第2章 各教科 第2節 社会

第1 目標

 広い視野に立って、社会に対する関心を高め、諸資料に基づいて多面的・多角的に考察し、我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を深め、公民としての基礎的教養を培い、国際社会に生きる民主的、平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う。

第2 各分野の目標及び内容

地理的分野

1 目標

(1)日本や世界の地理的事象に対する関心を高め、広い視野に立って我が国の国土の地域的特色を考察し理解させ、地理的な見方や考え方の基礎を培い、我が国の国土に対する認識を養う。

(2)日本や世界の地域の諸事象を位置や空間的な広がりとのかかわりでとらえ、それを地域の規模に応じて環境条件や人間の営みなどと関連付けて考察し、地域的特色をとらえるための視点や方法を身に付けさせる。

(3)大小様々な地域から成り立っている日本や世界の諸地域を比較し関連付けて考察し、それらの地域は相互に関係し合っていることや各地域の特色には地方的特殊性と一般的共通性があること、また、それらは諸条件の変化などに伴って変容していることを理解させる。

(4)地域調査など具体的な活動を通して地理的事象に対する関心を高め、様々な資料を適切に選択、活用して地理的事象を多面的・多角的に考察し公正に判断するとともに適切に表現する能力や態度を育てる。

2 内容

(1)世界と日本の地域構成
 ア 世界の地域構成
 地球儀や世界地図を活用し、緯度と経度、大陸と海洋の分布、主な国々の名称と位置などを取り上げ、世界の地域構成を大観させる。
 (ア)地球上の位置関係と水陸の分布
 地球儀や世界地図を活用し、緯度と経度、時差、大陸と海洋の分布などを取り上げ、生活舞台としての地球を大観させ、地球的規模での位置関係をとらえる基礎的な技能や知識を身に付けさせる。
 (イ)国々の構成と地域区分
 現代の世界は、州や大陸及びそれらを幾つかに区分した地域でとらえられていることや様々な国々から構成されていることを理解させ、主な国々の名称と位置を地図を用いて身に付けさせるとともに、地名や地図への関心を高める。
 イ 日本の地域構成
 地球儀や地図を活用し、我が国の国土の位置、領域の特色、地域区分などを取り上げ、日本の地域構成を大観させる。
 (ア)日本の位置と領域
 我が国の国土の位置及び領域の特色と変化を広い視野から考察し、日本の現状を位置と領域の面から大観させる。
 (イ)都道府県の構成と地域区分
 現代の日本は都道府県などを基にして大小様々に地域区分できることなどを理解させ、日本の地域構成を地図上で大観させるとともに、地名や地図への関心を高める。

(2)地域の規模に応じた調査
 ア 身近な地域
 身近な地域における諸事象を取り上げ、観察や調査などの活動を行い、生徒が生活している土地に対する理解と関心を深めさせるとともに、市町村規模の地域的特色をとらえる視点や方法、地理的なまとめ方や発表の方法の基礎を身に付けさせる。
 イ 都道府県
 47都道府県の中から幾つかの都道府県を取り上げ、地理的事象を見いだして追究し、地域的特色をとらえさせるとともに、都道府県規模の地域的特色をとらえる視点や方法を身に付けさせる。
 ウ 世界の国々
 世界の国々の中から幾つかの国を取り上げ、地理的事象を見いだして追究し、地域的特色をとらえさせるとともに、国家規模の地域的特色をとらえる視点や方法を身に付けさせる。

