「活用する力」の育成を目指して-福岡県学力向上新戦略(学校改善支援プラン)の活用を通して-

福岡県検証改善委員会

はじめに

 福岡県においては、平成15年度から県独自の学力実態調査を実施し、16年度からは、岩手県、宮城県、和歌山県とともに「統一学力テスト」を実施してきた。それらの結果を見ると、「思考・判断」や論述式の解答形式における問題の正答率が下回っていることが明らかになった。そこで、本県では、「中長期的な教育課題に関する調査研究事業」や「重点課題指定事業」において、習熟の程度に応じた指導、学ぶ意欲、発展的な学習等の研究指定事業を行ってきた。また、調査結果に基づく指導資料を作成したり、福岡県学力向上推進会議を立ち上げ、本県学力向上に向け「学校の組織的取組の推進」「教員の実践的指導力の育成」などの「6つの提言」を行ったりしてきた。
 このように、本県では、これまでも児童生徒の実態を把握した上で、その課題解決に向けた施策を実行してきた。
 さらに、平成19年度の全国学力・学習状況調査の結果を受け、これまでの施策の評価と改善を図るために、福岡県検証改善委員会では学力調査の要因分析と共に、児童生徒質問紙、学校質問紙の回答状況との相関分析を行ってきた。

1 検証改善委員会の体制について

 福岡県検証改善委員会は、福岡県教育委員会主幹指導主事を代表にして、学識経験者として福岡教育大学の教授3名(分析の中心となる教育心理学専門の教授、国語科専門の教授、算数・数学科専門の教授)と福岡県教育センターの主任指導主事1名、指導主事3名、福岡県教育委員会の主任指導主事1名、指導主事5名で構成した委員会である。
 本委員会は、全体会と別に、分析部会、国語部会、算数・数学部会の3部構成で分析を進めてきた。
 9月に検証改善委員会の第1回会議を行い、1月末まで全体会は3回、各部会は4~5回程度行い、調査結果の分析とともに、学校改善支援プラン及び各教科の学習指導の改善・充実のポイントをまとめた。
 なお、この検証改善委員会は、福岡県が主管する福岡県学力向上推進会議に会議の経過等を報告しながら進めてきた。本会議は、福岡教育大学教授を議長として、県PTA連合会の代表、市町村教育委員会代表、小学校・中学校の各校長会代表、福岡県教育委員会の行政関係者で組織された会議である。

2 学校改善支援プランの概要

 検証改善委員会では、本県の全国学力・学習状況調査の結果について、各教科及び児童生徒質問紙、学校質問紙の分析から、次のような課題を明らかにした。

(1)課題

  • 1 教科の分析結果から
    • 学ぶ意欲
    • 活用する力
    • 基礎的・基本的な知識や技能
  • 2 児童生徒質問紙の分析結果から
    • 基本的な生活習慣
    • 自己管理能力
    • 日常的・継続的に取り組む力
  • 3 学校質問紙の分析結果から
    • 落ち着きと意欲のある児童生徒
    • 学力の基礎を培う場
    • 実効性のある教科の指導方法
    • PTAや地域との連携
    • 教員研修の工夫

 以上の課題をふまえ、検証改善委員会は、学校改善支援プランとして、県教育委員会、市町村教育委員会、学校に対しての提言を次のようにまとめた。

(2)課題への提言

1 県教育委員会への提言

  • 学校・教育委員会の効果的な指導体制の整備
    • ア 人的配置の効果的な活用
    • イ 学校支援体制の構築
  • 教員の実践的な指導力の向上
  • 児童生徒の実態把握につながる調査と分析
    • ア 継続的な学力調査の実施とデータの集積
    • イ 学力実態調査検証システムの構築
  • 調査研究事業の充実
  • 基本的な生活習慣・規範意識・学ぶ意欲の育成のための取組強化

2 市町村教育委員会への提言

  • 各学校の課題の明確な把握
  • 学校の条件整備
  • 教員研修への指導・援助
  • 家庭・地域と学校との連携の強化

3 学校への提言

  • 適正な学校評価の実施
  • 授業力を高める校内研修
  • 実態分析システムの整備
  • 基本的な生活習慣・規範意識の育成
  • 知識・技能の活用力を高める教育課程の編成・実施・評価
  • 学ぶ意欲を生み出す教育活動の充実

