「学びと支えのシステム」の確立をめざして-大分県学校改善支援プラン-

大分県検証改善委員会

はじめに

 大分県教育委員会では、大分県長期総合計画「安心・活力・発展プラン2005」の教育部門計画である「新大分県総合教育計画」を平成18年6月に策定し、それに基づいた平成19年度大分県教育行政基本方針を定め、様々な学力向上施策を推進してきている。
 とりわけ義務教育段階における学力向上に関しては、「小中学校学力向上対策事業」を平成16年度から実施し、次のような取組を行ってきた。

  • 1本県児童生徒の学力の状況を客観的に把握し指導の改善につなげることをとおして、一人一人の学力の向上に資することを目的とした「基礎・基本の定着状況調査」を実施すること。
  • 2各小・中学校においては、「基礎・基本の定着状況調査」の結果等をもとに、自校の児童生徒の学力に関する状況や課題を把握、分析し、地域の方々や保護者に対してその課題の解決に向けた取組状況及び改善策等について説明するとともに協議を行う学力向上会議を開催すること。
  • 3各地域においては、地域の課題を明らかにするとともに先進的な取組を行っている学校の実践の発表、協議等をとおして、地域の課題解決を図る地域学力向上推進協議会を開催すること。
  • 4県全体の取組としては、調査結果から見える県全体の課題の解決に取り組むリーディングスクールを指定し実践研究に取り組むとともに、その先導的な取組を指導資料等を通じて県内に普及すること。

 このように、学校・地域・県全体のそれぞれの段階で課題に応じた取組を展開することによって、三者が一体となった取組を推進しようとする気運が高まりつつある。
 今後は、これまで5年間の県独自の学力調査結果から得られたデータを経年比較すること等により本県学力に係る課題を明らかにするとともに、その課題の解決に向けてさらに学力向上施策を推進する必要がある。
 また、平成19年度から行われている全国学力・学習状況調査のもと、これまでの教育委員会及び学校における教育施策及び指導の結果を把握・検証し、その改善に向けた具体的な計画と取組を進めることが求められている。

1 検証改善委員会の体制について

 大分県検証改善委員会は、大分大学教育福祉科学部教授である堀泰樹氏を委員長として、私立学校長代表1名、市町村教育委員会教育長代表2名、県PTA連合会会長1名、県小中学校校長会代表2名、県教頭会代表1名、県教育委員会関係者(義務教育課長・義務教育課参事)2名の計10名から構成される委員会である。
 本委員会の他に、特に調査結果の詳細な分析と各教科等における改善策を集中的に検討するため、大分大学準教授伊藤安浩氏を中心としたワーキンググループを設け、検討を行ってきた。
 平成19年8月に検証改善委員会を設置し、平成20年2月までに合計6回の検証改善委員会及びワーキンググループ会議を開催し、調査結果の詳細な分析と今後の改善策等の検討を行った後、大分県学校改善支援プランをまとめた。

2 学校改善支援プランの概要

 平成19年度全国学力・学習状況調査の結果から見た本県児童生徒の学力の状況は、次のような課題があり全国における状況等と比較して良好な状況にあるとは言えない現状にある。

  • 1 全国平均の学力水準が確保されていない教科があること
  • 2 特に小学校における各教科の調査結果が全国水準を下回っていること
  • 3 地域間に学力の定着状況において差異が認められること

 これらの課題を改善していくためには、各学校、市町村教育委員会、県教育委員会がそれぞれ調査結果の詳細な分析を行い、それをもとにした対策を早急に講じなければならない。特に、それぞれの段階で取り組むべき課題としては次のことがあげられる。

  • 1 各学校は、自校の学力に関する状況を確実に把握し、問題点等の分析を的確に行い、改善プランを作成すること。その上で、全ての児童生徒に必要な基礎学力を習得させること。
  • 2 学校の取組をサポートする市町村教育委員会や県教育委員会の取組が、各学校に行き届き具体的な効果をあげること。
  • 3 家庭や地域において、学力向上の重要性が認識され、学校と家庭・地域が一体となった取組を推進しようとする気運が高まること。

 これらの課題を解決するためには、それぞれが果たすべき責任を自覚した上で努力することはもちろんのことであるが、学校、市町村教育委員会、県教育委員会が一貫した考え方の下で総合的な学力向上対策を実施していくことが何よりも大切である。
 そこで、大分県検証改善委員会では、学校、教育委員会、家庭及び地域におけるそれぞれの機関において積極的な学力向上の取組がなされるよう、その主な点について提言としてまとめ、学校改善支援プランとして大分県教育委員会に答申した。

3 全国学力・学習状況調査の結果分析について

1 教科に関する調査:県全体の結果概要

(1)各教科区分別の調査結果

  • 1小学校調査:国語、算数ともに(B活用) の平均正答率が全国を3ポイント程度下回っている。
  • 2中学校調査:国語、数学ともに全国とほぼ同じである。

(2)地域別の調査結果

  • 小学校よりも中学校において地域間の差が大きくなっている。
  • 小・中学校ともに、全ての問題において、A(知識)よりB(活用)の方が地域間の差が大きく、中学校国語B(活用)では7.8ポイントと、その差が最も大きくなっている。
  • 算数・数学よりも国語において、地域間の差が大きくなっている。
  • 中学校では、竹田地域はいずれも全国平均を上回っている。
  • 佐伯教育事務所管内は佐伯市のみであるため、文部科学省の定める実施要領の趣旨を踏まえ、大分教育事務所と併せて表記している。

