第2章 各教科 第1節 小学部

第1款 盲学校、聾(ろう)学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校

 各教科の目標、各学年の目標及び内容並びに指導計画の作成と各学年にわたる内容の取扱いについては、小学校学習指導要領第2章に示すものに準ずるものとする。
 指導計画の作成と各学年にわたる内容の取扱いに当たっては、児童の障害の状態や特性等を十分考慮するとともに、特に次の事項に配慮するものとする。

1 盲学校

(1)具体的な事物・事象や動作と言葉とを結び付けて、的確な概念の形成を図り、言葉を正しく活用できるようにすること。
(2)児童の視覚障害の状態等に応じて、点字又は普通の文字の読み書きを系統的に指導し、習熟させること。なお、点字を常用して学習する児童に対しても、漢字・漢語の理解を促すため、適切な指導が行われるようにすること。
(3)児童の視覚障害の状態等によって学習上困難を伴う内容については、基本の理解を促す事項に重点を置いて指導すること。
(4)触覚教材、拡大教材等の活用を図るとともに、児童がコンピュータ等の情報機器を活用して容易に情報の収集や処理ができるようにするなど、児童の視覚障害の状態等を考慮した指導方法を工夫すること。
(5)児童が空間や時間の概念を活用して学習場面の状況を的確に把握できるようにし、見通しをもって意欲的な学習活動を展開できるようにすること。

2 聾(ろう)学校

(1)体験的な活動を通して的確な言語概念の形成を図り、児童の発達に応じた思考力の育成に努めること。
(2)児童の言語発達の程度に応じて、主体的に読書に親しむ態度を養うように工夫すること。
(3)児童の聴覚障害の状態等に応じて、指導内容を適切に精選し、基礎的・基本的な事項に重点を置いて指導すること。
(4)補聴器等の利用により、児童の保有する聴覚を最大限に活用し、効果的な学習活動が展開できるようにすること。
(5)視覚的に情報を獲得しやすい教材・教具やコンピュータ等の情報機器を有効に活用し、指導の効果を高めるようにすること。
(6)児童の言語発達の程度に応じて、言葉による意思の相互伝達が活発に行われるように指導方法を工夫すること。

3 肢体不自由者を教育する養護学校

(1)児童の身体の動きの状態や生活経験の程度等を考慮して、指導内容を適切に精選するとともに、その重点の置き方や指導の順序等を工夫すること。
(2)身体の動きやコミュニケーション等に関する内容の指導に当たっては、特に自立活動における指導との密接な関連を保つようにし、学習効果を一層高めるようにすること。
(3)児童の身体の動きや意思の表出の状態等に応じて、適切な補助用具や補助的手段を工夫するとともに、コンピュータ等の情報機器などを有効に活用し、指導の効果を高めるようにすること。

4 病弱者を教育する養護学校

(1)児童の授業時数の制約等の状況に応じて、指導内容を適切に精選し、基礎的・基本的な事項に重点を置くとともに、各教科等相互の関連を図るなどして、効果的な学習ができるようにすること。
(2)健康状態の改善等に関する内容の指導に当たっては、特に自立活動における指導との密接な関連を保つようにし、学習効果を一層高めるようにすること。
(3)児童の身体活動の制限の状態等に応じて、教材・教具の工夫やコンピュータ等の情報機器の有効な活用を図るなどして、指導の効果を高めるようにすること。
(4)児童の病気の状態等を考慮し、学習活動が負担過重とならないようにすること。

第2款 知的障害者を教育する養護学校

第1 各教科の目標及び内容

[生活]

1 目標
 日常生活の基本的な習慣を身に付け、集団生活への参加に必要な態度や技能を養うとともに、自分と身近な社会や自然とのかかわりについて関心を深め、自立的な生活をするための基礎的能力と態度を育てる。

