中高一貫教育制度の導入に係る学校教育法等の一部改正について(通知)

文初高第475号
平成10年6月26日
各都道府県教育委員会
各都道府県知事
附属学校を置く各国立大学長
国立久里浜養護学校長
殿
  文部省初等中等教育局長
    辻村哲夫
  文部省教育助成局長
    御手洗康


   先の第142回国会において「学校教育法等の一部を改正する法律」(以下「改正法」という。) が成立し、別添1のとおり、平成10年6月12日付けをもって、法律第101号として公布され、 平成11年4月1日から施行されることとなりました。
   今回の改正は、中等教育の多様化を一層推進し、生徒の個性をより重視した教育を実現するため、 現行の義務教育制度を前提としつつ、中学校と高等学校の制度に加えて、中高一貫教育制度を選択的に 導入することとし、学校教育法上、新たな学校種として中等教育学校を創設するとともに、 同一の設置者が設置する中学校及び高等学校において中高一貫教育を行う制度を設けるものであります。
   また、併せて中高一貫教育に係る行財政措置として、中高一貫教育を実施する公立学校に 関する教職員定数の算定並びに教職員給与費及び施設費に係る国庫負担等については、現行の中学校及び 高等学校と同様の措置を講ずることとしております。
   我が国の中等教育については、これまでも、生徒の能力・適性、興味・関心等の多様化に対応して、 現行の学校制度の下において、総合学科や単位制高等学校など新しいタイプの高等学校の設置、 選択幅の広い教育課程の編成を行う等さまざまな取組みが進められてきているところであります。
   しかし、生徒一人一人がそれぞれの個性や創造性を伸ばし、我が国が活力ある社会として発展していくためには、学校制度について、生徒一人一人の能力・適性、興味・関心、進路希望等に応じた多様で柔軟なものとしていく必要があります。今回の改正は、このような観点に立って行われたものであります。
   その概要は下記のとおりですので、十分にご了知の上、事務処理上遺漏のないようにお願いします。
   また、本改正法については、衆議院文教委員会及び参議院文教・科学委員会において、中高一貫校がいわゆる「受験エリート校」化することがあってはならないことや、受験競争の低年齢化を招くことのないよう、公立学校の場合には入学者の決定に当たって学力試験は行わないことなどについて、別添2の附帯決議が付されています。中高一貫教育の導入等について検討されるに当たっては、これらの点に十分留意され、中高一貫教育制度がその趣旨に沿って導入されるよう配慮願います。
   各都道府県教育委員会及び都道府県知事におかれては、管下の市町村教育委員会、学校、学校法人等に対してもその周知徹底を図るようお願いします。
   なお、関係政令及び省令の改正については、追ってこれを行い、別途通知する予定ですので、予めご承知おき下さい。
   また、今回の改正によるものではありませんが、市町村立中学校と都道府県立高等学校の連携による中高一貫教育についても、その具体的実施方法等を検討の上、別途通知する予定ですので、予めご承知おき下さい。


