第2章 各教科 第1節 盲学校、聾学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校 第10款 歯科技工

第1 目標

 歯科技工に関する基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、その社会的意義と役割を理解させるとともに、歯科医療の発展に寄与する能力と態度を育てる。

第2 各科目

[歯科技工関係法規]

1 目標

 歯科技工に関する法規について理解させ、歯科技工の業務を適切に行うために必要な能力と態度を育てる。

2 内容

(1)法制概要
 ア 法の概念と体系

(2)衛生行政の組織
 ア 衛生行政の仕組みと意義
 イ 衛生行政の財政と活動

(3)歯科技工士法総論
 ア 歯科技工士免許と業務
 イ 歯科技工所
 ウ 罰則規定と附則等

(4)関係法規
 ア 歯科医師法
 イ 歯科衛生士法

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(3)については、内容の(4)との関連を図り、歯科技工士法における基本用語の的確な理解を促すとともに、罰則規定や諸届についての理解を深めるようにすること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(1)及び(2)については、法制の仕組み、国や都道府県の衛生行政の概要について扱うこと。
 イ 内容の(3)については、歯科技工士法の概要、歯科技工士免許の要件、歯科技工の業務等を総合的に理解させること。
 ウ 内容の(4)については、各医療従事者の業務内容等について歯科技工とのかかわりに重点を置いて指導すること。

[歯科技工学概論]

1 目標

 歯科技工及び口腔(くう)の機能と疾患の概要について理解させ、歯科技工に必要な能力と態度を育てる。

2 内容

(1)歯科技工総論
 ア 歯科医療及び歯科技工の意義
 イ 歯科技工士の倫理
 ウ 歯科技工の沿革
 エ 口腔(くう)の構造と機能
 オ 歯科及び口腔(くう)の疾患

(2)歯科技工管理
 ア 歯科技工業務の運営と管理
 イ 作業環境と衛生
 ウ 歯科技工士の健康管理

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(1)及び(2)については、歯科技工の概要を理解させるとともに医療従事者としての自覚を養うように努めること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(1)については、歯科技工に必要な基礎的事項に重点を置いて扱うこと。
 イ 内容の(2)については、歯科技工業務の特徴を理解させ、その責務等を重点的に扱うこと。

[歯科理工学]

1 目標

 歯科技工に必要な歯科材料、機械・器具及び歯科鋳造に関する基礎的な知識と技術を習得させ、歯科技工を適切に行う能力と態度を育てる。

2 内容

(1)歯科理工学概論
 ア 歯科理工の目的と意義
 イ 歯科材料の性質

(2)歯科技工材料
 ア 金属材料
 イ 高分子材料
 ウ 無機材料

(3)歯科技工用機器
 ア 切削機器
 イ 研磨機器
 ウ 歯科技工関連機器

(4)歯科鋳造
 ア 歯科鋳造概説
 イ 歯科鋳造用材料と器具
 ウ 鋳造体の精度と適合

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 指導に当たっては、実験・実習を中心とすること。
 イ 内容の(4)については、「歯科技工実習」と関連させて扱うこと。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(1)については、歯科材料の物理的、化学的性質、歯科材料と人体との関連、歯科材料の接着、歯科材料規格等の基礎的事項について扱うこと。
 イ 内容の(2)及び(3)については、相互に関連させて扱い、実際的な知識と技術の習得を図ること。
 ウ 内容の(4)については、歯科鋳造の目的と意義、その概要について扱うこと。

[歯の解剖学]

1 目標

 歯の解剖に関する基礎的な知識と技術を習得させ、歯科技工を適切に行う能力と態度を育てる。

2 内容

(1)口腔(くう)解剖
 ア 口腔(くう)周囲の骨と筋
 イ 顎(がく)関節と口腔(くう)

(2)歯の解剖
 ア 歯の概説
 イ 永久歯と乳歯
 ウ 歯周組織
 エ 歯列弓と上下顎(がく)の位置関係

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 「顎(がく)口腔(くう)機能学」との関連を図り、歯の解剖について総合的に理解させるよう留意すること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(1)については、口腔(くう)及び口腔(くう)周囲の概要について扱うこと。
 イ 内容の(2)については、天然歯の観察により、歯の形態や歯群、歯の消化器系器官としての意義等を扱うこと。

[顎(がく)口腔(くう)機能学]

