1.第156回南極地域観測統合推進本部総会議事の記録

1.日時

令和2年6月29日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

オンライン開催(※文部科学省3F1特別会議室)

3.出席者

(副本部長)

藤原 誠

文部科学事務次官


(委員)

青木 周司

東北大学大学院理学研究科附属大気海洋変動観測研究センター長

池島 大策

早稲田大学国際教養学部 教授

江淵 直人

国立大学法人北海道大学低温科学研究所 教授

大城 和恵

社会医療法人孝仁会 北海道大野記念病院 医師

小山内 康人

国立大学法人九州大学比較社会文化研究院 教授

瀧澤 美奈子

科学ジャーナリスト

塚本 達郎

国立大学法人東京海洋大学学術研究院 教授

津田 敦

国立大学法人東京大学大気海洋研究所 所長・教授

永原 裕子

日本学術振興会学術システム研究センター副所長
東京工業大学地球生命研究所フェロー

藤井 理行

大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
国立極地研究所 名誉教授

福井 仁史

日本学術会議事務局長

生川 浩史

文部科学省研究開発局長

明野 和彦

国土地理院参事官
(黒川国土地理院長代理)

倉内 利浩

気象庁観測部長
(関田気象庁長官代理)

楠 勝浩

海上保安庁海洋情報部海洋調査課長
(奥島海上保安庁長官代理)


(幹事)

五十嵐 壮雄

総務省国際戦略局技術政策課専門職
(松井技術政策課長代理)

平 和昌

国立研究開発法人情報通信研究機構電磁波研究所長

岩崎 敦志

外務省国際協力局地球環境課上席専門官
(森下地球環境課長代理)

柳 孝

文部科学省大臣官房長

岡村 直子

文部科学省大臣官房審議官(研究開発局担当)

望月 禎

文部科学省大臣官房総務課長

福井 俊英

文部科学省研究開発局海洋地球課長

中村 卓司

大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
国立極地研究所長

榎本 浩之

大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
国立極地研究所副所長

野木 義史

大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
国立極地研究所総括副所長

伊村 智

大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
国立極地研究所副所長

清水 勇吾

水産庁増殖推進部参事官
(髙瀨増殖推進部研究指導課長代理)

野尻 琢也

国土地理院企画部国際連携推進調整官
(飛田国土地理院企画部長代理)

田中 恵信

気象庁観測部計画課南極観測事務室長
(湯原気象庁総務部総務課長代理)

鐘尾 誠

海上保安庁海洋情報部沿岸調査課課長補佐
(新垣海上保安庁総務部政務課長代理)

伊豫田 望

環境省自然環境局自然環境計画課課長補佐
(植田自然環境計画課長代理)

青木 稔

防衛省人事教育局人材育成課人材確保推進室長
(岩田人材育成課長代理)

 

(オブザーバー)

橋田 元

国立極地研究所南極観測センター副センター長(観測担当)
第62次南極地域観測隊隊長(兼夏隊長)

堤 雅基

第60次南極地域観測隊隊長(兼越冬隊長)

青木 茂

第61次南極地域観測隊隊長(兼夏隊長)

熊谷 宏靖

第61次南極地域観測隊副隊長(兼夏隊長)

阿保 敏広

第62次南極地域観測隊副隊長(兼越冬隊長)

金子 宗一郎

第62次南極地域観測隊副隊長(兼夏副隊長)

白方 将司

防衛省海上幕僚監部防衛部運用支援課南極観測支援班長

 

(事務局)

河野 広幸

文部科学省研究開発局海洋地球課 極域科学企画官

小野寺 多映子

文部科学省研究開発局海洋地球課 課長補佐

 

 

4.議事:

(1)藤原文部科学事務次官より挨拶があった。

(2)事務局より、当日の議題・配布資料について確認があった。

(3)以下の議題について、報告及び審議がなされ、審議事項については議題7~9及び11の事項で原案のとおり了承された。議題10については、いただいた意見を基に、一部修正することを前提に了承された。

《報告事項》
1.前回議事について
2.各委員会等の審議状況について
3.第60次越冬隊・第61次観測隊の活動報告及び現況について
4.第61次南極地域観測における輸送協力等について
5.令和元年度外国基地派遣報告について
6.令和2年度南極地域観測事業予算の概要について


《審議事項》
7.第62次南極地域観測の基本的な考え方及び対応方針(案)等について
8.第62次南極地域観測隊の編成(案)及び隊員候補者(案)について
9.第63次南極地域観測計画の概要(素案)等について
10.南極条約第7条5に基づく事前通告のための電子情報交換システム(EIES)について
11.南極地域観測第X期6か年計画メインテーマ(案)について


《その他》
12.南極地域観測事業の最近の成果

主な意見は以下のとおり。

(議題3)