(3)世界と比べて見た日本
 ア 様々な面からとらえた日本
 世界的視野から見た日本の地域的特色と日本全体の視野から見た国内の諸地域の特色を追究し、我が国の国土の特色を様々な面から大観させるとともに、地域の規模に応じて、また、地域間を比較し関連付けて、地域的特色を明らかにする視点や方法を身に付けさせる。
 (ア)自然環境から見た日本の地域的特色
 世界的視野から見て、日本は環太平洋造山帯に属し大地の動きが活発であること、温帯の島国、山国で降水量が多く、緑におおわれた国であること、自然災害が発生しやすく防災対策が大切であることといった特色を理解させるとともに、国内では地形、気候などにおいて地域差がみられることを大観させる。
 (イ)人口から見た日本の地域的特色
 世界的視野から見て、日本は人口が多く、また、人口密度が高く、平均寿命が長い国であること、少子化、高齢化に伴う課題を抱えていることといった特色を理解させるとともに、国内では平野部に多くの人口が集中し、過密・過疎地域がみられることを大観させる。
 (ウ)資源や産業から見た日本の地域的特色
 世界的視野から見て、日本はエネルギー資源や鉱物資源に恵まれていない国であること、土地が高度に利用されていること、産業の盛んな国であることといった特色を理解させるとともに、国内では地域の環境条件を生かした多様な産業地域がみられること、環境やエネルギーに関する課題などを抱えていることを大観させる。
 (エ)生活・文化から見た日本の地域的特色
 世界的視野から見て、日本においては比較的ものの豊かな中で人々が暮らしていること、また、近代化や国際化の進展などにより伝統的な生活・文化は変容していること、外国から入ってきた生活・文化は日本の環境条件に対応させて取り入れてきたことといった特色を理解させるとともに、国内では生活・文化の地域による差異が次第になくなりつつあるが、一方で各地に特色ある生活・文化がみられることを大観させる。
 (オ)地域間の結び付きから見た日本の地域的特色
 世界的視野から見て、日本は国際間の交通・通信網の整備が進んでいること、世界の各地と強く結び付いていること、結び付きの深さや内容は相手の国や地域によって特色がみられることを理解させるとともに、国内でも交通・通信網の整備が進んでいること、各地の時間的な距離や位置の関係が大きく変化しつつあること、人や物資の移動には地域的特色がみられること、各地域の特色は他地域との結び付きの影響を受けながら変化していることを大観させる。
 イ 様々な特色を関連付けて見た日本
 アの各項目で学習した成果を相互に関連付け、世界的視野から見た日本の地域的特色、日本全体の視野から見た諸地域の特色を大観させる。

3 内容の取扱い

(1)内容の(1)、(2)及び(3)については、この順序で取り扱うものとし、また、一部の項目に偏り過ぎないようにするものとする。

(2)内容の取扱いについては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 地埋的な見方や考え方及び地図の読図や作図、景観写真の読み取りなど地理的技能を身に付けることができるよう系統性に留意して計画的に指導すること。また、地域に関する情報の収集、処理に当たっては、コンピュータや情報通信ネットワークなどを積極的に活用するなどの工夫をすること。
 イ 地域の特色や変化をとらえるに当たっては、歴史的分野との連携を踏まえ、歴史的背景に留意して地域的特色を追究するよう工夫するとともに、公民的分野との関連にも配慮すること。
 ウ 地域的特色を追究する過程で生物や地学的な事象などを取り上げる際には、地域的特色をとらえる上で必要な範囲にとどめること。

(3)内容の(1)については、次のとおり取り扱うものとする。
 ア アの(ア)については、世界地図の投影法などの高度な内容は取り上げないこと。また、緯度と経度、時差などについては単に数量的な取扱いにとどめることなく、生徒の関心を高める工夫をすること。
 イ アの(イ)については、州名、大陸名及びそれらを幾つかに区分した地域名なども合わせて取り上げること。なお、国名については、生徒の既得知識を踏まえ更に拡充が図れるよう配慮し、大まかに世界地図を描けるようにすること。
 ウ イの(ア)については、地球儀や地図を活用して我が国の位置と領域の特色を多面的・多角的にとらえるようにすること。また、「領域の特色と変化」については、北方領土が我が国の固有の領土であることなど、我が国の領域をめぐる問題にも着目させるようにすること。
 エ イの(イ)については、生徒の既得知識を踏まえて、都道府県名のほかに都道府県庁所在地名も取り上げること。なお、都道府県の位置と名称については地図を用いて身に付けさせ、大まかに日本地図を描けるようにすること。
 オ 国名や都道府県名を確実に身に付けさせる観点から、適宜機会を設けて計画的に指導すること。