 これらの提言を整理し、福岡県教育委員会は、学校改善支援プランとして「福岡県学力向上新戦略」を策定した。

3 全国学力・学習状況調査の結果分析について

 本県の全国学力・学習状況調査の調査結果について、検証改善委員会で分析を行ったところ、次のような点が明らかになった。

(1)各教科の状況

1 小学校国語

 内容ごとの平均正答率は、全国平均と同程度かやや下回っている。特に国語Bの「言語事項」「読むこと」「書くこと」が2ポイント以上下回っている。また、全国と同様に国語Aの「読むこと」「話すこと・聞くこと」、国語Bの「読むこと」「書くこと」の平均正答率が70パーセントを下回っている。

2 小学校算数

 内容ごとの平均正答率は、全国平均よりもやや下回っており、特に算数Aの「図形」が2ポイント以上下回っている。また、全国と同様に、算数Bの「数量関係」「量と測定」「数と計算」の平均正答率が70パーセントを下回っている。

3 中学校国語

 内容ごとの平均正答率は、全国平均と同程度かやや下回っている。また、全国と同様に国語Bの「言語事項」と「書くこと」とともに「読むこと」も平均正答率が70パーセントを下回っている。

4 中学校数学

 内容ごとの平均正答率は、全国平均よりもやや下回っており、特に数学Bの「図形」が3ポイント以上下回っている。また、全国と同様に数学Aの「数量関係」、数学Bの「数量関係」「図形」「数と式」の平均正答率が70パーセントを下回っている。

(2)教育事務所・政令市別の状況

 県内を6つの教育事務所と政令市(福岡市と北九州市を合わせて)の7地区に区分して分析した。7地区間で各教科の平均正答率を比べると、差がみられ、特にA問題よりもB問題の方がその差が大きかった。

(3)市部・郡部別の状況

 市部と郡部の平均正答率を比較したところ、小学校では、国語A・B、算数Bにおいて市部の方が1ポイントほど高く、中学校では全ての教科で市部の方が1ポイントほど高いことが明らかになった。

(4)市町村別の状況

 市町村別に各教科の平均正答率を比較したところ、問題Bの方がばらつきが大きいことが明らかになった。小学校国語Aでは、平均正答率80~85パーセントの間に66市町村中、45市町村が集まっているが、小学校国語Bでは60~65パーセントに28の市町村が集まっており、ばらつきが見られる。算数Aでは80~85パーセントの間に36市町村が集まり、算数Bでは60~65パーセントの間に34市町村が集まっている。国語と同様に問題Bの方がばらつきが大きい。
 中学校においても、国語、数学において同様に、問題Bの方がばらつきが大きい。

(5)学校規模別の状況

 児童数250名未満の学校を小規模校、250~499名の学校を中規模校、500名以上の学校を大規模校として比較したところ、小学校では、大規模校の方が他の規模の学校より2ポイント~4ポイントほど平均正答率が高い傾向が見られた。
 中学校でも、大規模校が中規模校より平均正答率が2~3ポイントほど高く、小規模校より4~8ポイントほど高い傾向が見られた。

(6)学力調査と児童生徒質問紙調査の相関

 学力調査の結果と児童生徒質問紙の調査結果の相関を見たところ、次のような項目で、強い相関があることが明らかになった。

1 基本的な生活習慣

 基本的な生活習慣が確立している児童生徒の方が、平均正答率が高い傾向にある。

  • 朝食を毎日食べている。
  • 同じくらいの時刻に寝る、起きる。
  • 勉強する時間を決める。
  • 学校に持って行くものを確かめる。・自分のことは自分でする。

といった質問に対して、「している」と回答した児童生徒ほど、平均正答率が高い傾向が強く表れている。

2 成就感

 成就感を持っている児童生徒の方が、平均正答率が高い傾向にある。
 ものごとを最後までやりとげてうれしかったことに対する質問に対して「当てはまる」と回答した児童生徒ほど、平均正答率が高い傾向が強く表れている。

3 家庭学習

 家庭学習の習慣が定着している児童生徒の方が、平均正答率が高い傾向にある。

  • 平日に家庭学習を3時間以上すると回答した児童生徒と、
  • 全くしない

と回答した児童生徒の平均正答率を比較すると、小学校においては、国語Bで25ポイント、算数Aで18ポイント、算数Bで24ポイント、中学校においては、国語Bで15ポイント、数学Aで25ポイント、数学Bで19ポイントの差がある。

4 家庭での会話

 家の人と学校の出来事について話している児童生徒は、平均正答率が高い傾向にある。

  • 家の人と学校での出来事について話をしている。

という質問に対して「している」と回答した児童生徒と「していない」と回答した児童生徒の平均正答率を比較すると、小学校においては、国語Bで16ポイント、算数Bで11ポイントの差がある。中学校においては、国語Bで16ポイント、数学Aで11ポイント、数学Bで11ポイントの差がある。

