名古屋市教育委員会 基礎・基本を身に付け、自ら学ぶ力を備えたなごやっ子の育成をめざして

はじめに

 本市は,「なごやっ子教育推進計画」に基づき,「基礎・基本を身に付け,自ら学ぶ力を備えたなごやっ子」の育成をめざしている。
 そして,平成19年度全国学力・学習状況調査の結果を受けて検証改善サイクル事業として『保護者用リーフレット』と『学校改善支援プラン(報告書)』を作成した。
 『保護者用リーフレット』では,本市の児童生徒の学習状況と生活実態の概要を小学校版,中学校版に分けてまとめた。
 学習に関しては,教科の学力についてのよい点と課題,学習に対する意識を具体的に文章で示すとともに,家庭への啓発を目的に,家庭での取組例を示した。
 生活に関しては,よい傾向や心配される傾向を示すとともに,基本的生活習慣等の改善について,家庭への啓発を目的に取組例を示した。
 また,『学校改善支援プラン(報告書)』では,全国学力・学習状況調査の本市の児童生徒の学習状況及び生活実態と課題改善のポイントを学校に示した。
 特に,国語と算数・数学の課題について,授業の改善事例を複数記載し,各学校が実態に応じて選択できるようにした。また,生活面での課題に対して小中学校別に改善の視点を示し,各学校が実態に応じて取り組めるようにするとともに,家庭が果たすべき役割も示した。

1.名古屋市教育委員会における取組

1 事業内容について

(1) 事業概要

 平成19年度の全国学力・学習状況調査の結果を受けて,学習面(国語,算数・数学)及び生活面の課題を把握し,その改善に関する取組に意欲的な小学校2校,中学校2校を調査活用協力校に指定し,実践研究に取り組んだ。
 具体的には,調査活用協力校は,平成19年度の全国学力・学習状況調査において学習面及び生活面に関して把握した課題について,平成19年度に名古屋市検証改善委員会が作成した「学校改善支援プラン(報告書)」の授業の改善事例等を活用して,その改善に向けて実践研究に取り組んだ。

(2)実施体制

実施体制

(3)研究成果

 小学校2校,中学校2校の調査活用協力校のそれぞれが,平成19年度の全国学力・学習状況調査において学習面及び生活面に関して把握した課題の中から,ポイントを絞って,平成19年度に名古屋市検証改善委員会が作成した「学校改善支援プラン(報告書)」の事例等を活用して実践研究に取り組み,課題解決への足がかりとすることができた。
 また,市教委は,平成20年度の全国学力・学習状況調査の名古屋市の結果の概要及び新たに把握した課題についての改善事例等をまとめることができた。そして,実践研究の成果と平成20年度の全国学力・学習状況調査の名古屋市の結果の概要等をまとめた「実践報告書」を作成することができた。

2 成果の普及啓発に関する取り組み

 実践研究の成果と平成20年度の全国学力・学習状況調査の名古屋市の結果の概要等をまとめた「実践報告書」を全小・中・特別支援学校に配付して,各学校が課題の改善に取り組む上での支援とした。

2 調査活用協力校における取組事例

相手に分かりやすく話す力を育てる国語科の指導 ‐情報機器の効果的な活用を通して‐ 名古屋市立千成小学校

1 テーマ設定の理由

 平成19年度全国学力・学習状況調査の本校の結果は,国語科においてはおおむね満足できる状況であった。国語A(主として知識)では,書く能力や読む能力が全国平均を上回ったのに対して,国語B(主として活用)では,書く能力や読む能力が全国平均を下回った。知識としての理解はできても活用しきれていない実態が浮き彫りになった。また,話すこと・聞くことの能力は,全国平均を下回っていた。特に,「分かりやすい話し方についての知識や司会者として話し合いの内容を整理したり,進行したりする力」が不十分であることが分かった。
 また,児童質問紙の結果においては,全国の傾向とほぼ同様であった。その中で,家庭における学習時間の差が大きいことは,本校の特色であり課題であると言える。
 以上のことから,本校では,国語科で相手に分かりやすく話す力を育て,その力を国語科以外の学習においても活用できるようにすることをねらいとした。話したり,聞いたりすることによって,児童一人一人が,新しいことに気付いたり,自分の考えを広げたり,深めたりすることが,共に学ぶことに大きな意義があると考えたからである。
 そのために,情報機器を効果的に活用して伝えたいことをはっきりとさせたり,話の組み立てを工夫したりできるようにさせたいと考えた。さらに,必要感や目的意識をもって話したり聞いたりする場面を設定することにした。
 また,家庭学習の習慣も身に付くように,家庭との連携を取りながら学年に応じて具体的な指導をしていくようにしたい。