(4)内容の(2)については、次のとおり取り扱うものとする。
 ア ア~ウについては、各項目を比較し関連付けて取り扱い、地域の規模に応じて地域的特色をとらえる視点や方法が異なってくること、それに伴って地理的なまとめ方や発表の方法も工夫が必要であることなどに留意し、地域の規模に応じた調べ方、学び方を身に付けさせるようにすること。
 イ アについては、学校所在地の事情を踏まえて観察や調査を指導計画に位置付け実施すること。その際、縮尺の大きな地図や統計その他の資料に親しませ、それらの活用の技能を高めるようにすること。
 ウ イについては、二つ又は三つの都道府県を事例として選び、具体的に取り扱うようにすること。なお、事例として取り上げる都道府県については、学校所在地の都道府県を含めて選び、それぞれ特色ある視点や方法で追究するようにすること。
 エ ウについては、二つ又は三つの国を事例として選び、具体的に取り扱うようにすること。なお、事例として取り上げる国については、近隣の国を含めて選び、それぞれ特色ある視点や方法で追究するようにすること。

(5)内容の(3)については、次のとおり取り扱うものとする。
 ア アの(ア)~(オ)で示した日本の地域的特色については、多面的・多角的に取り扱うよう配慮し、必要最小限の事柄で構成すること。
 イ アの(ア)~(オ)の世界的視野から見た日本の地域的特色については、日本を一つの地域として取り扱うようにすること。また、国内の地域的特色については、日本全体の視野という点に留意し、類似性や傾向性に着目してとらえ、都道府県規模よりも細かな事象には深入りしないこと。
 ウ アの(イ)、(エ)及び(オ)の国内の地域的特色に関する取扱いに当たっては、一つ又は二つの事例地域を通して具体的に取り扱うようにすること。
 エ アの(ア)~(オ)及びイの取扱いに当たっては、計画的に指導し、地域的特色を地域の規模や地域間の比較によってとらえる方法を効果的に身に付けることができるようにすること。
 オ イについては、内容の(3)のまとめの項目であることに留意し、これに配当する授業時数はアの(ア)~(オ)の各項目に比べて増大することのないようにすること。

歴史的分野

1 目標

(1)歴史的事象に対する関心を高め、我が国の歴史の大きな流れと各時代の特色を世界の歴史を背景に理解させ、それを通して我が国の文化と伝統の特色を広い視野に立って考えさせるとともに、我が国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を育てる。

(2)国家・社会及び文化の発展や人々の生活の向上に尽くした歴史上の人物と現在に伝わる文化遺産を、その時代や地域との関連において理解させ、尊重する態度を育てる。

(3)歴史に見られる国際関係や文化交流のあらましを理解させ、我が国と諸外国の歴史や文化が相互に深くかかわっていることを考えさせるとともに、他民族の文化、生活などに関心をもたせ、国際協調の精神を養う。

(4)身近な地域の歴史や具体的な事象の学習を通して歴史に対する興味や関心を高め、様々な資料を活用して歴史的事象を多面的・多角的に考察し公正に判断するとともに適切に表現する能力と態度を育てる。

2 内容

(1)歴史の流れと地域の歴史
 ア 我が国の歴史について、関心ある主題を設定しまとめる作業的な活動を通して、時代の移り変わりに気付かせるとともに、歴史を学ぶ意欲を高める。
 イ 身近な地域の歴史を調べる活動を通して、地域への関心を高め、地域の具体的な事柄とのかかわりの中で我が国の歴史を理解させるとともに、歴史の学び方を身に付けさせる。

(2)古代までの日本
 ア 人類が出現し、やがて世界の古代文明が生まれたこと、また、日本列島で狩猟・採集を行っていた人々の生活が農耕の広まりとともに変化していったことを理解させる。
 イ 国家が形成されていく過程のあらましを、東アジアとのかかわり、古墳の広まり、大和朝廷による統一を通して理解させる。その際、当時の人々の信仰、大陸から移住してきた人々の我が国の社会に果たした役割に気付かせる。
 ウ 大陸の文物や制度を積極的に取り入れながら国家の仕組みが整えられ、その後、天皇・貴族の政治が展開されたことを、聖徳太子の政治と大化の改新、律令国家の確立、摂関政治を通して理解させる。
 エ 国際的な要素をもった文化が栄え、後に文化の国風化が進んだことを理解させる。

(3)中世の日本
 ア 武士が台頭し武家政権が成立したこととその後の武家社会の展開を鎌倉幕府の成立、南北朝の争乱と室町幕府、応仁の乱後の社会的な変動を通して理解させるとともに、元寇、日明貿易、琉球の国際的な役割など、その間の東アジア世界とのかかわりに気付かせる。
 イ 農業などの諸産業が発達し、畿内を中心とした都市や農村に自治的な仕組みが生まれたことを理解させるとともに、武士や民衆の活力を背景にして生み出された新たな文化の特色について考えさせる。

