和歌山県検証改善委員会
本県においては、平成15年度から毎年、県学力診断テストを小学校4,5,6年生、中学校1,2,3年生を対象に全数調査で実施してきた。その結果、本県における基礎的・基本的な内容の学習上の課題はほぼ明確になってきている。また、各学校において多様な指導改善が行われ類似問題の改善傾向がみられるなど、好ましい成果が現れてきている。
しかし、記述式問題を中心とした無答率の状況などは改善されず、これまでも課題とされていた本県の読解力、思考力や表現力に関する課題が全国学力・学習状況調査結果においても確認されるなど、これらの課題への取組が求められている。
このような県内での状況を踏まえ、今回の「全国学力・学習状況調査」の結果を、その趣旨に基づき活用することを考えた。
県教育センター学びの丘が中心的役割を担い、国立大学法人和歌山大学教育学部と連携して、学識経験者や研究機関等の協力を得ながら「県検証改善委員会」(会長:板橋孝志県教育庁学校教育局長)を設置した。委員は、学識経験者、研究機関研究部長、大学関係者、県教育委員会学校教育局長、小中学校課長、県教育センター学びの丘所長、中学校長会代表、小学校長会代表、国立大学法人附属学校代表、PTA代表ほか16名である。また、分析作業を行うために、小委員会を設置し、本県の調査結果の分析を行った。
学力の中身を明確にした授業改善と学校経営の充実を実現させるため、8つの提言を行った。
和歌山県検証改善委員会では、次の4点を研究方針として、分析検討を行った。
ここでは、(3)について概要を述べる。
学校質問紙調査の項目のうち、主に学校経営に係る項目や授業に関する項目について、以下の方法(下図参照)で学力データとのクロス分析を行った。
国語、算数の各教科で、各学校のA、B問題のそれぞれの平均正答率が上位25パーセント程度(55校程度)に入る学校をA群、下位25パーセント程度(55校程度)に入る学校をB群とし、学校質問紙の各項目において、両群の回答に有意差があるかどうかを確かめるために、検定を実施した。
国語、数学の各教科で、各学校のB問題の平均正答率が上位25パーセント程度(30校程度)に入る学校をA群、下位25パーセント程度(30校程度)に入る学校をB群とし、学校質問紙の各項目において、両群の回答に有意差があるかどうかを確かめるために、検定を実施した。
クロス分析結果を検定した項目のうち、有意差が見られた項目を、学校経営 国語科指導 算数・数学科指導 児童質問紙との関連に分類して次のような図に示した。
このように答えた学校は、B問題の平均正答率が高い傾向にある。
をよく行ったと答えた学校の方が、学校の数学B問題の平均正答率が有意に高い。また、「計算問題などの反復練習」については、「よく行った」と積極的に回答した学校がA群に多く、「どちらかといえば、行った」と消極的に回答した学校がB群に多い傾向にある。
和歌山県検証改善委員会では、分析結果を受け、次の4観点から、「和歌山県の学校改善とその支援に係る提言」をまとめた。
また、指導改善資料として、国語科、算数・数学科の授業改善・充実のポイントをまとめた。
次に、その概要を述べる。
中学校第3学年が4学級以上ある学校のうち、国語B問題と数学B問題において、全国平均正答率を上回った学校の特徴を調べてみると、これらの学校は、近年、生徒指導上で安定し落ち着いた学校として学校内外から認められており、また、地域との交流や連携を積極的に推進することにより地域や関係者から信頼されている学校でもあった。
学習環境作りは、学習指導だけでなく、生徒指導、さらに保護者や地域との連携など波及した効果があり、その成果がはっきりと確認できる。「学校評価ガイドライン」に基づき、学習環境を整える取組を推進する。
学力向上の基盤は、当然ではあるが「授業」において形成される。そして、授業の基盤になるものは、学習集団のもつモラルの高い意識性であり、それは、学級経営の充実によってはぐくまれる。
望ましい集団活動や学習活動を、学級経営の充実を基に形成させる必要がある。
学力の向上を進める際に一番大切なことは、向上させたい学力の中身を明確にすることである。たとえば、自校の学力の中身を次のように設定する。
そのうえで、質の高い学力を定着・維持・向上させるために、目標と指導と評価の一体化を図ることが重要である。
家庭や地域との連携を通して、もっと学習活動に「和歌山らしい学び」を取り入れ、子どもたちに考える方法を体得させ試行錯誤する時間をしっかり与え、子どもが興味関心をもてる授業展開を行うことが大切である。
小学校国語科、算数科と中学校国語科、数学科の指導改善のために、2種類のリーフレットを作成し、県内の各学校に配付した。本県の課題である、小中学校間の教科指導の系統性、連続性をさらに向上させるため、リーフレットは、小学校、中学校用と分けず、小中学校国語科用、算数・数学科用として、それぞれの校種の教員が教科指導の接続を意識するように工夫した。
3月1日に、県教育センター学びの丘を会場に、「和歌山県学力向上推進セミナー」を開催し、県内から450名の教員等が参加した。参加希望者が予想を大きく上回ったため、分科会は、算数科・数学科とも2会場に分かれてテレビ中継を行い、最終の指導講評は4会場を中継して行った。
調査報告として、「全国学力・学習状況調査における和歌山県の状況とこれからの課題」について、国立大学法人和歌山大学教育学部岸田正幸教授が報告した。シンポジウムとして「学力調査をどのように生かすか」について、和歌山県検証改善委員会板橋孝志会長がコーディネーターを、上智大学名誉教授・名古屋女子大学加藤幸次教授、財団法人教育調査研究所小島宏研究部長、国立教育政策研究所研究開発部三浦登志一学力調査官、銀島文学力調査官の方々がシンポジストとして登壇した。その後、3分科会をもった。
また、このセミナーに先立ち、2月には、各市町村教育委員会から推薦され各学校での教科指導に指導助言を行っている「教科指導員」のうち、国語科、算数・数学科の教科指導員と各市町村教育委員会担当指導主事百数十名を集めて、教育センター学びの丘において、全国学力・学習状況調査に係る「教育課程研修会」を開催した。
県教育委員会としては、平成20年度から、「ことばの力」向上プログラムの実施や「きのくに共育コミュニティ」の形成などで学校支援を行うこととしている。
本県には、過去5年間実施してきた学力診断テストによる学力データの蓄積がある。自校データを各学校が容易にかつ効果的に活用できるようにする方策として、これまで、自動集計シートの配付、学びの丘HPでの指導改善事例の掲載や分析ツールの開発などを行ってきた。
今後も、各学校が、全国学力・学習状況調査結果を、県学力診断テスト結果と併用することにより、小学校では4,5,6年生、中学校では全学年の学力状況を統一的に分析し、学校経営や授業改善の検証改善に生かしていけるよう、必要な方策を講じたい。
学びの丘HP内
全国学力・学習状況調査関係資料
(※和歌山県教育センター学びの丘ホームページへリンク)
-- 登録:平成21年以前 --