大阪市検証改善委員会
大阪市では、現行の学習指導要領より、「教育懇話会」を独自に設置し、その提言を受けて「21世紀にはばたくなにわっ子」の育成を目指した「大阪市教育改革プログラム」を策定した。その後、「豊かな心の育成」「社会の変化に対応する教育」「大阪らしさを活かした教育」を重点目標に各種施策の充実と、学校園への支援体制の整備に取り組んできた。
平成15年から実施している「大阪市学力等実態調査」の結果をふまえ、子どもの個性や能力を伸ばす教育の実現を目指して、習熟度別少人数指導に取り組むため、人員配置、条件整備等、整えてきたところである。
しかし、「大阪市学力等実態調査」において、記述式の問題について無解答率が高く、(18年度調査ではわずかに減少した)「書くこと」においての課題がみられた。
大阪市教育委員会は、これらの課題を受け、平成16年度より「大阪市学力向上推進委員会」を設置し、
の3つの専門部会で、大阪市の子どもの学力向上のための効果的な方策について、研究・推進をすすめてきた。
大阪市検証改善委員会は、大阪市教育委員会指導部長を代表者として、大阪市教育委員会、大阪市教育センターの指導主事を行政関係者21名と、市内小学校の校長(国語1名、算数1名)市内中学校の校長(国語1名、数学1名、英語科1名)と、大阪教育大学の教授の学識経験者1名の検証改善委員から構成される委員会である。
本委員会の他に特に、効果のある学校の取組を調査し、その分析を集中的に行うために、大阪教育大学米川教授を中心とした専門ワーキングチームを設け、検討を行った。
7月に検証改善委員会第1回会議を行い、3月まで、3回の委員会と、分析に関わる、専門部会9回、ワーキングチームの学校への聞き取り作業などを実施し、学校改善プランをまとめた。
全国学力・学習状況調査における大阪市の結果について、全体の傾向としては、全国の状況と同じである。しかし、無解答率が高く、得点上位層の山が低い。小学校国語では「話すこと・聞くこと」、中学校国語では「書くこと」「記述式」において、課題がみられる。算数・数学では、知識や技能については、比較的良好であるが、B区分問題の記述式問題に課題がある。特に中学校数学では、無解答率が高く、拡散化も顕著である。
以下、教科の区分毎に課題をまとめた。「」は課題となっていることである。
学校質問紙からは、就学援助率が全国に比べて非常に高く、生活背景の厳しさがみてとれる。また、中学校において、運動部への所属率、校内研修会の実施率などが、全国に比べて低い傾向がある。小・中ともに習熟の早い児童生徒よりも遅い児童生徒に対する取組の方が多い。
児童生徒質問紙からは、住んでいる地域は好きだが、地域への関心は低い、思いやりの態度は全国より高いが、自分には良いところがあると感じている率が低いなどの課題がある。
18年度の大阪市調査、19年度の全国調査の結果から、学力に影響を与える要因をまとめると、下図のようになる。
2で述べた分析結果を受けて、大阪市検証改善委員会として、以下の5点を中心に学校改善支援プランをまとめた。
人数指導の充実と授業改善の方策を示す
3で述べた学校改善支援プランについては、周知をはかるため、12月26日に全市教職員を対象に「学力向上シンポジウム」を開催した。約800名の参加があった。
多くの小学校の若手教員が指導に対して苦手意識を持っている国語科授業の参考資料「明日から使える『授業の技』」を作成し、「学力向上シンポジウム」で配付した。
3月末には、指導方法の具体的な改善を目指すために、習熟度別少人数授業の実践事例集を作成、4月に全市学校に配付する。
また、教育センターにおいて、小・中学校の教員を対象に「学習指導改善研修会」を実施し、講義、演習、模擬授業などを取り入れた個に応じた指導の充実を目指した研修を行った。
教育研究会の協力を得ながら、児童生徒が自ら楽しく学べるような、学習教材の開発を行い、書く力を伸ばす国語科のワークシート、学習の理解度を確かめる算数評価問題、家庭学習に役立てる算数わくわくチャレンジプリントを合本にした「学びのたしかめ」を作成し、3月に配付した。
家庭・地域との連携や、保護者が学校の取組へ関与できるようなしかけづくりのための、「子どもの生きる力をはぐくむ家庭のちから」のリーフレットを、4月に全家庭に配付した。
児童生徒の自尊感情、自己効力感を高めるための取組として、学級集団づくり、ピアサポート研修などを行った。
大阪市は、就学援助率が30パーセント以上の学校が、小学校が全国の6倍、中学校が全国の9倍であり、子どもたちの生活背景の厳しさがみてとれる。
就学援助率については、学力との関係性が強いとはいえないが、少なからず子どもたちの学習状況に影響を及ぼしていることは考えられる。
19年度全国学力・学習状況調査から、就学援助率の高い学校で、一定の成果を上げている学校の取り組みについて、多角的な面から検証し、学力向上の要因を探った。
検証の結果、
など、学校の様子、取り組みが見えてきた。分析結果からも、子どもたちの自己効力感を育てること、規範意識を育てること等が大切であるということが明らかになっている。
大阪市は、「豊かな心の育成」「社会の変化に対応する教育」「大阪らしさを活かした教育」の充実と、学校園への支援体制の整備に今後も取り組む。また、次年度も大阪市学力向上推進委員会を設置し、教育研究会、小・中学校長会、市PTA協議会との協力のもと、子どもたちの「生きる力」の育成を目指して研究・研修を進めていく。
-- 登録:平成21年以前 --