(4)近世の日本
 ア 戦国の動乱とその時期のヨーロッパ人の来航について理解させるとともに、その文化の伝来が我が国の社会に及ぼした影響について考えさせる。
 イ 織田・豊臣による統一事業とその当時の対外関係のあらましを通して政治や社会の大きな変化を理解させるとともに、武将や豪商などの生活文化の展開に気付かせる。
 ウ 江戸幕府の成立と大名統制、鎖国政策、身分制度の確立及び農村の様子を通して、江戸幕府の政治の特色について考えさせる。その際、鎖国下の対外関係に気付かせる。
 エ 産業、交通などが発達し、町人文化が都市を中心に形成されたことを理解させるとともに、地方の生活文化について着目させ、現在との結び付きについて考えさせる。
 オ 社会の変動や欧米諸国の接近に対応した幕府の政治改革と政治の行き詰まりを理解させるとともに、新しい学問・思想の動きについて気付かせる。

(5)近現代の日本と世界
 ア 市民革命や産業革命を経た欧米諸国のアジアへの進出を背景に、開国とその影響について理解させる。
 イ 明治維新の経緯のあらましを理解させ、新政府の諸改革により近代国家の基礎が整えられたことに気付かせるとともに、人々の生活の大きな変化について考えさせる。
 ウ 急速に近代化を進めた我が国の国際的地位の向上と大陸との関係のあらましを、自由民権運動と大日本帝国憲法の制定、日清・日露戦争、条約改正を通して理解させる。
 エ 政府の富国強兵・殖産興業政策の下で進展した我が国の近代産業が産業革命を経て発展したことと、その中での国民生活の変化について理解させる。また、この時期に近代文化が形成され、都市を中心に文化の大衆化が進んだことに気付かせる。
 オ 第一次世界大戦前後の国際情勢のあらましを理解させるとともに、民族運動の高まり、国際平和への努力、この時期の我が国の国民の政治的自覚の高まりに気付かせる。
 カ 昭和初期から第二次世界大戦の終結までの我が国の政治・外交の動き、中国などアジア諸国との関係、欧米諸国の動きに着目させて、経済の混乱と社会問題の発生、軍部の台頭から戦争までの経過を理解させるとともに、戦時下の国民の生活に着目させる。また、大戦が人類全体に惨禍を及ぼしたことを理解させる。
 キ 第二次世界大戦後、国際社会に復帰するまでの我が国の民主化と再建の過程や国際社会への参加について、世界の動きと関連させて理解させる。
 ク 高度経済成長以降の我が国の動きを世界の動きと関連させてとらえさせ、経済や科学技術の急速な発展とそれに伴う国民の生活の向上や国際社会において我が国の役割が大きくなってきたことについて気付かせる。

3 内容の取扱い

(1)内容の取扱いについては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 生徒の発達段階を考慮し、抽象的で高度な内容や複雑な社会構造などに深入りすることは避けるとともに、各時代の特色を表す歴史的事象を重点的に選んで指導内容を構成することにより、細かな知識を記憶するだけの学習に陥らないようにすること。なお、年代の表し方や時代区分についても基本的な理解を得させるようにすること。
 イ 世界の歴史については、我が国の歴史を理解する際の背景として我が国の歴史と直接かかわる事柄を取り扱うにとどめること。
 ウ 歴史的事象の指導に当たっては、地理的分野との連携を踏まえ、地理的条件にも着目して取り扱うよう工夫するとともに、公民的分野との関連にも配慮すること。
 エ 国家・社会及び文化の発展や人々の生活の向上に尽くした歴史上の人物に対する生徒の興味・関心を育てる指導に努めるとともに、それぞれの人物が果たした役割や生き方などについて時代的背景と関連付けて考察させるようにすること。その際、身近な地域の歴史上の人物を取り上げることにも留意すること。
 オ 日本人の生活や生活に根ざした文化については、各時代の政治や社会の動き及び各地域の地理的条件、身近な地域の歴史とも関連付けて指導するとともに、民俗学などの成果の活用や博物館、郷土資料館などの見学・調査を通じて、生活文化の展開を具体的に学ぶことができるようにすること。

