東京都立南葛飾高等学校長 星野裕史氏インタビュー概要
1.実施日
平成22年12月14日(木曜日)
2.インタビュー対象者
東京都立南葛飾高等学校長 星野裕史氏
3.概要
(高校授業料実質無償化の影響について)
- 授業料無償化の影響で、都立高校は全体的に倍率が高くなったと考える。これまで高校に進学するかしないか迷っていたような生徒にとっては、高校進学の後押しとなっているのではないか。しかし、倍率が高くなったことに伴い、これまで入学できていた層の生徒が1次募集で入学できず、2次募集やそれ以降の募集での入学を余儀なくされるケースも出てきている。
- 授業料減免などの修学援助を受けてきた生徒も多く、無償化がそうした生徒の学びの助けとなっている。それでも積立金を支払えないような生徒もいる。アルバイトをしている生徒も多いが、近年の不景気によってアルバイト先も減少している状況である。
(学習指導要領、教科書について)
- 新学習指導要領では、学び直しも含め、以前よりも柔軟な対応が可能となっており助かっている。
- 一方で、教科書については、昔よりは選びやすくなっているものの、学び直しをするには不向きである。教科書が参考資料のようになっている面もある。他方、進学校では教科書の内容だけ教えるというのでは不十分に感じるのではないか。
(高大接続について)
- 高校が多様化していく中で、高校で修得すべき具体的到達目標について1つの目標・基準を定め、それをすべての高校にあてはめることは困難。高校卒業者にも修得状況にバラつきがあるのが現状。生徒が高校で「考える力」を身につけていたとしても、高大接続テストのようなものでは知識しか測れないのではないか。
(学年制、単位制について)
- 2期制の単位制高校では半期で単位認定できることはメリットだが、単位制高校も必履修科目の関係で早い年次に履修しなければならない科目が多く、学年ごとの履修に近くなってきている。一方で、学年制では科目が1つでも不認定になれば原級留置となるが、それが逆に補習等を通じて赤点をとらせないようにする努力にもつながっている。学年制と単位制の両方の良いところを併せた制度ができればと考える。
(生徒指導について)
- 生徒指導はかなり厳しくやっており、生徒もそれに応えてくれている。また、単位認定についても、履修要件などを以前に比べて厳しくする形にしたが、生徒はそれに応えて努力するようになってきた。
(発達障害と思われる生徒について)
- 全日制にも定時制にも発達障害と思われる生徒はいる。なかには1度も通学できない生徒もいる。定時制はそういった生徒も引き受ける状況であり、これらの生徒への対応に苦慮している。
(以上)