第2章 各教科 第6節 美術

第1 目標

 表現及び鑑賞の幅広い活動を通して、美術の創造活動の喜びを味わい美術を愛好する心情を育てるとともに、感性を豊かにし、美術の基礎的能力を伸ばし、豊かな情操を養う。

第2 各学年の目標及び内容

第1学年

1 目標

(1)楽しく美術の活動に取り組み美術を愛好する心情を培い、心豊かな生活を創造していく意欲と態度を育てる。

(2)対象を深く観察する力、感性や想像力を高め、豊かに発想し構想する能力や基礎的技能を身に付け、多様な表現方法や造形要素に関心をもち、創意工夫し美しく表現する能力を育てる。

(3)自然や美術作品などについての基礎的な理解や見方を広げ、よさや美しさなどを感じ取る鑑賞の能力を育てる。

2 内容

A 表現

(1)絵や彫刻などに表現する活動を通して、次のことができるよう指導する。
 ア 自然や身近なものを観察し、形や色彩の特徴や美しさなどをとらえスケッチをすること。
 イ 対象を見つめ感じ取ったよさや美しさ、想像したことなどを基に主題を発想し、全体と部分との関係を考えて創造的な構成を工夫し、心豊かに表現する構想を練ること。
 ウ 描画における形や色彩の表し方、彫刻などにおける立体としてのものの見方や形体の表し方、意図に応じた材料や用具の生かし方などの基礎的技能を身に付けること。
 エ 自分の表したい感じを大切にして多様な表現方法を工夫し、絵やイラストレーション、彫刻などに美しく生き生きと表現すること。

(2)デザインや工芸などに表現する活動を通して、次のことができるよう指導する。
 ア 形や色彩、材料、光などがもたらす性質や感情を理解し、機能的な生かし方を考え、美的感覚を働かせて美しく構成したり装飾したりすること。
 イ 用途や機能、使用する者の気持ち、材料などから発想し構想を練り、つくり方、意図に応じた材料や用具の生かし方などの基礎的技能を身に付け、造形感覚を働かせ創意工夫してつくること。
 ウ 伝えたい内容を図や写真・ビデオ・コンピュータ等映像メディアなどで、効果的で美しく表現し伝達・交流すること。

B 鑑賞

 鑑賞の活動を通して、次のことができるよう指導する。
 ア 想像力を働かせ、美術作品や児童生徒の表現などに表された作者の心情や意図と表現の工夫を感じ取り、作品の見方を広げ、多様な表現のよさや美しさなどを味わい、鑑賞に親しむこと。
 イ 生活の中のデザインや伝統的な工芸を鑑賞し、豊かな発想と工夫、美と機能性の調和、作品に託された願いと造形的なよさなどに気付き、生活におけるデザインや工芸の働きについて理解すること。

第2学年及び第3学年

1 目標

(1)主体的に美術の活動に取り組み美術を愛好する心情を深め、心豊かな生活を創造していく意欲と態度を高める。

(2)対象を深く見つめる力、感性や想像力を一層高め、独創的・総合的な見方や考え方を培い、豊かに発想し構想する能力や自分の表現方法を創意工夫し創造的に表現する能力を伸ばす。

(3)自然、美術作品や文化遺産などについての理解や見方を深め、心豊かに生きることと美術とのかかわりに関心をもち、よさや美しさなどを味わう鑑賞の能力を高める。

2 内容

A 表現

(1)絵や彫刻などに表現する活動を通して、次のことができるよう指導する。
 ア 対象を深く見つめ感じ取ったこと、考えたこと、夢、想像や感情など心の世界をスケッチに表すこと。
 イ 主題を発想し、スケッチなどを基に想像力を働かせ、単純化や省略、強調、構成の仕方、材料の組合せなどを工夫し、心豊かな表現の構想を練ること。
 ウ 日本及び諸外国の作品の独特な表現形式や構成、技法などに関心をもち、自分の表現意図に合う新たな表現方法を研究するなどして創造的に表現すること。
 エ 表したい内容を漫画やイラストレーション、写真・ビデオ・コンピュータ等映像メディアなどで表現すること。

