青森県検証改善委員会
青森県では、県教育施策の方針に「新しい時代を主体的に切り拓く人づくり」を掲げ、「教育は人づくり」という原点に立って、「確かな学力」と「豊かな人間性」をはぐくみ、個を生かし生きる力と夢をはぐくむ学校教育の推進に向け、様々な教育施策を展開している。
その「確かな学力」をはぐくむための取組の一環として、学習指導要領における各教科の目標や内容の実現状況及び学習指導上の課題を把握するとともに、指導方法の工夫改善に資するため、平成15年度から小学校第5学年、中学校第2学年の児童生徒を対象に、小学校は、国語、社会、算数、理科、中学校は、国語、社会、数学、理科、英語についてそれぞれ学習状況調査を実施している。
これまでの調査から、本県の子どもたちの学力の状況は、知識・理解面についてはおおむね良好であるものの思考力や表現力については十分とは言えないという結果が出ており、学習状況調査をはじめとして多方面から「確かな学力」の育成に向けて努力を続けている現状である。
これらを受けて、青森県検証改善委員会としては、「教育指導等の改善を図る機会を提供する。」ことを目的として、「指導(授業)の改善」のために教育委員会や学校等にどういう情報が提供できるかということを視野に入れ、データを読み取り、検討を行った。
青森県検証改善委員会は、国立大学法人弘前大学教育学部教授である児玉忠を代表者として、県教育委員会及び市教育委員会の指導主事を中心とした行政関係者16名(小学校国語3名、小学校算数3名、中学校国語3名、中学校数学3名、事務局4名)、県内の公立小学校の校長1名(国語)、公立中学校の校長1名(数学)、国立大学法人弘前大学教育学部の学識経験者4名(小学校国語1名、小学校算数1名、中学校国語1名、中学校数学1名)の計22名の検証改善委員から構成される委員会である。
本委員会のほかに、検証改善委員会内に、国立大学法人弘前大学教育学部の教員1名と指導主事3名の計4名で構成されるワーキンググループを各校種・教科ごとに4つ設置し、それぞれのワーキンググループにおいて調査結果の分析・検証・まとめ等を行った。
平成19年10月に検証改善委員会の第1回会合を行い本事業の目的と進め方等について協議を行い、同年12月の第2回会合において調査結果の分析と研究の方向性について確認した後、同年12月から平成20年1月にかけて各校種・教科ごとワーキンググループをそれぞれ数回ずつ開催し、同月2月の第3回会合において、各校種・教科ごとワーキンググループからの結果報告を受けて、学校改善支援プランと教師向け指導改善リーフレットをまとめた。
本県の全国学力・学習状況調査の結果について、全体的な傾向としては、全国の状況と同じように、国語、算数・数学ともに基礎的・基本的な知識や技能は身に付けているものの、知識や技能を活用する能力に課題が見られた。これまで5年間実施してきた本県学習状況調査の結果でも、知識・理解面についてはおおむね良好であるが、思考力や表現力については十分とは言えないという結果が出ており、今回の調査の結果と同じ傾向が見られた。
これらを受けて、青森県検証改善委員としては、データ分析から始め約3か月間で「指導(授業)の改善」の様々な観点や方法を話し合い、学校現場で実際に活用してもらえるような具体的な指導改善プランをまとめた。
前項の概要でも言及したが、本県の全国学力・学習状況調査の結果について、検証改善委員会で分析を行ったところ、以下の点が明らかになった。
教科に関する分析では、本県の公立学校の児童生徒の学力の状況は、小学校、中学校の国語、算数・数学のすべてにおいて、全国の国立、私立学校を除いた公立学校全体の平均正答率を上回っており、各学校が、学習指導上の課題を明らかにし、指導の工夫改善等に真摯に取り組んだ結果と考えている。
また、本県において小・中学校ともに「主として知識」の部分では、学習内容をおおむね理解しているものの、「主として活用」の部分については、知識や技能を活用する力を更に身に付けさせる必要があるという課題が共通して見られた。
個別の教科について具体的に見ると以下のような特徴と課題が見られた。
全体として、全国的な傾向とほぼ同じ結果・傾向を示している。
国語Aについては、相当数の児童が今回出題している学習内容をおおむね身に付けていると考えられる。
国語Bについては、知識・技能を活用する力を更に身に付けさせる必要がある。
国語A・Bからそれぞれ課題として2観点を選ぶとすれば、国語Aでは、「メモ」や「スピーチ」の仕方に関する学習指導と「物語文の読み取り」に関すること、国語Bでは、「グラフの読み取り」や「比べて読むこと」に関する学習指導に課題を見いだすことができる。
全体として、全国的な傾向とほぼ同じ結果・傾向を示している。
算数Aについては、数量や図形についての基礎的・基本的な知識・技能はおおむね定着しているものと考えられる。
算数Bについては、全国的な傾向と同様に、活用する力に課題があるものと考えられる。
算数A・Bについて、共通するものとして、「数と計算」「量と測定」「図形」「数量関係」のそれぞれの領域について改善の視点を考えるとともに、算数科授業そのものの改善の視点として、「ノート指導と話し合い活動の充実」「各単元を関連付けていく授業の実現(演算の意味指導に関連して)」「一人一人の考え方を大切にする教師の姿勢」に着目した。