1 目標

 顎(がく)口腔(くう)系器官の機能と形態を理解させるとともに、咬(こう)合器の取扱い方を習得させ、歯科技工を適切に行う能力と態度を育てる。

2 内容

(1)顎(がく)口腔(くう)機能学概論
 ア 顎(がく)口腔(くう)系の機能、形態及びその維持

(2)下顎(がく)運動と咬(こう)合
 ア 下顎(がく)位と下顎(がく)運動
 イ 咬(こう)合に関する指標等
 ウ 咬(こう)合様式

(3)咬(こう)合器の取扱い
 ア 咬(こう)合器の機能と分類
 イ 平均値咬(こう)合器
 ウ 半調節性咬(こう)合器
 エ 全調節性咬(こう)合器

(4)義歯及び修復物の咬(こう)合
 ア 修復物の咬(こう)合
 イ 部分床義歯と全部床義歯

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(1)から(3)までについては、有床義歯技工実習、歯冠修復技工実習よりも先行して履修できるようにすること。
 イ 内容の(4)については、「有床義歯技工学」及び「歯冠修復技工学」と関連させながら扱うこと。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(1)については、顎(がく)口腔(くう)系器官の機能を、その形態と関連させながら扱うこと。
 イ 内容の(2)については、各種の咬合様式等に関して、歯の接触関係を中心に扱うこと。
 ウ 内容の(3)については、平均値咬(こう)合器と半調節性咬(こう)合器の取扱い方に重点を置いて指導し、全調節性咬(こう)合器については、その概略を理解させることにとどめること。

[有床義歯技工学]

1 目標

 有床義歯技工に関する基礎的な知識と技術を習得させ、歯科技工を適切に行う能力と態度を育てる。

2 内容

(1)全部床義歯技工学
 ア 全部床義歯の目的、分類、構成
 イ 全部床義歯技工の基礎知識
 ウ 全部床義歯の製作

(2)部分床義歯技工学
 ア 部分床義歯の目的、分類、構成
 イ 印象採得と咬(こう)合採得
 ウ 人工歯排列
 エ 咬(こう)合調整と研磨
 オ 金属床義歯

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 有床義歯については、「歯の解剖学」及び「顎(がく)口腔(くう)機能学」との関連を図り、症例実習を中心にして基礎的・基本的な技術の習得を図ること。
 イ 有床義歯の製作の指導に当たっては、機能的回復と審美的回復に必要な知識の習得と態度の形成に努めるようにすること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(1)については、顎(がく)口腔(くう)を取り巻く骨、筋肉などの形態的特徴や機能的特徴について、咬(こう)合器と関連させながら扱うこと。
 イ 内容の(2)については、残存歯との調和に配慮した人工歯排列、咬(こう)合調整に重点を置いて扱うこと。

[歯冠修復技工学]

1 目標

歯冠修復技工に関する基礎的な知識と技術を習得させ、歯科技工を適切に行う能力と態度を育てる。

2 内容

(1)歯冠修復技工学概論
 ア 歯冠修復技工の目的と意義
 イ 印象採得と作業模型
 ウ 咬(こう)合採得と咬(こう)合器

(2)メタルインレー
 ア メタルインレーの特徴
 イ 窩(か)洞形態と構成
 ウ メタルインレーの製作法

(3)陶材インレー
 ア 陶材インレーの製作法

(4)被覆冠
 ア 一部被覆冠と全部被覆冠
 イ 全部鋳造冠の製作法
 ウ 前装鋳造冠の製作法

(5)継続歯と架工義歯(橋義歯)
 ア 継続歯及び架工義歯の特徴
 イ 支台装置の種類と要件
 ウ 橋体の種類と特徴

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 「歯の解剖学」、「顎(がく)口(くう)腔機能学」及び「有床義歯技工学」と関連させながら指導すること。
 イ 内容の(1)については、内容の(2)から(5)までとの関連を図り、歯冠修復技工の意義と目的について理解させること。
 ウ 内容の(4)のイについては、歯冠修復技工学の中心となる分野であることから、他の分野と関連させながら、的確な理解を深めるよう留意すること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(2)及び(3)については、各種インレーの意義と製作順序に重点を置いて扱うこと。

[矯正歯科技工学]

1 目標

 矯正歯科技工に関する基礎的な知識と技術を習得させ、歯科技工を適切に行う能力と態度を育てる。

2 内容

(1)矯正歯科技工学概論

(2)正常咬(こう)合と不正咬(こう)合

(3)矯正装置と保定装置

(4)矯正用模型

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 「歯の解剖学」及び「小児歯科技工学」との関連を図り、矯正歯科技工の理論に基づいた基本的な技術の習得を促すよう留意すること。
 イ 指導に当たっては、矯正歯科治療の考え方に基づき、矯正装置の役割や製作技術を理解させるようにすること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(1)については、矯正歯科治療の目的や進め方と関連させて扱うこと。
 イ 内容の(3)については、基本的な矯正装置と保定装置を取り上げ、その構成や機能、材料の特性等を中心に扱うこと。

[小児歯科技工学]

1 目標

小児歯科技工に関する基礎的な知識と技術を習得させ、歯科技工を適切に行う能力と態度を育てる。

2 内容

(1)小児歯科技工学概論
 ア 歯、顎(がく)、顔面の成長発育
 イ 乳歯列期と混合歯列期

(2)乳歯の歯冠修復
 ア 成形充填(てん)
 イ 被覆冠

(3)咬(こう)合誘導装置
 ア 保隙(げき)装置
 イ スペースリゲイナー

(4)口腔(くう)習癖除去装置
 ア 吸指と舌癖の除去

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。

 ア 「歯の解剖学」との関連を図り、小児の成長発育に留意しながら、修復物、咬合誘導装置等の製作にかかわる基礎的・基本的な知識と技術の習得を促すこと。
 イ 内容の(1)については、内容の(2)から(4)までとの関連を図り、小児歯科技工の意義と目的を理解させること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(1)については、小児の成長発育に伴う歯、顎等の変化に重点を置いて扱うこと。
 イ 内容の(3)については、乳歯の早期喪失等による症例の技工物を取り上げるなどして、基本的な製作方法の習得を図ること。

