熊本県教育委員会 「確かな学力」の向上を目指して‐授業の質の向上を通して‐

はじめに

 熊本県では,平成13年度から,身に付けるべき基礎・基本を確実に習得させる徹底指導と,児童生徒が自ら考え,問題解決に主体的に取り組む能動型学習とのめりはりをつけた授業を推進し,児童生徒の「確かな学力」の向上を目指してきた。また,このような授業の充実に向け,平成14年度からは,知識・技能はもとより,学ぶ意欲や思考力,表現力などを客観的に評価できる問題「ゆうチャレンジ」を開発・提供して,指導方法の工夫改善を図ってきたところである。
 これまでの取組において,各教科で文章や資料の基本的な内容の理解について概ね定着の状況が見られるが,理解したことを踏まえてじっくりと考え,自分の意見等を整理して表現することが課題であることが分かった。これを受け,本県教育委員会では,具体的に授業の改善点を示した「熊本県学力調査」結果報告書(【小学校】【中学校】)を作成し,児童生徒の状況等を的確に把握し,その結果を基に学習意欲を喚起し,思考力・表現力等の向上を図る教材の開発や学習活動の工夫等,「確かな学力」の定着を図る取組の充実を推進してきた。
 このような取組の中で全国学力・学習状況調査の実施によって,本県の児童生徒の「活用する力」に課題があることが明らかになった。そこで,授業の質を高める4つのチェックポイントを示し,これまでの取組の更なる向上を目指しているところである。

  1. 真に徹底指導になっていますか。
    ・基礎的・基本的な事項の洗い出し、及びその反復練習を行う時間の設定 等
  2. 能動型学習になっていますか。
    ・ゆうチャレンジ問題を活用した発問の工夫、伝え合い、高め合う言語活動の充実 等
  3. 教材開発の工夫により、好き・分かる授業づくりができていますか。
  4. 指導と評価の一体化が図られていますか。
    ・ゆうチャレンジ問題を活用した自作問題の作成 等

1.熊本県教育委員会における取組

1.事業内容について

(1)事業概要

 全国学力・学習状況調査結果から,課題改善に向けて積極的に取り組んでいる小・中学校10校を指定し,県教育委員会等による指導・助言のもと,実践研究を推進し,成果の普及を通して学力の向上及び学習状況の改善を図り,その成果を県内に普及し,全県的な学力の更なる向上を図った。

(2)実施体制

実施体制

(3)研究成果

 平成19・20年度全国学力・学習状況調査の結果分析とその活用について,県教育委員会による学校訪問指導等における指導・助言のもと,各校で特色ある実践研究を推進し,授業研究会や実践発表会,学校改善事例集の配付等を通して県内への成果の普及を行い,全県的な学力の更なる向上を図った。

2.普及啓発と今後の取組について

(1)成果の普及啓発に関する取組

○ 授業研究会等による普及
 各地区の教科等研究会において実践発表を行うなど,各管内,市町村での普及が図られた。

○ 「創造!生きる力」実践発表会における実践発表による普及
 この実践発表会は,講演や小・中学校,地域における優れた教育実践の成果を普及啓発する目的で毎年開催しているものである。
 昨年の実践発表会(すべての小中学校の学校関係者,社会教育関係者,一般,参加者約900名)において,組織的な学習過程の実践,授業改善への取組,家庭との連携の取組の成果等を中心に,南小国町立市原小学校の実践発表を行った。

○ 県教育委員会ホームページによる普及
 学力向上に関する掲載ページの内容を充実(県学力調査の活用事例・全国学力・学習状況調査結果等・学力向上に向けた特色ある取組事例など)した。本事業の取組内容についても,御船町立御船小学校の実践内容を「特色ある取組事例」の「学校全体のとしての取組」のページで紹介し,実践の普及を図っている。

○ 「学校改善事例集」の作成,配付
 本年度の各調査活用協力校の取組について,学習活動の実践と特色ある取組を「学校改善事例集」にまとめ,県内のすべての小中学校に配付した。

(2)来年度以降の取組

○ 単元別の評価問題の開発と実施について
 指導と評価の一体化を図り,思考力,判断力,表現力を問う単元別の評価問題の作成と実施を推進する。
○ 各教科等の指導計画に言語活動を位置付け,各教科等の特質に応じた授業の構成や展開の工夫改善を図るよう指導する。