2 実践の内容

(1) 1年生:「みつけたことをはっぴょうしよう」

絵を映して発表する児童

【聞きたい内容】

  • 大きさや形
  • 場所

【話し方のポイント】

  • 大きい声で話す。
  • はっきりと話す。
  • 聞く人を見て話す。
  • 堂々と話す。

 公園で見つけたことを絵に描いて,実物投影機で大きく映してみんなに伝える学習を行った。
 まず,遊具や虫など見つけたものの中で,何について話すのかを決めて絵に描いた。絵に描くことで話すことを焦点化できたようで,「いつ発表するの?」と話すことを楽しみにする様子が見られた。絵を見せながら発表する前に,どのような内容を話したらよいか,どのように話すとよいかについて考えさせた。聞き手の立場になって考えた意見をもとに,次の点に気をつけて話すことにした。発表の際に,実物投影機で絵を拡大して,見せながら発表できるようにした。発表する児童は,スクリーンを見ながら,自分が特に見せたいところを実物投影機の上で動かしてよく見えるようにしてから話していた。聞き手も,スクリーンを見ながら集中して話を聞くことができた。また,スクリーンに映し出された絵を指さして質問する児童もいた。見付けた場所がよく分かるように発表が終わった児童の絵は,公園の見取り図にはっていった。すると,「もっと右」「もっと上」と場所をさらに詳しく伝えることができ,聞き手も「ああ,そうだったね」と理解を深めることができた。何人かの発表を聞くうちに,「学校の遊具より小さい」「○○の近く」というように大きさや場所を表す表現も工夫できるようになっていった。
 実践後,児童に次の三つの観点で意識調査を行った。

  1. 分かりやすく話すことができたか。
  2. 相手の話の内容が分かったか。
  3. 話したり聞いたりすることが楽しかったか。

実践の内容

 この結果から分かるように,8割以上の児童が実物投影機を使って分かりやすく話すことができたと答えた。これは,絵に描いたことを大きく映して話をさせたことで,何を話すのかという意識がはっきりもてたことが要因と思われる。また,聞き手も視覚的な資料があることで集中して話を聞くことができた。このような結果から,言葉でうまく伝えられない低学年の児童にとって視覚的な資料を使って話すことは,楽しく効果的であると考えられる。

(2) 6年生:「修学旅行の報告会」

 5年生に修学旅行の報告会を行うため,プレゼンテーションソフトを使って資料を作った。修学旅行で撮影した写真やメモをもとにプレゼンテーションシートを7,8枚作成し,順序よく伝えることができるようにした。アニメーションを加えたり,色を変化させたりして,聞き手を楽しませる工夫をすることもできた。発表は,次のような話し方のポイントを確認してから行った。

資料を見せて発表する児童

話し方ポイント

  • 相手の反応を意識して話す。
  • 資料を指し示しながら話す。
  • 話しかけたり問いかけたりする。
  • 大切なことはゆっくり言う。

 5年生からは,盛んに質問が出され,プレゼンテーションシートの画面を戻して,説明している姿も見られた。画面をホワイトボードに映るようにしておいたので,さらに詳しく伝えたいときはマーカーペンで言葉や絵を書き加えて話す姿も見られた。5年生は,内容と話し方について学んだことを,聞き取りメモに書き込んでいくようにした。
 また,5年生は,総合的な学習の時間に,4年生を対象に中津川野外学習の楽しさを伝える報告会を行った。プレゼンテーションシートの内容や話し方について,6年生から学んだことを生かしていくことができた。
 実践後,児童にアンケート調査を行った。その結果,話したり聞いたりすることが楽しいと答えた児童が96%であった。楽しかった理由を書かせたところ,「みんなが資料を見てくれてうなずいてくれたから」「伝え方を工夫したら盛り上がったから」「お互いのことが分かり合えたから」というように,話したり聞いたりしたことに対する満足感がうかがえる内容が多かった。

(3)日常実践「スピーチ」

 各学級で,朝の会でスピーチを行った。5年生では,テーマを決めて毎日,2~3人ずつスピーチを行った。テーマは「もし自分が~だったら」「最近の気になるニュース」「おすすめの本」「家で行っているエコ活動」など一巡するごとに学級で話し合ったり,学習した内容を選んだりして決めた。また,聞き手に話しかけたり問いかけたりして話す工夫をさせたり,同じテーマでスピーチを行った友だちの内容と比較して話させたりした。

