群馬県教育委員会 「確かな学力」の向上を目指して‐子どもたち一人一人のつまずきの解消のために‐

はじめに

 群馬県では,平成19年度に群馬県検証改善委員会を立ち上げ,全国学力・学習状況調査の分析を行うと共に,課題を整理し,『「確かな学力」を育成するために』学校改善支援プランを作成・配布した。
 また,調査実施後に,調査問題を分析した活用資料を作成し,本調査の目的や内容が学校の授業改善にすぐに反映できるように取り組んでいる。

結果活用資料(小学校・中学校)

 さらに,総合教育センターにおいて「『全国学力・学習状況調査』分析システム」と「『全国学力・学習状況調査』にかかる個人診断システム(小学校)」を開発し,前者では,各学校における学力・学習状況調査の結果について,全国や県と比較した結果をグラフ表示し,小問単位や関連問題単位に課題を把握できるようにした。また,後者では「児童質問紙調査」の回答結果を基に個々に診断し,個別指導に生かせるようにした。

1.群馬県教育委員会における取組

1.事業内容について

(1)事業概要

 平成19年度全国学力学習状況調査の結果等から明らかとなった課題の解決に向けて,具体的な改善策を提案するために,調査研究協力校8校を指定した。
 調査研究協力校では,平成19年度全国学力・学習状況調査等の結果から明らかとなった課題を踏まえ,その改善に向けた実践を進め,改善の事例を集積した。
 調査研究協力校は,前橋市教育委員会内の小・中学校とし,県と前橋市が連携を図りながら指導を進めた。11~12月には各学校を訪問し,取組について視察・支援した。
 協力校には校内体制の整備や研修の充実と共に,授業改善に取り組み,実践事例を集積するように依頼した。また,実践事例については,1~2月に県教育委員会で取りまとめ,県内への普及を図った。

(2)実施体制

 各学校の実態を十分把握しており,学力向上に向けた一体的な指導が推進できるという観点から,前橋市教育委員会と共に指定校の選定を進めた。
 指定校選定の視点としては,平成19年度全国学力学習状況調査の結果を基にして,「活用力が弱い」「学力の二極化が見られる」「基本的な生活習慣に課題が見られる」など,課題が見られ,改善のための実践に積極的に取り組んでいける学校を選定した。

<実施体制>
○調査研究協力校(前橋市立学校)
・広瀬小学校 ・月田小学校
・桂萱小学校 ・広瀬中学校
・桂萱東小学校 ・桂萱中学校
・粕川小学校 ・粕川中学校
○指導・助言
群馬県教育委員会・中部教育事務所
前橋市教育委員会
○講話・助言
群馬大学教育学部

(3)研究成果

 協力校においては,全国学力・学習状況調査を活用した実態把握を綿密に行い,課題を明らかにすることにより,各学校の校内研修の活性化や教員の授業改善に向けた意識向上などの取組を推進することができた。また,学校の課題は様々であるが,それぞれ実態に応じた特色ある取組を展開することができた。
 本事業をきっかけとして,学校がそれぞれの課題を自分のこことして明確にとらえ,主体的に改善策に取り組むという点で大きな成果があったと考える。
 教育委員会では,主に協力校への支援と講演会の開催を行った。
 協力校への支援としては,取組の内容や方向性などを聞き取り,今後の取り組みについての指導・助言が主であった。事業期間が短かったため,充実した支援ができなかったのは残念であるが,本事業の趣旨を理解していただき,適切な実践を実施していただいた。
 講演会は,群馬大学教育学部の河野庸介教授を招いて行った。同教授は元文部科学省の調査官であったので,本事業の趣旨に沿った貴重な講話を伺うことができた。

2.普及啓発と今後の取組について

(1)成果の普及啓発に関する取組

 実践事例を中心にした冊子の作成やホームページ上の掲載を行った。各学校には実践の特色を生かした,分かり易い記述を心がけてもらった。各学校の課題や改善のポイント,実践事例が詳細に記述されており,多くの学校が参考にできるものであると考える。

 学力UP!実践事例集

※群馬県総合教育センターホームページ内(http://www.center.gsn.ed.jp/)・平成21年度学校教育の指針【解説版】・指針に関連する資料等から見ることができます。