1   学校教育法の一部改正(改正法第1条)
(1) 中等教育学校の創設(第1条)
   我が国における学校の種類として、新たに中等教育学校を設けることとしたこと。
   なお、本条に規定されることにより、他の学校種と同様、設置者(第2条)、 設置基準(第3条)、設置廃止等の認可(第4条)、学校の管理及び経費の負担(第5条)、 授業料の徴収(第6条)、校長及び教員の配置並びにその資格(第7条、第8条及び第9条)、 生徒等の懲戒(第11条)、学校閉鎖命令(第13条)、名称使用制限(第83条の2)に係る規定等の 適用があることとなること。
(2) 中等教育学校の設置等に係る認可等(第4条)
   中等教育学校の後期課程の全日制の課程、定時制の課程及び通信制の課程の設置廃止等について、 高等学校と同様に、監督庁の認可事項としたこと。
(3) 中等教育学校の前期課程における授業料の徴収(第6条)
   国立又は公立の中等教育学校の前期課程における義務教育について、 中学校等と同様に、授業料を徴収することができないものとしたこと。
(4) 就学義務(第39条第1項)
   保護者がその子女を中等教育学校の前期課程に就学させることを、 就学義務の履行として位置付けることとしたこと。
(5) 高等学校入学資格(第47条)
   中等教育学校の前期課程を修了した者は、中学校を卒業した者等と同様に、 高等学校への入学資格を有するものとしたこと。
(6) 高等学校専攻科の入学資格(第48条第2項)
   中等教育学校を卒業した者は、高等学校を卒業した者等と同様に、 高等学校の専攻科への入学資格を有するものとしたこと。
(7) 中等教育学校の目的(第51条の2)
   中等教育学校は、小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、 中等普通教育並びに高等普通教育及び専門教育を一貫して施すことを目的とすること。
   なお、「中等普通教育」は中学校の目的と同一であり、 「高等普通教育及び専門教育」は高等学校の目的と同一であるが、中等教育学校においては、 この両者を「一貫して施す」ことを目的とするものであること。
(8) 中等教育学校の目標(第51条の3)
   中等教育学校が「中等普通教育」に引き続いて「高等普通教育及び専門教育」 を一貫して施すことを目的としていることから、中等教育学校における教育の目標として、 高等学校教育と同様に、国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を養うこと等を定めたこと。
(9) 中等教育学校の修業年限並びに前期課程及び後期課程の区分(第51条の4及び第51の5)
   中等教育学校の修業年限は6年とし、前期3年の前期課程及び後期3年の 後期課程に区分したこと。これは、前期3年が中学校と同様の教育段階であり、 後期3年が高等学校と同様の教育段階であることによるものであること。    なお、後期課程に定時制の課程又は通信制の課程を置く場合については、 第51条の9第2項の規定により、当該定時制の課程又は通信制の課程に係る後期課程の 修業年限は3年以上、中等教育学校の修業年限は6年以上となるものであること。
(10) 前期課程及び後期課程の目的及び目標(第51条の6)
   中等教育学校の前期課程においては、中等普通教育を施すことを目的として、 中学校における教育と同一の目標の達成に努め、後期課程においては、 高等普通教育及び専門教育を施すことを目的として、中等教育学校における教育の目標の達成に 努めなければならないものとしたこと。    なお、これは中等教育学校の目的のどの部分を前期課程又は後期課程の いずれにおいて実現するのかを明らかにするものであること。
(11) 中等教育学校の教科及び学科(第51条の7)
   中等教育学校の前期課程の教科並びに後期課程の学科及び教科に関する事項は、 中等教育学校の目的・目標並びに前期課程及び後期課程のそれぞれの目的・目標に従い、 監督庁が定めるものとしたこと。なお、前期課程又は後期課程における教科については、 基本的にそれぞれ中学校又は高等学校に準じ、後期課程における学科については高等学校に 準じることとなるよう学校教育法施行規則等において規定する予定であること。
(12) 中等教育学校の教職員(第51条の8)
   中等教育学校には、校長、教頭、教諭、養護教諭及び事務職員を 置かなければならないものとし、そのほか、実習助手、技術職員その他必要な職員を 置くことができるものとするとともに、特別の事情のあるときは、教諭に代えて助教諭又は講師を、 養護教諭に代えて養護助教諭を置くことができるものとしたこと。
   なお、第51条の9第1項の規定により、校長、教頭、教諭、養護教諭、事務職員、 助教諭、講師及び養護助教諭の職務については学校教育法第28条第3項から第11項までの規定を準用し、 実習助手及び技術職員の職務については同法第50条第3項及び第5項の規定を準用することとしたこと。
(13) 準用規定等(第51条の9)
   「教科用図書の使用義務」、「校長・教頭・教諭等の職務」、「私立学校の所管」、 「入学・退学・転学その他必要な事項について監督庁が定めること」及び「実習助手及び技術職員の職務」に 関する現行の学校教育法上の諸規定を中等教育学校に準用することとしたこと。 なお、中等教育学校の入学、退学、転学等については、学校教育法施行規則において定める予定であること。    また、「定時制の課程・通信制の課程の設置等」、「技能教育施設との連携」、 「専攻科・別科の設置等」、「二人以上の教頭の配置」に関する現行の学校教育法上の高等学校についての 諸規定を中等教育学校の後期課程に準用することとしたこと。(同条第1項関係)    また、後期課程に定時制の課程又は通信制の課程を置く中等教育学校について、 高等学校と同様に、当該定時制の課程又は通信制の課程に係る後期課程の修業年限を3年以上とするとともに、 中等教育学校の修業年限を6年以上としたこと。(同条第2項関係)
(14) 同一の設置者が設置する中学校及び高等学校における中高一貫教育(第51条の10)
   同一の設置者が併設する中学校及び高等学校 (以下「併設型の中学校・高等学校」という。)においては、それぞれが独立した学校でありながらも、 監督庁が定めるところにより、中等教育学校に準じて、中学校教育と高等学校教育を一貫して 施すことができることとしたこと。
   なお、この場合の「同一の設置者」とは、国立の場合は国、 公立の場合は同一の地方公共団体、私立の場合は同一の学校法人であり、監督庁の定めとしては、 教育課程の編成や併設型中学校及び併設型高等学校への入学等について、 学校教育法施行規則において定める予定であること。
(15) 中等教育学校卒業者の大学入学資格(第56条)
   中等教育学校の卒業者について、高等学校の卒業者等と同様に、 大学への入学資格を有するものとしたこと。
(16) 監督庁(第106条関係)
   通信制の課程に関し必要な事項、専攻科への入学資格、 入学・退学・転学その他必要な事項、前期課程の教科及び後期課程の学科・教科に関する事項、 併設型の中学校・高等学校における一貫教育についての必要事項について定める監督庁を、 当分の間、文部大臣としたこと。(同条第1項関係)
   また、設置廃止等の認可、設備・授業等の変更命令を行う監督庁を、 公立の中等教育学校について、当分の間、都道府県の教育委員会としたこと。(同条第2項関係)
(17) その他の事項(第75条、第82条の3、第89条、第90条、第91条、第92条、第103条、第107条関係)
   中等教育学校における特殊学級の設置、専修学校における教育の対象、 学校閉鎖命令違反等についての罰金額の引き上げ、特別の事情がある場合の養護教諭の 必置義務の免除、検定済等教科用図書以外の教科用図書の使用について所要の改正を行つたこと。