2.調査活用協力校における取組事例

取組事例1.「思考力,判断力,表現力の育成」に重点をおいた取組 八代市立二見中学校

(1)学校の状況について

 学力の状況として,平成20年度全国学力・学習状況調査の結果から,国語においては,自分の考えや意見を発表したり,まとめる(文章化する)ことに課題があることが分かった。また,熊本県学力調査結果から第2学年において,「読むこと」の達成率が低く,具体的には,「文章の展開を確かめながら要旨を捉えること」や「内容を理解し,自分の思いや考えを入れながら文章をまとめること」など思考力や表現力に課題があることが分かった。
 数学に関しては,「数学的な見方や考え方」に関する観点の定着率が低く,特に見当がつきにくい課題に対して取り組もうとしなかったり,諦めたりする様子も見られた。

(2)全国学力・学習状況調査の結果等を活用した取組について

1.校内研究の実際

 研究主任への個別の指導助言を継続的に行い,リーダーシップの育成を図った。学習活動の工夫を組み込んだ授業展開を工夫する授業研究部と,学習習慣定着のための支援や学習意欲の向上を図る手だてを工夫する学習基本研究部の部長が,研究主任のリーダーシップの下,各部員の意見をまとめ,研究テーマに迫る具体的な方策を立案し,実践へと繋いだ。教科担当者全員が研究授業に取り組み,授業研究会では多角的な授業分析に繋がる協議の視点などを工夫し協議を行うことに努めた。また,授業の心得や「学習のすすめ」などを作成し,全職員が活用して共通実践に取り組んだ。
 T・Tの活用については,国語・数学の全学年・全授業時間で取り組み,基礎・基本の定着のために配慮を要する生徒への支援を中心に行いながら,各教科における指導方法の工夫改善に繋げた。

2.各教科における取組

ア 国語科
 「分かりやすく伝える工夫」という点で課題が見られたため,授業における発表や話合い活動に重点をおいた展開の充実に努めた。具体的には,目的や相手に応じた話し方・聴き方,目的を意識した発表や話合い活動の充実を図るとともに,自分の考えを整理して書くためのスキルを身に付けさせるため,作文やノート指導を通して,細やかな指導に努めた。また,正確な漢字の読み書きの課題解決に向けて,「漢字シート」を作成し,家庭学習の課題として与え,毎日の提出,点検にも努めた。さらに,学習した漢字を使ったり,言葉遣いに気を付けたりしながら,積極的に言語活動に取り組もうとする意欲の向上を図るために,「国語科通信」を毎月作成し配布することにも取り組んだ。この通信は,生徒作品等の発表の場としても利用することができている。

イ 数学科
 「数学的な見方・考え方」に課題があり,特に見当がつきにくい課題に対しては,取り組もうとしなかったり,途中で諦めたりするといった傾向があるため,数学への興味・関心や学習意欲の向上を図ることを目指し,数の世界を意識した授業展開を重視した。そして,個人や班の話合い活動で出された生徒の疑問やつぶやきを生かし,生徒の思考の流れに沿った学習活動を展開するよう心がけた。また,主として活用に関する課題に対応するために,授業時に発展的な問題や応用問題にチャレンジする機会を多く取り入れるとともに,数の世界への関心を高めるため校内に「数学コーナー」の設置なども行った。

ウ 社会科
 「社会的な思考・判断」,「社会事象についての知識・理解」の観点や「歴史」分野における定着率に課題が見られたので,様々なことがらを関連付けて考えさせたり,図や表から読み取れることを考えさせたりすることに重点をおいた学習活動に取り組んだ。そして,班による話合い活動を多く取り入れるとともに,発表させる機会と場を工夫し,思考力・判断力・表現力の育成に努めた。また,歴史分野を中心とした知識面の定着のため,復習のための小テストを工夫し,その活用に継続的に取り組んだ。

エ 理科
 「物理的領域」・「地学的領域」や「科学的な思考」・「自然事象についての知識・理解」の観点における定着率に課題が見られたため,自作を含めた実験器具等の教材教具の工夫に取り組んだ。そして,少人数や個別による観察・実験を多く取り入れ,一人一人が目的意識をはっきりと持って活動を行うことができるよう工夫し,技能や知識・理解面の定着を図った。また,実験結果をもとに,個人,グループ,全体での話合いや意見を発表し合う活動を多く取り入れ,科学的な思考力や表現力の育成に努めた。

オ 英語科
 「聞くこと」・「書くこと」の領域,「表現の能力」・「言語や文化についての知識・理解」の観点において定着率に課題が見られたため,「音読」活動を毎日の授業において重点的に行った。そして,自作の学習シートを活用し,日常生活に関連する内容について自分の思いを英語で表現させたり,1分間英会話に取り組ませたりするとともに,英語を使った小演劇活動等を取り入れた授業にも努めた。また,毎日の家庭学習として,朗読・筆写を取り入れ,ノートの提出と点検に取り組んだ。