[歯科技工実習]

1 目標

 歯科技工に関する実際的な知識と技術を総合的に習得させ、歯科技工を適切に行う能力と態度を育てる。

2 内容

(1)有床義歯技工実習

(2)歯冠修復及び架工義歯(橋義歯)技工実習

(3)歯型彫刻技工実習

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 指導に当たっては、実験・実習を中心にして使用機械、器具の理解を深め、基礎的・基本的な知識と技術を総合的に習得させるよう留意すること。また、安全管理や保健管理にかかわる知識の習得と態度の形成に努めること。
 イ 臨床的模型上での実習を行うなど、多種多様な模型の活用を図り、適切な知識や技術の習得を促すこと。また、「歯の解剖学」、「有床義歯技工学」及び「歯冠修復技工学」と関連させながら、生徒の実態に応じて適切に指導すること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(1)については、臨床的模型を使用した全部床義歯の製作、内容の(2)については、鋳造冠のワックスアップの反復練習、内容の(3)については、石膏、ワックス及びレジンを使用した歯型彫刻に重点を置いて指導すること。

[歯科技工情報処理]

1 目標

 社会における情報化の進展と情報の意義や役割を理解させるとともに、情報処理に関する知識と技術を習得させ、歯科技工の分野で情報及び情報手段を活用する能力と態度を育てる。

2 内容

(1)情報社会とコンピュータ
 ア 生活と情報処理
 イ コンピュータの利用分野
 ウ 情報の価値とモラル

(2)コンピュータによる情報処理
 ア コンピュータの仕組み
 イ コンピュータの活用
 ウ 情報通信ネットワーク

(3)歯科技工とコンピュータの活用
 ア 歯科技工におけるコンピュータ利用の目的と意義
 イ 歯科技工におけるコンピュータ活用の実際
 ウ 個人情報の管理

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 指導に当たっては、実習を通して、実践的・体験的に理解させるよう留意すること。
 イ 内容の(1)及び(2)については、歯科技工に関する題材やデータを用いることなどにより、歯科技工の分野との関連を考慮した指導を行うよう留意すること。

(2)内容の範囲や程度については、次の事項に配慮するものとする。
 ア 内容の(1)については、生活における情報の意義や役割及びコンピュータの利用分野の概要について理解させるとともに、情報を扱う者の責任や基本的なルールについても扱うこと。
 イ 内容の(2)のイについては、生徒の実態に応じてアプリケーションソフトウェアを選択し、その基本操作を扱うこと。ウについては、情報通信ネットワークを活用した情報の収集、処理、発信について体験的に理解させること。
 ウ 内容の(3)については、歯科技工業務において、現在用いられているデータ処理や経営管理等のコンピュータの活用について扱うこと。

[課題研究]

1 目標

 歯科技工に関する課題を設定し、その課題の解決を図る学習を通して、専門的な知識と技術の深化、総合化を図るとともに、問題解決の能力や自発的、創造的な学習態度を育てる。

2 内容

(1)調査、研究、実験

(2)作品製作

(3)医療現場等における実習

(4)職業資格の取得

3 内容の取扱い

(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 生徒の興味・関心、進路希望等に応じて、内容の(1)から(4)までの中から個人又はグループで適切な課題を設定させること。なお、課題は内容の(1)から(4)までの2項目以上にまたがる課題を設定することができること。
 イ 課題研究の成果について発表する機会を設けるよう努めること。

第3 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。
(1)各科目の指導に当たっては、できるだけ実験・実習を通して、実際的、具体的に理解させるようにすること。
(2)地域や歯科技工所等との連携を図り、就業体験を積極的に取り入れるとともに、社会人講師を積極的に活用するなどの工夫に努めること。

2 内容の取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
(1)各科目の指導に当たっては、各種歯科材料、歯科技工用機械等の発達を考慮して、科学的知識と技術の習得について、特に留意すること。
(2)各科目の指導に当たっては、コンピュータや情報通信ネットワーク等の活用を図り、学習の効果を高めるようにすること。
(3)各科目の内容の取扱いのうち内容の範囲や程度等を示す事項は、当該科目を履修するすべての生徒に対して指導するものとする内容の範囲や程度等を示したものであり、学校において必要がある場合には、この事項にかかわらず指導することができること。

3 実験・実習を行うに当たっては、施設・設備の安全管理に配慮し、学習環境を整えるとともに、事故防止の指導を徹底し、安全と衛生に十分留意するものとする。

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課

-- 登録:平成21年以前 --