スピーチメモ

 4年生では,「スピーチメモ」にキーワードや話し方の工夫を書いて,それをもとにスピーチをさせた。キーワードを付せん紙に書かせたことは,話す順序を考えたり,話す事柄を選んだりする上で効果的であった。スピーチは,デジタルカメラの動画機能を使って撮影し,振り返りができるようにした。視線や声の大きさなどを画面を見ながら振り返らせ,聞き手に「スピーチ評価シート」に記入させた。「スピーチ評価シート」には,話し方だけでなく,話の内容について思ったことも書かせ,話し手に渡すようにした。以上のことにより,話し手は話した後の反応を知ることができるので,満足感や意欲を高めることにつながった。
 低学年では,教室に話し方のポイントを掲示して,何を話したらよいのか分かるようにして,スピーチの時の手がかりとなるようにした。朝の会のスピーチの取り組みにより,話題を見つける力が育ち,作文においても相手や目的に合った題材を選ぶこともできるようになってきた。

スピーチ評価シート

(4)家庭学習について

 5月に家庭学習について,児童にアンケート調査を行った。その結果,89%の児童が学校の宿題をしているが,宿題以外の学習を進んでしている児童は,28%だった。これは,学習の仕方が分からないことや,学習に対する価値や楽しさを実感していないためであると考えた。
 そこで,この結果を学校だよりで保護者に知らせるとともに,家庭学習の意味を教えたり,学習の仕方を指導したりしていくことにした。宿題以外の学習をしたらカードに自分で印を付けさせて,継続の意欲がもてるようにしたり,学習の内容を担任と相談して計画表に記入させたりする学級もあった。

自由勉強の仕方のよい例を掲示

3 実践の成果

(1)「話すこと・聞くこと」について

 情報機器を活用して,相手に分かりやすく話す力を育てることができるように指導を行った成果を知るために,5年生において次の3つの観点について児童の意識調査を行った。

1.相手に分かるように話すことができたか
1.相手に分かるように話すことができたか

2.相手の話の内容が分かったか
2.相手の話の内容が分かったか

3.話したり聞いたりすることは楽しいか
3.話したり聞いたりすることは楽しいか

 この結果から,情報機器を使って話したり聞いたりする学習を通して,「話すこと・聞くこと」の力の高まりを感じていたり,この学習を楽しいと感じていたりする児童が増えたことが分かる。これは,情報機器を使うことによって伝えたいことが明確になり,相手に分かりやすく伝えることができるようになったことと,具体的な資料が聞き手の関心と理解を高めたためと考える。

(2)家庭学習について

 児童の意識調査を行った。5月に比べて12月には,宿題をよくしていると答えた児童の数は増加した。また,宿題以外の学習を家で行っている児童も増えていて,取組の成果が見られた。その内容についても反復練習的な内容でなく,いろいろな教科の内容で興味をもったことについて調べてくるような児童も増えている。

学校の宿題を家でしますか

宿題のほかに自分で調べたり勉強したりしていますか
宿題のほかに自分で調べたり勉強したりしていますか

4 実践のまとめ

 情報機器を使うことによって,児童は,伝えたいことがはっきりし,相手に分かりやすく伝えることができるようになった。視覚的な資料を用意することによって,話す内容や順序が明確になり,メモ代わりにもなって分かりやすく話す力につながった。聞き手にとっても,視覚的な資料が理解の手助けとなっている。話す力や聞く力が育ったことによって,学習中の交流も活発になった。さらに,このような交流を通して自己の学びを実感し,話したり聞いたりすることが楽しいと感じる児童も増えてきた。
 今後は,情報機器のさらなる効果的な活用を模索し,系統的な指導計画のもと,あらゆる学習場面で活用できる話す力を育てていきたい。