(2)内容の(1)については、次のとおり取り扱うものとする。
 ア アについては、小学校における学習を踏まえ、中学校の歴史学習の導入として実施することを原則とすること。取り上げる主題は幾つかの時代にまたがるものとし、各時代ごとの細かな事象への深入りを避けるようにすること。
 イ イについては、内容の(2)以下とかかわらせて計画的に実施し、地域の特性に応じた時代を取り上げるようにするとともに、人々の生活や生活に根ざした文化に着目した取扱いを工夫すること。その際、博物館、郷土資料館などの活用も考慮すること。
 ウ ア及びイについては、適切かつ十分な授業時数を配当すること。

(3)内容の(2)については、次のとおり取り扱うものとする。
 ア アの「世界の古代文明」については、中国の古代文明を例として取り上げ、生活技術の発達、文字の使用などに気付かせるようにすること。また、稲作が大陸から日本列島に伝わったことについて気付かせるようにすること。
 イ イの「国家が形成されていく過程のあらまし」については、氏姓制度などの細かな事象に深入りしないようにすること。また、「東アジアとのかかわり」については、我が国との交流を扱い、東アジアにおける王朝の変遷などの詳細は取り扱わないこと。
 ウ ウについては、律令国家の形成以後、それを変質させながら奈良の都や平安京において天皇・貴族の政治が行われたことをとらえさせる観点から取り扱うようにすること。その際、律令制の変質や律令政治の実態などに深入りしないようにすること。
 エ エについては、代表的な事例を取り上げて、仏教の影響、文化を担った人々などに着目して取り扱い、網羅的な取扱いにならないようにすること。
 オ 考古学などの成果を活用するとともに、神話・伝承などの学習を通して、当時の人々の信仰やものの見方などに気付かせるよう留意すること。

(4)内容の(3)については、次のとおり取り扱うものとする。
 ア アについては、武家政治の特色をとらえさせるようにし、「武家社会の展開」については、土地制度などの細かな史実や政治機構の詳細などに深入りしないようにすること。
 イ イの「農村」については、徳政令、一揆について網羅的な取扱いにならないようにするとともに、それらの内容に深入りしないようにすること。
 文化については、代表的な事例を取り上げてその特色を考えさせるようにし、網羅的な取扱いにならないようにすること。

(5)内容の(4)については、次のとおり取り扱うものとする。
 ア アの「ヨーロッパ人の来航」の背景については、新航路の開拓を中心に取り扱い、宗教改革については深入りしないようにすること。
 イ イについては、それまでの時代との違いを理解させることを中心にし、細かな史実に深入りしないようにすること。
 ウ ウの「鎖国下の対外関係」については、オランダ、中国との交易のほか、朝鮮との交流や琉球の役割についても扱うようにすること。また、北方との交易をしていたアイヌについても着目させるようにすること。
 エ エの「産業、交通などが発達」したことについては、身近な地域の特色を生かして学習することを中心にし、網羅的な取扱いにならないようにすること。また、「町人文化」については、代表的な事例を取り上げて特色を考えさせるようにし、網羅的な取扱いにならないようにすること。「地方の生活文化」については、身近な地域の事例を取り上げるよう配慮すること。
 オ オの「社会の変動」については、商業の発達、百姓一揆などを農村の変化との関連で取り扱うが、高度な内容や細かな史実に深入りしないようにすること。「欧米諸国の接近」については、国内の対応を扱うにとどめること。「幕府の政治改革と政治の行き詰まり」については、代表的な事例を通して指導するようにすること。

