北海道札幌北高等学校長 黒田信彦氏 インタビュー概要

1.実施日

平成23年2月1日(火曜日)

2.インタビュー対象者

北海道札幌北高等学校長 黒田信彦 氏

3.概要

(本校の定時制課程について)

 本校の定時制には劣悪な環境で生活する者、いじめや不登校・他校を退学した者など、心に傷を抱えた生徒が非常に多く、コミュニケーション能力や基礎学力の面で課題があることに加え、自閉症・ADHD・LD等の発達障害を抱えている生徒、さらには、うつ病等の精神疾患を抱える生徒もいる。これらの生徒の中には黙って椅子に座っていられず、アルファベットもわからないといった状況の中で、残念ながら学校生活に適応できず、中退していく生徒も少なくない。このような多様な生徒一人一人に対して、きめ細やかな教育をすることが本校の使命であると認識している。
 特色ある教育活動としては、3日間のインターンシップにより、勤労観・職業観を育成しているほか、技能審査や高卒程度認定試験による単位認定、習熟度別授業やティーム・ティーチング、ALTの活用、学生ボランティアの活用等を推進している。
 また定時制においても「PTAだより」を発行しており、学校としても積極的に情報発信し、生徒や保護者に選ばれる学校になるべきと考える。

(定時制課程の課題について)

 最近は保護者の希望で特別支援学校を避け、普通科に進学してくる生徒もおり、そのような生徒の保護者から過度な要求を受けるケースもあるため、特別支援教育の専門家でない教員では対応が困難である。定時制課程に特別な支援を必要とする生徒が多く進学している実態を考えると、特に管理職において、特別支援教育の経験者を幅広い人事交流により活用すべきと考える。
 最近インクルーシブ教育の推進が言われているが、その理念や重要性については十分認識しているものの、設備面、人材面などの受け皿の部分で体制が整っていないのが現状であり、条件整備が急務であると感じている。
 定時制課程は多様な問題を抱えて入学してくる生徒が多いため、全日制課程と比べ、きめ細やかな指導を要する場面が多い。このような状況には、少人数指導が有効であると考えるが、現行制度では教員の数が足りず、教員は皆疲弊している。文部科学省には是非定数の改善をして欲しい。

(地域的な課題について)

 特に義務教育において、学力向上の必要性を感じる。北海道では過疎化している地域が多くやむを得ないところもあるが、このような地域では周りと競う環境になく、ある種の「悪平等」になっていると感じる。

(今後の高校教育に求められるもの)

 コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力等の人間力を身につけるための教育が非常に大事である。日本はもっと世界に出て行ける人材、将来の国を担う人材を育成していかなければならないと思う。そのためには、基礎的な学力の定着が必要不可欠であり、多様な情報・選択肢を与えその中から自由に選べる環境作りが大切である。日本は諸外国に比べ教育関係予算が少なすぎる。もっと予算をつけて、教育施策を積極的に推し進めて欲しい。

(以上)

 

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年05月 --