2   公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部改正(改正法第2条)
   公立の中等教育学校の前期課程に係る学級編制及び教職員定数の標準は、 現行の中学校と同等の標準としたこと。(第3条及び第6条関係等)
   また、当該前期課程の学級編制を市町村教育委員会が行うに当たっては、 現行の市町村立中学校と同様に、都道府県教育委員会の認可を受ける必要があるとしたこと。(第5条関係)
   なお、併設型の公立の中学校は、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の 標準に関する法律の各規程中の「中学校」に含まれるものであること。

3   公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律の一部改正(改正法第3条)
   都道府県は、公立の高等学校の配置及び規模の適正化に努めるに当たり、 その区域内の私立の高等学校並びに公立及び私立の中等教育学校の配置状況を充分に 考慮しなければならないとしたこと。(第4条関係)
   公立の中等教育学校の後期課程に係る学級編制及び教職員定数の標準は、 現行の高等学校と同等の標準としたこと。ただし、中等教育学校の校長に係る定数は、 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律によってのみ 措置することとしたこと。また、養護教諭等について公立高等学校の設置、 適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律によって措置される定数は、 前期課程と後期課程とを合わせて30学級以上の中等教育学校(前期課程のみで30学級以上の学校を除く。) 及び定時制の課程を置く中等教育学校に係る定数のみとしたこと。(第6条及び第7条関係等)
   なお、公立の中等教育学校は、都道府県又は市町村が (市町村にあってはその規模能力に応じて)設置するものであること。 公立の中等教育学校の適正規模は、各設置者において適切に判断するものであること。
   また、併設型の公立の高等学校は、公立高等学校の設置、 適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律の各規定中の「高等学校」に含まれるものであること。

4   市町村立学校職員給与負担法の一部改正(改正法第4条)
   市町村立の中等教育学校の前期課程に係る教職員及び後期課程に 置かれる定時制の課程に係る教員の給料その他の給与等 (中等教育学校の校長に係る定時制通信教育手当を含む。)について、 都道府県の負担としたこと。(第1条及び第2条関係)
   なお、併設型の公立の中学校又は高等学校は、 市町村立学校職員給与負担法の各規定中の「中学校」又は「高等学校」に含まれるものであること。

5   義務教育費国庫負担法の一部改正(改正法第5条)
   併設型の都道府県立の中学校並びに都道府県立及び市町村立の中等教育学校の 前期課程に係る教職員給与費等を国庫負担の対象としたこと。(第2条関係)
   なお、併設型の市町村立の中学校は、義務教育費国庫負担法第2条の 規定(改正後の同条第2号の規定を除く。)中の「中学校」に含まれるものであること。