3.学習意欲の向上や学習習慣定着のための取組

ア 冊子「学習のすすめ」の作成と活用
 中学校における基本的な学習態度や授業の受け方,家庭学習や各教科の学習方法,定期テストへ向けた計画的な学習方法などについて掲載した冊子を作成した。この冊子は。全校生徒に配布し,全校集会や短学活等の時間を利用しながら,全職員で共通した指導に取り組んだ。

イ 家庭学習計画表(日課表)の作成
 質問紙調査等の結果から,家庭における学習時間やテレビ・ゲーム等の時間など,家庭生活における時間の使い方に関する課題が見られたので,その改善のため,家庭における生活時間を記入した表を各自に作成させ,それをもとに,各担任で指導を行い,家庭で掲示する取組を行った。これは,八代教育事務所管内で統一して取り組んでいる「三点固定運動」(決めた時刻に起きる・決めた時刻に学習を始める・決めた時刻に寝る)の具現化にも繋がっている。

ウ 授業の心得の徹底
 「チャイム着席,元気なあいさつ」,「よく聴いて,積極的な発言・発表」,「指名の返事は,はっきりと」の三点を授業の心得として全教室に掲示し,全授業の共通的な指導事項として徹底を図った。また,この心得の徹底期間を設け,生徒・教師による振り返りの機会を持ち,改善を図りながら継続した指導に取り組んだ。

エ チャレンジタイムの実施
 知識・理解面の定着だけでなく,学習意欲の向上や主体的な学習態度の育成を目指して,定期テスト前の放課後の時間に,補充学習及び質問の時間として「チャレンジタイム」を設定した。「チャレンジタイム」では,全教科の担当者が教室前に机を置き,生徒が必要に応じて質問をする形式を取った。実施後,アンケート調査を行い,その結果を踏まえながら取組の工夫・改善を図っている。

オ 速読学習の実施
 読解力の育成を図るための手段の一つとして,朝自習の時間に全クラスで定期的に速読学習に取り組んだ。市販の書籍を参考に短文読解や長文読解の問題に取り組み,速く正確に読み取れる力の育成に取り組んでいるところである。

4.小学校及び家庭との連携

ア 小学校との連携
 小学校や中学校における学びの連続性を踏まえた教育活動の充実を目指し,小・中共通のテーマを掲げて合同研修に取り組んだ。この合同研修では,各学校の校内研修の内容とリンクさせながら,それぞれの実践の紹介をはじめとして,共通テーマに基づき,その視点を踏まえた取組や授業参観等を実施した。第3回は,本実践についての検証等を行いながら今後の方向性を確認するとともに,実践の工夫・改善に繋いだ。

イ 家庭との連携
 全国学力・学習状況調査等の結果や県学力調査等の結果から見えてきた課題とその改善策について,保護者会や学校評議員会で説明し周知を図った。特に,生活リズムを整え,家庭学習習慣の定着を図る必要があるため,家庭学習計画表(日課表)の徹底と家庭における言葉かけ等の支援策を示し,学校と家庭による同一歩調での指導に取り組んでいる。

(3)成果について

ア 学力充実構想図を基にした校内研修の取組とのリンク,そしてPDCAサイクルを意識した学力向上に対する取組を通して,国語・数学のみならず全教科で,指導方法の工夫改善に対する教職員の意識の高揚と具体的実践の深化が見られた。
 特に,国語科においては,T・Tによる授業への取組を通して,個々の生徒へのきめ細やかな指導・支援,自作の漢字シートや国語科通信など様々な取組を行うことができ,指導方法の工夫・改善を図ることができた。
 また,数学科においてもT・Tの取組や,課題解決に向けた授業時の発展的な問題や応用問題にチャレンジする機会の設定,そして数の世界への関心を高めるための取組等により,指導方法の具体的な改善に対する意識の高揚を図ることができた。

イ 全教職員が授業展開の改善を目指して,「課題をじっくり考えること」,「自分の考えを表現すること」,「グループ活動等で課題を解決すること」,「興味・関心を高める教材・教具を工夫すること」に意識して取り組んだことにより,生徒は学習活動に対する意欲を高めたり,目的意識を持って活動したりすることができつつある。

ウ 9年間の育ちを意識した小学校との合同研修において,子どもの学びや育ちを繋ぐ教育活動,共通のテーマに拠った視点からの取組や,実践の振り返りに取り組むことができ,小学校・中学校の連携による教育の充実を目指す教職員の連帯感を強め,意識の高揚を図ることができた。

