平成20年度全国学力・学習状況調査の結果の活用について(通知)

20文科初第690号
平成20年8月29日

各都道府県教育委員会 殿
各指定都市教育委員会 殿
各都道府県知事 殿
附属学校を置く各国立大学法人学長 殿

文部科学省初等中等教育局長
金森 越哉

(印影印刷)

 平成20年度全国学力・学習状況調査の結果(以下「平成20年度調査結果」という。)については,「平成20年度全国学力・学習状況調査の実施について」(平成19年11月14日付け19文科初第865号文部科学事務次官通知)において示した「平成20年度全国学力・学習状況調査に関する実施要領」(以下「実施要領」という。)に基づき,本日,公表するとともに,各教育委員会,学校法人,国立大学法人及び学校(以下「各教育委員会,学校等」という。)に対して提供を行ったところです。
 提供された平成20年度調査結果については,実施要領及び「平成20年度全国学力・学習状況調査の結果の取扱いについて」(平成20年8月22日付け20文科初第654号初等中等教育局長通知)に基づき適切に取り扱うようお願いします。特に,本調査により測定できるのは学力の特定の一部分であることや,学校における教育活動の一側面に過ぎないことなどを踏まえ,序列化や過度な競争につながらないよう十分配慮して取り扱うようお願いします。
 各教育委員会,学校等においては,今後,全国学力・学習状況調査の結果(以下,「調査結果」という。)を十分活用して,自らの教育及び教育施策の成果や課題等を把握・検証し,その改善を図り,児童生徒一人一人の学習状況の改善や学習意欲の向上等につなげるとともに,そのような取組を通じて,教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立することが重要です。
 平成19年度全国学力・学習状況調査の結果については,全国の学校や市町村教育委員会において,積極的に活用に取り組んでいる様子がうかがえます。平成20年度調査結果についても,その活用に一層取り組んでいくことが重要となります。
 ついては,都道府県・指定都市教育委員会においては,下記に示す留意事項を参考にして,調査結果の活用に更に努めるとともに,所管の学校に対して,平成20年度調査結果の適切な活用について指導・助言及び周知を行うようお願いします。
 また,都道府県教育委員会においては,域内の市町村教育委員会(指定都市教育委員会を除く。)に対して,調査結果の適切な活用について指導・助言及び周知を行うようお願いします。
 都道府県知事においては調査に関係する域内の私立学校及びそれを設置する学校法人に対して,国立大学法人学長においては調査に関係する附属学校に対して,平成20年度調査結果の適切な活用について周知をお願いします。
 なお,文部科学省としては,各教育委員会,学校等における,平成20年度調査結果を活用した改善の取組を支援するため,別添に示す取組を行うこととしていますので,併せてお知らせします。

1.児童生徒の学力・学習状況等の分析・検証について

 各教育委員会,学校等においては,平成20年度調査結果を十分活用して自らの教育及び教育施策の成果や課題等を具体的に把握・検証するため,次の視点も参考にしながら,児童生徒の学力・学習状況等について多面的な分析を行うことが重要であること。

(1)教科に関する調査結果の分析・検証について

 児童生徒の学力の状況や課題等を的確に把握・検証するため,1教科ごとの平均正答数,平均正答率,中央値等の数値データによる分析だけではなく,2児童生徒の正答数の分布の形状等から全体的な状況を把握・検証したり,3設問別の調査結果から学習指導要領の領域や評価の観点,問題形式ごとの正答や無解答の状況を分析したり,4解答類型別の結果から個々の設問における誤答や無解答の状況を分析したり,5平成20年度と平成19年度の状況等の経年変化を比較分析したりするなど,それぞれの状況に即し,多面的な分析を行い,指導上の課題等を明らかにすること。

(2)質問紙調査の結果の分析・検証について

 児童生徒及び学校に対する質問紙調査の結果の検証・分析においては,児童生徒の学習意欲・学習環境・生活習慣等,学校の指導方法に関する取組や教育条件の整備の状況等の具体的な状況を把握・検証をすること。また,これらの状況と学力との相関関係等について分析を行ったり,学力や学習状況等の調査結果を組み合わせて各学校等における全体的な特徴を把握・分析したりすることなどにより,教育や教育施策の成果,取り組むべき課題等を明らかにすること。

2.学校における改善に向けた取組の推進について

  • (1)各学校においては,平成20年度調査結果の分析・検証の結果を踏まえ,指導計画等に適切に反映させるなど,教育指導等の改善に向けて計画的に取り組むこと。その際には,調査対象の学年や教科だけではなく,全学年,全教科等を対象として,学校の教育活動全体を見渡した幅広い観点から取り組むべき課題や改善に向けた取組について検討すること。
  • (2)各学校においては,教育指導等の改善に向け,具体的には,次の事項について取り組むことが考えられること。
    • 1 平成20年度調査結果から見られる課題等を踏まえて授業の改善を行ったり,習熟度別指導や少人数指導,発展的な学習,補充的な学習などの個に応じた指導を適切に実施したり,家庭学習の課題を適切に与えるなど,各児童生徒の調査結果を適切に活用しながら,具体的な指導内容や指導方法等の改善に向けた取組を行うこと。特に,課題が見られた児童生徒に対しては,学習状況の改善や学習意欲の向上につなげていくという観点を十分考慮しながら,それぞれの課題に応じて,補充学習等の教育指導を適切に行うことなどにより,基礎的・基本的な学力の定着に努めること。
    • 2 保護者や地域等の理解と協力のもとに十分に連携をとりながら,家庭における学習習慣や生活習慣等の改善に向けた取組を行うこと。
    • 3 平成20年度調査結果において課題の見られた点を中心に,教職員の指導力の向上,指導内容や指導方法等の改善を図るため,校内研修等を適切に実施すること。

3.教育委員会における改善に向けた取組の推進

  • (1)各教育委員会においては,平成20年度調査結果の分析・検証の結果等を踏まえ,それぞれの役割と責任に応じて,改善計画等の新たな作成や必要な見直しを行うことなどにより,域内の教育や教育施策の改善に向けて総合的かつ計画的な取組を進めること。その際,都道府県・指定都市教育委員会においては,「学力調査の結果に基づく検証改善サイクルの確立に向けた実践研究」(平成19年度文部科学省委託事業)において作成した「学校改善支援プラン」を適切に活用することが考えられること。
  • (2)各教育委員会においては,改善計画等に基づき,具体的には,次の事項について取り組むことが考えられること。
    • 1 学校における具体的な改善の計画や取組に対し,学校の状況等に応じて,必要な指導・助言や支援等を行うこと。その際,特に課題が見られる学校における意欲的な改善の取組について配慮すること。
    • 2 指導内容や指導方法等の改善を推進するため,指導資料や教材の作成,教職員研修の実施や授業研究等への支援,教職員や非常勤講師の配置等への配慮など,教育施策の改善に適切に反映させること。
    • 3 優れた取組を行っている学校等の事例や調査結果の検証・分析手法等の周知に努めるなど,域内における教育指導や家庭における学習習慣・生活習慣等の改善に向けた取組を推進すること。

4.教育における検証改善サイクルの確立等

 各教育委員会,学校等においては,上記の取組等を通じて,保護者等への説明責任を適切に果たしつつ,教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立することが求められること。そのため,平成20年度調査結果及びこれを踏まえた改善の取組については,域内全体や学校ごとの教育や教育施策に適切に反映させるとともに,教育委員会や域内の学校の教職員等が情報を適切に共有しながら取り組むことが重要であること。

[お問い合わせ先]

文部科学省初等中等教育局 学力調査室
電話:03-5253-4111(代表)(内線3725)


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