栃木県検証改善委員会
栃木県では、プラン作成に当たり、学校や家庭における日常的な生活など、授業の改善以外の点についても幅広く検討するとともに、各学校における独自の分析や実践を進めることが重要であると考え、委員会としては多くのことを学校に要求し過ぎないよう留意した。特に、授業改善に関しては2点まで絞り、各学校独自の学力向上対策に併せて取り組んでほしいと考えた。
また、調査の結果を分析する際、どうしても課題となる部分にばかり注目してしまいがちだが、これまでの教育活動によって子どもたちが伸びている点についても分析し、各学校が自信をもって取り組めるようにしていくことが重要であるという認識の下に議論をしてきたところである。
確かな学力の向上を図る上では、教職員が、子どもたちのために本当に役立つ教育活動を行っているかということを、日々考え、改善していく必要がある。各学校の教職員が互いに知恵を出し合い、家庭や地域と連携を図りながら精力を傾けることができるよう、期待しながら作成に当たってきたところである。
栃木県検証改善委員会は、宇都宮大学教育学部の松本敏教授を委員長に、平成19年9月14日に発足し、同大学から、国語科と数学科の教授各1名、栃木県小学校教育研究会の国語部会と算数部会から、代表各1名(ともに小学校長)、栃木県中学校教育研究会の国語部会と数学部会から代表各1名(ともに中学校長)、栃木県PTA連合会から代表2名(小学校、中学校の保護者各1名)、栃木県総合教育センターの研修部長及び研究調査部長、栃木県教育委員会事務局学校教育課の課長及び主幹の、合わせて13名を委員として、事務局5名を含め、計18名で、3回にわたり検討してきた。
また、児童生徒の学力向上に向けた施策等を検討する、「学力向上研究委員会(県教育委員会指導主事及び社会教育主事28名)」が本委員会のワーキンググループとなり、特徴の見られる情報の取り出し作業や、その特徴の原因として予想される事項等を示し、検証改善委員会に提出してきたところである。
今回の全国学力・学習状況調査の結果については、平均正答率を全国と比較すると、中学校国語Bではやや高く、他の教科・問題種ではほぼ同程度であると判断した。しかし、特に小学校算数Bの記述式問題における平均正答率が低くなっていることに注目し、最も力を入れるべき点として議論の必要性が感じられた。
また、中学校国語Bがやや高くなっている要因を見ると、作文に関する問題への平均正答率が高いことが挙げられ、小学校算数Bにおける記述式問題の誤答との関係を考えていくことも重要なポイントであった。
授業における学習指導の改善点については、この部分に焦点を当てて検討することとし、その他に、次のような視点からも細部にわたって分析することとした。
小学校国語Bにおける、グラフを読み取りながら文章を読む問題の平均正答率は、本県57.5パーセント、全国60.8パーセントと、やや低かった。このような、資料と文章とを関連づけて正しく読む力を身に付けていくため、国語科で身に付けた技能を生かし、各教科の授業で、文章をグラフ・図などと見比べながら自力で正確に読み取る経験を積ませていく必要がある。
中学校国語Bでは、平均正答率が全国より2.0ポイントほど高く、特に「書くこと」の領域、「書く能力」の観点から出題された問題の正答率が高い。例えば、「蜘蛛の糸」の最後の場面が必要かどうかを主張する作文問題の平均正答率は、本県78.4パーセント、全国74.8パーセントとやや高い。また、小学校においても、「書くこと」「書く能力」については、全国とほぼ同程度である。
しかし、小学校国語Bの、情報の中から必要な事柄を取り出し、新聞にまとめる問題では、本県46.9パーセント、全国49.0パーセントであり、情報を取り出し加工することにやや苦手な様子も見られた。
全国と比較してやや高い
全国と比較して低い
三角形の角のうち2角が分かっているときの残りの角を求めるという、小学校算数Aの問題(本県87.7パーセント、全国83.7パーセント)や、直方体の面に垂直な辺(本県69.0パーセント、全国65.9パーセント)、ねじれの位置(本県73.4パーセント、全国70.1パーセント)を問う中学校数学Aの問題では全国と比較してやや高かったが、16センチメートルの長さのひもを使って長方形や正方形を作り、たてと横の長さを表にして変化を見るという小学校算数Aの問題の平均正答率は、(2)本県68.5パーセント、全国75.3パーセント(3)本県69.7パーセント、全国75.1パーセントと、低かった。
決められた処理ができることは大切だが、自分で情報を整理し、事象を見定めて思考・判断する力も大切な基礎・基本であり、日々の授業で鍛える必要がある。
中学校数学Bの「連続する5つの自然数の和は5の倍数になる」ことを説明する問題の平均正答率は、本県42.1パーセント、全国40.9パーセントと、全国とはほぼ同程度だった。このような問題は、数学ではよく出題される。しかし、小学校算数Bにおける記述式の問題全体についてはやや低く(本県41.8パーセント、全国45.0パーセント)、中でも、公園の面積の広さの違いを説明する問題では、本県13.8パーセント、全国17.9パーセントと、低い。
説明するという行為は、問題を解くためでなく、相手に分かるように伝える目的のものであり、普段の授業の中でその経験が積まれているかどうかが問われる。
特に本県の特徴とも言えたのが、読書に関する学校の取組や児童生徒の意識だった。特に中学校では読書好きの生徒の割合が全国と比較すると高いなど、各学校におけるこれまでの取組の成果が見られた。また、読書が好きな児童生徒と教科に関する調査の結果には相関が見られた。
一方、「熱意をもって勉強している」「授業中の私語が少なく、落ち着いている」「礼儀正しい」など、児童生徒の基本的な生活習慣が身に付いていると捉えている学校では、教科に関する調査の結果も高いことが分かった。
それ以外にも、次のような特徴的なデータが見られた。
今回の調査で平均正答率の高かった他県の状況を本県のデータと比較したところ、次のような相違点が見られた。
なお、運動と学力の関連については、本県では明確な特徴が表れなかった。
以上のような分析結果を受け、栃木県検証改善委員会では、「栃木県学校改善支援プラン」として次のようにまとめた。
平成20年1月21日に、本プランの普及や啓発のため、「学力向上シンポジウムを実施した。会場には、小中学校の教員や教育委員会関係者、PTA関係者、報道関係者等、計620名が参加した。内容は、次のとおりである。
その後、総合教育センターが毎年行う栃木県教育研究発表大会でも、学校教育課担当者や総合教育センターの担当者による分析結果の発表等が行われた。
また、本プランを基に作成したリーフレットを、全教員、全保護者に配付した。
本プランの実践化を図るため、栃木県教育委員会では、平成20年度以降、前述の学力向上研究委員会において具体的な支援策を講じていく。そして、総合教育センター、各教育事務所が実施する研修や学校訪問等で、教職員一人一人の指導力向上を目指すとともに、学校全体の取組も積極的に支援していく。
栃木県検証改善委員会では、各学校において、児童生徒の成長の様子に関する会話が日常的に飛び交うような職場づくり、そして、考え合う教職員集団づくりが大変重要であると捉えている。今回の調査結果は、そのために大変よい材料となる。県が行う「学習状況調査」と併せて、そのデータを大切にし、大いに活用していきたいと考えている。
-- 登録:平成21年以前 --