少人数教育の実現

教育再生の実行に向けた教職員等指導体制の在り方等に関する検討会議(第1回)議事概要

1.日時

 平成26年6月4日(水曜日)15時~16時30分

2.場所

 文部科学省東館15階1会議室

3.議題

(1)検討課題の説明
(2)委員からの発表
 -高橋委員からの発表
 -小栁委員からの発表
 -自由討議
(3)長野県信濃町教育委員会からのヒアリング
(4)その他

4.出席者

委員

 貝ノ瀬座長、青木委員、小栁委員、貞広委員、末冨委員、高橋委員、藤原委員

文部科学省

 前川初等中等教育局長、徳久大臣官房総括審議官、義本大臣官房審議官、池田財務課長、安井初等中等教育局企画官、桐生財務課課長補佐、坂本財務課課長補佐、粟井財務課教職員配置計画専門官

5.議事要旨

(1)事務局より挨拶、委員より自己紹介の後、本検討会議における検討課題について事務局より説明が行われた。

(2)高橋委員、小栁委員より発表が行われ、自由討議が行われた。

【高橋委員からの発表】

  • 震災から3年が経つが、現在も非常事態が続いている。こういった中での教職員の指導体制の充実について、大震災の教訓を生かした取組みを紹介する。
     本県の公立小中学校の教職員数は復興加配によって持っている状況。教職員数は少子化に伴い年々減少しており、その傾向は今後も加速すると思われる。
     一方、震災によって家族や同級生を亡くされた児童生徒も多く、当時、小学校で卒業式をできなかった子どもが、現在、高校に入学しているという状況もあるため、これまでとは異なる方法で子どもたちの心のケアを考えないといけない。引き続き支援の継続をお願いしたい。
  • 本県では、大きく5つの取り組みを行っている。
     1つ目は新たな職の配置。本県では、校内での防災教育推進の中心的役割を担う防災主任と、防災主任の中心として地域の拠点校で関係機関等の連携を担う防災担当主幹教諭を配置している。
     防災主任は平成24年度から県内全ての学校に配置し、防災担当主幹教諭は、平成26年度には県内全35市町村で計80校に配置した。成果として、子供の命を守るための教育活動や、防災体制の整備が急速に進展しており、児童生徒や教職員の災害に対する意識が高まり、防災活動への積極的な姿勢が見られるようになった。地震をはじめ様々な自然災害から身を守るための防災教育の充実や地域と一体となって防災に取り組む学校体制の構築が課題である。全国的にも防災主任、防災担当主幹教諭の配置は効果的ではないかと考える。
  • 2つ目は小中一貫校。本県では、他県への流出が続いている沿岸部のみならず、内陸部でも少子化が進んでいる。例えば、県北の栗原市では、平成21年度の児童生徒数は小学校3,731名、中学校1,921名だったのが、平成26年度には小学校3,219名、小学校1,777名と大きく減少した。それに伴い学校数も小学校が31校から15校、中学校が11校から9校と減少した。
     こういった地域からは、子どもたちを地域で育てて将来的に地域の担い手としたいという願いがあり、これを叶えるための手段として小中一貫校を進めたいと考えている。こうした新たな学校スキームのインセンティブになるよう教職員配置の在り方について検討が必要と考えている。
  • 3つ目は新たな学校サポート人材の活用。グロール化、ICTの進展などの社会情勢の急激な変化に伴い、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、ICTサポートスタッフを配置して評価されてきたが、緊急雇用基金のため、継続的な財源が不確かなところが課題である。
  • 4つ目は特別支援教育に対応した体制整備。特別支援学校及び特別支援学級に在籍する児童生徒数が急増している。一方、高等学校にも特別な支援を必要とする生徒が多く在籍しており、障害の程度に応じたきめ細かな指導、支援に対応するための教職員配置が求められている。
  • 5つ目は再任用の問題。教員数が減少している中で、再任用職員の雇用はそれだけ新規採用職員を減らさざるを得ないということになる。若手の確保が問題になるため、それに対応する教職員配置があればありがたい。

