佐賀県教育庁学校教育課指導主事 下村昌弘氏 インタビュー概要

1.実施日

平成23年2月25日(金曜日)

2.インタビュー対象者

佐賀県教育庁学校教育課指導主事 下村昌弘 氏

3.概要

○ 授業改善について

 高校の授業において、学びの楽しさ、おもしろさが十分に体験できていない。「思考」を軸にした授業が展開できれば、その体験は可能になるだろう。ドリルを中心とした知識の詰め込みだけではなく、教員も生徒も、ビジョンを持った上で為すべきことを内在化し、実行、点検、修正という流れを意識してつくりたい。この一連の過程を客観的にとらえられる「メタ認知」が「思考」を生み出し、おもしろさに通じると思う。
 授業には、いろいろな実施形態がありうる。従前の講義形式、スクール形式の授業が全てではない。そして、教材の力に頼りすぎず、どんな力を身に付けるのか、どんな活動を組織するのがいいのかという点に心を砕いた授業でなければならない。特に高校においては、多様な教材の開発や対話型の授業、ICTの活用などをもっと積極的に考えてよい。
 高校の教師は、いい意味でも悪い意味でも自分のやり方に固執する傾向がある。もちろんすべて否定されるべきものではないが、柔軟に対応したい。

○ キャリア教育等の教育活動について

 キャリア教育は、昨今ではいわゆる普通科中堅校あるいは教育困難校においてその重要性は高いとされているが、むしろ、進学校と呼ばれる学校においても新たな方法が考えられる。山梨県立韮崎高校などの例もあり、まだどこにもやれいないようなことができる可能性を強く感じる。
 キャリア教育においても、授業改善と同様に、自らが為すべきことを教師が与えるのではなく生徒に気付かせる、生徒をそこに誘うということが大切である。その際、長期的な視点で物事がとらえられるようにしたい。
 また「Try&Error」という表現が適切かどうかわからないが、目標を持って取り組み、たとえ失敗したとしてもそれを受容し、修正できることこそがキャリア教育で身に付けさせたい力であると考える。
 そういう意味で、意図的・計画的に、授業と総合的な学習の時間や特別活動とを関連づけて指導できる教員はそう多くはないと思う。

○ 学校の在り方について

 佐賀県では、県立太良高校において、既存の全日制高校では十分に対応できていない、不登校経験や発達障害のある生徒及び中途退学者を受け入れる仕組みを作った。多様な学びができ、地域も生徒の教育を支援する学校とする。このように、従来の制度に縛られず、現状と時代の流れに鑑み、教育の諸問題に立ち向かい、学校の特色化を図ることも必要である。
 都道府県によっては、いろいろな分野で独自の施策を打ち出している地域もあると感じているが、まだ地方では単一路線の傾向が強いのではないか。もっと多様性があってもよいはずだが、独自のカラーを出すような形がなかなか出てこない。地方においても、常に社会の動きや世界の動向に配慮しながら、そこに適応できる人材の育成を進めることが求められる。確かに地方には不利なところもあるが、地方は地方でできることを思考し、実直に取り組んでいければいい。それが地域からの信頼につながる。
 生徒は社会に出たら競争にさらされることになる。そのような中でも自己を見失わずに生きていけるタフな言語文化生活者を育成したい。そのためには、何よりも、開かれた学校づくりが必要であると思う。

(以上)

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年05月 --