学びたい生徒(知識欲旺盛な生徒)への対応、学力不足の生徒への対応を区別し、生徒に満足感を与えるような授業を目指す。
◎専門教育においては実習を増やし、会社や現場と遊離しない技術取得を心がける。

3 最後に

  教師の質的向上・時間的ゆとり(定数増)、評価・給与など、環境を整えて頂きたい。
   教師が抱える業務の仕分けや効率化も重要な課題だが、教師を取り巻く環境についても、併せて考えるべきではないだろうか。

所属・現職等

香川県教育委員会 教育委員 渡邉 時枝 氏

御意見

1 教員の多忙感について

  「学校行事に、先生方が積極的に参加できていない。」という声を現場の先生から聞いた。少し前なら文化祭、今の時期なら寒稽古。どちらも生徒にとっては大切な行事。軽視しているわけではないが、先生方に余裕がない。生徒と関わる時間、しっかりと向き合う時間が高校の先生にも必要である。人員増が厳しいのは熟知しているつもりだが、メリハリのある給与体系など、少しでも先生方のモチベーションアップにつながる取り組みをお願いしたい。

2 特別支援教育について

 特別支援学校や公立の小・中学校においては、手厚い対応がすすんでいるという印象を受けている。近年、発達障害など特別支援を必要とする生徒が増えている中、特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラーの充実と資質向上を中学校、高校でもお願いしたい。特にスクールカウンセラーは教員が保護者に対して言いにくいことを代弁するなど、多忙な教員の支えやパートナーとして期待されていると聞いた。

3 職業科について

 先日、病院の経営で困っていることの一つとして、「看護師不足」があげられるという話を聞いた。看護師が足りないため、入院患者の対応が出来ず、増床できない。その結果、経営が悪化することもあるということだった。
 高校再編で、社会のニーズに応じて福祉科や情報科等の設置も増えていると認識はしている。
 上記は一例であるが、専門的な知識が必要とされる企業や病院等医療関係の職場が必要としている人材について国や県がしっかりと調査して、職業科のニーズや定員を見極め、職業観・勤労観の育成にしっかりと取り組んで欲しいと感じた。

4 ボランティア活動について

 韓国人留学生イ・スヒョンさんは、自分の命を顧みず、見ず知らずの人命を救った。正義感・勇気・やさしさにあふれたイ・スヒョンさん。スヒョンさんのような留学生の中には、よい志を学び、社会の役に立つ人間になろうと日本で勉強しながらボランティア活動にも積極的に参加する若者が多いとニュースで見た。
 高校教育の中でボランティア活動を、もっと積極的に取り入れてはどうだろうか?

5 教師の地位向上について

 オバマ大統領が先日の一般教書演説で、韓国では教師を『国をつくる人』と呼んで尊敬していると紹介。米国のみならず日本も見習うべき。先生方の評価を下げているのは、社会であり、私たち大人である。育休など制度上は手厚いし、安定しているといわれるが、労働条件が良いとは思えない。「優秀な人材を!」「教師の資質向上を!」と熱望するが、教師の評価・地位は下がり、保護者対応など問題山積で多忙な上、給与で上場企業との格差があれば、優秀な人材がそちらに流れるのは自然なことだと思う。これから先生を志すかもしれない子どもたちに、教師という職業が魅力的に映っているとは到底思えない。社会全体で、教師の地位向上に取り組んではどうだろうか?

所属・現職等

香川県教育委員会 教育委員(株式会社藤村鐵工所代表取締役社長) 藤村 育雄 氏

御意見

1 高校教育が抱える問題点

 少子高齢化の進行、国際化の進展、産業構造や雇用形態の変化など急激な社会の変化の中、子どもの学力低下への懸念、不登校・中途退学などの問題行動、規範意識や社会性の低下、家庭や地域社会の教育力の低下など、全国的に教育に関する様々な課題が生じており、本県も例外ではないと考える。

