文部科学省公共事業コスト構造改革プログラム

平成15年11月

目次
1. これまでの取り組み
2. 文部科学省公共事業コスト構造改革プログラムの考え方
3. 政府プログラムと本プログラムの位置付け
4. 本プログラムの対象
5. 地方公共団体への協力要請等
6. 具体的施策
(1) 事業の迅速化
1 合意形成・協議・手続きの改善
2 事業の重点化・集中化
3 用地取得の円滑化
(2) 計画・設計から管理までの各段階における最適化
1 計画・設計の見直し
2 汎用品の積極的使用
3 新技術の活用
4 資源循環の促進
5 管理の見直し
(3) 調達の最適化
1 入札・契約の見直し
2 単価等の積算の見直し
7. フォローアップ




1. これまでの取り組み
   公共工事のコスト縮減については、平成9年1月に、全閣僚を構成員とする「公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議」(以下「関係閣僚会議」という。)が設置され、同年4月に「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」(以下「旧行動指針」という。)が策定されたことを踏まえ、文部省では「公共工事コスト縮減対策に関する行動計画」(平成9年4月22日、文部事務次官裁定。以下「旧行動計画」という。)、科学技術庁では「科学技術庁関係施設等工事コスト縮減対策に関する行動計画」(平成9年4月22日、科学技術庁長官官房長決定。以下「旧行動計画」という。)を策定し、各省庁において一致協力して施策を推進してきた。
  平成9年度から11年度の3年間、旧行動計画に基づき取組が進められた結果、文部省及び科学技術庁共に旧行動計画において掲げられていた直接的施策の数値目標(6%)を達成した。
  さらに、「行政コスト削減に関する取組方針」が平成11年4月27日閣議決定され、公共工事のコスト縮減についても、その一環のものとして位置付けられた。このため、平成12年9月に、関係閣僚会議において、「公共工事コスト縮減対策に関する新行動指針」(以下「現行動指針」という。)が策定され、これを踏まえ、文部省では「公共工事コスト縮減対策に関する新行動計画」(平成12年9月21日、文部事務次官裁定)、科学技術庁では「科学技術庁関係施設等工事コスト縮減対策に関する新行動計画」(平成12年9月26日、科学技術庁長官官房長決定)(文部省と科学技術庁の統合後は、文部科学省としての「公共工事コスト縮減対策に関する新行動計画」(平成13年2月28日、文部科学事務次官決定。以下「現行動計画」という。))を策定し、工事コストの低減だけでなく、工事の時間的コストの低減、施設の品質の向上によるライフサイクルコストの低減、工事における社会的コストの低減、工事の効率性向上による長期的コストの低減を含めた総合的なコスト縮減について取り組んでいるところである。その結果、平成14年度までのコスト縮減率は10.0%となっている。

 

 

2. 文部科学省公共事業コスト構造改革プログラムの考え方
   このような現状を踏まえ、現下の状況を鑑みるに、これまでの公共工事コスト縮減施策により一定の成果が得られたものの、依然として厳しい財政事情の下で引き続き社会資本整備を着実に進めていくことが要請されていること、また、これまで実施してきたコスト縮減施策の定着を図ることや新たな施策を進めていくことが重要な課題となっている。
  さらに、「平成15年度予算編成の基本方針」(平成14年11月29日閣議決定)においても、「コスト縮減の数値目標を早急に定め、かつ、それによって現実のコストが引き下がるよう、コスト構造改革に取り組む」こととされている。
  このため、平成15年度からは、現行動指針を継続実施することに加え、公共事業のすべてのプロセスをコストの観点から見直す、公共事業コスト構造改革に取り組むこととし、政府全体として実施する取り組みについて、「公共事業コスト構造改革プログラム」(平成15年9月18日、公共工事コスト縮減対策関係省庁連絡会議決定。以下「政府プログラム」という。)が策定された。
  これを受けて、文部科学省としてのプログラム(「文部科学省公共事業コスト構造改革プログラム」(以下「本プログラム」という。))を策定することとする。
  本プログラムは、「事業の迅速化」、「計画・設計から管理までの各段階における最適化」、「調達の最適化」の観点から、現行動計画に加え実施する公共事業コスト構造改革の施策をとりまとめたものであり、現行動計画で既に実施している施策は基本的には含まないが、現行動計画に記述があってもそれをより具体的に推進するための施策等は盛り込むこととする。また、公共事業コスト構造改革は、コストの観点から公共事業の抜本的改革を目指すものであるため、本プログラムには、直ちに実施できる施策のみではなく、検討、試行、関係省庁が調整を行ったうえで実施に移行する施策を含むものとし、本プログラム策定後も、必要に応じて施策を追加、変更することとする。さらに、プログラムの施策が効果を上げるためには、職員ひとりひとりがコスト意識を持って取り組むことが不可欠であり、コスト縮減への努力が評価されるよう適切な措置を講じることとする。
  目標期間は、平成15年度から平成19年度までの5年間とする。
  なお、公共事業コスト構造改革は、平成15年6月27日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」にも位置付けられているところである。

