神奈川県では,平成20年度の全国学力・学習状況調査の結果の分析にあたっては,かながわ学力向上支援連絡協議会を通じて,横浜国立大学の池田教授と青山准教授に分析を依頼した。
そして,その調査結果を踏まえて,課題を改善するための具体的な手立てを示すために,2009かながわの学びづくりプランを作成した。
本年度から立ち上げたかながわ学びづくり推進事業では,児童・生徒に学ぶことの意義や楽しさを感じさせ,学習意欲を高めるとともに,学びの質を向上させるために次の取組をする。
神奈川県教育委員会を母体として,県小・中学校公立校長会,市町村教育委員会,学力向上支援連絡協議会,県PTA協議会,研究推進校等がそれぞれ協力している。
学びづくりプランでは,平成20年度の全国学力・学習状況調査の結果の分析を行い,今回は,特に児童生徒の質問紙,学校質問紙に焦点を当てた。その結果,今後の改善点として4点が挙げられ,研究に取り組んだ。
1点目は,きまりを守ること,望ましい生活習慣等について,家庭・地域と連携した指導の充実を図る。
2点目は,家庭と連携して個に応じた家庭学習を推進する。
3点目は,教員同士の学び合いに焦点を当てた研修の充実を図る。
4点目は,支援教育の推進と充実を図る。
学力向上シンポジウムでは,横浜国立大学の池田教授から全国学力・学習状況調査の分析結果について報告があり,続いて教育委員会,学校
,県PTA協議会からの提案と報告があった。
その中で中井町教育委員会では,「達人教師と学び続ける子どもたちを目指して」というテーマで,教師の指導力の向上と,子どもたちの学力の向上を目指して,町内の(小学校2校,中学校1校)での連携研究会に取り組み,授業研究後の研究協議会の持ち方を工夫し,協議の深まりを図った結果,教師同士のコミユニケーションも深まり,協議内容の質も高まってきた。また,協議会の持ち方として,ロの字型協議→小グループ協議→付箋紙協議→書き込み協議→壁協議という方法を取り入れたという成果の報告があった。
海老名市のある小学校では,グリーンカード(自学自習する習慣をつけることを目標に自分で1週間分の計画を立て,実践した結果を報告し,計画や取組について教師がコメント等で指導する)を取り入れ,その結果として,自ら課題を発見しようとしたり,学習を計画,継続したりする力がついたという成果と個人差への対応と,今後,自学自習の力をどのように育てていくかが課題の報告があった。
かながわ学びづくり推進事業の推進地域においては実施方針に基づき,研究課題を設定し,当該市町村教育委員会と連携を図り,学力の向上のため家庭との連携・協力を得た実践研究を実施している。
例えば,研究課題としては,次のとおりである。
学びづくり推進地域として研究に取り組んだ。中井町では,取組によって授業のねらいに迫るための事前研究と,教材研究の工夫の必要性が明らかになった。
子どもの学びの連続性の観点から,今後の研究課題の一つとして子どもの学習の習慣化について授業との関連の中で考えていくこと,そして継続的に研究をしていくことが必要である。
海老名市での取組では,学校で家庭学習計画の立て方に焦点を当てた指導等を行っていくこと,並びに児童・生徒の計画が実行されたかどうか,児童・生徒のつまずきに対してどのような手立てが必要であるか等を保護者と協力して評価していくことが大切である。今後,個に応じて家庭学習が進められるような方策を検討していく必要がある。
学びづくり推進事業を来年度は,1町から6市町村に拡充し,推進地域ごとに,授業改善等に取り組んでいく。
かながわの学びづくりプランを活用し,各学校・市町村教育委員会等がどのように学力向上への具体的な取組を推進していくか,また,経年変化がどのようになるかに注目していくことが肝要である。
また,本調査は学力の一部であることから,他の学習状況調査等の結果を含め,総合的な分析を基に学力向上を図っていくことが大切と考える。
さらに,かながわの学びづくりプランの趣旨については県内全小・中学校及び特別支援学校に配付している「平成21年度学校教育指導の重点」にも反映させるなど,調査結果の普及・展開を図っている。
2009かながわの学びづくりプランリーフレット
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かながわの学びづくりプラン