(2)デザインや工芸などに表現する活動を通して、次のことができるよう指導する。
 ア デザインの効果を考え、形や色彩、図柄、材料、光などの構成を簡潔にしたり総合化したり、取り合わせを工夫するなどして、美しく心豊かなデザインをすること。
 イ 使用する者の気持ちや機能、夢や想像などから独創的に発想し、造形的な美しさ、材料や用具の生かし方などを総合的に考え、創意工夫してつくること。
 ウ 伝えたい内容をイラストレーションや図、写真・ビデオ・コンピュータ等映像メディアなどで、分かりやすく美しく表現し、発表したり交流したりすること。
 エ 身近な環境について、安らぎや自然との共生などの視点から心豊かなデザインをすること。

B 鑑賞

 鑑賞の活動を通して、次のことができるよう指導する。
 ア 作者の心情や意図と創造的な表現の工夫などを理解し見方を深め、作品に対する自分の価値意識をもって批評し合い、よさや美しさを幅広く味わうこと。
 イ 日本の美術の概括的な変遷や作品の特質を調べたり、それらの作品を鑑賞したりして、日本の美術や文化と伝統に対する理解と愛情を深め、美術文化の継承と創造への関心を高めること。
 ウ 日本及び諸外国の美術の文化遺産を鑑賞し、表現の相違と共通性に気付き、それぞれのよさや美しさ、創造力の豊かさなどを味わい、文化遺産を尊重するとともに、美術を通した国際理解を深めること。
 エ 現代及び文化遺産としてのデザインの洗練された美しさなどを感じ取り、自己の美意識や美的選択能力を高めること。
 オ 美術作品や生活の中の造形に取り入れられている自然のよさや美しさ、素材の生かし方などを感じ取り、自然や生活と美術との深いかかわりを理解すること。

第3 指導計画の作成と内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。
(1)第2の各学年の内容の「A表現」及び「B鑑賞」の指導並びに「A表現」の(1)及び(2)の指導については、それぞれ相互の関連も図るようにすること。
(2)第2の各学年の内容の「A表現」については、次のように扱い効果的な指導ができるよう工夫すること。
 ア 第1学年においては、美術の基礎的能力を総合的に身に付けられるようにするため、(1)及び(2)それぞれにおいて、描く活動とつくる活動のいずれも経験させるようにすること。その際、(1)と(2)の各内容を関連付けたり一体的に扱ったりすることもできること。
 イ 第2学年及び第3学年においては、(1)及び(2)それぞれにおいて、描く活動とつくる活動のいずれかを選択して扱ったり、相互に関連付けたり一体的に扱ったりするものとすること。その際、(1)と(2)の全体を通して描く活動とつくる活動が調和的に行えるようにすること。
(3)第2の内容の「B鑑賞」の指導については、各学年とも適切かつ十分な授業時数を配当すること。

2 第2の内容の指導については、次の事項に配慮するものとする。
(1)各学年の「A表現」の指導に当たっては、生徒の学習経験や能力、発達特性等の実態を踏まえ、生徒が自分の表現意図に合う表現形式や技法、材料などを選択し創意工夫して表現できるようにすること。
(2)互いの個性を生かし合い協力して創造する喜びを味わわせるため、適切な機会を選び共同で行う創造活動を経験させること。また、各表現の完成段階で作品を発表し批評し合い、互いの表現のよさや個性などを認め尊重し合う活動をするようにすること。
(3)主題の発想から表現の確認及び完成に至る全過程を通して、生徒が夢と目標をもち、自分のよさを発見し喜びをもって自己実現を果たしていく態度の形成を図るようにすること。
(4)表現の材料や方法などについては、地域の身近なものや伝統的なものも取り上げるようにすること。
(5)各学年の「B鑑賞」の題材については、日本や諸外国の児童生徒の作品、アジアの文化遺産についても取り上げるとともに、美術館・博物館等の施設や文化財などを積極的に活用するようにすること。

3 事故防止のため、特に、刃物類、塗料、器具などの使い方の指導と保管、活動場所における安全指導などを徹底するものとする。

4 生徒が随時鑑賞に親しむことができるよう、校内の適切な場所に鑑賞作品などを展示するとともに、学校図書館等における鑑賞用図書、映像資料などの活用を図るものとする。

5 選択教科としての「美術」においては、生徒の特性等に応じ多様な学習活動が展開できるよう、第2の内容その他の内容で各学校が定めるものについて、課題学習、伝統工芸など地域の特質を生かした学習、表現の能力を補充的に高める学習、創造的・独創的な芸術表現を追求する発展的な学習などの学習活動を各学校において適切に工夫して取り扱うものとする。

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初等中等教育局教育課程課

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