 

 

3. 政府プログラムと本プログラムの位置付け
   政府プログラムは、政府全体としての公共事業コスト構造改革に関する取り組みについて策定したものであり、このプログラムを踏まえて関係公団等の行う所管の公共事業を含む各省庁ごとのプログラムを策定することとされている。
  本プログラムには、文部科学省の事業内容等を踏まえ、政府プログラムの中から文部科学省に関連する具体的施策を盛り込むとともに、独自の施策も実施することとする。

 

 

4. 本プログラムの対象
   本プログラムは、文部科学省及び国立学校(平成16年4月1日以降は国立大学法人等)・研究機関等が実施する公共事業を対象とする。

 

 

5. 地方公共団体への協力要請等
   地方公共団体の実施する公共事業の総額は、我が国の公共事業費全体に占める割合が大きく、公共事業のコスト構造改革を図り、社会資本整備を効率的に推進するには、地方公共団体の積極的取り組みが不可欠と考えられる。
  このため、文部科学省としても、多くの文教施設の整備が地方公共団体において実施されている状況を踏まえ、各地方公共団体に対し、現行動指針、現行動計画、政府プログラム及び本プログラムを参考に引き続き積極的に公共事業コスト構造改革に取り組むよう要請する。

 

 

6. 具体的施策
   公共事業コスト構造改革は、コストの観点から公共事業のすべてのプロセスを見直すものである。したがって、検討、実施する施策は、直ちに事業のコストの低減につながるものに限定せず、普及・浸透することにより社会的コスト等も視野に入れた長期的なコストを低減させる施策や、事業実施の円滑化により事業便益の早期発現に資する施策等を幅広く含むものである。
  公共事業コスト構造改革では、良質な社会資本を低廉な費用で整備・維持することを目指しており、施策の実施にあたっては、社会資本が本来備えるべき供用性、利便性、公平性、安全性、耐久性、環境保全、省資源、美観、文化性等の所要の基本性能・品質の確保を図ることとする。

(1) 事業の迅速化
    事業を迅速化することにより、事業の便益の早期発現を可能とし便益が増加することにつながり、便益の増加分に相当する費用を低減することになる。また、事業の迅速化は、時間的効率性の向上を図ることになり、事務経費の低減、事業資金の金利負担の低減となる。

1 合意形成・協議・手続きの改善
 事業が円滑にスタートできるように、各事業における構想段階から住民等の合意形成を図るための施策を導入・推進するとともに、事業プロセスの徹底した公開等、透明性の向上を図る。また、時間がかかる要因となっている各種の協議・手続きについて関係省庁と協力して迅速化・簡素化を図る。
(施策事例)
 構想段階からの合意形成手続きを導入、推進
 関係省庁等と協力して協議・手続きの迅速化・簡素化を図る
 事業プロセスの徹底した公開等、透明性の向上を図る
 
2 事業の重点化・集中化
 事業の重点化・集中化を図り社会資本の効率的整備を推進するため、事業評価を厳格に実施し事業箇所を厳選するとともに、時間管理概念の導入等による徹底した事業の進捗管理を行う。
(施策事例)
 事業評価の厳格な実施
 時間管理概念の導入等により、事業の進捗管理を徹底し、早期供用を図る
 
3 用地取得の円滑化
 公共用地を適正かつ円滑に取得するため、計画段階からの土地情報の把握に努める。
(施策事例)
 計画段階からの土地情報の把握
   
(2) 計画・設計から管理までの各段階における最適化
   計画した内容が必要以上に華美や過大なものとなっていないか、適切なサービス水準か、地域の実情にあった最適な設計になっているか、資源の循環利用を行っているか等の視点で計画・設計から管理までの各段階の最適化を図ることにより、工事コストの低減を図るとともに将来の維持管理費の低減を図る。