2 本県の高校教育の抱える問題点

 なかでも次の2つが本県の高校教育における深刻な課題と考える。
(1)長期的な生徒数の減少
 中学校卒業者数は、平成元年3月の16,876人をピークとして、減少傾向が続いており、平成23年から平成30年まではおおむね9,500人前後で推移するものの、それ以降、さらなる減少が見込まれている。
(2)香川を支える人材育成
 特に進学校と呼ばれる高校では、難関大学・有名大学を目指すことばかりに心を奪われ、大学入試のための予備校と化す傾向にあると感じる。
 郷土について十分に学ぶ機会がないまま、県外の大学へ進学するため、将来、香川県に戻ってくる学生が少なくなることが懸念される。このことは、地方にとって大きな痛手である。

3 その解決策

(1)長期的な生徒減少
 生徒の減少、人口の減少を食い止めるため、アジア各国から、高校生の留学生や移民を積極的に受け入れる体制をつくる。
(2)香川を支える人材育成
 高校教育においては、
 ○卒業後、即戦力として地域産業を支え、地域社会に貢献する人材
 ○卒業後、上級学校に進学し、さらに専門的な知識を深めたのち、郷土香川にあって地域社会・産業を支える人材
など、郷土へ愛着をもち、地域に貢献する人材を育成することが、これまで以上に重要である。
 そのため、郷土に対する誇りと愛着を育む教育を十分に行うとともに、特に商業・農業・工業などの専門高校を一層充実させることが必要であると考える。

所属・現職等

香川県教育委員会 教育長 細松 英正 氏

御意見

今日の高校教育が抱える課題とその解決策

1 県立高校の再編整備について

 本県では、長期的な生徒減少が継続する中にあっても、生徒の能力・適性・進路希望などに対応して高校教育の充実を図るとともに、県立高校が活力に満ち、時代の変化や社会の要請に即した多様な教育を推進するため、県立高校の再編整備を進めてきた。
(1)中高一貫教育校について
 平成13、14年度に2校の中高一貫教育校を設置したが、そのうち1校は入学希望者の確保が困難となり、平成21年度から募集を停止した。
 課題としては、入学者選抜において学力検査をしないと学校教育法施行規則に明記してあるが、今後、入学者の適性を多様な方法で評価できるように、入学者選抜方法の改善についての検討が必要である。
(2) 総合学科および全日制単位制高校について
 総合学科は3校、全日制単位制高校は1校を設置した。
 成果としては、生徒自らが学習計画を策定し科目を選択できるため、自分の興味・関心を最大限に伸ばすことができることがあげられる。
 課題としては、安易な科目選択に流れる傾向がある生徒への指導や、生徒の主体的な進路決定に不可欠なガイダンスやカウンセリング、キャリア教育の充実などがある。
(3) 定時制課程・通信制課程について
 生徒の就業形態や学習歴の多様化に対応し、弾力的な学習形態を提供するため、単位制、三修制、年度途中の入学などを導入した。
 課題としては、生徒の多様化に対応し、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化を図る必要がある。さらに、授業料無償化に伴い、公立高校に対し入学希望者全員の受け入れを望む声が高まる一方で、入学者選抜においては、各高校の教育を受けるに足る能力・適性等を判定するため、定時制課程では定員内不合格者が生じている。
 (1)~(3)に共通する課題として、小規模化が進む中、限られた教員定数では生徒の希望する科目を十分に開講できないことなどがある。
○その解決策
 各学校が魅力ある教育内容を実現するには、ある程度の規模を確保し、十分な教員の配置と必要な施設、設備の整備が必要である。そのためにも、高校標準法に基づく教職員定数の改善を是非お願いしたい。

2 大学入試について

(1) AO入試、推薦入試など大学入試の多様化について
 ・ AO入試などにより早期に合格する生徒に対して、学習へのモチベーションを継続させることが困難になっている。
 ・ 大学入試の多様化に伴い、推薦書の作成や小論文、面接の指導により高校教員が多忙になっている。
(2) 年度途中の卒業生に対する進路保障
 本県では、定時制課程普通科高校に年度途中の入学を導入した。それに伴い9月に卒業する生徒が大学へ進学する場合、10月から入学できる大学が限られている。
○その解決策
 大学入試について、AO入試などの出願時期に一定のルールを設けるとともに、複雑化した入試制度の簡素化、10月入学の拡充などの大学入試制度の改善が必要である。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年05月 --