平成19年度実施された全国学力調査において,本県の小・中学生は,基礎的・基本的な内容については概ね理解しているものの,学んだことを活用する力に課題があるという結果となった。
また,正答数の多い児童生徒数の比率が,全国と比較してやや低い状況が見られ,結果としてすべての教科で全国平均を下回った。
さらに,学習状況調査の結果では,家庭で予習・復習をしている割合は全国平均より高いが,家庭における学習時間については,全国平均より少ない傾向にあることが分かった。
このような状況を踏まえ,県教育委員会では,検証改善委員会の提言を受けて,「教員の教科指導力の向上」「児童生徒の学習習慣の形成」「教育環境整備の充実」の3つの柱を立てて,学力向上の対策に当たることとした。
特に,「教科指導力の向上」及び「学習習慣の形成」を図るために,平成20年度から,義務教育課内に3名の指導主事で構成する「小・中学校学力向上チーム」を新設し,学校に,継続的・個別的・直接的に支援をする「学力向上サポートプログラム事業」を立ち上げた。
ア 学力向上支援校への支援
学力向上のために学校改善に意欲的に取り組む小・中学校54校を学力向上支援校として指定し,専門のチームが年間3~4回その学校を直接訪問し,学習状況の分析や活用について助言などを行い,教員の指導力の向上に努める。対象教科は,特に課題のあった算数・数学に絞って実施する。
イ 学力向上連絡会議(年間10回)
本事業を有効かつ円滑に推進するために,学力向上連絡会議を開催し,学校支援のための基本方針や訪問指導の在り方,訪問の日程調整等を行う。
ア みやぎ単元問題ライブラリー
児童生徒の学習習慣の形成を図るために,全国学力調査の結果等から明らかになった本県児童の課題を踏まえ,算数における単元ごとの問題を作成し,Web上に掲載し,ダウンロードして活用できるようにする。
学力向上サポートプログラム事業(学校改善推進実践研究事業)
学力向上支援校における学力向上に向けた学校課題の改善については「改善がみられた」と回答した学校が50%,「どちらかといえば改善がみられた」と回答した学校が50%あった。
改善がみられた要因としては二つのことが考えられる。
一つ目は,学力向上支援校が,課題解決に向け,取組の具体的な方策を設け,授業を行っていき,それに対し,専門チームが,学校課題に沿った指導・助言を重ねていったことである。
算数の模擬授業チームと学校の継続した取組が,学校課題の改善につながったと考える。
二つ目は,校内研修会の実施についてを工夫したことである。
支援校では,校内研修の活性化を図るために,模擬授業やワークショップ型の事前・事後検討会を実施したり,地域の小・中・高等学校にも参加・協力を呼びかけ,連携を図ったりするなど研修の実施について工夫がなされていた。
※他校からの参加者のべ306名
本事業の成果の普及を図り,各学校の学力向上に関する取組を推進していくために,成果発表会を9回開催した。
※参加者数:延べ630名
報告書には,学校支援のために,主に下記について掲載している。
対象校は54校から101校とし,対象教科は,算数・数学に国語を加えて実施する。
問題作成教科を小学校国語,中学校国語,数学とし,Web上に掲載する。
文章のみならず,視覚的な資料も読み解く力をつける。そのために,紙媒体だけでなくICTを活用した指導を取り入れることにより,そしてより高い読解力を身に付けた生徒の育成を目指す。研究を進めるに当たっては,国語科だけでなく他教科・領域を含めた中でも,充実を図り,学校教育全体で取り組んでいく。
1.基礎・基本の定着のために2つの手立てと8つの具体的手立てを立てて取り組んだ。
<手立て1>計算の意味を理解させ,それを定着させるための指導法の工夫
・課題提示の工夫
・算数的活動の工夫
・自分の考えと友達の考えの共通点と相違点を明確にさせる工夫
・児童の特性に応じた指導の在り方
・学んだことを確実に身に付けさせるための繰り返し学習等の在り方
<手立て2>評価の工夫
・フィードバックの仕方の工夫
・自己評価の工夫
・座席表の活用
2.「家庭学習の手引き」を作成し家庭学習の習慣化に向けた取組を充実させた。
3.「基礎・基本の定着」を支えるために,ノートの使い方,ハンドサイン,筆算形式の統一を図った。