5 社会への関心

 新聞やテレビのニュースに関心が高い児童生徒は、平均正答率が高い傾向にある。

  • 新聞やテレビのニュースに関心がある

という質問に対して「当てはまる」と回答した児童生徒と「当てはまらない」と回答した児童生徒の平均正答率を比較すると、小学校においては、国語Bで19ポイント、算数Bで14ポイント、中学校においては、国語Bで16ポイント、数学Aで14ポイント、数学Bで15ポイントの差がある。

6 規範意識

 学校のきまりを守る児童生徒は、平均正答率が高い傾向にある。

  • 学校のきまりを守っている

という質問に対して、「当てはまる」と回答した児童生徒と「当てはまらない」と回答した児童生徒の平均正答率を比較すると、小学校においては、国語Bで22ポイント、中学校では国語Bで23ポイント、数学A・Bで28ポイントの差がある。
 また、「友達との約束を守る」「人が困っているときに助ける」などの質問項目についても「当てはまる」と回答した児童生徒の方が、「当てはまらない」と回答した児童生徒の平均正答率より高い傾向が顕著である。

7 将来像

 人の気持ちが分かる人間になりたいと考えている児童生徒は、平均正答率が高い傾向にある。

  • 人の気持ちが分かる人間になりたい

という質問に対して「当てはまる」と回答した児童生徒と「当てはまらない」と回答した児童生徒の平均正答率を比較すると、小学校においては、国語Bで22ポイント、算数Bで17ポイント、中学校においては、国語Bで15ポイント、数学A・Bで12ポイントの差がある。

(7)学力調査と学校質問紙調査の相関

 学力調査の結果と学校質問紙の調査結果の相関を見たところ、次のような項目で、強い相関があることが明らかになった。

1 児童生徒の熱意

 「児童生徒が熱意をもって勉強している。」と回答している学校ほど、各教科の平均正答率が高い傾向にある。

  • 児童生徒が熱意をもって勉強している

という質問に対して「その通りだと思う」と回答している学校ほど、各教科とも平均正答率が高い。熱意への評価が低くなるにつれて平均正答率は低くなる。特に各教科の問題Bにおいては、「その通りだと思う」と回答した学校と「そう思わない」と回答した学校の平均正答率は小学校で10ポイント、中学校で15ポイントの差がある。

2 授業中の私語

 「児童生徒が授業中に私語が少なく落ち着いている」と回答している学校ほど、各教科の平均正答率が高い傾向にある。

  • 授業中の私語が少なく落ち着いている

という質問に対して「その通りだと思う」と回答した学校と「そう思わない」と回答した学校の平均正答率は、小学校において各教科とも10ポイント程度の差がある。中学校においては各教科問題Bで15~18ポイント程度の差がある。

3 礼儀正しさ

 「児童生徒が礼儀正しい」と回答している学校ほど、各教科の平均正答率が高い傾向にある。

  • 礼儀正しい

という質問に対して「その通りだと思う」と回答している学校ほど平均正答率が高く、「そう思わない」と回答している学校ほど平均正答率が低い傾向である。小学校では、各教科問題Bで10ポイント程度の差があり、中学校では各教科問題Bで15ポイント以上の差がある。

4 学校改善支援プランについて

 学力調査の結果と相関分析の結果、課題を次の5点に整理した。

(1)課題の整理

1 市町村教育委員会・学校の体制整備

 今回の国語、算数・数学の教科に限定しているが、市町村の平均正答率が最大で30パーセント程度の差がある。また、標準偏差の分析から、市町村間の平均正答率の差が大きいことも明確になった。さらに、教育行政上の区分である教育事務所、政令市間においても平均正答率で10パーセント程度の差が見られた。
 このことは、義務教育の機会均等、質の保障という観点から大きな課題を有しており、全体的な向上を図ることが重要であると言える。
 市町村教育委員会は、その規模等において指導体制等に差が大きく、県教育委員会として適切な支援をすべきである。

2 効果的な市町村教育施策の実施

 県教育委員会のこれまでの教育施策や市町村教育委員会独自の教育施策との相関を分析したところ、これらの施策が有効に機能している市町村、学校が見られる一方で、同規模で、同施策を実施している市町村・学校であっても同等の成果を得られるまでは至っていない状況が見られる。
 これらの結果から、教育施策の目的を達成しうるような施策の改善をすべきである。