(6)内容の(5)については、次のとおり取り扱うものとする。
 ア アの「市民革命」や「産業革命」については、代表的な一、二の国の例を取り上げて扱うようにすること。「欧米諸国のアジアへの進出」については、近代社会の成立の下、新たな市場や原料、植民地を求めてアジアにも進出したものであることを欧米諸国の事例を選んで取り上げるようにすること。ただし、これらは我が国の歴史を理解するための背景として取り扱うにとどめ、各事象の詳細にわたらないようにすること。
 イ イの「明治維新」については、複雑な国際情勢の中で独立を保ち、近代国家を形成していった政府や人々の努力に気付かせるようにすること。「新政府の諸改革」については、廃藩置県、学制・兵制・税制の改革、身分制度の廃止、領土の画定を扱うこと。
 ウ ウの「大日本帝国憲法の制定」については、これにより当時アジアで唯一の立憲制の国家が成立し議会政治が始まったことの意義について気付かせるようにすること。また、「条約改正」については、欧米諸国との対等の外交関係を樹立するための人々の努力に気付かせるようにすること。
 エ エの「産業革命」については、都市や農山漁村の生活に大きな変化が生じたことに気付かせるようにすること。また、「近代文化」については、学問、教育、科学技術、芸術などの発展を扱い、その進歩が著しかったことや伝統的な文化の上に欧米文化を受容して形成されたものであることを、代表的な事例を取り上げて気付かせるようにし、網羅的な取扱いにならないようにすること。
 オ オの「第一次世界大戦前後の国際情勢のあらまし」については、大戦の背景、日本の参戦、ロシア革命、戦後の国際協調の動きを通して、世界の動きと我が国との関連を重点的にとらえさせるようにすること。また、「我が国の国民の政治的自覚の高まり」については、大正デモクラシーの時期の政党政治の発達、民主主義思想の普及、社会運動の展開を扱うが、詳細な経緯は取り扱わないこと。
 カ カについては、世界の動きと我が国との関連を重点的にとらえさせるとともに、国際協調と国際平和の実現に努めることが大切であることに気付かせるようにすること。
 キ キについては、国民が苦難を乗り越えて新しい日本の建設に努力したことに気付かせるようにすること。
 ク クについては、節目となる歴史的事象を取り上げて扱うようにすること。

公民的分野

1 目標

(1)個人の尊厳と人権の尊重の意義、特に自由・権利と責任・義務の関係を広い視野から正しく認識させ、民主主義に関する理解を深めるとともに、国民主権を担う公民として必要な基礎的教養を培う。

(2)民主政治の意義、国民の生活の向上と経済活動とのかかわり及び現代の社会生活などについて、個人と社会とのかかわりを中心に理解を深めるとともに、社会の諸問題に着目させ、自ら考えようとする態度を育てる。

(3)国際的な相互依存関係の深まりの中で、世界平和の実現と人類の福祉の増大のために、各国が相互に主権を尊重し、各国民が協力し合うことが重要であることを認識させるとともに、自国を愛し、その平和と繁栄を図ることが大切であることを自覚させる。

(4)現代の社会的事象に対する関心を高め、様々な資料を適切に収集、選択して多面的・多角的に考察し、事実を正確にとらえ、公正に判断するとともに適切に表現する能力と態度を育てる。

2 内容

(1)現代社会と私たちの生活
 ア 現代日本の歩みと私たちの生活
 現代日本の発展の過程と国際化の進展のあらましについて理解させるとともに、現代社会の特色に気付かせる。その際、高度経済成長から今日までの我が国や国際社会の変容について、国民生活と関連させて理解させるとともに、国際社会における我が国の役割について考えさせる。
 イ 個人と社会生活
 家族や地域社会などの機能を扱い、人間は本来社会的存在であることに着目させ、個人と社会とのかかわりについて考えさせる。その際、現在の家族制度における個人の尊厳と両性の本質的平等、社会生活における取決めの重要性やそれを守ることの意義及び個人の責任などに気付かせる。

(2)国民生活と経済
 ア 私たちの生活と経済
 身近な消費生活を中心に経済活動の意義を理解させるとともに、価格の働きに着目させて市場経済の基本的な考え方について理解させる。また、現代の生産の仕組みのあらましや金融の働きについて理解させるとともに、社会における企業の役割と社会的責任について考えさせる。その際、社会生活における職業の意義と役割及び雇用と労働条件の改善について、勤労の権利と義務、労働組合の意義及び労働基準法の精神と関連付けて考えさせる。
 イ 国民生活と福祉
 国民生活と福祉の向上を図るために、国や地方公共団体が果たしている経済的な役割について考えさせる。その際、社会資本の整備、公害の防止など環境の保全、社会保障の充実、消費者の保護、租税の意義と役割及び国民の納税の義務について理解させるとともに、限られた財源の配分という観点から財政について考えさせる。

(3)現代の民主政治とこれからの社会
 ア 人間の尊重と日本国憲法の基本的原則
 人間の尊重についての考え方を、基本的人権を中心に深めさせるとともに、法の意義に着目させ、民主的な社会生活を営むためには、法に基づく政治が大切であることを理解させ、我が国の政治が日本国憲法に基づいて行われていることの意義について考えさせる。また、日本国憲法が基本的人権の尊重、国民主権及び平和主義を基本的原則としていることについての理解を深め、日本国及び日本国民統合の象徴としての天皇の地位と天皇の国事に関する行為について理解させる。