2 内容
○ 1段階
(1)身辺生活の処理を求めたり、教師と一緒に行ったりする。
(2)教師と一緒に健康で安全な生活をする。
(3)教師や友達と同じ場所で遊ぶ。
(4)教師と一緒に身近な人に簡単なあいさつをする。
(5)教師と一緒に集団活動に参加する。
(6)教師と一緒に簡単な手伝いや仕事をする。
(7)学校生活の簡単なきまりに従って行動する。
(8)教師と一緒に簡単な買い物をする。
(9)身近な自然の中で、教師と一緒に遊んだり、自然や生き物に興味や関心をもったりする。
(10)家族や家の近所などの様子に興味や関心をもつ。
(11)身近な公共施設や公共物を教師と一緒に利用する。

○ 2段階
(1)教師の援助を受けながら身辺生活の処理をする。
(2)教師の援助を受けながら健康で安全な生活をする。
(3)教師や友達と簡単なきまりのある遊びをする。
(4)教師の援助を受けながら身近な人にあいさつや話をするなどのかかわりをもつ。
(5)集団活動に参加し、簡単な係活動をする。
(6)教師の援助を受けながら簡単な手伝いや仕事をする。
(7)日常生活に必要な簡単なきまりに気付き、それらを守って行動する。
(8)決まった額の買い物をして、金銭の必要なことが分かる。
(9)身近な自然の中で遊んだり、動植物を育てたりして自然や生き物への興味や関心を深める。
(10)家族の役割や身近な地域の様子に興味や関心をもち、自分と家庭や社会とのかかわりに気付く。
(11)教師の援助を受けながら身近な公共施設や公共物を利用する。

○ 3段階
(1)日常生活に必要な身辺生活の処理を自分でする。
(2)健康や身体の変化に関心をもち、健康で安全な生活をするように心掛ける。
(3)友達とかかわりをもち、きまりを守って仲良く遊ぶ。
(4)身近な人と自分とのかかわりが分かり、簡単な応対などをする。
(5)進んで集団生活に参加し、簡単な役割を果たす。
(6)日常生活で簡単な手伝いや仕事を進んでする。
(7)日常生活に必要な簡単なきまりが分かり、それらを守って行動する。
(8)簡単な買い物をして、金銭の取扱いに慣れる。
(9)身近な自然の事物・現象に興味や関心を深め、その特徴や変化の様子を知る。
(10)家庭や社会の様子に興味や関心を深め、その働きを知る。
(11)身近な公共施設や公共物の働きが分かり、それらを利用する。

[国語]

1 目標
 日常生活に必要な国語を理解し、表現する能力と態度を育てる。

2 内容
○ 1段階
(1)教師の話を聞いたり、絵本などを読んでもらったりする。
(2)教師などの話し掛けに応じ、表情、身振り、音声や簡単な言葉で表現する。
(3)教師と一緒に絵本などを楽しむ。
(4)いろいろな筆記用具を使って書くことに親しむ。

○ 2段階
(1)教師や友達などの話し言葉に慣れる。
(2)見聞きしたことなどを簡単な言葉で話す。
(3)文字などに関心をもち、読もうとする。
(4)文字を書くことに興味をもつ。

○ 3段階
(1)身近な人の話を聞いて、内容のあらましが分かる。
(2)見聞きしたことなどのあらましを教師や友達と話す。
(3)簡単な語句や短い文などを正しく読む。
(4)簡単な語句や短い文を平仮名などで書く。

[算数]

1 目標
 具体的な操作などの活動を通して、数量や図形などに関する初歩的なことを理解し、それらを扱う能力と態度を育てる。

2 内容
○ 1段階
(1)具体物の有無が分かる。
(2)身近にあるものの数量に関心をもつ。
(3)身近にあるものの形の違いに気付く。

○ 2段階
(1)身近にある具体物を数える。
(2)身近にあるものの長さやかさなどを比較する。
(3)基本的な図形や簡単な図表に関心をもつ。
(4)一日の時の移り変わりに気付く。

