山口県教育委員会 教育委員長 村上 智真 氏
「生徒一人ひとりの夢の実現」に向けた「生きる力」の育成
山口県には、豊かな先見性、進取の気質、質実剛健の気風、郷土を愛し郷土に奉仕する精神とともに、若さに託し若さに期待する教育風土があり、それらを大切にしながら、本県ではこれまで、「夢と知恵を育む教育の推進」を基本目標に、また、目標を達成するための視点として、「3つの力」(学ぶ力・創る力・生き抜く力)と「3つの心」(広い心・温かい心・燃える心)の育成を掲げ、教育活動を展開してきている。
こうした中、近年、生徒のニーズの多様化、社会の変化、少子化の進展が著しいことから、これらへの的確な対応も求められていると考えている。
これまでも本県では、生徒の個性を重視し、選択幅の広い教育の推進に努めてきており、総合学科や中高一貫教育など、いわゆる新しいタイプの学校の導入などを積極的に行い、「生徒一人ひとりの夢の実現」に向けた取組を行っている。
今後とも引き続き、生徒一人ひとりを、かけがえのない個性や可能性を有する唯一無二の存在として大切にする教育を推進するという視点に立って、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」など、知・徳・体の調和のとれた「生きる力」を育むことが一層重要であると考えている。
教育にかかわるすべての組織・県民による教育の推進
「生徒一人ひとりの夢の実現」に向けては、学校、家庭、地域をはじめ、本県の教育にかかわるすべての組織や県民が、「元気」「基礎・基本」「つながり」の3つのキーワードを共有し、開かれた学校づくりなどをとおして、それぞれの力を結集した協働の中で、一人ひとりを大切にする教育を推進しなければならないと考えている。
生涯にわたって成長し続ける生徒を育成するための「3つの基軸」
高校教育を生涯学習という観点から捉え、生涯にわたって、生徒一人ひとりが自立して、社会の一員としての役割を果たしながら、自らの可能性を見出し、それぞれの願いや思いを未来への大いなる夢へと創りあげ、自分にふさわしい生き方を実現するため、たゆまず努力する生徒を育成することが重要と思われる。
そのためには、生徒一人ひとりの夢や目標、その実現に向かって取り組む意欲や態度を育むキャリア教育や、社会や人とのよりよい関係を築くコミュニケーション能力の育成を図ることが必要であろう。
また、生まれ育った地域や伝統、文化などの様々な影響やつながりの中で現在の自分を形成しており、これらを生徒が自らの営みに生かしながら次の時代の担い手となっていくように、地域や伝統、文化を踏まえた教育の充実を図ることが必要と考えている。
こうしたことは、教育の普遍的な理念や使命ではあろうが、現在の教育上の重要な課題でもあり、本県では、これら3つの項目を教育活動の展開に当たっての基軸(「3つの基軸」)として位置付け、様々な教育活動に取り組むことにより、生徒一人ひとりが、それぞれの夢を育み、その実現に向けて意欲的に取り組み、未来に羽ばたいていく力と併せて、他者や社会とのかかわりを通じて、思いやりの心や生かされている「命」を大切にする心・態度を育成できるように努力している。
各学校における日々の教育活動は、学習指導要領に規定される各教科、科目の目標や内容を踏まえながら工夫された指導方法によって展開されているが、これを横糸として、また、「3つの基軸」を縦糸として織り込んでいくことで山口県教育を創り上げていきたいと考えている。
「県立高校将来構想」の着実な推進
本県では、中長期的な視点に立って、高校教育の一層の充実を図るとともに、これまで以上に生徒や社会のニーズに応じた多様で柔軟な教育システムを築き、高校としての今後のあるべき姿を実現するため、「県立高校将来構想」を平成17年に策定し、「生徒一人ひとりの夢の実現」に向け、特色ある学校づくりの推進や学校・学科の再編整備に取り組んでおり、引き続き、この構想を着実に推進していきたい。
初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室
-- 登録:平成23年05月 --