イ 民主政治と政治参加
 地方自治の基本的な考え方について理解させる。その際、地方公共団体の政治の仕組みについて理解させるとともに、住民の権利や義務に関連させて、地方自治の発展に寄与しようとする住民としての自治意識の基礎を育てる。また、国会を中心とする我が国の民主政治の仕組みのあらましや政党の役割を理解させ、議会制民主主義の意義について考えさせるとともに、多数決の原理とその運用の在り方について理解を深める。さらに、法に基づく公正な裁判の保障があることについて理解させるとともに、民主政治を推進するためには、公正な世論の形成と国民の政治参加が大切であることに気付かせる。その際、選挙の意義について考えさせる。

ウ 世界平和と人類の福祉の増大
 世界平和の実現と人類の福祉の増大のためには、国家間の相互の主権の尊重と協力、各国民の相互理解と協力が大切であることを認識させる。その際、日本国憲法の平和主義について理解を深め、我が国の安全と防衛の問題について考えさせるとともに、核兵器の脅威に着目させ、戦争を防止し、世界平和を確立するための熱意と協力の態度を育てる。また、人類の福祉の増大を図り、よりよい社会を築いていくために解決すべき課題として、地球環境、資源・エネルギー問題などについて考えさせる。

3 内容の取扱い

(1)内容の取扱いについては、次の事項に配慮するものとする。
 ア 地理的分野及び歴史的分野の学習の成果を活用するとともに、これらの分野で育成された能力や態度が、更に高まり発展するようにすること。また、社会的事象は相互に関連し合っていることに留意し、特定の内容に偏ることなく、分野全体として見通しをもったまとまりのある学習が展開できるようにすること。
 イ 生徒が内容の基本的な意味を理解できるように配慮して、専門用語を乱用したり細かな事柄や程度の高い事項の学習に深入りしたりすることを避け、日常の社会生活と関連付けながら具体的事例を通して政治や経済などについての見方や考え方の基礎が養えるようにすること。

(2)内容の(1)については、次のとおり取り扱うものとする。
 ア アについては、次のとおり取り扱うものとすること。
 (ア)地理的分野、歴史的分野との関連を図り、世界と比べて見た日本や高度経済成長以降の我が国の節目となる歴史的事象についての学習を踏まえ、現代日本の様々な事象について身近な生活と関連付けて理解を深めることができるよう工夫を行うこと。
 (イ)調査や討論など多様な学習活動を取り入れたり、適切な課題を設けて行う学習を取り入れるなどの工夫を行うこと。例えば、日本経済の発展に伴う国民生活の向上、貿易を通しての日本と世界の結び付きの変化、国際社会における日本の役割の変化等の課題を設け、世界との関係を踏まえ、過去と現在との比較を通して追究させるなど、地理的分野、歴史的分野の学習の成果を生かすようにすること。
 (ウ)「現代日本の発展の過程」については、科学技術の発展や経済成長を通しての国民生活の変化、特に衣食住や生活意識の変化に着目させて理解させるとともに、職業や余暇生活の多様化、情報化の進展などが社会生活に与えた影響について気付かせること。
 (エ)「国際社会の変容」については、国際的な協力や協調が政治や経済の面で一層進んできたことに気付かせること。
 (オ)「国際社会における我が国の役割」については、国際平和や経済協力の具体的な事例を取り上げて考えさせること。
 イ イについては、身近な社会集団として家族、学校、地域社会などを取り上げるとともに、個人が結び付いて社会が生まれ、社会生活が営まれていることを理解させ、社会生活を円滑にするために互いの合意に基づいてルールがつくられていることなど、日常の具体的な事例を取り上げて考えさせること。
 ウ ア及びイについては、公民的分野の導入部として位置付け、適切かつ十分な授業時数を配当すること。