【小栁委員からの発表】

  • 深谷市教育委員会では渋沢栄一の心を受け継ぐ教育として、深谷市教育振興基本計画に基づき、「教育課題の解決を図るための人的支援」と「学校の願いに応える人的支援」を行っている。
     「教育課題の解決を図るための人的支援」として、幼・小・中・高へと続くタテの連携と、家庭・地域などのつながりを深めるヨコの連携を図るため、14の職を市費で設置している。
  • タテの連携として、小1プロブレムへの対応のため、学校アシスタントティーチャーを全小学校19校、各校に1名ずつ配置した。これによって学級担任への支援を行うことできめ細かな指導を推進することができ、低学年児童の生活習慣の育成も図ることができる。
     また、中1ギャップに対応するために、教科支援エキスパートを全小学校19校に1名ずつ配置した。深谷市の平成22年度の不登校学年別出現率を見ると、中1で大きくその出現率が上がっている。小学校では学級担任制だが、中学校になると教科担任制となり、そのギャップを乗り越えられない児童に対する支援として、小学校高学年の音楽、家庭科に教科支援エキスパートを設置し、教科担任制の充実を図っている。19校の内訳は、平成26年度では、音楽に16校、家庭科に3校設置している。
  • ヨコの連携として、不登校、児童虐待、保護者対応など学校が抱える様々な問題への解決のため、学校総合支援員を中学校全10校に1名ずつ配置している。学校総合支援員の活動内容は3つあり、1つ目は中1ギャップや虐待防止のため保護者や民生委員と連携する学校運営アドバイス、2つ目は学校の安全・安心を支援するスクールガードアドバイス、3つ目は塾へ行かない中学3年生の学習支援を行う大学生をコーディネートする学習アドバイスである。
  • 深谷市では、虐待についての事例として、毎年30数名の事例を把握している。これに対応するため、市費で3名スクールソーシャルワーカーを配置し、保健センターと連携しながら市内29校の巡回相談をしている。
     学校総合支援員を配置している中学校全10校で行っているのが学習アドバイスで、これは主に塾に通っていない生徒の学力向上のため、平成22年度からステップアップレッスンと名付けて、中学3年生を対象に部活動の終わった9月から2月まで補習を行っている。本来は教員が行うべきものだが、深谷市は非常に部活動が熱心で、教員が部活動を指導するので補習ができないということで、大学生に補習を行ってもらい、学校総合支援員がコーディネートを行っている。実績として、昨年度1,362人の市内の中学3年生のうち、296名が補習に参加し、そのうち121人は塾に通っていない生徒だった。特に外国籍の生徒の保護者からは非常に好評だった。
  • 「学校の願いに応える人的支援」として、教員が授業に専念できるよう、授業エスケープする子供や発達障害のある子供を支援するため学校統合支援員や特別支援補助員を配置し、読書活動の推進を図るために学校図書補助員を配置した。
     また、保護者の要望に対応できるよう外国語指導助手を設置し、英語教育の充実を図った。小学校の教員は全教科を教えるゼネラリストだが、保護者としては、専門性を有するスペシャリストを期待しているというこのギャップを埋めていく必要があると考える。
  • 深谷市教育委員会の取り組みは以上だが、子どもにとっての最大の教育環境は教師であり、その教師が元気でなければ、子どもは元気にならない。教師が元気なるためには時間的余裕が必要であり、教材研究する時間がなければいけない。これが、私の教師としての経験から学び、取り組んできた内容だ。

【委員】

  • 現状でスクールソーシャルワーカーの配置は足りているのか。また、小学校・中学校のどちらに配置をした方がよいのか。

【委員】

  • スクールカウンセラーの予算の中でスクールソーシャルワーカーの配置も行っている。福祉部局と連携するため評判がいいが、配置人数は十分ではない。

【委員】

  • スクールソーシャルワーカーは全校に配置できているのか。

【委員】

  • 宮城県では全校には配置できていない。

【委員】

  • 深谷市では3人配置しているが、週に1回である。うち2人は20代で報酬は22万くらい、もう一人の50代は25万円くらい。通勤費が200円ほどしか出せず申し訳なく思っている。教員は非常に頼りにしており、人数はまだまだ足りていない。