2 児童生徒質問紙調査

 あらゆる意味で「学習の質」を高めることに尽きる。具体的には、次の4つの視点があげられる。

  • (1) 日常生活の文脈、社会的な文脈に根ざした教科学習を展開する。
  • (2) 総合的な学習の時間を教科学習と必然的・有機的に関連づける。
  • (3) 家庭学習の質に配慮する。
  • (4) 小学校と中学校で共通認識を持ち、義務教育9年間にわたる一貫した取組を展開する。

3 学校質問紙調査

 学校質問紙調査から見える課題としては、次のことがあげられる。

1 時期や機会をとらえた的確な指導を展開する

 放課後を活用している割合は高いものの、長期休業中を利用している学校の割合が低くなっている。
 単元レベルなどの大きなつまずきやそれに起因した学習意欲の低下などに対応するためには、夏季休業中にしっかりと補充的な学習サポートを行うことが効果的であり、時期や機会と捉えた的確な指導を充実させていく必要がある。

2 発展的な指導を充実する

 補充的な内容についての指導は積極的に実施されているものの、発展的な内容については取り組みが不十分な面がみられる。習熟の早いグループの児童生徒の学習意欲を喚起し、活用できる学力を身に付けさせていくためにも、発展的な内容に積極的に取り組むことが求められる。

4 学校改善支援プランについて

 調査結果からみえる課題を解決するためには、教育に携わるそれぞれが果たすべき責任を自覚した上で努力することはもちろんのことであるが、学校、市町村教育委員会、県教育委員会が一貫した考え方の下で総合的な学力向上対策を実施していくことが何よりも大切である。
 つまり「校長を中心とした学校を支え、バックアップするためには教育委員会がどう連携し、どのような行動を起こすべきなのか」「学力向上を図るために校長、教頭、教職員がそれぞれどこにポイントをおいて努力すればよいのか」「市町村教育委員会と県教育委員会がそれぞれにどう役割を果たすべきなのか」等について、関係者全員が共通理解をし、共に行動することが強く求められている。
 次のページの図は、「子どもたちの学びを支えるシステム」と「学校の取組を支えるシステム」を簡潔にイメージ化したものである。
 教育に携わるすべての者が、それぞれに役割を果たすことで互いに学び合い、支え合いながら、大分県の児童生徒の学力向上が図られるよう全体構想としてイメージしている。

1 学校が取り組むべきこと

  • (1) 具体的な目標を設定した学力向上プランの作成
  • (2) 全教職員による調査結果の詳細な分析と活用
  • (3) 日常的な授業公開と校長による授業観察
  • (4) 課題が見られた児童生徒への個別・補充指導
  • (5) 課題の改善に向けた年間を通じた具体的な取組・指導の改善
  • (6) 指導形態の工夫等、組織的な取組の充実
  • (7) 家庭との連携協力の推進
  • (8) 児童生徒の理解度・定着度を把握する評価活動
  • (9) 保護者や地域の方々への丁寧な説明と情報の発信
  • (10) 小・中・高等学校間の連携

図

2 教育委員会が取り組むべきこと

(1)市町村教育委員会での取組

  • 1独自の改善計画作成
  • 2独自の学力調査等による客観的データの収集
  • 3学校の取組(校内研究等)への支援
  • 4学校・家庭・地域が一体となった取組
  • 5小・中学校間の連携
  • 6教務主任、研究主任等スクールリーダーの育成
  • 7各学校における指導に必要な授業時数確保の指導

(2)県教育委員会での取組

  • 1学校・地域からの要望・提案等を施策に活用
  • 2独自の学力調査等による客観的データの収集
  • 3市町村教育委員会の取組(校内研究等への支援
  • 4授業改善にむけた教員研修の充実
  • 5指導の改善に生かせる資料の作成
  • 6教育環境の条件整備
  • 7改善策に係る講習会の開催

3 家庭・地域が取り組むべきこと

  • (1) 基本的生活習慣を身に付けさせる取組
  • (2) 家庭学習の習慣を身に付けさせる取組
  • (3) 地域の様々な活動への参加を促す取組

5 学校改善支援プランを受けた取組について

 大分県検証改善委員会から県教育委員会に対して提出された答申「学校改善支援プラン」を実効性のあるものとするため、次の取組を行う。

1 プランを冊子にまとめ、県内小中学校の全教職員に配付

2 プランの内容についての講習会を実施

  • 1県での講習会:各種団体代表を対象
  • 2教育事務所ごとの講習会:全ての小中学校長及び教務主任対象

3 課題のみられた学校等への支援

  • 1教職員研修の充実
    • 教育センター指導主事、大学教授、市町村教委指導主事等でチームを編成し、課題の見られた地域及び学校に年間を通して指導助言を行い、校内研修を支援(出前研修)する。
  • 2各学校で学力向上プランの作成
    • 各学校で、自校の「学力向上プラン」に基づき、年間を通して学力向上の取組を推進する。
    • 課題のみられた地域に対しては教育センター指導主事、大学教授、市町村教委指導主事等で編成したチームを派遣し、取組を支援する。

6 おわりに

 学校改善支援プランに基づき、本県児童生徒の学力向上に向け、学校・市町村教育委員会・県教育委員会が一貫した考え方の下で「学びと支えのシステム」を実効あるものとしていきたい。

(参考)

  大分県「学校改善支援プラン」
(※大分県教育庁義務教育課ホームページへリンク)

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