4.「全国学力・学習状況調査」「CRT検査」等の結果と課題への取組について保護者へ積極的に情報を提供し,学校と家庭の連携を図った。
ア 「課題提示の工夫」では,具体物・半具体物を提示することで問題場面をイメージしやすくなり,既習事項と,本時の学習課題の違いを明確にすることができた。
イ 「自分の考えと友達の考えの共通点と相違点を明確にさせる工夫」では,ハンドサインを使うことで,友だちの意見を聞いて,自分の考えと同じなのか違うのかを明確に意識させることができた。
ウ 「児童の特性に応じた指導の工夫」では,スモールステップのヒントカードを用意し,自分で選ばせたり,提示したりすることで.意欲的に取り組ませることができた。
エ 習熟度別学習を積極的に取り入れることで,個のつまずきに応じることができた。
「フィードバックの工夫」では,机間指導でこまめにノートに丸を付けることにより,児童の自信となったり,間違いに気付き考え直すきっかけになったりした。
ア 「スキルタイムの工夫」では,短時間に集中して取り組ませることで,計算力を付けることができた。
イ 「家庭学習の定着」では,「家庭学習の手引き」の作成や「家庭学習カード」の工夫により,保護者への意識付けも図れ,家庭学習の習慣が定着してきた。
ウ 「ノートの使い方の統一」により,ノート指導に時間がかからなくなった。また,見やすく書けるようになり,既習事項も想起しやすくなった。
エ 「ハンドサインの活用」により,自分の考えを表現できるようになった。また,自分の考えと友達の考えの共通点と相違点を明確に意識させることができた。
事前研修会に模擬授業を取り入れるなど,実践的な研修を行うことによって,校内研修の充実が図られた。
1.「生き生きと進んで学ぶ子どもの育成」(算数的活動の工夫を通して)を研究主題・副題として設定した。
2.全国学力・学習状況調査の他,宮城県学習状況調査,教研式標準学力検査等の結果を分析し,学校としての課題及び学年・学級の課題,児童個々の実態をとらえた。
3.研究の仮説として,「各種調査結果の分析と活用」,「算数科の特性を踏まえた教材分析と算数的活動を取り入れた指導の工夫」,「個に応じた指導の工夫」を設定した。
4.研究授業の実施に関して,「研究授業に至るまでの手順」を作成し,事前の授業準備から事後の検討会までの流れをパターン化した。そのパターンに従って,全職員による事前検討会を行い,その後も,工夫点の有効性を検討するために,学年部を中心にして,先行授業や模擬授業を実施した。
5.授業づくりにおいては,本時の目標,児童の実態(課題),算数的活動の工夫の観点から構想を練り,研究授業における提案事項を明確にした。
6.学習の目標及び内容と児童の実態を踏まえ,指導体制の多様化を図った。(一斉指導,T・T指導,少人数指導等)
7.全職員による事後の検討会では,児童の様子を中心にして,授業における仮説の検証を行い,次の実践への課題を確認した。
8.研究仮説と具体内容
<仮説1>各種調査結果の分析と活用
・全国学力・学習状況調査結果の分析
・宮城県学習状況調査結果の分析
・教研式標準学力検査結果の分析
・算数科にかかわる意識調査の実施と分析
・単元ごとの実態調査の実施と分析
<仮説2>算数科の特性を踏まえた教材分析と算数的活動を取り入れた指導の工夫
・新学習指導要領(算数科)の理論研究
・年間指導計画の見直し
・各単元における指導内容の分析
・算数的活動の工夫
・発問と構造的な板書の工夫
<仮説3>個に応じた指導の工夫
・T・Tと少人数指導の工夫
・スキルタイム,サポートタイムの工夫
・算数科に興味を引く教室経営の工夫
9.研究授業における提案
ア 3年「水のかさのはかり方と表し方」
<提案>「数学的な考え方」を向上させるための個に応じた指導の試み
イ 4年「三角形の仲間を調べよう」
<提案>算数の学ぶ楽しさを味わわせ,学ぶ意欲を高めるための個に応じた指導の試み
ウ 1年「ふえたりへったり」
<提案>算数的活動の工夫を通し,学ぶ意欲を高め,基礎・基本を確実に身に付けさせるための指導の試み
エ 5年「比べ方を考えよう」
<提案>
A:既習事項を活用して解決する力を向上させるための指導の試み
B:数直線図と自作の教具を活用して問題を解決させるための指導の試み
初等中等教育局参事官付学力調査室
-- 登録:平成22年03月 --