(2)来年度以降の取組

 群馬県では,平成19年度から平成21年度までの3カ年計画で「群馬県『確かな学力』向上計画」を実施しており,本年度は最終年度となる。また,全国学力・学習状況調査も3年目となり,一つの区切りであると考えている。
 そこで,「確かな学力」向上計画評価委員会(仮称)を立ち上げ,全国学力・学習状況調査の考察を行うとともに,「群馬県『確かな学力』向上計画」のまとめを行いたいと考えている。

2.調査活用協力校における取組事例

取組事例1 「学習規律の定着と表現力の向上」に重点をおいた取組 前橋市立桂萱中学校

(1)学校の状況について

《学力に関すること》

 国語科では,平均正答率が全国を上回っているが,「適切な段落を設けて,論理的な文章にすること」「読み取った情報を根拠として示しながら,自分の立場を明確にして意見を書くこと」に課題が見られた。
 数学科では,平均正答率が全国平均を下回っており,A問題「知識」,B問題「活用」共に課題が見られた。その中でも特に「事象と式の意味を照らし合わせること」や「方針にもとづいて証明すること」が数学科としての課題であると考えた。また,CRT学力検査や日常の授業の様子からも,国語科・数学科ともに,自分の考えをもち,それを文章や言葉で表現する力,説明する力の不足が課題として考えられる。

《学習状況に関すること》

 「ものごとを最後までやりとげて,うれしかった経験が不足している」「自分のよいところ(長所)に気づいていない」「学習への関心は高いが,平日や土日の家庭学習時間が少ない」といった課題が見られた。日常の授業において,「読む」・「書く」・「話す(説明する)」といった言語活動・表現活動を取り入れた生徒主体の授業展開や,それらを通して生徒に達成感や自信を持たせていくことなどが課題として考えられる。

(2)全国学力・学習状況調査の結果等を活用した取組について

【ポイント1】学習規律の定着

「桂萱中学習習慣十箇条」の作成
 学習習慣形成のためのヒント集(平成20年3月前橋市教育委員会)を参考にして,本校の授業改善のポイントである思考力・判断力・表現力の向上に関わる学習習慣を中心に作成した。

 全国学力・学習状況調査の結果等を活用した取組について

1.生徒への啓発
 全生徒に「学習習慣十箇条」についてのプリントを配布し,学級担任から説明を行った。また,教室や廊下等に拡大したものを掲示したり,生徒の机に縮小したものをはり付けたりするなど,生徒の目に触れやすく,授業時にも意識できるようにした。

2.日常の授業での指導
 各教科の特性に応じて「学習習慣十箇条」を指導してきた。発表の声が小さい場合に発表者から離れた席の生徒に声が聞こえたか確認したり,板書を整理し,ノートをとる時間を確保したりするなどの工夫や配慮をしてきた。

3.授業の見合いでの評価
 教員相互の授業の見合いの授業参観記録の中で,「発表の仕方」「話の聞き方」の2点について参観者による評価を行い,生徒の学習規律の達成度を確認できるようにした。

【ポイント2】表現力の向上を目指した授業改善と授業の見合い

1.教科部会の活性化
 教科部会を毎月定例開催し,全国学力・学習状況調査や学力検査等の結果をもとに,本校の課題の分析,課題解決のための授業改善を検討・実施してきた。各教科部会から出された分析結果をもとに,校内研修全体会において,全教科共通の授業改善のポイントを「思考・判断する力や表現力の向上を目指した授業改善」に設定した。その後の教科部会においては,各教科で学力向上のための手立てや具体的な授業改善策を検討したり,発問の仕方やワークシートづくり,教材や教具の工夫などの指導技術を共有したりしてきた。

2.授業の見合い
 各教科で設定した授業改善策については,個人個人の日々の授業を中心として実践していくわけであるが,授業改善策の成果や課題を検証する場として,学期に1回,全教科・全職員による授業公開(授業の見合い)及び,授業研究会を行ってきた。
 授業参観時には,各教科共通の記録用紙を使用した。記録用紙は,成果(良かった点)と課題(こうするともっと良かった)を授業者にしっかり伝えられるよう,また,授業改善策のポイントに絞って記入できるように工夫した。そして,参観記録用紙をもとに授業研究会を開催し,授業改善策の再検討を行った。