1 計画・設計の見直し
 計画・設計の最適化を目指し、計画・設計に関する規格等を見直す。そのため、計画・設計の自由度を増すことを目指す現行の基準類の性能規定化を推進するとともに、設計基準の特例値を活用するなど弾力的な運用や地域の実情にあった規格(ローカルルール)及び地域住民参加等による整備手法、技術革新など様々な視点から現行の計画・設計を大胆に見直す。
(施策事例)
 基準類の性能規定化の推進
 営繕事業に関する技術基準の統一
 地域の実情にあった規格(ローカルルール)の設定の促進
 技術革新等による計画・設計の大胆な見直し
 他省庁や地方公共団体等との連携による効率的な整備の推進
 ライフサイクルコストを踏まえた整備の推進
 
2 汎用品の積極的使用
 資機材、部品等について、特注品の使用をやむを得ない場合に限定する等、汎用品の使用を推進する。
(施策事例)
可能な限り汎用品を使用する設計に見直し
 
3 新技術の活用
 高品質、低コストを実現する新技術の開発と活用を促進するための環境を整備し、計画・設計から管理までの各段階における新技術の活用を推進する。
(施策事例)
 新技術の開発と活用を促進する環境の整備
 ライフサイクルコストを低減する技術開発の推進及び新技術の積極的な活用
 
4 資源循環の促進
 循環型社会の構築と地球温暖化防止等に向けて、資源の循環利用による効率的整備を推進するため、現場発生材の再資源化、間伐材の積極的な活用を図るとともに、地域に賦存するバイオマス等の循環利用を促進する。
(施策事例)
 資源の循環利用の促進
 地域に賦存するバイオマス等の循環利用の促進
 
5 管理の見直し
 社会資本整備の進捗とともに維持管理の重要性が増している。低コストの維持管理を実現するため、施設の管理に際して地域住民等の参画を促進するとともに、IT等の新技術の活用、ライフサイクルコストを考慮した計画的な維持管理の推進、既存ストックの有効活用等ハード、ソフト両面から管理の最適化を図る。
(施策事例)
 地域住民等の参画による維持管理の推進
 ITを活用した施設管理等の推進
 ライフサイクルコストを考慮した計画的な維持管理の推進
 既存ストックの有効活用の推進
   
(3) 調達の最適化
   発注単位の適正化や入札・契約の見直し、積算等の見直し等の調達の最適化を図ることにより、技術による競争、民間技術力の活用を促進するとともに積算価格の説明性・市場性の向上を図る。

1 入札・契約の見直し
 民間の技術力が一層発揮されるように、企業の技術力を適正に評価するとともに、技術提案を重視する調達方式を導入する。また、適正な発注規模設定のための環境の整備、工事の平準化を推進するとともに電子調達を推進する。さらに、PFI等民間資金・能力を活用する社会資本整備・管理手法を導入し、推進する。
(施策事例)
 企業の技術力の適正な評価
 技術提案を重視する調達方式の導入
 工事の平準化のため、国庫債務負担行為を計画的に活用
 電子調達の推進
 PFI等民間資金・能力を活用する社会資本整備・管理手法の推進
 競争環境の最適化
 
2 単価等の積算の見直し
 積算価格の説明性・市場性の向上を図り、積算業務の省力化等を推進するとともに、新たな入札契約方式への対応等を図ることを目的とし、現行の積算手法等を見直す。
(施策事例)
 「施工単価方式」による積算体系の検討
 市場特性をより適正に反映した資材価格の採用

 

 

7. フォローアップ
   本プログラムの実施状況については、具体的施策の着実な推進を図る観点から、適切にフォローアップする。フォローアップにあたっては、本プログラムに示した各施策の実施状況を検証するとともに、これらの取り組みによるコスト縮減の効果について数値目標を設定して評価する。
  数値目標は、公共事業のすべてのプロセスを見直すものであるため、従来からの工事コストの縮減とともに、(ア)規格の見直しによるコストの縮減、(イ)事業の迅速化が図られることによる便益の向上、(ウ)将来の維持管理費の縮減をも加え、現時点で評価可能な項目について評価する「総合コスト縮減率」を設定し、平成15年度から5年間で、平成14年度と比較して、15%の総合コスト縮減率を達成することを目標とする。

-- 登録:平成21年以前 --