少人数教育の実現

教職員等の指導体制の在り方に関する懇談会(第1回)議事概要

1.日時

 平成27年7月10日(金曜日)10時~12時30分

2.場所

 文部科学省旧文部省庁舎2階第2会議室

3.議題

(1)教職員等の指導体制の在り方についての論点
(2)小学校英語教育における指導体制の在り方について
 -山形県教育委員会、山形市教育委員会、山形市立南小学校からのヒアリング-
(3)自由討議
(4)その他

4.出席者

委員

 貝ノ瀬主査、青木委員、川上委員、貞広委員、苫野委員、藤原委員

文部科学省

 小松初等中等教育局長、中岡大臣官房審議官、池田財務課長、丸山財務課地方財政室長、粟井財務課教職員配置計画専門官、南財務課課長補佐、桐生財務課課長補佐

5.議事要旨

(1)事務局からの挨拶及び出席委員からの自己紹介の後、本懇談会の論点について事務局より説明が行われた。

(2)小学校英語教育における指導体制の在り方に関して、山形市立南小学校の取組状況についての紹介の後、質疑応答が行われた。

【委員】

  • ご発表いただいた取組の英語専科教員は、学校内の校務分掌で何を担当しているのか。

【ヒアリング対象者】

  • 教務部に属している。体育的行事や学芸的行事は担わなければならないが、英語教育の推進に専念している。

【委員】

  • 英語教育のカリキュラムは、専科教員が加配される前にできていたのか。専科教員は、どのように教える内容やカリキュラムを考えているのか。今後、評価や評定の在り方について、どのように考えているか。

【ヒアリング対象者】

  • 「Hi, Friends!」に基づいたカリキュラムを作っている。今後は国際理解を進めるような科目を構築していきたいと考えている。

【委員】

  • 英語の授業は専科教員と担任がティーム・ティーチングで一緒に行うことがあるのか。

【ヒアリング対象者】

  • 英語の授業は週に1回であり、これまで6~7時間の指導があった。そのうち、3回程度は専科教員と担任のティーム・ティーチング、残りの4回程度は専科教員のみによる指導を行っている。担任に力をつけてもらいたいという校長の願いから、担任にもティーム・ティーチングに入ってもらっている。専科教員が体調不良によって休んだ場合には、代わりに担任が授業を行わなければならない。専科指導に頼りきっていては学校の運営は成り立たない。担任もティーム・ティーチングを通じて勉強してほしい。

【委員】

  • 専科教員が一人ということだが、専科教員から負担感について聞いていないか。

【ヒアリング対象者】

  • 現在は5年生4学級、6年生3学級の担当であり、負担感はないと思う。専科教員も多くの学級を受け持つことでよりスキルアップすることができる。5年生と6年生を両方担当することで、発展的、系統的な学習が可能になるのも専科指導の良いところである。

【委員】

  • 小学校で教員を配置するにあたっては、学級担任をさせたいという思いと専科教員として専門教科を担当させたいという思いで葛藤が生じると思うが、どのような考え方で専科教員を配置しているのか。

【ヒアリング対象者】

  • 学校に配置された教員について、学級担任とするか専科教員とするかは、校長が決めている。
  • 南小学校のように、力量のある教員が専科指導を担っているケースはまだ少ないと感じている。

【委員】

  • 専科指導におけるカリキュラム開発上のメリットは、英語以外の他教科にも当てはまるのか。専科指導は専門性が求められる高学年において重要な方法であるとお考えか。

【ヒアリング対象者】

  • カリキュラム開発上、理科においては、機材整備や実験準備、備品の整理等、専科指導の有効性は大きい。音楽も専門性が必要とされており、吹奏楽や器楽、声楽等、優れた技能がないと授業の対応が難しいため、専科教員に助けてもらった。
  • 一方で、高学年を受け持ちたいという女性の教員が減ってきていることが課題であると感じている。5年生や6年生になると、英語の授業や修学旅行、児童会総会、更には対外的なスポーツ活動があり、教員の負担になっている。英語の専科指導は高学年の教員の一つの救いになると考えている。

【委員】

  • グローバル化に対応した小学校の英語教育を考えるにあたり、中学校との連携や児童生徒が英語を実際に使用するための工夫、ICTの活用を含め、学習指導要領改訂に伴い、小学校の教員の仕事は将来的にどのように増えていくと予想しているか。