考える力を育てる算数学習 名古屋市立吉根小学校

1 テーマ設定の理由

 平成19年度の全国学力・学習状況調査の本校の結果からは,次のことが分かった。算数の学習では,授業で新しい問題に出会ったとき,「解いてみたい」という気持ちもつ児童は多いが,「学習したことを実生活の場面や新しい課題の解決において活用でる」と考える児童は少ない。生活の中や課題解決に算数が生きていると実感する機会をやしていく必要がある。
 主として「知識」に関する問題については,「数量や図形についての表現・処理」の着率は高いが,「数と計算」での小数の乗法・除法の意味については,十分理解を図る要がある。主として「活用」に関する問題については,「数量や図形についての知識・解」の定着率は高いが,身の回りの図形の面積を式に表したり,式が表している内容をみ取ったりする力を伸ばす必要がある。
 以上のことから,本校では,算数に対する意欲が高い児童が学力をより高めるために学習内容の意味理解の充実を図ることと,原理や法則を自ら見出す発見的な学習に取りませることが必要と考え,テーマを「考える力を育てる算数学習」と設定した。

2 実践の内容

(1)基本的な考え

 本年度,算数科について明確になった課題を改善するために,第3・4・5学年を中に「考える力を育てる算数学習」をテーマとして次のようなり組みをすることにした。

1.意味理解の充実を図る学習

 位取り記数法の原理によって数の仕組みを理解させたり,数を含む数量の関係から式をつくる際に,小数を整数に置きえて考えやすいようにしたりして,自力解決の過程を重視し数や計算について意味理解の充実を図る。

【式について考える様子】
 【式について考える様子】

◇実践単元5年生「小数×小数,小数÷小数」

 本単元では,既習の整数での計算から小数を含む計算になり,乗法か除法かの演算の決定に戸惑う児童が多いと考えられる。そこで,問題の中の小数を自ら簡単な整数に置き換えられるようにする。そのために,指導の中でプレースホルダーなどの方法を使って言葉の式を導き出し,正しく立式ができるようにさせる。

〔プレースホルダー〕

 □×2=10,□+△=△+□などの式に用いられている□,△などをプレースホルダーという。これらは任意の数や未知数,変数を表している。例えば,1個□円のりんご5個の代金は□×5と表せる。また,1個60円のりんご□個の代金を△円とすると,□と△の関係は△=60×□である。□や△に入る数を整数から小数や分数に拡張することによって,計算の適用範囲を広げることができる。

◇実践単元3年生「一万をこえる数」

 パターンブロックをおはじきや数え棒のように使う活動によって一万,千,百,十,一のそれぞれの集まりを十進位取り記数法に結びつけ,一万の位までの表し方や仕組みを理解させる。

〔パターンブロック〕

 正三角形,六角形,正方形,台形,平行四辺形,ひし形のブロックが入った教具である。パターンブロックのピースを組み合わせることで,数量や図形に対する考察をしたり,図形に対する見方や感覚を育てたりすることができる。

〔パターンブロック〕

2.発見的な学習

 与えられた情報を分類整理して必要なものを適切に選択するとや,事象を数学的に解釈して自分の考えを数学的に表現するとによって,新しい原理や法則に気付いたり,あいまいな考え次第に明確な考えへと高めたりして発見的な学習が進められるうにする。

【考えを説明する様子】
 【考えを説明する様子】

◇実践単元4年生「面積」

 広さが似ている異なる2つの図形をパターンブロックで敷き詰める活動を通して,面積の任意単位の必要性に気付かせる。

◇実践単元5年生「面積」

 ジオボードを使って,三角形の底辺を一定にして高さを変えていったときの面積の変化の様子を調べたり,辺の長さが等しい長方形と平行四辺形の面積について調べたりして,面積について分かったことを自分の言葉で表現させる。

〔ジオボード〕

 板にピンを等間隔に打った教具で,そのピンに色輪ゴムを引っかけて図形を作る教具である。試行錯誤しながら図形を作ることができ,失敗してもやり直しが簡単で,作った図形を他の人に見せることが容易である。

〔ジオボード〕

(2)実践の様子
1.意味理解の充実を図る学習
【実践例15年生「小数×小数,小数÷小数」

1 実践のねらい

 小数を簡単な整数や□に置き換えることによって,小数のかけ算と小数のわり算を生の場面で適用し,乗法か除法かの演算決定が適切にできるようにする。

2 授業の様子
 単元を通して線分図,関係図,言葉の式を関連させて考えるようにしてきた。本時はくの情報の中から必要な情報を取り出して,問題解決する学習である。

<演算決定の場面>
T買った牛肉の代金は何円ですか。分かっていることから考えましょう。
C牛肉は1.5㎏買いました。
C牛肉は1㎏で3450円だね。
C1㎏3450円の牛肉を1.5㎏買った代金をだせばいいね。
C1㎏3450円の牛肉を□㎏買うと考えれば,かけ算だね。
C1㎏2円の牛肉を3㎏買ったら2×3だから…3450×1.5になるんだね!