【委員】

  • 貧困世帯の子どもは家庭と福祉機関との連携が重要。例えば不登校の生徒が部活動をきっかけに学校に通うことがあるが、本人はやる気があるが、親が止めているケースがある。こういった生徒は、スクールカウンセラーが窓口になってスクールソーシャルワーカーと連携を行い、さらに家庭との連携を行っている。スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの両方が必要である。
  • スクールソーシャルワーカーを小・中・高のどこに配置するのかは非常に難しい問題だが、急がれるのは中学校への配置と考える。中学校でつまずくと高校への進学が難しくなり、貧困の再生産がなされる。中学校で不登校気味の卒業生の高校での見守りも含めて、中・高での連携を確実に行うためにも、中学校への配置が効果的ではないかと考えている。

【委員】

  • 三鷹市でも、市費で全ての小中学校にスクールカウンセラーを、市教委にスクールソーシャルワーカーを配置している。スクールソーシャルワーカーは自ら動くことができ、フットワークがいいので、そういった意味で評判だ。今までの話で共通していることは、スクールカウンセラーは当然必要だけれども、同様にスクールソーシャルワーカーも必要ということ。
     スクールソーシャルワーカーの待遇はどのようになっているのか。

【委員】

  • 臨床心理士、臨床発達士になってもらっているが、給与は22万で、スクールソーシャルワーカーと言いながらスクールカウンセラーの業務もしてもらっている。先ほど話に出た中・高の連携については、当市では中高連絡協議会を開催し、情報の共有を行っている。

【委員】

  • 三鷹市ではベテランのスクールカウンセラーがスクールソーシャルワーカーを担っている。待遇は非常勤であり、申し訳なく感じている。

(3)長野県信濃町教育委員会からのヒアリング

【長野県信濃町教育委員会からの発表】

  • 本町では5つの小学校を統合し、平成24年に長野県の公立学校初の施設一体型の小中一貫教育校を開設した。経緯としては、児童生徒数の減少が大きな要因で、昭和60年と比較すると平成22年の小中学校の児童生徒数は41%にまで激減した。また、小学校、中学校ともに校舎が新耐震基準前の建物だったことも大きな要因の一つである。
  • 県費の教員数は、統合前の平成24年度の75名から統合後の平成24年度は51名と24名の減となっている。長野県のホームページにある教職員の平均給与から計算すると、約1億円を超える削減と思われる。
     他県の状況はわかりませんが、長野県では1年生から9年生まで1クラス35人を基準とした学級数で教員の配置をしていただいている。
  • 町費の職員数は、平成23年度の29名から平成25年度の26名と3名の減である。町費職員の人件費は、平成23年度7,060万円、そのうち過疎債が730万円、平成25年度見込みで8,400万円、そのうち過疎債が2,000万円となっており、当町は予算規模50億円の小さい町だが、そのうち8,400万円を教職員の人件費に充てている。
  • 小学校の学級数は、平成23年度が29学級だったが、平成24年度は15学級、平成25年度は16学級であり、この規模で今後も推移していくだろうと想定している。
  • 交付税算定基礎数値については、平成23年度は1億4,300万円、平成24年度は1億5,300万円であり、増額理由はスクールバスの台数増によるためである。平成25年度は1億5,100万円、平成29年度には9,800万円と大きく減少していくと見込まれるが、町費職員の人件費については現状を維持していきたいと考えている。
  • 信濃小中学校の配置状況について説明する。本校ではフルタイムの支援員を多く配置していただいており、小学校1・2年生の各学級に1名の計6名、小学校3・4年生の各学年に1名の計2名、特別支援学級に2名の配置となっている。信濃町では、統合後も支援員の数を減らさない方針であった。
     統合前は、支援員は支援の必要な児童生徒が在籍する学級に配置していたが、統合後は、小学校低学年に配置している。これは、小学校1・2年生の学級作りをしっかりやればその後の学校生活が安定するという考えに因る。学級が崩壊してから支援員を配置しても、状況の改善は非常に難しく、低学年のうちから人を配置することが非常に効果的であると感じている。
  • 本校では小学校4年生以上を高等部と呼んでいるが、国語以外で教科担任制を進めている。専科教員として、本年度は11名、町費で教員を配置しており、その結果、小学校5年生以上の国語以外のすべての教科で教科担任制となっている。また、副担任も5年生以上の全学級に配置できており、複数の教員による学級作りの効果を感じている。
  • 小5ギャップも大きな問題であると感じている。小学校5年生になると急に教科の内容が難しくなるが、小学校の先生は全ての教科に秀でているわけではないため、子どもの興味関心に十分に対応することは難しい。しかし、本校では教科担任制で複数の教員が学級を見ていので、小5ギャップに対応できていると感じている。今年度からは、初等部(1~4年生)で
    30人学級を始め、より個に応じた指導を進めている。
  • 本校の教員の年齢構成だが、20代の教員が66名中21名と非常に多い。20代の21名の教員のうち17名は講師である。非正規の講師が多いということで不安もあったが、若い先生は非常にやる気があって、年配の先生もそれに刺激を受けて熱心に若い先生を教えるため、中堅・ベテランの活性化にもつながって非常によい効果を生んでいる。
  • 諸機関との連携だが、月、火、金にスクールカウンセラーが、水にNPO法人の方が発達障害の支援に、木に長野養護学校の方が教育相談にというように日替わりで毎日、来てもらっている。外部の方が学校に入ってもらうことによって、保護者の方も安心でき、先生も頼りにしており、非常にありがたく感じている。最後に信濃町という土地柄、東京音楽大学の合宿所になるので、プロの教授に指導に来てもらえるという特色がある。

