学校法人市川学園市川中学校・高等学校長 小川暢久氏 インタビュー概要

1.実施日

平成22年11月8日(月曜日)

2.インタビュー対象者

学校法人市川学園市川中学校・高等学校長 小川暢久 氏

3.概要

(市川学園の取組について)

・  市川学園では、課題を中期計画として設定し、現在第2期目が進行中。理事長、校長、事務長、副校長、主幹からなる経営会議で議論を行い、1「教育システムの改革(卓越した教育)」、2「教職員事務・支援システムの改革と次期情報システム改革」、3「真の人間教育のための改革と実践(品格ある紳士:淑女の養成)」、4「個が輝く強い教職員集団への改革」を課題として掲げ、に組織的に取り組んでいる。
・  保護者会においても、1高校生の進路開拓、2クラブ活動の意義と学習との両立、3思春期における心と身体、4ネットマナーについて意見交換を行う場を設けている。

(最近の高校生について)

・  高校生の教育としては、1家庭教育、2学校教育、3自ら学ぶ、という3つの教育があると考える。この第三の教育は、一生続くもので、市川学園の建学の精神でも重視しており、例えば、図書室を第三の教育の場として、毎朝7時から開放している。・  最近の傾向としては、家庭教育をもっとしっかりしてほしいという気持ちがある。
・  生徒によっては精神的に自分をコントロールすることが難しく通常の授業を受けられないケースがある。このため、養護教諭のいる保健室とは別にカウンセラーのいる部屋を別途設けている。
・  また、中1ギャップは大きな問題で、そもそも生活のリズムがしっかりできていない生徒がいる。元気のいい、目立つような生徒でも、周囲の生徒からのリアクションに対し自分の行動をコントロールできないケースがあり、この場合は、学校生活などに関しメンタルな面での指導が必要となってくる。クラス担任、学年主任、教頭が、情報共有し、生活のリズムを整えさせ、心身ともに成長させるわけだが、その際には保護者とも情報を共有させなければならない。そうなると家庭の状況にまで踏み出さざるを得ないが、学校としてずっとその生徒の世話ができるわけではないので、一定の限界がある。

(公立高校との関係について)

・  公立高校との交流の機会は積極的に持ちたいと考えているが、スーパーサイエンスハイスクールの関係の研究授業などやってみると、公立と私立との仕組みの違いを感じる。例えば、部活動の大会は土曜日に設定されることが多い。公立学校は、土曜日は休業日でも私立学校は授業があることもある。生徒を公欠扱いで大会に出場させなければならない。
・  入学試験についても、市川学園は従来から試験日を特定の日にして入試を行っているが、公立学校は年度によって代わる。せっかくそれまで蓄積してきた事実に基づく生徒の動向予測が成り立たなくなってくる。

(教職員の資質向上について)

・  私立学校は、採用した教員をずっとその学校で雇用するわけで、教員がそのまま学校の顔になる。そういった意味で教員の資質向上は学校の死活問題である。定年が公立よりも遅いのでその点は教員にとっては魅力だと思うが、必ずしもすぐには専任教員として採用できないこともあり、その間に、他校に引き抜かれることもある。教員の研修は必要で、自己研鑽に励む教員を支援するための基金も設けているが、教員自身も忙しくてなかなか自己研鑽の機会を作れないでいることが課題。・  教員養成学部の卒業生の資質が、授業を直ちにするという資質には欠けるところが多く、教科力はもちろん、授業力、担任力をどう培っていくかが大きな課題となっている。

(キャリア教育について)

・  「キャリア教育」といっても時代の要請で求められるものが異なる。自主的に課題を解決していく力や国際感覚を育むことが必要だと考えるが、教員自身が国際的に活躍した経験がないので、なかなかそれをイメージできない。自分は東芝のダイナブックを担当していたので、原材料、生産ライン、各部品などそれぞれ違う国で調達しており、海外の担当者と打ち合わせをするのが当然のことだったが、教員はそういう経験を積んだことがない。最近は保護者の意識も高く、「どのような社会人を育てたいというイメージを持っているのか。」という質問を突きつけられることがあるが、教員自身が「キャリア教育」といっても実体験しているわけではないし、経済社会の変化に対する理解力などが不足していることが多く、キャリア教育における指導については課題が多い。

(帰国子女について)

・  帰国子女やインターナショナルスクールを卒業した生徒が増えているが、英語はできても他の教科ができないこともある。そうした生徒への対応が課題。

(私学助成について)

・  地方自治体からの私立学校への助成金などの支援について、地方自治体によっては減少する場合が出てきた。

(以上)

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成22年12月 --