【考えを説明する様子】
 【考えを説明する様子】

3 考察
 児童は,単元末の小数のかけ算とわり算が混在した問題解決の場面で,正しい演算をび,解決することができるようになった。これは,数値が小数になっても,整数の場合同様に考えることができること(形式不易の原理)を理解し,簡単な整数に置き換えるとができるようになったからと考える。

【実践例23年生「一万をこえる数」

1 実践のねらい
 パターンブロックを使って「つかみ取りゲーム」をする。色ごとの点数を調べていくとによって一万をこえる数の表し方や仕組みを理解する。

2 授業の様子
 グループごとにつかみ取りゲームをした。ブロックを一度だけつかみ,緑1000点,橙10点,青10点,赤1点と点数を決めておいて,その合計点数で順位を競うというゲームある。一万点以上になる場合を取り上げ話し合いをした。

<新しい位を作る場面>
T緑をたくさんとった子がいるんだけど,点数は何点になるのかな。
C1000点が12個もあるね。
C千の位に2つも数字は書けないよ。
C1000を10個集めたら10000だよ。一万の位だ。
Cだから12000点になるんだ!

【話し合いの様子】
 【話し合いの様子】

3 考察
 児童は位取りの原理を生かして「一万の位」を作ることができた。これは,高い点数出そうと緑のブロックをたくさんつかんだが,その結果について「今ある自分の知識で表せない」と分かったとき,「これまではどうしてきたか」と考えさせることで「新し位を作る」という発想に結び付けることができたからと考える。

2.発見的な学習
【実践例3 4年生「面積」

1 実践のねらい
 2つの図形をパターンブロックで敷き詰め,それぞれの図形の広さについて考えさせことによって任意単位の必要性に気付くことができるようにする。

2 実践の様子
 まず,パターンブロックでシートに描かれた2つの形(次の図AとB)を自由に敷き詰めせた。次に,「どちらがどれだけ広いか」と問い,ブロックを使って考えさせた。

<任意単位の必要性に気付く場面>
T どちらがどれだけ広いか分かりましたか。
C ぼくは三角で全部敷きつめました。Aが52個,Bは54個になりました。Bが2個三角分大きいです。
C 私は違う形で調べたよ。Aは台形16個とひし形が1個,Bは台形が16個とひし形が2個だからBがひし形1個分大きい。
C どれも同じ形のものを組み合わせれば比べることができるね。

【ブロックの操作活動】
 【ブロックの操作活動】

3 考察
 単に敷きつめるだけの活動に,「どれだけ広いか」と数値化するように条件を加えると,「同じ形のブロックを並べれば比べられる」と任意単位に気付かせることができた。これは,ブロックの形が組み合わせやすくなっているため,いろいろな形で試すことができ,発見的に学習を進めることができたからと考える。

【実践例4 5年生「面積」

1 実践のねらい
 辺が動く枠を使い,平行四辺形の求積方法を考えることができるようにする。

2 実践の様子
 長方形の面積の求め方について想起した後,右の図のように,辺を少し傾けた平行四辺形の面積について考えさせたところ,ほとんどの児童が「面積は変わらない」と答えた。
 そこで,ジオボードを使って平行四辺形の面積を求めさせた。2つの三角形に分割したり,直角三角形と長方形に分けたり,等積変形をして長方形にしたりして面積を求めることができた。最初の予想と違い,平行四辺形の方が面積が小さくなることに気付き,驚いた様子であった。

【ジオボードで考える様子】
 【ジオボードで考える様子】

3 考察
 長方形の面積は辺の長さに依存するが,平行四辺形では底辺の長さと高さが面積にかかわる長さであることに気付くことができた。これは,ジオボードを使って容易に既習の図形に帰着させることができたからと考える。また,ジオボードでの操作によって多角形が対角線によっていくつかの三角形に分割できることが分かり,「これなら百角形でも面積が求められるね。」と発見的に学習を進めることができた。

3 実践のまとめ

 平成19年度の全国学力・学習状況調査の結果から,「考える力を育てる算数学習」をテーマに実践に取り組んできた。問題提示の仕方や教具の工夫を通して,表現力や思考力が育ち,その結果,考える力が育ちつつある。今後は,実生活と算数との結び付きを考えられるような実践を通して,児童が算数を様々な場面で生かすことができるよう実践を積み重ねていきたい。

お問合せ先

初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)

-- 登録:平成22年03月 --