《指導の実際》

○単元数学科2年『多角形と角』
○ねらい
 凹四角形の性質を,これまでの図形の性質を使って説明する方法を理解する。
○展開

  1. これまで学習した図形の性質を復習する。
  2. 凹四角形の性質を知る。
  3. 凹四角形の性質を説明する方法を考える。
  4. 凹四角形の性質がいろいろな方法で説明できることを知る。

単元数学科2年『多角形と角』

○授業改善の手立て
 自分の考えを記述し,説明する力の向上を目指し,本時では,次のように授業改善を行った。

〔既習事項の確認と教室環境整備〕

 自分の考えを記述するために必要な「既習事項」を授業の始めの段階で押さえた。具体的には,「対頂角は等しい」「多角形の内角の和,外角の和」「三角形の外角と内角の性質」「平行線と角の性質」などを確認することで,これらを利用して凹四角形の性質を説明しようとする意欲を高められると考えた。
 また,図形の説明に必要な補助線の種類についても「対角線をひく」「平行線をひく」「辺を延長する」など,これまでの学習内容を整理し,生徒に伝えることで,生徒が自分で考えていきやすいように配慮した。これらの「既習事項」は少人数教室の壁面に「証明のよりどころ」として常に掲示しておき,生徒がいつでも見られるようにしておいた。

〔発表場面の設定〕

 少人数指導の長所を生かし,個人思考の段階で生徒一人一人がノートに記述した説明について,机間指導で教師がアドバイスをしたり,合格印を押して評価したりするなど自信をもって発表できるように意欲付けを図った。

【全体での発表】

 発表者の指名は異なる補助線で説明している生徒や同じ補助線でも説明の手順に違いがある生徒の意見を採り上げるように留意した。また,早く説明を書き終えた生徒については,他の補助線で説明できないかという課題を与えた。
 発表者の説明の前に,まず「読んで理解できる」かどうか,時間を取り理解を促した。その後,発表者に内容の説明をさせ,「説明を聞いて理解できる」かどうか,他の生徒に確認した。このように,説明を聞く前に記述内容を自分で読んで説明が理解できる力を養う時間(説明を読み取る時間)を設定した。

〔ホワイトボードの活用〕

 ノートに説明をしっかり記述できた生徒にはホワイトボードを渡し,発表のための記述をさせた。ある程度の人数が自分の説明をノートに記述できた時点で,ホワイトボードを一つずつ黒板に掲示し,生徒に説明させた。
 ホワイトボードには,「そのまま黒板に貼れる。使用後は,別の場所に移動できる。」「書き間違えてもすぐに書き直せる。」
 「他の生徒の思考中に,自分の座席で書き始められる。」などの利点があり,発表時には,何度か活用してきた。

【ホワイトボードへの記入】

〔生徒同士で教え合う場面の設定〕

 代表生徒の説明を聞いた後に,「隣の人と相談してごらん」と呼びかけ,相談タイムを設けた。説明を聞いて不明な点などを生徒同士で気軽に相談しあうことができた。教え合いの内容を教師が聞き取っていく中で,生徒がもつ疑問点など把握することができ,それに対しての指導をすることができた。
 また,説明力を高めるためには,「間違った意見」に対して周囲が揶揄するのではなく,「間違いから学ぶ」姿勢の大切さを伝えることができた。

【教え合いの場面】

(3)成果について

○「学習習慣十箇条」をもとに,生徒・学校・家庭での共通認識が図られ,返事や挨拶などがしっかりできる生徒が増えてきており,発表時の言葉遣いも丁寧になってきている。
○授業の見合いの中で,「発表の仕方」「話の聞き方」について参観者による評価をしてきた結果を見ると,「落ち着いた雰囲気の中で授業が展開されており,発表内容が的確になってきた」といった成果が現れている。
○間違いを指摘し合い,どうすれば良かったのか確認し合うなど,お互いに高め合う雰囲気が感じられるようになった。
○多くの生徒が進んで友達と自分の考えや意見を交換したり,分かりやすい説明ができるようになったりするなど,考えの記述・説明の力に向上が見られた。

(4)来年度以降の課題について

○発表の仕方や話の聞き方など今後も継続して指導していく必要がある。また,家庭学習の不足については,教科と学年が協同して家庭学習の課題を設定するなど,全校体制での取り組みが必要である。
○他教科の授業の参観や授業研究会をもつことにより,教科外の教員からの様々な意見や感想をもとにした授業改善策の検討を進める必要がある。