【ヒアリング対象者】

  • 英語の教科化が進展するにあたり、小中の接続及び中高の接続が喫緊の課題である。山形市の小学校教員の平均年齢は48歳。多くの教員が教職に就いたとき、外国語活動も英語の授業もなかった。免許更新等で研修の機会はあるが、自分で力量を高めたくても高められない状況で、新しい教科を担っていくのは難しい。
  • 山形県では、今年度から小中高連携を模索している。一中学校区の小学校を4校指定し、そこで小中連携を行う。中高連携については、小中連携を経験した生徒が高校に進学することを受けて充実を目指す。いずれにも共通している必要感は外部発信という統一目標にある。
  • 配付資料4-2で鶴岡市の事例を記載しているが、鶴岡市には大学があり、そこでは食文化としての国際発信を行い、学校種間連携の在り方を考えている。事業が始まって間もないが、中学校教員と小学校教員が相互に交流し、教材開発を模索しているところである。

【委員】

  • 英語の専科教員はどのような基準で配置されているのか。また、配置に係る費用は国、県、市のどこが負担しているのか。

【ヒアリング対象者】

  • 高学年については、中規模程度以上の学校に配置することを基準とし、学校からの要望を取りまとめた上で専科教員の配置をしている。この専科教員の配置は国の加配定数によるものである。

【委員】

  • この英語専科教員は、既に所属校に勤務している教員を指名するのが一般的なのか。それとも新たに専科指導のための教員が着任することになるのか。

【ヒアリング対象者】

  • 小中高一貫のカリキュラム開発で国の研究指定を受けている小国高校において、教務主任の教員を加配定数で配置し、カリキュラム開発を行った実績がある。今年度から南小学校では、加配措置により英語専科教員を配置しているが、県内の実績はこの2校のみ。

【ヒアリング対象者】

  • 既に在籍している教員の中から英語専科教員として校長が指名する。

【委員】

  • 学級担任が専科教員とのティーム・ティーチングに意欲的に取り組み、英語の指導力を高めているという発表だったが、将来的には学級担任も専科教員と同じような研修を受けつつ学んでいけば、専科教員ではなくても、学級担任が英語の教科を担うという見通しは立ちそうか。

【ヒアリング対象者】

  • 学級担任が専科教員と同じように通算10日間も学校を不在にする研修を受けることは難しい。ただし、大学を卒業した教員であれば、学級担任であっても、ティーム・ティーチングや研修を経て英語の教科指導を担う力を身につけることはある程度可能ではないかと考えている。

【委員】

  • 4年生以下はALTの参加による外国語活動を行っているが、専科教員による授業と比較すると、児童の受け止め方はどのように異なるか。

【ヒアリング対象者】

  • ALTが参加する授業も児童にとっては大変楽しいものである。ALTはネイティブ・スピーカーとして、児童に英語での会話の経験を積ませる上で重要な役割を果たしているが、日本語を理解できる英語専科教員には、児童も不安なく質問ができるため、専科教員の指導には定評がある。これは大変良いことだと思う。

(3)事務局より教職員定数改善の経緯に関する補足説明を行った後、以下自由討議。

【委員】

  • これまでの教職員定数改善の議論は、常にSmall is beautifulであった。学級規模を小さくすることが良いことであるということに留まり、それ以上に議論は進まなかったが、今の学校の姿は、必ずしも学級規模を小さくすれば良いというものはないように思う。教育の現場のニーズ、もしくは安定的な基礎定数の確保のどちらに軸を置くのかによって判断が異なる。
  • 全国一律に35人学級を目指すのは現実的ではなく、地域差があると思う。
  • アクティブ・ラーニングは矛盾を抱えた学びの在り方だと思う。例えば、アクティブに考えるとなると、多様な意見がなければならず、子供の数が増えれば良いということになる。しかし、主体的に関わるためには、小さなグループでなければいけない。大きいものと小さいものがなければならないという自ずと矛盾を抱えこんだ学びであると思う。
  • 学級規模を小さくするというよりも、学級規模自体は40人のままで、そのなかでグループを作って、ティーム・ティーチングを実施するという形が考えられる。今までの専科指導はあくまでも教科の専科指導だったが、ティーム・ティーチングの専科教員を配置し、通常のクラスで小さなサイズと大きなサイズを機動的に組み合わせながら学ぶという姿もあるのではないか。

【委員】

  • 教職員定数をめぐる状況が厳しい中、地方で少人数学級を目指した場合、非常勤の教員も学級担任として最前線に送り込むという現象が起きる。理念として少人数学級が良いというのは否定しないが、様々な条件が重なっている現在では、学級規模の縮小により教職員の負担が増したり、学校運営上の支障が生じたりする。この点については、会議をまとめる際に慎重に考慮すべきだが、このような逆機能が起こりうることには留意したい。