全体として、全国的な傾向とほぼ同じ結果・傾向を示している点が特徴である。
問題Aについては、相当数の生徒が今回出題している学習内容をおおむね身に付けていると考えられる。
問題Bについては、知識・技能を活用する力を更に身に付けさせる必要がある。
国語A・Bからそれぞれ課題として2項目を選ぶとすれば、国語Aでは、「手紙」の書き方に関する学習指導と「敬語」の使用に関する学習指導に、また、国語Bでは、文学的文章の「朗読」に関する学習指導及び「記述式」の問いがある学習指導に課題を見いだすことができる。
全体として、全国の傾向とほぼ同じ結果・傾向を示している。
数学Aでは、学習内容をおおむね身に付けているものが多い。課題があるものとして、「移項と等式の性質」、「等式の変形」、「円錐と円柱の体積の関係」、「確率の意味」、「記号で表された関係の意味」、「表をよむことや表すこと」に着目した。
数学Bでは、これから重視していきたい力をみるものとして、「事象の理想化・単純化」、「方法や理由の説明」、「答えや解決過程を振り返って考えること」に着目した。
また、学習状況調査の結果も、どの校種・教科においても、全国とほぼ同じ傾向であるとの結果が得られた。
個別の教科について具体的に見ると以下のような特徴と課題が見られた。
全国調査と同様、国語の勉強に対して、「大切」と答えている児童に比べて、「好き」と答える児童がそれほど多いとは言えない状況であり、国語の勉強を好きと感じるような授業の在り方への工夫が望まれる。また、「司会をすることがありますか。」や「2つ以上の資料や文章を比べて読んだり、調べたりしていますか。」などは、全国調査で課題とされる質問に青森県においても課題が見いだせる。
自尊感情や算数にかかわりのある質問に肯定的に回答している児童は全児童数のおおむね70~80パーセントであり、算数に対して前向きに取り組んでいることがうかがえる。また、それらの児童は、算数ABとも上位層にある状況である。また、新たなアイデアを求めたり、あきらめずに問題に取り組んだりしている児童についても、算数ABとも上位層にあることが明らかになった。
全国と同傾向であるが、「国語の勉強は大切」「国語の授業で学習したことは、将来役に立つ」と答えた生徒の割合が高かった。これに比べると、「国語の勉強が好き」と答えた生徒の割合は高いとは言えない状況である。国語の勉強の必要性を認識しながら「好き」と感じていない生徒の興味・関心を、どのように引き出していくかが問われている。
全国と同傾向であるが、ポイントの高かった質問を見てみると、青森県でこれまでも強調されてきた「分かる授業づくり」の大切さを示している。そのために、次のような方策を具体的に考えることが求められている。
3で述べた分析結果を受け、各校種・教科で指導改善プランを作成した。その概要は以下の通りである。
4で述べた学校改善支援プランについては、具体的な改善支援策の例を示した教師向け「指導改善リーフレット」を作成し、県内全小・中学校教員に配付を行い、活用をお願いした。
【指導改善リーフレット】
また、検証改善委員会での検討結果を詳細にまとめた「事業成果報告書」を作成し、県内全小・中学校及び各教育機関に配付を行い、合わせて活用していただくようにお願いした。
【事業成果報告書】
青森県教育委員会としては、そのプランに基づき、本県児童生徒一人一人の学習改善や学習意欲の向上を図っていくこととしている。
また、平成20年度において、文部科学省「全国学力・学習状況調査等を活用した学校改善の推進に係る実践研究事業」を活用して、県内8校(小学校5校、中学校3校)を調査活用協力校として指定し、学校改善支援プラン等を踏まえ、全国学力・学習状況調査等の結果から見られる課題の改善に向けて取り組んでいただくこととしている。
そして、学識経験者を含めた会議を設けて調査活用協力校における成果を取りまとめ、発表会を通じて成果の普及を図るとともに、その成果について各学校へ周知するため報告書集を作成することとしている。
今回行われた全国的な学力調査の大きな特徴として、「B問題」の存在がある。主として「活用」する力をみようとする問題である。これまで行われてきた学習状況調査や各都道府県別学力テスト、さらには中高の入試問題などとも一線を画す、新しいタイプの問題であった。けれども、ここには3月に告示される新しい「学習指導要領」に示される学力にも通じる学力観が内在している。その意味で、この学力調査とそれを受けた「指導(授業)の改善」が、新しい「学習指導要領」移行期における架け橋としての役割をもつと考えていいだろう。
おわりに、この学校改善支援プランを各教育事務所、各学校単位、それぞれの担当教員単位で有効に活用していだたくことを願っている。
http://www.pref.aomori.lg.jp/bunka/education/kaizen_shien.html
(※青森県庁ホームページへリンク)
-- 登録:平成21年以前 --