6   義務教育諸学校施設費国庫負担法の一部改正(改正法第6条)
   併設型の公立の中学校及び中等教育学校の前期課程の建物 (校舎、屋内運動場及び寄宿舎)の新築若しくは増築又は改築に要する経費を国庫負担の対象に加えたこと。 (第3条関係)
   また、中等教育学校等の建物の工事費の算定方法について、 学級数又は生徒数の算定日を、設置年度又は第1学年の学級数を増加する年度の翌々年度の5月1日とするとともに、 新築又は増築の工事を設置年度又は第1学年を増加する年度の前々年度から行えるよう規定を設けたこと。(第5条の2関係)

7   公立高等学校危険建物改築促進臨時措置法の一部改正(改正法第7条)
   危険建物の改築に要する経費についての国庫補助の対象を 公立の高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)の定時制の課程及び通信制の課程並びに 盲学校及び聾学校の高等部としたこと。(第2条関係)
   なお、併設型の公立の高等学校の定時制の課程及び通信制の課程は、 公立高等学校危険建物改築促進臨時措置法の各規定中の「高等学校」に含まれるものであること。

8   地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正(改正法第8条)
   都道府県の教育委員会は、市(指定都市を除く。以下同じ。)町村の 設置する中等教育学校(後期課捏に定時制の課程のみを置くものを除く。)の県費負担教職員の任免、 給与の決定、休職及び懲戒に関する事務を当該市町村の教育委員会に委任するとともに、 当該県費負担教職員の研修は、当該市町村の教育委員会が行うものとすること。 (第61条第1項及び第2項関係)

9   教育職員免許法の一部改正(改正法第9条)
   中等教育学校の教員については、中学校の教員の免許状及び高等学校の 教員の免許状を有する者でなければならないものとしたこと。(第3条関係)
   ただし、中学校の教諭の免許状又は高等学校の教諭の免許状を有する者は、 当分の間、それぞれ中等教育学校の前期課程又は後期課程の教科の教授等を担任する 教諭又は講師となることができるものとしたこと。(附則第20項関係)

10   改正法附則関係
(1) 施行期日(改正法附則第1条)
   中高一貫教育制度の導入に係る改正規定については、 平成11年4月1日から施行するものとしたこと。したがって、中等教育学校の設置及び併設型の 中学校・高等学校における中高一貫教育の実施については、 平成11年4月1日以降可能となるものであること。
(2) 中等教育学校の設置のための手続き等(改正法附則第2条)
   中等教育学校の設置のための手続き等(改正法附則第2条) 中等教育学校の設置のため必要な手続その他の行為は、この法律の施行前においても 行うことができることとしたこと。したがって、公立又は私立の中等教育学校の 設置認可の申請及び認可、公立の中等教育学校の設置のための条例制定等の準備行為は、 施行前においても行うことができるものであること。
   なお、中等教育学校の設置認可等の手続き等については、 法律に定めるもののほか、学校教育法施行令、同施行規則等において定める予定であること。
(3) 文部省設置法の一部改正(改正法附則第18条)
   中等教育学校における教育に係る事務を文部省の事務に 位置付ける等の所要の規定の整備を行ったこと。
(4) 国立学校設置法の一部改正(改正法附則第19条)
   国立大学若しくは国立大学の学部又は国立短期大学に 附属して設置する国立学校の種類に中等教育学校を加えることとしたこと。
(5) 私立学校法の一部改正(改正法附則第21条)
   私立の中等教育学校の後期課程の学科、全日制の課程等の設置廃止等について、 私立高等学校と同様に、所管庁の認可によらしめることとしたこと等。(第5条関係)
   また、各都道府県に置かれる私立学校審議会の委員区分に私立の 中等教育学校の校長又は教員等を加えることとしたこと。(第10条関係)
   私立の中等教育学校の後期課程に広域の通信制課程を置く場合、 これを寄附行為において定めるべきこととしたこと。(第30条関係)
   その他所要の規定の整備を行ったこと。(第64条関係)
(6) 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の一部改正(改正法附則第37条)
   中等教育学校の前期課程の生徒を教科用図書の無償給付の対象としたこと。 (第2条関係)
   また、公立の中等教育学校の前期課程及び併設型の公立の中学校において 使用する教科用図書については、市町村又は都道府県の教育委員会が学校ごとに これを採択するものとしたこと。(第13条、第15条及び第16条関係)
(7) その他の関係法律の一部改正(改正法附則第4条から第17条、第20条、第22条から第36条、第38条から第60条関係)
   新たな学校種として中等教育学校を設けることに伴い、 関係法律について必要な規定の整備を行ったこと。


(参考)
衆議院文教委員会、参議院文教・科学委員会に関する附帯決議については省略

-- 登録:平成21年以前 --