【委員】

  • アクティブ・ラーニングは重要な教育方法であると思う。しかし、一斉指導も同じく重要である。従って、機動的に学習集団を縮小できる方が良い。
  • 学級編制を機械的に全国一律にするという発想が、全国に破綻を引き起きすことは容易に推測できる。力のある教員は50人学級でも良い指導ができるし、力のない教員は10人の学級でも崩壊を起こす。これが現場の実感である。極端な例だが、全国一律の学級編制の標準の引き下げが教育の質の向上に寄与するという保障はない。

【委員】

  • アクティブ・ラーニングについては、学びの個別化・共同化・プロジェクト化の融合という捉え方が適切であると考えている。一人一人学び方も進度も興味関心も異なるため、子供たちを一斉に管理して、同じ進度で同じ内容を教えることには無理がある。カリキュラムや時間割を更に柔軟にして、個別の時間を設け、総合的な時間のようなプロジェクト型の時間を充実させ、共同的に取り組む時間を確保していくことが重要である。これらの融合が今後の学びの在り方として有効だと思う。これは少人数でなければできないものではなく、むしろ異学年との交流等でも実現できる。機動的な加配定数で十分対応できることであると思う。
  • こうした指導を行っている教員に聞くと、一学級あたりの適正人数は30人が最大であるという。個別化し、ブロックアワーを90分にした場合、一人あたり3分で対応し、合計で90分という計算であった。ラディカルな提案であるため、実効性は不明である。

【委員】

  • 山形の事例発表をお聞きして、グローバル化に対応した小学校の英語教育を実現する上では克服すべき高いハードルがあると実感した。国民に向けて改革のためのコストを分かりやすく打ち出す必要がある。
  • 学級担任制を採る小学校の教員が持つ専門性と英語教育の専門性には距離がある。効果のある英語教育を実現する上では、英語教育実施のための定数増が必要である。また、学校間連携や地域連携、ICT整備等の業務が増加することを考えれば、学校運営を担う事務職員やICT専門員等の事務体制の整備も必要である。
  • 小学校で採用されている学級担任制を今後とも維持するかどうかという検討が必要である。子供は多様化しており、一人の担任が全ての子供の教育に責任を持つという体制は限界が来ているのではないか。多くの教職員が子供に関わることがいじめや不登校の防止等にもつながるのではないか。英語教育はそうした教科担任制への移行の第一歩として考えられないか。

【委員】

  • 小さい級規模が良いのであれば、山間地・離島から苦情は出てこないはず。学級規模の問題でないから要望が出てくるのであり、学級規模が小さければ良いというわけではない。
  • これまでの専科教員の充て方をみると、本来意図した充て方にはなっていない傾向がある。課題に応じて教員を配置したにもかかわらず、想定したほど学校現場が改善しないということになりかねないため、加配定数への教員の充て方に関して、踏み込んだ議論をする方が良いのではないか。

【委員】

  • 山形の事例発表から引き出せる知見はいくつかある。社会からの英語教育のニーズが教育政策上の課題となったときに、専科教員を加配措置するという一つの対応事例が示された。新しい教育活動が必要となったとき、66万人の教員が等しく指導方法を習熟しなければならないというのは現実的でない。大規模校であれば、山形の事例のように専科教員以外の教職員への波及効果もあり、教員の充て方として有効であると思う。
  • 勤務実態調査の手法を用いて考えると、英語専科教員が加配措置されない学校の場合は教員が英語の授業準備で一日平均1時間かけているところを、同規模の学校で英語専科教員がいる学校では専科教員以外は30分で済むということが仮説として予測できる。一人の教員が英語教育に集中的に携わることで、他の教員がその教員からの果実を得るという形になるといえるのではないか。トリクルダウン説である。
  • 恒常的なニーズという意味では、初任研等の加配定数とは区別すべきだと思う。新しい教育活動を学校に求める場合の時限的な措置として、加配定数というスキームを新たに位置づけ直せるのではないか。
  • もう一点強調したいのは、国庫負担金制度等は非常に頑健性があり、だからこそ必要であるということである。県と市の公務員の人数の減り方を調べると、県の教育部門だけが人数が減っていない。これは見方を変えると、市の教育部門が減った分を県費負担教職員が肩代わりしているとみることができる。こうしたコアな制度は堅持していくべきである。

【委員】

  • 学校の教職員の中には学級担任ができる教員が一番良いという文化がある。加配教員が何らかの専門性を持って機動力のある教員として勤務することは学校にとって魅力的だが、優秀な教員こそが専科指導を担うべきと認識してもらうためのしかけが必要であると思う。
  • 教職員の職能開発に関して、積極的に自ら変革し続ける人とそうではない人を決定づける大きなものは、自分の得意分野を持ち、それを認識していることである。学級担任もそれに応じた専門性が必要だが、個別教科の専門性を持って職能開発をしようとする教員の在り方も考えていかなければならない。専門性のある先生に応えるような待遇の在り方も考えなければならない。

