「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン」の強化

平成17年10月6日
若者自立・挑戦戦略会議
内閣官房長官
文部科学大臣
厚生労働大臣
農林水産大臣
経済産業大臣
経済財政政策担当大臣

 本年6月21日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」に基づき、かつ、平成16年事業の成果評価の結果等を踏まえ、「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン」の強化・推進について関係府省が連携して検討を行った結果、必要な概算要求等を以下のとおり行うこととする。
 今後、関係府省は、連携して各施策の具体化について検討を進め、同アクションプランの改訂を行うこととする。

概算要求額合計 901億円(前年度予算額 756億円)

1. フリーター25万人常用雇用化プラン等の推進

338億円(313億円)

○ 若年者のためのワンストップサービスセンター(ジョブカフェ)において、フリーター向けのセミナーを充実するなど、若者の状況に応じたきめ細かな就職支援を実施する。
○ フリーターの常用雇用化を促進するため、全国のハローワークにおいて、若年者ジョブサポーター等の担当制による一貫した就職支援を拡充実施する。
○ 若年者試行雇用事業について対象者を拡充するとともに、新たに長期若年無業者等を対象に、働く自信と意欲を高めつつ、段階的に常用雇用への移行を促進するため、短時間勤務による試行雇用事業を実施する。
○ 若者の実践的で効果的な職業能力開発を支援するため、企業実習と座学を連結させた教育訓練(日本版デュアルシステム)について、進路が決まらない学卒者等の受講を促進するための体験講習や、企業、民間教育訓練機関の取組を促進する施策を引き続き実施することにより、同システムの社会的定着を図る。
○ フリーター正社員登用マニュアルの開発・普及、経済団体の協力によるモデル事業の推進等により、フリーター正社員登用の取り組む企業の拡大を図る。
○ 民間事業者を活用して、職業意識啓発、職場におけるコミュニケーション能力、基礎的ビジネスマナー等の習得を図るための講座を10日間程度で引き続き実施し、早期の就職促進を図る。
○ フリーター等の若者に対し農作業を体験できる機会等を提供し、働くことについての意識の明確化を図るとともに、就農希望者に対しては、1ヶ月の農業就業体験、6ヶ月の合宿研修及び就農準備校に新設するeラーニング方式の研修コース等により農業への就業を支援する。

2.地域の相談体制充実等によるニート対策の強化

45億円(19億円)

(1) ニートに対する働く意欲や能力の向上等

○ 各地域に「地域若者サポートステーション(仮称)」を設置し、若者の置かれた状況に応じた専門的な相談を行うとともに、地域の若者支援機関のネットワークを構築し、その中核として各機関のサービスが効果的に受けられるようにすることにより、ニート等の自立を支援する。
○ 合宿形式による集団生活の中で、生活訓練、労働体験等を通じて、職業人、社会人として必要な基本的能力の獲得、勤労観の醸成を図り、働く自信と意欲を付与する「若者自立塾」を拡充する。
○ ボランティア活動など無償の労働体験の活動実績を記録し、企業の採用選考に反映されるよう、「ジョブパスポート」の普及、内容の充実を図る。
○ 全国のハローワーク、ヤングワークプラザ等において、専門的人材によるカウンセリングサービスを提供する体制を整備し、若者の就業をめぐる悩みに的確に対応する。

(2) ニート等に対する「学び直し」の機会の提供

○ 専修学校とニートを支援しているNPO団体等の連携協議会を立ち上げ、ニートに対する職業教育を支援する事業を実施する。
○ 公民館等において、NPOや関係機関等と連携し、ニートを持つ保護者等を介した段階的なニート対策事業や、児童生徒を持つ保護者等を対象としたニート予防に関する事業をモデル的に実施する。
○ 若者・フリーターや中小企業の従業員等が、就職・仕事に役立つ知識・ビジネススキルを手軽に学べる機会を提供するため、関係府省が連携して、大学・専門学校等教育機関、商工会議所、NPO、ジョブカフェ等を活用して、「草の根eラーニングサービス」を提供する仕組みの整備を図る。

3. 体系的なキャリア教育・職業教育等の一層の推進

147億円(131億円)

(1) 各学校段階を通じた体系的なキャリア教育・職業教育の充実

1.初等中等教育段階

○ 都道府県・指定都市を対象に、中学校を中心とした5日間以上の職場体験を実施するとともに、地域の協力体制を構築する「キャリア・スタート・ウィーク」を一層推進する。
○ 職業教育などに知見やノウハウのあるNPOや企業等の民間主体を中核として、地域の産業界、教育界、地方自治体等の密接な連携の下、小中高校生がものづくり等の働くことの意義・面白さを体系的・効果的に理解し、社会で求められるスキル等の育成につながるキャリア教育を推進する。
○ 専門高校等を対象に、地域社会と連携した特色ある取組を行う専門高校等への支援を行い、将来の専門的職業人の育成を目指す事業の拡充を図る。
○ 専門高校等において、学校での教育と企業での実習を組み合わせた日本版デュアルシステムについて、その効果的な導入手法などを探るためのモデル事業を引き続き実施し、本システムの普及・定着を図る。
○ 企業人等を講師として学校に派遣し、職業や産業の実態、働くことの意義、職業生活等に関して生徒に理解させ、自ら考えさせるキャリア探索プログラム、企業において就業体験をするジュニア・インターシップ等、ハローワークと産業界が連携して職業意識形成支援事業を推進する。

2.高等教育段階

○ 地域の企業・自治体等関係機関と連携し、大学における実践的かつ体系的なキャリア教育推進のための組織的な取組を支援する。
○ 専修学校における「日本版デュアルシステム」導入のためのカリキュラム開発やフリーター等に対する短期教育プログラムの開発を引き続き実施する。