【委員】

  • 学校運営協議会は始めているのか。

【信濃町】

  • 始めている。

【委員】

  • 町費職員の通勤時間と勤続年数、リクルートの方法を教えてほしい。

【信濃町】

  • 若い教員は町の教員住宅に入っており、通勤時間は非常に短い。他の教員は30分から40分以内。勤務年数は町費としては上限が5年間だが、人がどうしても確保できない場合は延長もある。リクルートは長野県の校長会を通して行っているが、本校は新潟県との県境で豪雪地帯のため、講師の確保に非常に苦労している。

【委員】

  • カリキュラムについて、小・中の校種の壁があったと思うが、小・中の連携でキーマンになった人は誰か。また、加配でそういったコーディネートする人材を措置しないと小・中連携は難しいと考えるか。

【信濃町】

  • 理想は加配教員がコーディネートしてくれること。しかし、加配教員は児童生徒の指導が優先される。小・中の校種の壁は私も心配していたが、職員室が1つなので小学校、中学校の先生はよく話し合って連携している。

【委員】

  • 通学、例えばスクールバスの運行で何か支障はあるか。

【信濃町】

  • 児童生徒の乗車時間は遠い子供で50分。通学方法は基本的には公共交通機関である路線バスを利用するが、乗車定員を超える可能性がありそれに乗りきれない児童生徒は直営のスクールバスで通学しており、現在は特に支障はない。

【委員】

  • スクールバスの手配で教頭先生が手一杯という学校があるということも聞いていたので、心配していたところだった。

【委員】

  • 非常勤の若い先生が増えたり、外部の人が学校に多く関わったりするようになったことにより、校長の負担が増えたという実感はあるのか。

【信濃町】

  • やる気を出させることは負担ではなく、やりがいと感じている。本校は、若い教員が多いが、青年教師研修係をつくって20代の教員が中心となって授業を研究したり、学級づくりを学び合ったり、それをベテラン教員が指導するという望ましい関係ができている。

以上

 

お問合せ先

初等中等教育局財務課

-- 登録:平成26年09月 --