【委員】

  • 全国には約70万人の教員がいる。世界的に見ると日本の教員のレベルは相当高いが、力量に差があるのは事実。どの教員に専科指導を担ってもらうか、どの学年の担任をしてもらうかは校長の権限。校長がどの程度の認識を持っているかにかかっている。
  • 教科としての英語については、教育再生実行会議でも強く打ち出され、国家戦略として英語の重要性が位置づけられた。
  • かつて教育長をしていたとき、英語活動を小1から行っていたが、英語活動を行うときにはALTに全クラスに入ってもらい、学級担任とティーム・ティーチングをしていた。ALTがいなくても、学級担任が英語活動くらいは担当できるようになってほしいという期待を込めて、夏休み中に3日間程度、近隣の大学と連携して教員研修を行ったが、一年経ったら学んだことを忘れてしまう。専科教員を配置せずに、全教員に等しく英語を担当させることは難しい。教育再生実行会議では専科指導については打ち出していないが、文科省の中では現実的に対応が考えられるようになってきたと思う。

【委員】

  • 英語に習熟していない教員は付け焼き刃的な面がみられる。現在は動画教材を含め、良い教材がたくさんある。同じ進度、同じ教材で授業を行う必要はなく、学び合いが起こるような形で学び方を個別化、共同化すべきである。加配定数によって学びの環境作りを行うことがその手段の一つ。日本の学校には、子供たちが自由に手に取って使える教材や遊ぶように学べる教材が少ない。子供たちが自由に学びを楽しめるような授業作りが必要だと思う。

【委員】

  • アクティブ・ラーニングやチーム学校が打ち出されるなかで、教職員も学校に変革が必要であると気づき始めている。

【委員】

  • アクティブ・ラーニングについては賛否両論あると思うが、どのようにすればそれが効果的なのかを教員が共有する場を持つことが必要であると思う。これに際しての加配定数は必要であると思う。

【委員】

  • 専門的な人材の配置を、県費負担教職員の枠内に入れることの意義が非常に大きいと感じている。例えば、市区町村単位でALTの雇用の形が大きく異なっており、契約形態によってできる仕事の範囲も大分違いがある。そのために、広域異動する県費負担教職員との連携が実現できないケースが多いので、県費負担教職員の枠づけの中に入れることを考えることは必要であると思う。

【委員】

  • 現状を考えると加配定数をどのように充実させていくのかが大事だと思う。
  • アクティブ・ラーニングについても加配定数のスキームが十分に当てはまると思う。加配定数にはトリクルダウンの効果に加え、副次的には校務全体への波及効果があると思う。山形県の「さんさんプラン」では、加配措置によって校務分掌を引き受ける人が増え、一人当たりの校務分掌が減るため、校務全体に良い結果をもたらすということが分かりつつある。これは学校のマネジメントの観点からも良い効果があると思う。

【委員】

  • 今回の議論で選択肢がいくつか出てきた。英語教育を効果的に実施する上では、定数増が必要であるが、恒久的な措置である基礎定数なのか、それとも時限的な措置である加配定数なのかという選択肢がある。また、英語教育を専門的に行う教員の育成について、採用時は区分せず経験を踏む中で英語教育に専門性を持つ教師になっていくという在り方と入職段階で教科担任という専門性を導入するという選択肢である。中長期的には、英語や理科等、小学校教員の専門性と距離がある教科は専科が担当する体制に近づけることが望ましい。


【委員】

  • 定数措置の効果の見せ方に関連して言及したい。小学校における英語教育の充実は社会的合意が得られやすい。一方、資料2の③特別支援教育に対応する指導体制の在り方、④チーム学校への転換に向けた指導体制の在り方、⑤個別の教育課題に対応する指導体制の在り方等は、特定のニーズがある人は限られるため、合意が得られにくい。
  • また、校務分掌の見直しによる教員の負担軽減も、それだけでは社会的合意は得られにくい。例えば、特別な配慮が必要な子供が落ち着いて勉強することが、クラスの子供たちが落ち着いて勉強することにつながり、教育の質の保障に敷衍していく。または、教員が授業に専念することでクラスの児童が落ち着いて勉強できるようになり、学習効果が高まり、教育の多様性を確保できる。こうした子供の学びまで見通して効果を示していくことが必要ではないか。

(3)事務局より、次回の日程について案内し、閉会。

以上

 

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初等中等教育局財務課

-- 登録:平成27年08月 --