名古屋大学附属教育学部中学校・高等学校副校長 山田孝氏 インタビュー概要

1.実施日

平成22年11月26日(金曜日)

2.インタビュー対象者

名古屋大学附属教育学部中学校・高等学校副校長 山田孝 氏

3.概要

(学級編制、教職員定数について)

・教職員の定数増がまず必要である。小学校、中学校については、実態として少人数学級化が進んでいるし、文部科学省でも取り組もうとしているが、高等学校についても学級編制標準の引き下げが必要である。
・教員が多忙化している。授業に加えて、近年は、学力検査では合格点を取って進学しているものの、発達障害があって人間関係の形成上課題を抱え、特別な支援が必要となる生徒も増えつつある。例えば、自傷行為を行う生徒には、その生徒の安全の確保のためにずっと教員がそばにいる必要があるが、そうした生徒一人ひとりに対するきめ細かいケアが求められる中で、教員の多忙化は進む一方である。
・教員の多忙化により、ベテラン教員の間で同僚を育てるという意識が回らなくなってきており、若手教員の育成に支障が生じているように思われる。初任者研修など、制度に基づいて実施される研修も充実してきてはいるが、職場の中でなければどうしても補えない部分がある。
・以前は、定期試験期間中の午後には教職員間でレクリエーション活動や現職教育を行う余裕があり、そうした活動を通じて職場の人間関係が円滑になり、職場内で支えあって同僚を育てるという雰囲気も醸成されていたが、現在では時間があればとにかく会議を行うことになっているのが実態である。附属学校として、様々な研究開発に積極的に取り組んでいるが、学校ではボトムアップで議論を積み上げて結論を得るので、職員会議も2時間くらいはすぐに経ってしまう。
・国立大学法人の運営費交付金削減、定数削減が進む中で、事務職員が削減され、これまで事務職員が担っていた業務が教員に回っている実態もあり、校務のスリム化を図ろうにも図れないでいるのが実態である。

(「総合的な学習の時間」について)

・新学習指導要領では、「総合的な学習の時間」が新たに章立てされた。本校では、「総合的な学習の時間」を教育活動の根幹に位置づけ、積極的に取り組んでいるが、多くの学校では、「総合的な学習の時間」で充実した教育活動を展開するには多くの手間隙を要するので、十分な活動が行われていないのが実態だと思う。実際に、自分は名古屋大学の教科外教育法の講義もしているが、そこで学生に尋ねてみると、進路指導や教科学習の時間になっていたとの話を聞くことも少なくない。また、ホームルームのような取組も多いようで、学生自身はそれが楽しかったと評価している場合もあるが、「総合的な学習の時間」の在り方としてそれでよいのか疑問に思うこともある。
・各学校でその学校の実情に応じた教材を開発することも重要であるが、様々な教材を集約し、参考事例として提供してくれる場が必要である。「総合的な学習の時間」は、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力の育成にも有効な教育の時間にもできる。キャリア教育の時間としても活用できるので、もっと充実させることが必要である。

(「公民科」の大学受験科目について)

・前の学習指導要領では「現代社会」が4単位必修であったものが、現行の学習指導要領では「現代社会」が2単位となっている。一方、大学の受験科目で見ると、「地歴科」は、B科目4単位での入試が定着しているようである。そのことに対応してか、平成24年度入試より、「公民科」の受験科目として、「現代社会」の2単位ではなく、「倫理」・「政治・経済」の4単位を受験科目としている大学・学部が出てきている。しかし、多くの高校では「倫理」を履修できる体制が整っておらず、混乱が生じているように思われる。このことからも、大学入試が高校の学習内容、カリキュラムに与える影響は大きいと思われる。

(以上)

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年02月 --