長崎県教育庁生涯学習課 指導主事 松尾修氏 インタビュー概要

1.実施日

平成23年2月21日(月曜日)

2.インタビュー対象者

長崎県教育庁生涯学習課 指導主事 松尾修 氏

3.概要

○ 情報の発信と収集の必要性について

 マスコミで流される公立高校像は、東京を中心とする関東のそれをイメージして報道されるものが多く、たとえば長崎県の公立高校から見ると違和感を覚えることもある。保護者や地域の人たちは、マスコミの生徒像・高校像が自分の地域の高校にもあてはまると考える傾向が強い上に、「昔は良かった、今の若者はだめだ」と考えがちである。一方で、地方の公立高校は、自負心から保護者のそのような意見に耳を貸さない傾向がある。高校は、地域による在り方の違いも考慮しながら、保護者・地域・小中学校・塾等に、自分たちの取組をよりわかりやすく発信すべき時期に来ていると考える。
 反面、小中学校の変化に対して、高校の教員の関心が低い点は否めない。たとえば学校支援地域本部事業やコミュニティースクール、放課後子ども教室等、地域と小中学校が手を携えて教育を推進する動きは強まっているが、高校教員は義務教育の変化について関心が低く、知識も少ない場合が多々見受けられる。以前、とある高校教諭出身の大学の先生から「指導要領が変わったとき小中は変わりすぎるくらい変わり、高校はあまりに変わろうとしない」という話を聞いたことがあるが、そのとおりだと感じる。校種間の連携に困難はつきものであるが、学びの系統性・連続性を考えたとき、高校は、小中学校がどのような取組をしているかを謙虚に学び、共通理解にたった議論をすることが、生徒のためにも必要だと思う。また、そのような経験を経て得られる力は、PTAや同窓会の良識のある人たちとの関係づくりにも資すると思われる。

○ 職人型の教諭と学究肌の教諭が共存できる学校づくりについて

 退職する二人の先輩教諭から、異口同音に「日々の指導に必要なこと以外に、何かこれという専門を持ちなさい」と言われたことがある。一人は進学指導等に熱心で校長で退職した方、もう一人は部活動と日々の指導以外に専門的な勉強にも熱心な方という、タイプの大きく異なる人たちだっただけに心に残っている。教員が生徒にとって魅力的な大人、授業以外でも教えを請いたいような人になるためには、読書や教員同士で議論する時間も必要だと思う。進学指導に重きをおく学校等では、学究肌の先生が徐々に居場所をなくしているのではないだろうか、そうなると、進路指導職人型だけの教員を目指す人が増えるのではないかと考える。理想的には、職人肌、学究肌が個人として、そして学校として共存していることであろう。現状では、生徒にとっての教員の魅力が先細る要因になるのではないかと危惧する。

○ 業務軽減について

 上述の二つの意見は、業務軽減による時間確保という、現場では非現実的に思える前提がなければ実現しないとは思う。高い教育成果を実現するためには、教員が生徒のために尽くす心意気が必要だし、それに支えられている高校が多いのも事実だが、その心意気を持続的に支えるシステムがなければ、人材の面で先細って行くように思われる。

(以上)

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年05月 --