取組事例2 「言語感覚の育成と学習形態の工夫」に重点をおいた取組 前橋市立広瀬小学校

(1)学校の状況について

 6年生で実施した全国学力学習状況調査『国語』を振り返ると,本校児童の実態として「語句や文章の特徴に注意しながら読む」「文章の表現や叙述に注意して読む」ことはある程度できるが,「どんな話か考えながら読む」「心情などを読み取る」「要約しながら読み取る」等の力が不足していることが分かった。つまり,文章で述べられていることをそのまま読み取ることはある程度できるものの,思考を伴った読み取りに課題がある。
 また,児童の文章に対する意識調査等を分析すると,心情を読み取ったり,状況を考えながら読んだりするためには,言葉の持っている意味や背景,その広がりに目を向けさせて学習させていくことが必要であることが分かった。
 児童の日常の会話や学習の様子から現代の子どもたち全体に言えるであろう語彙の少なさも見て取ることができる。これは生活体験が不足しやすい現代の生活形態や子どもたちが生活している文化的な背景が大きく関わっているといえる。
 以上のことから,1.「語彙を高め,さまざまな状況やその時の心の動きなどを言語として理解し,表現する素地となる言語感覚を養うこと」,2.「自分の考えを明確にしながら文章を読む力を養うこと」が本校児童の国語学習の課題であるといえる。

(2)全国学力・学習状況調査の結果等を活用した取組について

【ポイント1】詩や俳句等の作成を通した言語感覚の育成
1.学習環境班による取組

 児童の言語活動の素地を養うために「学習環境班」が中心となって,詩や俳句・川柳といった作品づくりを実施した。この作品づくりは,言葉の持つ意味やイメージをふくらませて自由に作品をつくり,日常の学校生活の中でいつでも投稿できるようにすることで,言葉に対する距離を近く保ちながら行動や思考を言葉で表し,言葉の力を養おうとしたものである。作品づくりの励みになるよう,すぐれた作品は「上毛俳壇」や「子ども川柳」に投稿・応募をして,作品を広く認めてもらえる機会を設けた。
 また,秀作は校内に掲示し,児童が作品づくりに励めるようにした。そして,多くの児童が掲示作品を鑑賞することで,言葉の使い方や構成を参考にし,さらによい作品づくりへと向えるようにした。

 【作品投稿案内・投稿箱】

2.学校行事や日常の授業における詩や俳句等の取組

 各学年での学習指導においても詩や俳句・川柳づくりが行われた。低学年では詩の作品づくり,中学年以上は俳句・川柳づくりを中心に行った。より短い言葉の中に出来事や気持ちを表すのは表現としては難しいものとなるため,低学年は詩の創作を通して,言葉に触れ考えることとした。中学年では俳句や川柳の違いにはあまり触れず,五・七・五の言葉のリズムの中で自由に表現し,効果的な言葉の使い方を考えるようにした。
 6年生では修学旅行で古都鎌倉に行く機会を利用して,日常生活とは別世界の中で見たもの感じたことを俳句・川柳として表現する活動を行った。

【修学旅行の俳句・川柳】

 詩や俳句・川柳づくりを行ってきた子どもたちは,これまであまり意識せずに使ってきた言葉の持つ意味や広がりに,多少なりとも関心をもつようになり,言葉をリズムにのせて表現することのおもしろさを感じることができた児童も多くいた。また,6年生は思い出づくりとしてもよいものになり,その後も廊下に掲示された互いの作品をしばしば振り返りながらよいコミュニケーションの場となっていた。

【ポイント2】個や集団の学びを生かす学習形態の工夫

 「読むこと」の指導においてワークシートや学習形態を工夫・改善することにより,「読む力」を高め基礎学力を確実に身につけた児童を育成しようと実践を行った。特に「個の学び」と「集団の学び」という形態の工夫から,読む力を養う取り組みを行った。
 一斉指導の中で,発問をして個人に考えさせ,全体の場で意見を述べ合い学習を深めていくことは,ごく一般に行われている授業展開である。ここでは「小集団の学び」も加えて,段階的に意見交流を行い,読み取ったことやその根拠となるもの,自分の考えを比較検討し読みを深める授業を行った。

