山梨県教育委員会 教育委員 杉原 廣 氏
これまで以上に社会と一体となった高校教育を進める必要がある。
高校においては、今後社会から要請される資質・能力を踏まえた教育課程の実施を進めると同時にキャリア教育を更に推進する。社会の側では、熟練した、あるいは高い技術・技能を身に付けた人が社会的に評価される仕組みを設け、専門学科で学ぶ生徒の意欲向上を図る。国では「現代の名工」があり、地方でも、さまざまな○○マイスターがおかれているが、社会的な処遇に反映するような取組が必要ではないかと考える。
(1)総合学科への進学希望者が多く、入学した生徒の満足度も高い状況がある。今後生徒数が減少する中で、総合学科における教科担当が減少し、「幅広い科目の中から生徒の個性にあった科目を選択履修できる」という、発足当初の趣旨が達成困難な事態も予想される。例えば総合学科を有する学校にあっては、そうしたことを防ぐ人的な配置が必要ではないか。
(2)児童生徒数減少が進み、小中学校の統廃合が進んでいる。それは、児童生徒の過剰負担にならない範囲で、スクールバス等で通学が可能な中で検討されている。
高校の場合、統廃合よっては、通学範囲がより広範囲になることが予想される。
山間部が多く、公共交通機関の確保が困難な本県のような地域では、通学が実質上困難が予想される。各県の問題という考えもあろうかと思うが、全国的な問題として、学習機会の均等という視点での施策が必要と考える。
山梨県教育委員会 教育委員(株式会社吉字屋本店代表取締役社長・山梨トヨペット株式会社代表取締役社長) 高野孫左ヱ門 氏
山梨県教育委員会 教育長 松土 清 氏
歴史的に見ると、教育はその時々の社会の要請に様々な形で役割を果たしてきた。教育には、最先端の技術・情報など新しいものや考え方を取り入れることが必要であると同時に、伝統的な価値観など我が国の教育が守ってきた不易なものをしっかりと伝える義務がある。改革を検討するに当たっては、守り引き継ぐべきものが何なのか、その価値を整理した上で議論をすべきである。教育の本質である「人格の完成」という難しい問いに、長い間答えを探し続けてきたものを土台として、新たな改革の方向性を検討していただきたい。
新しい教育改革の方向が示されるたびに、教育現場はその波を受け課題に対応している状況である。人を育てることは息の長い活動である。静かな環境の中で、教師が子どもたちにじっくりと向き合うことが必要である。改革の議論を進めるに当たって、このことを十分配慮するようお願いしたい。
我が国で進む少子化は、経済力等の国力を落とすというような負のイメージを払拭することは容易ならないが、せめて教育の場ではマイナスの要因を可能な限りプラス要因に転換したい。人数は少なくともより優れた能力や人間性を育てる観点で、今まで以上に一人ひとりに向き合い、教育的ニーズに合ったきめ細かな指導が展開できる制度設計が必要である。
社会や時代の変化に対応できる力は何かと考えたとき、コミュニケーション力や情報処理能力などの技術的な力が挙げられるが、その大前提として、強い身体やくじけない心、知力の基盤が強固であることが必須である。改革案にはこの3つの力がどう身に付くのかという点について、明確な形を示していただきたい。
高校の学習指導要領は、義務教育との連続性を重視した形で定められているが、そのことが高校の特色づくりをやりにくくする要因になっている。高校教育は義務教育の目指すものとは異なり、社会への準備段階の指導が柔軟にできるよう教育課程を編成する必要がある。連続であることの必要性を整理し、柔軟な対応ができる学習指導要領を検討していただきたい。
戦後60数年の間に、かつての不足、不自由、不便から解放されたものの、それに代わって、不満、不安、不信が蔓延してきたように思う。いかに世相が変わろうとも、価値観の多様化などという言葉で一蹴せず、人間としての大基本を「教え」「育む」ことが肝要と考えている。
初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室
-- 登録:平成23年05月 --