(3)内容の(2)については、次のとおり取り扱うものとする。
 ア アについては、網羅的で高度な取扱いにならないよう特に配慮するとともに、身近で具体的な事例を取り上げ、経済活動が様々な条件の中での選択を通じて行われるという点に着目させて、市場経済の基本的な考え方を理解させること。また、「金融の働き」については、具体例を取り上げて理解させること。
 イ イについては、全体として、細かな事柄、制度や仕組みの学習に深入りすることを避け、あらましについて理解させること。また、「消費者の保護」については、消費者保護行政を中心に取り扱うこと。「財政」については、少子高齢社会など現代社会の特色を踏まえて考えさせること。

(4)内容の(3)については、次のとおり取り扱うものとする。
 ア アについては、日本国憲法の基本的な考え方を中心に理解させるようにし、条文解釈に深入りしないように留意すること。
 イ イについては、次のとおり取り扱うものとすること。
 (ア)調査や見学などを通して具体的に理解させること。
 (イ)「地方公共団体の政治の仕組み」については、細かな事柄は取り扱わないようにし、基本的な内容の理解にとどめること。また、「国会を中心とする我が国の民主政治の仕組みのあらまし」については、議会制民主主義の意義、議院内閣制の仕組み、国民の権利・義務を保障し社会の秩序を維持するための裁判の働きなどの基本的な理解にとどめ、国会、内閣、裁判所の細かな組織や働きについて深入りしないこと。
 ウ ウについては、次のとおり取り扱うものとすること。
 (ア)地理的分野、歴史的分野との関連を図り、その学習の成果を生かす工夫を行うこと。
 (イ)「世界平和の実現」については、領土(領海、領空を含む)、国家主権、主権の相互尊重、国際連合の働きなど基本的な事項を踏まえて理解させるように留意すること。なお、国際連合などを取り上げる際には、主要な組織とその働きなどの基本的な理解にとどめること。
 (ウ)「国家間の相互の主権の尊重と協力」との関連で、国旗及び国歌の意義並びにそれらを相互に尊重することが国際的な儀礼であることを理解させ、それらを尊重する態度を育てるよう配慮すること。
 (エ)「地球環境、資源・エネルギー問題」については、適切な課題を設けて行う学習を取り入れるなどの工夫を行い、国際的な協力や協調の必要性に着目させるとともに、身近な地域の生活との関連性を重視し、世界的な視野と地域的な視点に立って追究させる工夫を行うこと。

(5)内容の指導に当たっては、教育基本法第8条の規定に基づき、適切に行うよう特に慎重に配慮して、生徒の公正な判断力の育成を目指すものとする。

第3 指導計画の作成と内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。
(1)小学校社会科の内容との関連及び各分野相互の有機的な関連を図るとともに、地理的分野及び歴史的分野の基礎の上に公民的分野の学習を展開するこの教科の基本的な構造に留意して、全体として教科の目標が達成できるようにする必要があること。
(2)各分野の履修については、第1学年から地理的分野と歴史的分野を並行して学習させることを原則とし、その基礎の上に第3学年で公民的分野を学習させること。各分野に配当する授業時数は、地理的分野105単位時間、歴史的分野105単位時間、公民的分野85単位時間とすること。これらの点に留意し、各学校で創意工夫して適切な指導計画を作成すること。
(3)知識に偏り過ぎた指導にならないようにするため、基本的な事項・事柄を厳選して指導内容を構成するものとし、細かな事象を網羅的に羅列したり高度な事項・事柄に深入りしたりしないこと。また、生徒の主体的な学習を促し、課題を解決する能力を一層培うため、各分野において、第2の内容の程度や範囲に十分配慮しつつ事項を再構成するなどの工夫をして、適切な課題を設けて行う学習の充実を図るようにすること。

2 指導の全般にわたって、資料を選択し活用する学習活動を重視するとともに作業的、体験的な学習の充実を図るようにする。その際、地図や年表を読みかつ作成すること、新聞、読み物、統計その他の資料に平素から親しみ適切に活用すること、観察や調査などの過程と結果を整理し報告書にまとめ、発表することなどの活動を取り入れるようにする。また、資料の収集、処理や発表などに当たっては、コンピュータや情報通信ネットワーク、教育機器の活用を促すようにする。

3 選択教科としての「社会」においては、生徒の特性等に応じ多様な学習活動が展開できるよう、第2の内容その他の内容で各学校が定めるものについて、見学・調査、課題学習、自由研究的な学習、作業的、体験的な学習、補充的な学習、発展的な学習などの学習活動を各学校において適切に工夫して取り扱うものとする。

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