鳥取県教育委員会からの御意見

所属・現職等

鳥取県教育委員会 教育長 横濵 純一 氏

御意見

1 今日の高校教育が抱える問題点

 本県では、平成10年度から16年度の生徒急減期に大規模な高校の再編成を行い、その後も続く生徒減少には、学級減等により対応してきている。
 併せて、産業界と連携した職業系専門学科のカリキュラム改編、司書教諭及び常勤司書の全校配置など読書活動の充実、第三者評価を含む学校評価制度の全校導入及び学校裁量予算制度の導入など、様々な改革を行ってきている。
 しかし、今後も続く生徒減少や、厳しい雇用情勢のなかで、生徒の進学・就職等の進路保障など、新たな課題も生じている。
 ※学校裁量予算制度 … 学校の課題解決に向けて校長が独自に事業を企画・立案し、予算を要求・執行する制度。一括配分された予算枠内での校長裁量による事業間流用が可能。さらに効率的な運営により捻出された経費も、校長裁量で執行可能。

(1)中学校卒業者数の減少と今後の高校教育の在り方
 高校新卒者に対する求人数が大幅に減少していたり、現在設置している学科と求人とのミスマッチが生じているとの指摘がある。
 また、県では経済成長戦略を策定し、EV、バイオ、環境など、将来成長が見込まれる産業分野の開拓を進めている。
 高校教育においても、生徒減少が進む中、こうした状況変化にいかに対応していくのか、県の将来の産業構造等も予測しながら、学科の在り方等を検討する必要が生じてきている。

(2)学力向上
 本県の大学等進学率は、全国平均と比べ低い状況(平成22年3月卒業者の大学等進学率=本県:45.0%、全国:54.3%)がある。
 これは県内の高等教育機関の数が少ないことなど様々な要因があるものの、県民からは更なる学力向上対策など、生徒の進路実現につながる施策が求められている。
  一方、PISA調査で明らかになった課題は、本県にも共通してあり、特に今後は、いかに学びに向かう目的意識を高め、主体的な学習者を育てていくかが課題である。

(3)特別な支援が必要な生徒の増加
 近年、高等学校においても、発達障がいと診断された生徒や発達障がいと考えられる生徒が増加しており、このような状況に対応するため教員の専門性を高めるとともに、高校における教育課程の編成についても、弾力的な運用を検討する必要がある。

2 解決策

 少子高齢化が進む中、本県では「人財」(地域の宝である人材)の育成に積極的に取り組み、県をあげて「子育て王国とっとり」を実現しようとしている。

(1)今後の高等学校の在り方については、普通学科の学校規模を維持しつつ、県が戦略的に取り組む新しい産業分野に関する学科を始めとした職業系専門学科の在り方について、知事部局と緊密な連携を図りながら検討していく。

(2)学力向上対策では、各高校の垣根を超えて、教員や生徒が切磋琢磨し合うことで教科指導力や学力を向上させる取組み(合同での授業研究や勉強合宿の実施等)や、知的好奇心を高める取組み(英語弁論大会や理数課題研究発表会の開催、大学と連携した高校生科学セミナーの実施等)を充実・強化する。
 さらに、来年度から中学校区を指定し、小・中学校や中・高等学校の連携を軸に、幼稚園や保育所、大学とも連携して、一貫性のあるカリキュラムの開発などを行う「未来を拓くスクラム教育推進事業」など、「学びと指導の鳥取方式」の構築に努める。

(3)高校に在籍する特別な支援が必要な生徒には、これまでの自校中心の取組から、各地区に拠点校を設けてコーディネーターを配置し、各校の担当者が特別支援学校の教員と連携することで教員の専門性を高めていく取組みに移行させ、学習支援や就労・進学支援の質的向上を図る。
 また、知的障害の軽い生徒を対象として就職に向けた専門的教育を行うための高等特別支援学校の設置に向けた準備を進める。 

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年05月 --