(2) 青少年の自立支援の推進

○ 不登校やニート等を対象とした「悩みを抱える青少年の体験活動」など、青少年の主体性・社会性をはぐくむ体験活動等を推進する事業を拡充して実施する。

4. 産学連携を通じた高度・専門的な人材育成の推進

118億円(74億円)

(1) 大学・大学院等と産業界の連携による人材の育成

○ 国際的に通用する高度で専門的な知識を要する分野での専門職大学院の創設・拡充等を図り、大学関係者と関係する業界や職能団体等が連携して、理論と実務を架橋した「プロセス」としての教育を確立する。
○ 大学院において、社会の抱える諸問題や産業界の取組を理解し、知識基盤社会を多様に支える高度で知的な素養のある人材を育成するため、産学協同による、企業現場等の実践的環境を活用した質の高い教育プログラムの開発・実施を支援する。
○ 製造現場のベテラン人材の高齢化や技術の高度化・短サイクル化に対応して、製造業の競争力を支える現場「技術」を維持・確保するための実践的な人材育成を、産業界と大学等が一体となって取り組むプロジェクトを実施する。また、「新産業創造戦略」に基づき、ものづくり分野や戦略分野における専門職大学院や専門講座の設置促進等を通じて、高度・専門的な人材を育成する。
○ 各地域において、産業界と高専、関係機関等の連携により、実務教育に長けた設備を有する高専等の場を活用し、中小企業の現場のニーズに合った人材育成を実施できるよう、カリキュラム開発・実証に対して支援を行う。
○ 工場、民間・公共の訓練施設等の開放促進、ものづくり技能に関するシンポジウムの開催、若者によるものづくり技能競技大会の開催等を引き続き実施し、ものづくりに親しむ社会を形成し、その基盤の上に熟練技能の一層の高度化を図る。

(2) 成長分野を支える人材の育成

○ サービスの質を高め、技術革新を生み出す担い手となるサービス実務・経営技術の双方に精通した経営人材を育成する。平成17年度実施の医療機関、観光、コンテンツ、事業再生等に加え、平成18年度は、非営利組織等にも拡充する。具体的には、スキル要件の明確化、先導的な教育プログラムの開発、専門職大学院における実証事業等を実施する。
○ 我が国IT産業の競争力強化に資する高度IT人材の供給基盤の強化を目的とし、産業界側が大学教育に求める実践的なIT教育の要件を明らかにするとともに、実際にIT企業と大学が協同して実践的なIT教育に取り組むことにより、モデルケースの創出・実証を行う。
○ 世界最高水準のソフトウェア技術者として求められる専門的スキルを有するとともに、社会情勢の変化等に先見性を持って柔軟に対処し、企業等において先導的役割を担うトップレベルのソフトウェアスペシャリストを大学院において育成するための拠点形成を支援する。
○ MOT(技術経営)等の専門分野の人材について、大学等が産業界から求められる能力・スキルの体系化とカリキュラム・教材の開発を行う取組を支援するとともに利用促進のための情報提供を行う。
○ 産学官の関係者で構成する人材育成地域協議会において、地域の産業ニーズを踏まえた訓練コースを引き続き開発する。
○ 高度な実践技術と経営資質を有する総合的ものづくり人材を育成するため、職業能力開発総合大学校において訓練コースを開発し、実施する。

5.若者と地域産業とのネットワークの強化

175億円(144億円)

(1) 地域産業や中小企業と、若者との就職ネットワークの強化

○ 若者が地域産業で活躍する機会の提供と地域の中小企業の人材確保を図るため、民間主体等のアイデアを活用し、中小企業の魅力や人材ニーズを若者に発信するとともに、インターンシップ等を通じた中小企業を体験する機会の拡大等を通じて、若者と中小企業との橋渡しを支援する。その際、併せてジョブカフェや学校、地方自治体、国の出先機関等との連携を図るとともに、地域一体となった就職ネットワークを構築する。
○ 森林の保全・整備に意欲を有する若者等を対象として、現地で実践的な研修を行う「緑の雇用」の推進により、若者の新規就業を促進する。
○ 漁業になじみのない都市部の若者を主な対象とした漁業現場での長期研修の実施により、若者の新規就業を促進する。

(2) 若者が挑戦し、活躍できる新たな市場・就業機会の創出

○ 若者をはじめとする、国民各層の「チャレンジのすそ野」を拡大するべく、「起ちあがれニッポンDREAM GATE」事業において、Webによる情報配信や専門家による起業相談等の総合的な起業支援サービスの提供を行う。また、小中高校生を対象に「体験参加型」の起業家教育プログラムを全国のモデル自治体において実施する。
○ 創業や新事業展開を目指す者を対象に、創業に必要な実践的能力の習得、経営戦略のノウハウ体得等を支援する創業塾等を開催する。

6.若者問題に対する国民意識の向上

5億円(4億円)

○ 若者の雇用問題についての国民各層の関心を喚起し、若者に働くことの意義を実感させ、働く意欲・能力を高めるため、経済界、労働界、教育界、地域社会、政府等の関係者が一体となり、国民会議を開催するとともに、同会議で取りまとめられた国民宣言に基づき、「若者の人間力を高めるための国民運動」の充実を図る。
○ フリーターやニートに関する問題について、企画・運営への若年者の参加、関係省庁との連携の下に、情報の収集、発信等による広報啓発を実施し、若年者や国民全体の意識啓発を行う。
○ 女性への理工系分野等に関する情報提供・意識啓発キャンペーンの地方展開、独立行政法人国立女性教育会館における情報提供システムの充実、ジョブカフェとの連携による研修・広報の実施等を通じて、女性若年層の就業支援をさらに推進する。

-- 登録:平成21年以前 --