生徒数260名,学級数10。町内唯一の中学校で,生徒は2つの小学校から入学してくる。その小中3校が平成20・21年度「かながわ学びづくり推進地域研究」の指定を受け,確かな学びをつくる指導の工夫と授業改善を目標に取り組んでいる。
また,平成19・20年度の2年間は,県指定問題行動等未然防止推進事業実践校として2小学校と連携を図りながら「中1ギャップ対策実践校」としても取り組んできた。
近年の生徒数の減少に伴い,担当教員1人の教科が半数を占め,教科部会が充分に成立しない状況である。また,教職経験年数構成の2極化も課題となっている。
国語・数学ともに全体的な結果は全国や県とほぼ同様の傾向であり,知識・技能の活用に課題がある。
本校の特徴として,国語・数学ともに,無回答の生徒がやや多い。国語では,解答を文章で記述する問題に無回答があり,数学でも,式を答えたり,説明を記述する問題で無回答がある。
それに関連して,生活習慣や学習環境に関する質問紙調査では,国語に関する問いについて,全体的に否定的に捉えている生徒が多い傾向があり,数学に関する問いについても,「数学の授業の内容はよくわかりますか」「数学ができるようになりたいですか」「解き方が分からないときは,あきらめずにいろいろな方法を考えますか」「将来,社会に出たときに役に立つと思いますか」などが,低い傾向がある。とくに,数学を苦手と意識している生徒が多く,「どうせ分からない」と諦めて締まっている様子が見られる。
授業を通して教職員間で話題になることとしても,生徒の最近の傾向として,ねばり強さに欠けることがあげられ,一つの課題について考え続けられない生徒が目立ち始めていた。
以上のことから,課題として,「あきらめずに取り組む姿勢を身につけさせること」があげられ,そのために授業の中で「考えをまとめ,発表する機会を多く取り入れること」や「達成感や成就感を味わわせること」などが必要であるとし,教師の授業での指導力の向上に取り組むこととした。
また,質問紙調査の学習面に関する内容で,「家で学校の宿題をしていますか」では大多数の生徒がよく取り組んでいるものの,「家で学校の授業の予習・復習をしていますか」では全くしていない生徒が半数近くおり,1日当たりの勉強時間を見ても,2時間以上勉強している生徒の割合も高いが,全くしていない生徒の割合も高いという結果が出ていた。さらに1日当たりのテレビやテレビゲームの時間が2時間以上,3時間以上の生徒もおり,家庭での計画的な時間の使い方についても課題があることが分かった。
以上のような課題に取り組むために,まず,校内研究推進委員会のもとに,「習慣づくり部会」「振り返り部会」「授業づくり部会」の3つの部会を設けた。
「習慣づくり部会」では,家庭学習の習慣化をめざす指導方法の工夫と家庭との連携の推進に取り組んだ。夏季休業中に「サマースクール」として学習習慣を身につけさせるための補習的な指導日を設定し,9日間で延べ212名の生徒が参加した。
「振り返り部会」では,授業改善のための授業評価の研究実践を進めた。
授業後に,下のような形の生徒によるアンケートをとり,教師が自分の指導について振り返る資料とし,授業研究会の際には,授業後にすぐに集計し,研究協議の資料とした。
「授業づくり部会」では,1人年1回以上の授業公開をし,研究協議を工夫していく中で,教師の授業での指導力の改善を図った。
前年度までの研究協議は,授業者の自評からはじまり,感想で終始してしまうなど,参加した教師が得るものが少ない場合も多かった。そこで,国立教育政策研究所総括研究官や大学准教授らの指導の下,以下のような工夫をしていった。
その授業のねらいを達成するための工夫点はどこなのかを事前にはっきりさせ,協議のテーマを決めて協議を進めた。
研究協議の場へ生徒数名が参加し,生徒からみた授業の課題や普段の授業との違いなどを話してもらうなどした。生徒からは「グループ学習では,考えたことが言いやすかった」「自分が気づかなかったことが話し合うことでわかった」などの発言があり,協議の参考になった。
前年度までの研究会では,全員で協議するというのが一般的な形であったが,その方法だと,発言者に偏りが生まれるなどして,協議が深まらない傾向があった。そこで,全体を2グループに分けて,7~8人で協議するようにし,各自の発言の機会を増やした。