3 学校の組織的取組の充実

 教科の平均正答率を市部・郡部等の地域性、学校・学級規模等から分析を行ったところ、同一地区、同一規模であっても学校間に平均正答率に大きな差が見られる。
 また、少人数指導、学校評価、授業研修等の様々な学校の取組と平均正答率との相関を見ると、様々な学力向上の取組を実施している学校の方が、そういう取組を行っていない学校よりも平均正答率が高い傾向が見られている。
 このことから、各学校における取組に対する意義の共通理解が見られ、確実な実践と評価がなされていることが児童生徒の平均正答率に影響を与えていると推測される。
 よって、各学校の学習指導の改善に対する組織的な取組を積極的に推進する必要がある。

4 学校の教育活動の改善

 教科の平均正答率と児童生徒の生活状況、学校の指導状況との相関を見ると、基本的な生活習慣、規範意識、学校の雰囲気などとの間で強い相関が見られた。
 このことから、教科や学習指導方法の工夫改善のみでなく、道徳性や社会性など人格の育成を目指した取組と学習に集中できる環境づくりが必要であることが明らかである。
 また、学校教育だけではなく、家庭や地域の教育力を高め、一体となって児童生徒を育てる機運の醸成と仕組みを作ることも必要である。

5 教員の実践的指導力の向上

 今回の調査では、国語、算数・数学の指導方法の工夫と平均正答率との間に相関が見られる。
 このことから、児童生徒の学習指導に直接携わる教員の主体的、継続的な研修を通して、教員の資質向上に関する指導、支援をすることが必要である。

(2)学校改善支援プラン

 本県では、以上の課題を解決するために、5つの戦略を設定し、「福岡県学力向上新戦略」として策定した。

1 市町村教育委員会・学校の体制整備

ア 学力向上支援チームの設置

 各教育事務所に、管内の小中学校の学力向上を支援するチームを編成し、適切な指導助言を行う。また、課題が大きい市町村や学校に対して、指導主事を重点的に派遣する。

イ 指導方法工夫改善教員等の効果的な配置

 国語、算数・数学の学習指導力が高い教員を指導方法工夫改善教員として配置し活用する。市町村の実態に応じて、複数の学校で兼務できるようにする。

ウ 学力向上を必要とする学校への教員の重点的配置

 学力向上を必要とする学校に対して、教科指導の研修経験を持ち、学習指導力が高い教員を重点的に配置し、学校の学力向上の取組を支援する。

エ 全国学力・学習状況調査の結果の分析と市町村、学校への結果分析の提供

 県教育委員会で分析し、課題を明確にし、改善の方策を提示する。

オ 「福岡県学力実態調査」の実施

 小学校では、社会・理科、中学校では、社会・理科・英語において県独自の調査を行い、結果等を分析し提供する。

カ 学力向上校内コーディネーターの育成と配置

 県教育センターにおいて、学校や地域の学力向上の取組の中核となる教員を育成する研修講座を開設する。

キ 学習支援のための外部人材の活用

 課題に応じて、学習支援のための非常勤講師を学校に配置する。

2 教員の実践的指導力の向上

ア 教育事務所における授業実践力アップ研修の実施

 各教育事務所管内の市町村や学校の状況に応じた研修会を企画し、実施する。また、学力向上コーディネーター等の活用を図り、研修の成果を管内に普及する。

イ 校内授業研修の充実と授業評価の実施

 より実践的な指導力を高めるような研修の内容と方法を、教育事務所で行う「校内研修担当者研修会」「管理職研修会」等で研修するようにする。また、教員相互の授業評価や児童生徒による授業評価の導入を推進する。

ウ 優秀な学習指導案の収集と普及・啓発等

 県教育センターのホームページに、全国から収集した優秀な学習指導案を掲載し、必要に応じて学校で活用できるシステムを構築する。また、授業改善を図る教員相互のネットワークの形成を図る。

エ 実践的指導力を育成する教員研修の体系的整備

 個々の教員の課題発見、課題解決に資するような指導技術等の向上に努める授業研修の推進を図る。また、人事評価制度との連動を図り、個々の教員の強みの伸長や弱みの補強となる専門研修等を受講する仕組みを作る。