エ 「学習のすすめ」の冊子や家庭学習計画表の作成と活用,チャレンジタイム・速読学習等への取組によって,全学年・教科における共通した指導や家庭と連携した取組を行うことができ,家庭における学習の習慣付けが図られてきつつあり,家族からの声かけを行う取組は,更に主体的な家庭学習習慣づくりに向けた支援となっている。

(4)来年度以降の課題について

ア 全教職員による共通した取組の実践に努めてきたが,教科や学年によって取組に温度差が感じられ,生徒一人一人に目を向けた場合には,基礎・基本の定着に不十分な部分が見られた。生徒一人一人の学びの連続性や学年の発達段階を踏まえ,個に応じた指導方法の更なる工夫・改善に取り組んでいく必要がある。

イ 教科担当者が1名であること,また教科の特性等により取組の成果の検証が難しい面もあるが,学校総体として組織的に取り組んでいく方向性や実践内容を,学校評価と関連させながら評価・検証し,実践の充実に努める校内の雰囲気づくりを継続していくことが大切である。

ウ 各教科の研究授業への取組が,日常における授業実践の更なる充実に繋がっていくよう,学校全体の研究体制の継続を図るとともに,教職員個々の自己目標の設定等と絡み合わせながら,指導方法の工夫改善に対する実践の継続に努めていく必要がある。

エ 家庭と連携した取組については,個々の家庭による差が大きい面が見られる。今後も機会を捉え,PTA活動とリンクさせながら啓発を重ね,その充実を図っていく必要がある。

取組事例2.「学びのスタイルの定着」に重点をおいた取組 南小国町立市原小学校

(1)学校の状況について

 本校における平成20年度の全国学力・学習状況調査(国語・算数)の平均正答率から見ると,「主として知識に関するA問題」,「主として活用に関するB問題」ともに全国・熊本県の平均を上回っている。しかし,A問題の平均正答率に対して,B問題の平均正答率が10%以上低かった。
 また,同時に行われた『生活習慣や学習環境等に関する質問紙調査』では,「国語や算数の授業の内容はよく分かる」,「国語,算数の授業で学習したことは,将来社会に出たとき役に立つと思う」という意識を持っている児童が8割いたのに対して,「国語,算数の勉強が好き」や「国語の授業で意見などを発表するとき,うまく伝わるように話の組み立てを工夫している」,「算数の授業で学習したことを普段の生活の中で活用できないか考えている。」という意識の児童は5割程度にとどまっていた。
 また,家庭生活において,「テレビ・ゲームの時間が長い」「家庭学習の時間が短い」という課題も浮き彫りになった。これらの課題を踏まえ,取り組む必要のある点を以下のように整理した。

○ 「基礎的な学習内容を活用する力を高めること」
○ 「児童の学習に対しての意欲を高めること」
○ 「家庭での生活習慣の改善を図ること」

 以上のような点から,市原(いちはら)小学校児童にあった学びのスタイルを「いちのはる学習」とし,以下のような取組を続けることにより,学びの定着を図ることができ,生きる力の向上に繋がるであろうと考えた。

(2)全国学力・学習状況調査の結果等を活用した取組について

1.校内体制

○ 全国学力・学習状況調査結果を踏 まえた校内研究のテーマ設定
 校内研究のテーマを全国学力・学習状況調査結果を考察して設定し,全職員で共通して取り組んだ。

○ 少人数及びT・Tによる授業(算数科を中心)
 学力向上に向けて1学級に対して複数の教師で授業に臨んだ。

○ きよらっ子タイムの実施
 基礎学力の定着の時間。毎週月曜日の6校時に4年生以上の学級で実施。全職員で指導に当たった。(各学級3名程度)

【職員室のT・T等の予定表】

【職員室のT・T等の予定表】

2.国語科における取組

○ 学び合う時間の工夫
 学年に応じた指導形態の工夫
(低学年は主にペア学習や一斉学習を行う。高学年では,小集団学習の時間も重要視する。)
 学び合い方のモデルの提示(班の代表による話合い活動のモデルとなるビデオ作成,課題解決に向けた話合い方の提示など)

○ 「いちのはる」学習(学習過程)による学び方の定着
 「いちのはる」カードを作成し,すべての授業において,いつでも活用することができるように各学級及び特別教室の黒板に掲示した。

い…一緒に問題や課題をつかもう。
ち…ちょっと解決の予想を立ててみよう。
の…のびのびと一人で調べたり考えたりしよう。
は…発表したり、友だちの意見を聞いたりしよう。
る…分かったことをまとめるようにしよう。