授業を参観しながら,各自が気づいたことを付箋紙に書き,全員の気づきが協議の場に出るようにした。
以上の取り組みを通して,教科を越えた意見交換が活発になり,互いに高めあう教師の集団が作られていった。
研究協議における各教師の発言も,単なる感想から授業の本質に迫る質問や提言が出されるようになり,自身の授業を見直す契機となりつつある。
意欲的に2度目の授業公開をする教師も現れ,生徒の多様な考えが生み出されるような教材そのものの工夫や教材の提示の工夫,さらに各生徒の考えを把握するための座席表の利用など,生徒の思考を大切にした授業が展開されていた。
今後,こうした工夫が毎時間の授業に生かされることにより,生徒の学習に対する姿勢も変わっていくものと期待される。
生徒に,あきらめずに取り組む姿勢を身につけさせることや,学習の習慣化を促すこと,といった課題は,継続的に取り組むべき課題である。
また,3つの部会で取り組んできたそれぞれの工夫もまだ,始めたばかりの取り組みである。
今後さらに改善をしながら,継続的な取り組みを続けていく必要がある。
児童数271名,学級数13
丘に囲まれた緑の多い地域で,児童落ち着いた雰囲気の中で学校生活を送ている。
教職経験の二極化(8年以下と20以上が約半数ずつ)が進み,若手教員指導力の向上が課題の一つとなっている。
国語では,「話すこと・聞くこと」正答率が高く,A問題の「読むこと」,問題の「書くこと」の正答率が低かっ(全国平均と同様の傾向)。
算数では,評価の観点でA問題,B題共に「表現・処理」の正答率が高く,問題の「数学的な考え方」の正答率がかった(これも全国平均と同様の傾向)。
これらの課題について,授業研究の門や各教科の専門のスーパーバイザー名を招聘し,教員の授業力の向上をめし,授業研究を中心に取り組んだ。
前年まで行われてきた授業研究会はベテラン教員がイニシアチブをとり,手教員が話を聞くというスタイルが中であった。そこで,今年度は,少人数行う班別協議や,付箋紙を使った討論(付箋紙討論会)というスタイルを取入れ,教師同士が互いに高めあう研究を工夫していった。
教師の研究会そのものにも,「書くと」「読むこと」を取り入れ,お互い「考え方」を出し合う中で,体験的に業力の向上をめざした。
付箋紙を使った討論会では,まず授を見ながら個々の教員が気づいたこと付箋紙に書いていき,討論会の場に持寄る。少人数に分かれた討論会で,そらの気づきを下図のような模造紙に貼ていき,授業について話し合う。
グループ討議での司会,記録,また最後の全体会での発表等の役割は,ベランも若手も誰もが経験できるように回割り当てていった。
授業者は各グループをまわり,質問答え,討論に加わる。教員と子ども,題とよさの軸の上に話し合いの中でポントとなった授業の視点が書き込まれいく。このような開かれた話し合いので,授業者だけでなく,参加した全員教師が高まるような研究会を目指してった。
協議について,以上のような工夫をし全教師が年間に1回は公開授業を行ったしかし,このままでは,協議で話し合れたことがその場限りのものとなってまいがちである。そこで,研究会終了に,各教員が振り返りシートを使って協議から学んだことや感想を書き,読あうようにした。
以下は,初任者が行った国語の公開業での振り返りコメントの中から,ベランの教員がその日の研究会の中からんだことである。
「子ども同士が意見を絡め合い,読を深めていくためには,発問の仕方が切であることを学んだ」「単元目標を成するために,毎時間子どもと課題を有することの大切さを学んだ」
以上のように,若手教員もベテラン員の授業から学び,経験20年を越えベテラン教員も若手教員との討論の中ら学び,次の授業へのめあてをもつこができた。
毎月のように行われたこれらの授業究会を通して,各教師が自分の授業の題として多くのことを学んだ。
国語の「読むこと」「書くこと」のをつけるための授業での具体的な方策して,以下のようなことが各教師の学として記録された。
以上のような教師の学びについて,の後の授業でそれらが充分に活かされいるとはまだ言えない。
今後も授業研究を工夫し,ベテラン若手もお互いに学びあう中で,授業力高めていく必要がある。
初等中等教育局参事官付学力調査室
-- 登録:平成22年03月 --