調査2年目に当たる本年度,本県では,各教育委員会や各学校が調査結果を主体的に分析し,指導に生かすことを課題としている。そのため,昨年度に作成した「愛知県版分析プログラム」をさらに機能アップするとともに,県内6校の調査活用協力校に,調査結果を活用した取り組みのモデル実施を依頼し,実践方法を「学力学習状況充実プラン」に活用例として示した。
また,愛知県全体の傾向をまとめ,それを踏まえた「県としての改善の指針」を策定し,これらを配布し,また説明会を開くことにより有効活用を促進させた。
県教育委員会としては,各市町村教育委員会や各学校が,主体的な本調査の結果を指導ができる体制を作りを目的に事業に取り組んだ。そのため,主に以下の3点に重点を置いた。
学識経験者,市町村関係者,学校教育関係者,県関係者で構成される「全国学力・学習状況調査活用推進委員会」と,具体的な事業を遂行するために,調査活用協力校の代表者6名を含む「専門部会」を立ち上げ,調査結果から見られる課題の改善に向けた実践研究や実践方法改善の検討及び成果の普及に取り組んだ。調査活用協力校の選定にあたっては,改善策が県内の各地で活用されるよう,県内の広い範囲から,都市部,郡部といった様々な面を考慮した。そして,課題の改善に意欲的な小中学校各3校に依頼した。
ア 「分析プログラム」の機能アップ
分析プログラムは,どの組織においても,データ分析が簡単にできるように開発した。主な機能は,次のとおりである。
◇特徴リサーチ機能
全国の平均値や愛知県の平均値との比較により,その集団の学力や質問紙調査における回答傾向の特徴がわかりやすく表示される。
◇グラフ化機能
調査ごとの正答数の分布図や,領域を軸としたレーダーチャートなど,さまざまなグラフが表示される。
◇リストアップ機能
児童生徒の識別コードごとに,学力の特徴や質問紙調査への回答傾向など,個別指導に役立つ情報が表示される。
◇カテゴリー機能
「知識」と「活用」の正答率などのクロス集計の結果がわかりやすく表示されるとともに,質問紙調査の各質問に対する回答ごとの学力の分布を知ることができる。
本年度は,これらの機能に加えて,「年度間比較機能」を搭載した。 これは,各学校の結果を標準化得点で比較し,2年連続して見られる傾向や,大きく変化した傾向などが分かるように,9つに類型化して表示するというものである。
このことにより,当該学年だけに見られる傾向と継続して見られる傾向等を的確にとらえることができ,各学校において,本調査の目的である,検証改善サイクルの確立に役立てることができたと考えている。
また,県としても,本機能を活用して県全体の傾向をとらえることで,具体的な指導方法の改善例や学習の展開例を示すことができた。
イ 学力学習状況充実プランの配布
充実プランは,調査結果の集積,継続的な指導改善サイクルを確立していくことができるよう,昨年度から,加除式ファイル形式で作成しており,以下の3部構成になっている。
そして,「分析プログラムの活用例」には,「年度間比較機能」の出力例を踏まえた改善例と調査活用協力校における実践事例を掲載した。さらに,「県全体の学力・学習状況の傾向」では,本年度調査における県全体の特徴や,経年変化に見られる傾向及びそれらを踏まえた「県としての改善の指針」を掲載した。
各教育委員会や各学校が分析する際の視点や,改善策を考える上でのヒントを与えることができたと考えている。
ウ 調査活用協力校の取組
調査活用協力校には,次の3点を依頼し,その意見や実践方法を「分析プログラム」や「充実プラン」に反映・配布することにより成果の普及を図った。
エ 学校からの意見
などの事例が報告されている。
分析プログラムについて周知するために,12月5日,市町村教育委員会の指導主事等を集めて説明会を行った。
その中では,分析プログラムの活用方法の説明に加え,各学校での具体的な取組に対する提案もすることで,成果の普及啓発を図った。
これを受けて,市町村教育委員会から 学校への説明会が行われたり,学校にお
いて,調査結果の活用,指導の改善に向 けた具体的な取組が行われたりした。
前述のような成果が上がっていることも事実だが,一方では,自校の結果を分析することはできても,それに対する改善の具体的な方策を用意しきれないとの声もある。様々な課題に対する改善のための資料を充実することを通して,県内の学校における調査結果のさらなる活用を促したい。
初等中等教育局参事官付学力調査室
-- 登録:平成22年03月 --