3 学ぶ意欲の育成や体験活動の充実

ア 長期間の集団宿泊体験の実施

 人間関係を形成する力や集団生活のマナー及び基本的な生活習慣の形成等を目指した集団宿泊体験の実施を推進する。

イ 職業体験の実施

 職場体験、勤労生産、ボランティア活動等について、子どもたちが企画・立案することにより、チャレンジ精神の高揚を図り企画力や実行力、想像力を育成することを目指す体験活動の実施を推進する。

ウ 家庭や地域と連携した学習意欲や生活習慣等の育成

 社会教育関係団体等と連携し、子どもの基本的な生活習慣を育成するための取組を推進する。また、規範意識を育てるためのこれまでの研究成果の普及に努める。

4 調査研究の充実

ア 学力向上に向けた強化市町村の指定

 学力実態等の調査結果を踏まえつつ、学力向上推進強化市町村を指定し、県が示した学力向上策を市町村の課題に応じて実施することを促す。

イ 活用力向上モデル学校の設置

 基本的な知識や技能の習得を目指す「習得型の学習」、思考力、表現力の育成を目指す「活用型の学習」、問題を発見し、問題解決を通して、課題解決する力を育成する「探究型の学習」の学習過程モデルの構築等を行い、活用する力を向上させる学習指導の在り方を究明する。

5 学力実態調査検証システムの整備

ア 分析ツール及び判定テストの提供

 各市町村、各学校の調査結果を分析するためのツールを県教育センターホームページに掲載し、活用を推進する。また、本県作成の到達度判定テスト問題を改善し、県教育センターホームページに掲載し、活用を推進する。

イ 学力分析研修会等の実施

 各市町村の状況に応じ、調査結果の分析と改善の方策についての研修会を、教育事務所単位で実施する。

ウ 学力向上プランの機能化

 学力向上プランが、全国及び県の学力実態調査の結果を踏まえ、指導内容と方法が重点化されたものとして作成され、組織的に実施されるように指導を徹底する。

5 学校改善支援プランを受けた取組について

 学校改善支援プランを受けて、福岡県教育委員会では、平成20年度に向けて次のような事業を展開することにした。

(1)ふくおか学び舎創生事業

ア 目的

 小学校高学年の児童が、異学年集団による長期宿泊の中で、様々な体験を通して、将来への夢や希望をもち、学ぶ意欲や規範意識、自尊感情を高め、人間関係能力や基本的な生活習慣を身に付けることができるようにする。

イ 事業内容

○市町村教育委員会の指定

県内8地域、各3校程度の実施小学校を指定する。

○対象

小学校4、5、6学年の児童

○期間

4泊5日

○活動場所

学校や公民館、社会教育施設等

○活動内容
  • A キャリア等体験メニュー
     キャリア講座、物づくり体験、職場体験、職業調査体験等
  • B 学習体験メニュー
     コース別学習体験、学習合宿体験等
  • C 地域ふれあい体験メニュー
     地域講座、地域とのふれあい体験等
  • D 集団遊び体験メニュー
     集団遊び体験、道具づくり体験等

(2)ふくおか学力アップ推進事業

ア 目的

 学ぶ意欲の喚起による学力向上を図るため、県内の児童生徒の学力・学習状況と市町村の学力向上に向けた取組状況を調査分析し、学力向上に有効な施策を提供することで、市町村教育委員会の学力向上に向けた主体的な取組の充実に資する。

イ 事業内容

A 調査の実施
  • 福岡県学力実態調査(小学6学年-社会、理科、中学3学年-社会、理科、英語)の実施と分析、報告
  • 全国学力・学習状況調査の結果分析と報告
  • 市町村教育委員会の学力向上への取組状況調査の実施
B 学力向上推進強化市町村の指定

 児童生徒の学力向上を目指し、原則3年間の指定地域として、次のような指導・支援を行う。

  • 学力向上支援のための学校支援チームを組織し、強化市町村内の学校に対して重点的に指導を行う。
  • 学力向上推進プランの策定、実施、評価等についての指導・支援を行う。
  • 強化市町村の行う学力向上の取組経費の2分の1以内の額を県の予算の範囲内で補助する。
C 非常勤職員の派遣

 強化市町村を中心に非常勤職員を派遣し、学力向上に努める市町村の取組を支援する。強化市町村においては、非常勤職員を次のような方法で活用する。

○小学校専科指導

 高学年を対象に、国語、社会、算数、理科のうち、課題に応じ、専科指導に非常勤職員をあてる。

○少人数指導

 小学校、中学校において、国語、算数・数学、理科、社会、外国語において、教科担当の教諭と共同して学習指導にあたる。
 強化市町村以外の市町村でも同様に小学校専科指導、少人数指導を行えるようにし、さらに、学習指導が困難な状況が見られる学級を対象に非常勤職員を派遣し、きめ細かな指導が行えるように支援する。

