長崎県立五島高等学校教頭 上田克氏 インタビュー概要

1.実施日

平成23年2月18日(金曜日)

2.インタビュー対象者

長崎県立五島高等学校教頭 上田克 氏

3.概要

(高等学校の抱える課題について)

・社会の中で生きていく力をつけること

 高校では、教科教育や総合的な学習の時間を通じて、知識・技能を習得し、論理的思考力や伝えあう力を高めている。それとともに、特別活動や放課後の部活動等を通じて、社会性を身につけ調和のとれた心身の育成を進めている。
 しかし、社会や上級学校へ送り出す時期となっても、充分に生きていく力をつけきれているとは言い難い。とりわけ、社会性の育成については、各年代ごとの発達課題を達成しておらず人間関係を構築したり職業を通じて社会生活を営むことについて、心許ない生徒が少なくないのが実態である。このことは、価値観の多様化や少子化、核家族化等により進む家庭での教育力の低下を背景にして、今後も持続的な問題であると考えられる。組織的な指導は、高校での教育が仕上げの位置づけであり、「社会人基礎力」等も念頭に、社会性の体系的な育成に取り組む必要を感じている。

・これからの時代に対応できる学力をつけること

 前述した社会性の育成に加えて、教科教育により生涯学習につながる学力を身につけさせることが求められる。技術革新や世界情勢の変化の加速化を背景に、個々の知識の陳腐化の速度もあがり、生涯学び続ける時代に生きる生徒のため、学校でも学力観や学習様式・学習内容の変革が求められている。

(課題への対応策について)

・社会的スキルの習得について、発達段階に応じた達成規準を示すことが必要

 過度に細分化されない形で、小学校から高校に至るまで、指導・習得させるべき社会的なスキルを発達段階に応じて配置した達成規準を示し、それに基づいた指導と評価が求められる。挨拶から共感的協働性の構築等に至るまでを示し、社会性の育成を明確に意識して学校行事や学級活動等を実施し、個々の児童生徒の発達課題を評価して、課題を抱える児童生徒には継続的な指導を図ることが必要である。

・学力観・授業様式の転換とそれを可能にする人的配置が必要

 東アジア型の知識量・暗記重視の学力観から、情報の収集・整理・提示の技能や論理的・分析的・批判的思考力に基づいた問題解決力等、生涯学習社会に対応できる基礎力の育成へシフトすることが必要である。ただし、思考が現実に即すためにも、思考の材料となる知識の習得は必須であり、地道な学習活動への専念は、社会生活に必要な勤勉性の育成に資するものでもある。
 現代に求められている学力育成のためには、授業の在り方も問題解決型・参加型・発信型・討議型等の様式を取り入れて、学びあう力を高めることが求められる。その実現のためには、これまで以上に、高い指導力を持つ充分な教員数の確保と授業時数の回復が必要である。一講座の生徒数を25~30人程度まで抑え充分に指導が行き届くよう教員数を確保するとともに、不断に指導力向上が図れるよう教員研修やリカレント教育の機会が保障されるべきである。また、公立高校における土曜授業再開の門戸を開くなど、充分な学力獲得ができる環境の整備に、本腰を入れて取り組んでいただくことが必要だと考える。さらに、大学入試制度や入試問題も、新たな学力を評価するものに変わらなければならないと考えている。

 (以上)

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年05月 --