○ 3段階
(1)初歩的な数の概念を理解し、簡単な計算をする。
(2)身近にあるものの重さや広さなどが分かり、比較する。
(3)基本的な図形が分かり、その図形を描いたり、簡単な図表を作ったりする。
(4)時計や暦に関心をもつ。

[音楽]

1 目標
 表現及び鑑賞の活動を通して、音楽についての興味や関心をもち、その美しさや楽しさを味わうようにする。

2 内容
 ○ 1段階
(1)音楽が流れている中で体を動かして楽しむ。
(2)音の出るおもちゃで遊んだり、扱いやすい打楽器でいろいろな音を鳴らしたりして楽しむ。

○ 2段階
(1)好きな音楽を聴いて楽しむ。
(2)友達や教師とともにリズムの特徴を感じ取って身体を動かす。
(3)いろいろな打楽器を使ってリズム遊びなどをする。
(4)好きな歌ややさしい旋律の一部分を楽しく歌う。

○ 3段階
(1)身近な人の歌や演奏などを聴き、いろいろな音楽に関心をもつ。
(2)音楽に合わせて簡単な身体表現をする。
(3)旋律楽器に親しみ、簡単な楽譜を見ながらリズム合奏をする。
(4)やさしい歌を伴奏に合わせながら、教師や友達などと一緒に歌ったり、一人で歌ったりする。

[図画工作]

1 目標
 初歩的な造形活動によって、造形表現についての興味や関心をもち、表現の喜びを味わうようにする。

2 内容
○ 1段階
(1)かいたり、つくったり、飾ったりすることに関心をもつ。
(2)身近な材料をもとに造形遊びをする。

○ 2段階
(1)見たことや感じたことを絵にかいたり、つくったり、それを飾ったりする。
(2)身近な材料や用具を親しみながら使う。

○ 3段階
(1)見たこと、感じたことや想像したことを、工夫して絵にかいたり、つくったり、それを飾ったり、使ったりする。
(2)いろいろな材料や用具を工夫しながら、目的に合わせて使う。
(3)友達と作品を見せ合ったり、造形品などを見ることに関心をもったりする。

[体育]

1 目標
 適切な運動の経験を通して、健康の保持増進と体力の向上を図り、楽しく明るい生活を営む態度を育てる。

2 内容
○ 1段階
(1)教師と一緒に、歩く、走るなどの基本的な運動をする。
(2)いろいろな器械・器具・用具を使った遊び、表現遊び、水遊びなどをする。
(3)簡単な合図や指示に従って、楽しく運動する。

○ 2段階
(1)歩く、走る、跳ぶなどの基本的な運動に慣れる。
(2)いろいろな器械・器具・用具を使った運動、表現運動、水の中での運動などに親しむ。
(3)簡単なきまりを守り、友達とともに安全に運動する。

○ 3段階
(1)歩く、走る、跳ぶなどの基本的な運動をいろいろな方法で行う。
(2)いろいろな器械・器具・用具を使った運動、表現運動、水の中での運動などをする。
(3)いろいろなきまりを守り、力を合わせて安全に運動する。

第2 指導計画の作成と各教科全体にわたる内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては、児童の知的発達の遅滞の状態や経験等を考慮しながら、各教科の相当する段階の内容の中から実際に指導する内容を選定し、配列して、効果的な指導を行うことができるよう配慮するものとする。

2 各教科、道徳、特別活動及び自立活動の全部又は一部を合わせて指導計画を作成するに当たっては、個々の児童の実態に即して、生活に結び付いた学習活動が展開できるよう配慮するものとする。

3 児童の実態に即して学習環境を整えるなど、安全に留意するものとする。

4 家庭等との連携を図り、児童が学習の成果を実際の生活に生かすことができるよう配慮するものとする。

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初等中等教育局教育課程課

-- 登録:平成21年以前 --