【いちのはるカードを使った実践例】

【いちのはるカードを使った実践例】

○ 自作評価問題作成
 自作評価問題を作って活用を図る。次年度の参考になるように自作評価問題集を作成した。

3.算数科における取組

○ 少人数によるクラス編制の工夫
 レディネステスト結果と希望による習熟度別のクラス編制を実施。
 ・のびのびクラス・・・個人の 考えを持つことを大切にした。
 ・どんどんクラス・・・お互いの考えを出し合い,学び合う活動を大切にした。

○ 学習環境づくり
 考えを持つことができない場合のお助けコーナーや重さや水のかさを体感できるコーナーを設置した。
○ 導入時の「100ます計算」「単位の学習カード」
 授業の導入時に100ます計算や単位の学習を行う。ファイルに整理し保護者に通知した。タイムと正答率をグラフ化した。
○ 小黒板の利用
 のびのびクラスにおいて,子どもの考える力を付けることをねらった小黒板の活用を図った。

4.家庭・地域との連携

【算数科における小黒板活用の様子】

【算数科における小黒板活用の様子】

○ 「きよらっ子ノート」の作成・活用
 家庭学習のための自主学習帳「きよらっ子ノート」を低中高学年毎に作成した。見開き1ページを1日分とし,右側が漢字,左側が計算や日記など自由学習ができるようにしている。また,家庭での生活の振り返りも記入できるようにし,家庭における生活習慣の改善にもつながったた。

○ 「ことばらんど」の発行
 言語に関するプリント「ことばらんど」を作成して毎週火曜日に各家庭に配布した。全教職員輪番制で低学年用と高学年用の問題を準備した。

【家庭学習ノート「きよらっ子ノート」】

【家庭学習ノート「きよらっ子ノート」】

○ 「家庭読書の日」「卒業までに読んでおきたい100冊の本」の設定
 家族で読書に親しむ「家庭読書の日」を設定した。毎週木曜日に行い,いろいろな読みの方法を選択できるようにした。また,「卒業までに読んでおきたい100冊の本」を設定した。

○ 「お話ボランティア」の活動
 「お話ボランティア(保護者,地域の方)」による読み聞かせを行った。

(3)成果について

ア すべての教科,領域で「いちのはる」学習(学習過程)を実践したことで子どもたちは課題解決に向けた学び方が定着してきた。また,指導者自身も意識して授業づくりを行うようになり,授業改善が図られるようになった。今後,さらに「いちのはる」学習の活用方法の拡充を図り,学び方の定着を図りたい。

イ 学び合いの時間を大切にしたことで,課題を解決できたという喜びを実感し,できたおもしろさを感じるようになってきた。

ウ 「きよらっ子ノート」や「ことばらんど」「家庭読書カード」の取組によって,家庭学習を見直す機会となり,家庭学習の時間の確保ができ,子どもたちにも意欲的な取組が見られるようになった。また,家庭における生活習慣について家庭と学校で話をする機会も増え,朝食をしっかりととったり,テレビやゲームの時間を改善したりして生活習慣を見直すこともできてきた。

エ 全職員で同じ方向を向いて共通実践を行っていくことが,学びの定着を図る上で非常に大きな効果が得られることが分かった。

(4)来年度以降の課題について

○ 全国学力・学習状況調査や熊本県学力調査のような問題文をきちんと理解できていない児童がいることが分かってきた。問題文の意味が分かれば,問題を解くことができるものの,その問題そのものが理解できず,問題の意図がつかめず正しく解くことができていなかったのである。「読むこと」を中心とした学習で問題文の意図についてもさらに読み取る力を高めていきたい。

○ 国語科の成就値の伸びに比べて算数科の成就値の伸びが大きかった。このことは,算数科を中心とした少人数授業の成果が大きいと言える。国語科においてもさらに校内での連携を図りながら学力向上に向けた取組が必要だと考えている。しかし,教員の人数は限られていることもあり,国語科の領域等を絞り込んで思考力,判断力及び表現力の向上と学習に対する意欲を高める取組を行っていきたい。

○ これまでの取組により自分の思いや考えを持ったり,まとめたりする力は高まってきているが,新たな課題として,それを発信するような力を高めていく必要性を感じ始めている。つまり,自分の思いや考えを本当に周りの人に伝えていきたいものにまで高まっていないことが見えてきた。「生きる力」にまで高めるための取組としてさらに授業改善を図っていきたい。

お問合せ先

初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)

-- 登録:平成22年03月 --