北海道有朋高等学校長 穴水正氏 インタビュー概要

1.実施日

平成23年2月1日(火曜日)

2.インタビュー対象者

北海道有朋高等学校長 穴水正 氏

3.概要

(本校の概要について)

 本校は通信制課程及び定時制課程(単位制による課程及び技能連携制度による課程)併置校である。
 通信制課程は、北海道で唯一の公立の通信制課程であり、32の協力校と2つの技能連携施設が道内に点在している。学年による区分を設けない無学年制で、単位制を基本としている。在籍者数は約4,100名であるが、受講登録し通学している生徒は実施校が約1,200名、協力校が約1,100名で、15歳から80歳を超える幅広い年齢層の生徒が意欲的に学んでいる。
 単位制による定時制課程の在籍生徒は420名程度。学年による区分を設けない無学年制を採用しており、生徒がそれぞれの興味・関心、進路希望等に応じ自由にカリキュラムを編成できるように工夫している。在籍期間も自分の単位修得計画及び状況に合わせ選択できるため、ゆとりある学習が可能となっている。また、90分授業を6校時展開しているが、「フレックスタイム制」を導入しており、生徒は自分の時間に合わせて時間を管理し、登下校できる。教育活動や生徒指導の基本を「自己申告・自己管理・自己責任」としており、校則や制服等を定めていない。

(本校の課題と課題解決のための取組について)

 札幌市内にあるものの決して交通至便ではない中で、生徒数をいかに維持するかが課題である。そのため、単位制課程では前述の取組の他、技能検査の成果等本校以外での学習成果の単位認定(学校外における学修の単位認定)や、三部(夜間部)在籍生には、三部の時間帯のみで卒業できるよう通信制との併修システムを活用した三修制も取り入れるなど特色化を進めている。また、3月下旬に入学者選抜を行っており、他の高校と同時期にも選抜を行いたいと考えている。
 通信制課程では、現在、定通併修に関わって、三修制のための個人併修を認める方向で取組を進めているが、今後は、全通併修の実施に向けて取組を進めたい。また、制度上、養護教諭が定数化されていないことも課題である。本校では、時間雇用の臨時養護教諭を採用して、面接指導の時間のみどうにか工面できているのが現状である。ぜひ文部科学省には通信制課程に養護教諭を定数内で配置できるよう制度改正を進めていただきたい。
 両課程とも、地域に愛され信頼される学校づくりを推進するため、新たな視点から改善を図り誠意を持って努力している。特に地域との積極的な連携によるボランティア活動や、中学校に対する学校説明会等では、教員や生徒の発想を生かした創意工夫あるものを協働で作り上げるなどの意識改革を進めている。

(定時制・通信制について)

 教育の機会均等という精神のもとで、勤労青少年の学習機会の場としてスタートした定時制・通信制教育であるが、時代の移り変わり、社会の変化などによって大きく様変わりしている。現在は、生涯学習社会のニーズに応えながらも、従前から学んでいる勤労青少年とともに、集団に馴染めない生徒、高校中退者や不登校経験者、外国籍生徒や心や体に課題のある生徒、特別支援教育が必要な生徒など、実に多様な生徒が学ぶ場へと変容してきている。
 定時制・通信制には実に様々なサポートを必要とする生徒が進学してくるようになったといえる。例えば、生徒が学校内で突然発作を起こしたりすると、専門の教育を受けた教員でなければ適切な対応ができない場面も想定される。通信制における養護教諭を始め、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの常駐が必要であり、対応が急がれる。
 また、定時制・通信制には経済的に困難を抱えた生徒も多く、経済的な理由から面接指導を受けに来ることができない生徒もいる。様々な問題を抱えて、年度中途に多くの生徒が転入・編入してくる。定時制・通信制課程は高校教育における「セーフティネット」としての役割も担っており、今後もその役割は大きくなっていくと思う。その様な中、キャリア教育の充実による就労・就学支援策の推進が大きな課題である。
 通信制で学ぶ生徒は、入学の動機や学習歴そして生活歴など、一人一人異なっており実に多様である。進学も就職も全日制課程に比べ決して多いとはいえないが、例えば、クラッシックバレエや音楽を集中してやりたいので通信制を選んだなど、自己実現のための一手段として、通信制の教育システムを上手に活用する生徒が、一人でも多くなることを願っている。生徒の生活にあわせて学校がゆとりある学びの機会を提供し、場合によっては何年でも待ってあげられるというのが通信制課程の利点である。

(以上)

 

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年05月 --