(3)福岡県学力実態検証システム

ア 目的

 全国学力・学習状況調査の結果を基に各市町村、各学校が自らの学力実態を分析し、学習指導の積極的な改善に資する。

イ 事業内容

 福岡県教育センターのホームページ上に次の7つのツールを掲載し、各学校で活用できるようにした。

○教科分析

 各学校の児童生徒の正答率と全国や県の正答率の比較を通して、課題となる内容、能力を明らかにできるようにした。

○改善のポイント分析

 各学校の正答率をレーダーチャートで示すことで、各学校の国語、算数・数学の授業改善のポイントが一目で分かるようにした。

○教科間クロス分析

 児童生徒一人一人の問題Aと問題B、国語と算数・数学との相関を分析し、各自の学力の実現状況を詳しく把握できるようにした。

○正答率クロス分析

 児童生徒質問紙の回答類型ごとに平均正答率をグラフ化し、各学校での平均正答率と相関が高い質問項目を明らかにし、児童生徒の指導の在り方を考える資料にできるようにした。

○四分位層クロス分析

 平均正答率の高いグループと低いグループのそれぞれの児童生徒質問紙の回答状況を比較し、今後の指導の資料にできるようにした。

○正答数クロス分析

 児童生徒質問紙で同じ回答をした児童生徒の正答数分布を各学級ごとにグラフで表現することを通して、今後の指導の改善に資するようにした。

○検証改善分析

 各学校の調査結果を累積することによって、経年変化を見て、各学校の目標設定に活用できるようにした。

(4)重点課題研究事業(課題「基礎的な知識・技能を活用する能力の育成」)

 本県が直面する重要な教育課題に対して、解決に向けて具体的な手法を実践的に研究し、その成果をまとめ、全県下に普及・啓発を図り、本県教育の充実・改善に資することを目的にした「重点課題研究事業」において、「活用する能力の育成」を課題とした研究事業を設定した。

ア 目的

 基礎的、基本的な知識・技能の習得と自ら学び、自ら考える力を育成する探究型の学習指導の在り方を究明する。

イ 事業内容

○対象

 小学校2校、中学校1校

○研究教科等

 小学校では、国語、社会、算数、理科、総合的な学習の時間、中学校では、国語、社会、数学、理科、英語、総合的な学習の時間での学習指導の在り方を究明する。

6 学校改善支援促進事業について

(1)事業内容

 本県においては、市町村教育委員会間の平均正答率の差が大きかった。そこで、市町村教育委員会の学力向上の取組の改善を推進するために、以下の四つの支援事業を設定し、市町村教育委員会が申請し、主体的に実施できるようにした。

1 国語、算数・数学授業のサポート指導員活用事業

 個に応じたきめ細かな指導の充実を図るため、補充的な学習の指導や発展的な学習の指導が行えるように、国語、算数・数学の学習指導の支援として大学生等を活用する。

2 小学校授業改善事業

 小学校における基礎的、基本的な知識・技能の定着を図るために、低・中学年に少人数指導員、高学年における専科指導員として、教員免許を有する人材等を派遣する。

3 国語、算数・数学授業づくりセミナー事業

 国語科、算数・数学科における読解力、表現力、思考力に特化して、各学校の学習指導の充実を図るため、各学校のリーダーとなるべき教員へ指導技術等を提供する研修会を市町村教育委員会単位で開催する。

4 子ども土曜セミナー等推進事業

 児童生徒の学ぶ意欲や学習習慣の定着、進路意識の向上、生活習慣の改善等を図るために、地域人材等を活用した土曜日セミナー等を開催する。

(2)成果と課題

 延べ29の市町村教育委員会で事業が実施された。どの事業も市町村教育委員会の綿密な計画によって実施され、各事業の趣旨を達成できた。

7 おわりに

 検証改善サイクル事業により、確実な実態把握と現状の分析を行われ、学力向上のこれまでの施策の成果と課題を明確にすることができた。さらに、課題を改善するための新施策を策定することができた。
 今後は、学校改善支援プランとしての「福岡県学力向上新戦略」に基づき、各市町村教育委員会、各学校の課題解決に向けて、具体的、実践的な指導・支援を継続的に行う。

(参考)

福岡県教育センターHP

  • 学力実態調査分析システム
  • ドリル教材・到達度判断テスト

-- 登録:平成21年以前 --