名古屋市検証改善委員会
名古屋市では、平成19年3月に「なごやっ子教育推進計画」を策定し、
の五つを児童生徒に身に付けてほしい資質として示し、『夢に向かって人生をきり拓く』力を持ったなごやっ子の育成を目指している。
これまで、「本市の学習状況調査」や「学習と生活に関するアンケート調査」等の結果から、どのような取組が必要かを検討し、学校、家庭、地域に働きかけてきた。
今回の全国学力・学習状況調査は、本市のこれまでの取組が適切であったかどうかの判断材料として、また、今後の取組方向の検討材料として、大きな役割が期待される。
名古屋市検証改善委員会は、名古屋市教育委員会学校教育部長である山田哲郎を委員長として、愛知教育大学教授等の学識経験者3名、校長代表2名、教員代表2名、名古屋市教育委員会の行政関係者3名と名古屋市教育委員会の指導主事を中心とした13名の事務局とで構成される親会議と、それぞれ学識経験者1名、校長代表1名、名古屋市教育委員会指導主事1名、名古屋市教育センター指導主事1名、教員代表4名で構成される国語、算数・数学、学習生活の3部会からなる専門部会とで構成されている。
8月に親会議の第1回を開催し、2月までに3回開催した。第1回は、組織と活動計画の検討、第2回は、保護者用リーフレット案の検討、第3回は、学校改善支援プラン(報告書)案の検討を行った。
また、専門部会は9月に第1回会合を3部会合同で開催し、2月までに各部会が必要に応じて5回から6回の会合を開催して、保護者用リーフレット案と学校改善支援プラン(報告書)案をまとめた。
学校改善支援プランの作成にあたって、平成18年度に小5と中2で実施した本市の学習状況調査の結果と、本年度小6と中3で実施した全国学力・学習状況調査の結果を比較することで、同じ集団の2年間の学力等の変化を分析した。
そして、学習面・生活面の課題について、名古屋市検証改善委員会として、学習に関しては、具体的な授業の改善事例を、生活に関しては改善の視点を中心に学校改善支援プランをまとめた。
検証改善委員会で分析を行ったところ、学習面・生活面で以下の点が明らかになった。
「知識」「活用」の問題ともに、正答率は、全国平均と同程度の結果である。
全国平均を下回る小領域はなかったが、「話の中心に気をつけて聞くこと」は、他の小領域と比較するとやや低い正答率で、全国学力・学習状況調査の結果でも同様の傾向が見られた。
「知識」「活用」の問題ともに、正答率は、全国平均と同程度の結果である。
「概数」「わり算」「グラフ」「公式」の正答率は全国平均より低く、特に「面積と角」の正答率は5ポイント下回った。
全国学力・学習状況調査の結果でも「図形」「公式」は、全国平均を下回るという共通点が見られた。
「効果的に話す」「文章の構成を知る」「文の構造を知る」の正答率は、全国平均より5ポイント以上下回った。
全国学力・学習状況調査の結果では、「文の構造を知る」を含む「言語事項」では改善が見られた。
「数と式」の「絶対値の意味」、「数量関係」の「点の座標」の理解が不十分である。また、「図形」の「展開図から立体を予想すること」では、全国を5ポイント以上下回った。
全国学力・学習状況調査の結果でも、出題された問題は同じではないが、空間図形の正答率が低いなど、同様の傾向が見られた。
「なごやっ子教育推進計画」に基づき、「基礎・基本を身に付け、自ら学ぶ力を備えたなごやっ子の育成をめざして」をタイトルとした『保護者用リーフレット』と『学校改善支援プラン(報告書)』を作成した。
『保護者用リーフレット』では、本市の児童生徒の学習状況と生活実態の概要を小学校版、中学校版に分けてまとめた。
学習に関しては、「知識」「活用」について、領域と評価の観点別に全国を100として、レーダーチャートに示すとともに、全国の正答率との比較を表にまとめた。そして、教科の学力についてのよい点と課題、学習に対する意識を具体的に文章で示した。さらに、家庭への啓発を目的に、家庭での取組例を示した。
生活に関しては、よい傾向や心配される傾向のうち、全国と比べて顕著な事柄を示すとともに、基本的生活習慣等の改善について、家庭への啓発を目的に取組例を示した。
また、『学校改善支援プラン(報告書)』では、全国学力・学習状況調査の本市の児童生徒の学習状況及び生活実態と課題改善のポイントをまとめた。
この、『学校改善支援プラン(報告書)』は、4章で構成し、第1章は平成19年度全国学力・学習状況調査における名古屋市の概要、第2章は教科別調査結果の概要及び指導上の改善ポイント、第3章は児童・生徒質問紙調査結果の概要と指導上の改善の視点、第4章は学校質問紙調査結果の概要を記載している。
特に第2章では、国語と算数・数学の課題について、授業の改善事例を小学校の国語で7事例、算数で11事例、中学校の国語で6事例、数学で7事例を記載し、各学校が実態に応じて選択できるようにした。さらに、第3章では、生活面での課題に対して小学校で11の改善の視点を、中学校で10の改善の視点を示し、各学校が実態に応じて取り組めるようにするとともに、学校と家庭が果たすべき役割も示した。
「全国学力・学習状況調査の結果から分かる、本市の児童生徒の学習及び生活状況の概要を保護者に知らせること」と「家庭での取組例を提案すること」をねらいとした『保護者用リーフレット』を12月に小中学校の全保護者に配付した。
また、「全国学力・学習状況調査の結果から分かる、本市の児童生徒の詳しい学習状況及び生活実態と課題を学校に知らせること」と「授業の改善事例と生活に関する改善の視点を提案すること」をねらいとした『学校改善支援プラン(報告書)』を2月に全小・中・特別支援学校に配付した。
これを受けて、各学校は平成20年度の学校経営の中で、学習面・生活面について実態に応じて学校改善支援プランに取り組んでいく。
また、平成20年度には、文部科学省の委託を受けて「全国学力・学習状況調査等を活用した学校改善の推進に係る実践研究」についても、4校を指定して実施していく。この実践を通して学校改善支援プランの有効性を実証するとともにその成果の普及に努める。
今回の全国学力・学習状況調査の結果で、これまでに把握してきた本市の児童生徒の学力や生活実態を再確認するとともに、新たな課題も把握することができた。
そして、課題の改善に向けて、学校と家庭が一体となって取り組まなければならないことを、『保護者用リーフレット』を活用して啓発した。また、『学校改善支援プラン(報告書)』を活用して、一人一人の教師が課題の解消に向けて指導の改善に取り組まなければならないことと、家庭への働きかけも欠かせないことを提言してきた。今後は、各学校の実態に応じた取組を期待する。
また、本市は平成20年度も、全国学力・学習状況調査に参加する。平成19年度の調査結果が、本市の児童生徒の単年の傾向かどうかを把握するとともに、本市の学習状況調査の結果に基づく改善例が、有効に働いたかを検証し、より実態に即した指導方法の改善等の支援を行っていきたい。
-- 登録:平成21年以前 --