《指導の実際》‐6年生「平和のとりでを築く」‐

 6年生の題材『平和のとりでを築く』は,文のつながりや前後の関係がとらえやすくなっている。文章全体を通して,事実と意見・筆者の思いがはっきりとわかるように述べられていて,特に文末表現に着目させることで理解しやすい文章になっている。そこで,事実と意見の述べ方に気をつけて筆者が訴えたいことをとらえ,自分の考えを明確にしながら読むことができるようにすることを目標として授業実践を行った。

1.ワークシートに自分の考えをまとめる活動の設定

 取り組みの一つとして,ワークシートに自分の考えを書く課題を必ず設け,筆者の意見を読み取った後に,児童自身が感じたことや考えたことを書くようにした。自分の考えを明確にしながら読むことは本校児童にとって難しい課題である。学習を始めた時点では一文を書くことができずに,ワークシートを前にして考え込んでいたのが実態である。しかし,感じたことや考えたことは人それぞれ違うものであること,自分が感じたことであれば素直にそのままを書けばよいことを助言し,読み取ったことから自分の感じたことや考えを書き留める学習を重ねてきた。

2.自分の考えを明確に持たせる個の学び

 この学習と深く関わりを持たせて実践したのが「個の学び」「小集団の学び」「集団(全体)の学び」である。

【個の学びに取り組む児童】

 まず,読み取りの課題を投げかけ,本文から筆者の考えの中心となる部分を見つけさせ,さらになぜその部分が筆者の考えだと言えるのか,その根拠も合わせて考えさせ書き留めることをさせた。教師も児童も言葉を発せず,個々の児童が教材本文と向き合い,自らの考えをもつ場を設定した。必要に応じて個々の児童には支援を行った。この段階が「個の学び」である。

3.個の学びから小集団の学びへ

 次に,自分の読み取ったことや考えたことの交流をする場面を設けた。「小集団の学び」である。4人のグループを作り個々の児童が必ず発言をする場とし,意見をまとめたり記録をとったりすることはしなかった。これは自分の読み取りや考えたことを他と比較してとらえることだけをねらいとしたためである。第1時の段階では進行役を務める児童は決めずに,ルールだけを示して交流をさせた。ルールは「3分の時間で全員が発言をすること」「傍線を引いた箇所,自分で書き留めたこと,自分が考えた読み取りの根拠など,発言内容は様々な視点からでよいこと」の2点である。最初の話し合いが終わった時点で,進行役を努めていた児童を互いに明確にさせた。進行役をしていた児童は,教師が意図していた児童が多かったが,そうでない児童もいた。これは,児童にとっても指導者にとっても能力の発見となった。

【小集団の学びの様子】

4.小集団の学びから集団の学びへ

 次は「集団(全体)の学び」である。全体の場での発言や交流がこの学習の要である。互いに読み取ったことや根拠となる考えを発表し,そこから筆者の主張を明確にし要点まとめをしていく。この学習を支えているのは「小集団の学び」である。すでに短時間ながら意見交流をしたことにより,自分の考えに自信をもったり修正をしたりしながら,それぞれの児童が発言しやすい状況となった。さらに考えを比較したり交流したりすることが2回あることから,児童の読み取りは明確化されてくる。「小集団の学び」を行う前と比べると,自分の考えをもちながら「集団の学び」に臨む児童が増え,発言にも自信を感じることができるようになった。

5.再び個の学びへ

 「集団の学び」の後に「個の学び」を設け,さらに深く考えたり,これまでの自分の考えをまとめたり,交流から得た考えを自分の意見に取り入れたりしながら筆者の主張をまとめる作業を行った。そして読み取ったことから自分が感じたことや考えたことをワークシート書き込む学習を行うことで「自分の考えを明確にしながら読む」力を養うことができた。

(3)成果について

○語彙を養い,言葉の意味を考えたり適切な表現や使い方を考えたりするために,短い文を考えることは効果的であった。詩や俳句・川柳というリズムのある作品づくりは題材として適切であった。
○学習形態の工夫の中で「小集団の学び」を加えた「個の学び」「集団の学び」は,考えを明確にしながら読む力を養う上で効果的であった。

(4)来年度以降の課題について

 相手意識や目的意識を持って「書くこと」「話すこと」ができるように,別の視点からの短文づくりを考えていくことが必要である。また,基礎・基本の定着を重点に置きながらも活用力を養うような学習を充実させていくことも必要である。

お問合せ先

初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)

-- 登録:平成22年03月 --