【瀧澤委員】 第60次の越冬隊の説明で成層圏突然昇温現象をPANSYで捉えたということだが、それが起きた日時はいつか、また、その研究成果はどこかで発表されているのか。
【堤第60次観測隊隊長】 正確な日は覚えていないが、冬の最後頃、南極でいうと9月の時期。北極では時々起こる現象であるが、南極では地形の関係もありほとんど起こらない現象。10年とか何十年に1回くらいの現象が9月に起こったということ。
 このデータは今、解析をしているところで、学会等で発表しようとしている状況である。まだ論文になったという状態ではないように理解している。
 

(議題7)

【池島委員】 新型コロナウイルス関連で各国相互の連携というのはどの程度進んでいるのかということが気になった。例えば、南極条約関係の各国での相互の連携とか調整、または共同事業について、今後どうするかという話し合い等は行われたのか。それとも各国ベースで、要するに、国内の状況に準じた形で各基地につき各国が主体的にやるという話なのか。
【野木総括副所長】 分かる範囲で説明させていただく。南極に新型コロナウイルスを持ち込まないというのが基本的な方針である。COMNAPと言われる南極実施責任者評議会等々で、持ち込まないためのガイドライン等は各国の専門家が議論している。3月時点でもまだ南極のエリアで活動している部分があったため、そのような形でのガイドラインが出ており、今後、国際的にどのように進むのかといったことは、それらを見守っていくような形になるかと思う。
一方、あとは各国がどのような対応をしていくかということも情報共有しながら、現在進めているところ。ただし、やはりどこの国も今のところ、自国で閉じるような計画になる傾向にはある。もう一方で、ケープタウンやその他の南極観測のハブになるような地域ではそれを各国でどのように対応して、今後進めていこうかというようなことも議論されているところ。
【藤井委員】 初めての事態に対し、よく検討されている案だと思うが、2点質問及び意見を述べさせていただきたい。
1点目に、「しらせ」出港後、万が一、感染者が船内で確認された場合、極地研の補足説明の方では、航海の中断の措置を取ると書かれている。航海の中断というのは、その時点で第62次行動の停止、中止、中断ということになるのか。これは極めて重要なことだと思うため、今はまだ極地研レベルでも検討段階なのか、ぜひとも本部で検討いただき、本部としての対応方針の方に記載するのがよいのではないかと思う。
2点目に、やはり新型コロナウイルス対応について、若干細かなことではあるが、出港直前の2週間、検査期間に充てるというような説明があり、その中で2回検査を行うということが極地研の説明であったが、そこで最後の段階で感染が確認されていなくても、それから「しらせ」に乗船する間の期間、人との接触を極力制限するような対応を取る必要があるのではないかと思う。
【河野極域科学企画官】 1番目の御質問に対して現在の本部の案として説明をさせていただく。こちらでまとめた基本的な考え方の中で、極力、適切な感染防止対策を講じつつ、「しらせ」及び南極での感染防止を徹底するという方針である。そういった中で、途中、感染者が発生した場合についての質問と受け止めたが、その場合にこちらで検討している内容としては、2週間の隔離期間を設けた上に、さらに交代要員を用意する。極地研と協力しながら、交代要員を検討するということである。そういった方法で、なるべく中断ということがないような形で実施したいという方向である。
【野木総括副所長】 中断して戻ってきて、1回目であれば2週間の検疫期間を経てまだ再度トライできると日程的には考えているため、そのように可能な範囲で安全に継続を行いたいと思っている。
2点目について、検疫期間が終わって速やかに、「しらせ」の乗船がすぐできるような場所で検疫施設も考えており、できるだけ他の人との接触がないような形で現在検討している。
【津田委員】 細かい点を含めて3つあるため、1つずつお答えをいただきたい。1点目は船内で新型コロナの感染が確認された場合とあるが、これは船内に抗原検査キット、またはデジタルPCRによるシステムを積んでいくということになるのか。
【野木総括副所長】 デジタルPCRに関しては少し難しいかもしれないが、抗原か抗体関係も検査できるように用意していく予定。
【津田委員】 2点目に、南極基地の医療水準。万が一コロナのような病状を発症した場合に、どの程度の対応ができる医療施設があると想定してこの行動計画を策定しているのか教えていただきたい。
【野木総括副所長】 やはり重篤な患者になった場合は非常に難しい状況になるかなと現在でも考えている。その意味で、事前の検疫が非常に重要になると思うし、何かあったらすぐに検査ができる体制が必要になるかと思っており、可能な範囲の対応しかできない形になるかと思っている。
【津田委員】 確認した点は、まず隔離ができるのかという点が1点。それから人工呼吸の施設は有るかということが2点目になるがいかがか。
【野木総括副所長】 隔離施設に関しては、現状ではない。ただ、そのようなところを造るということは1つあるかと思う。人工呼吸器に関しては、現在昭和基地にはない。
【津田委員】 3点目に、ベーシックなものは本当に輸送だけというもので、オプションで観測が入ってくるが、このオプションの観測項目を選ぶ、絞り込む基準というのがどのようなことがベースになったのか教えていただきたい。
【野木総括副所長】 昭和基地方面の観測継続が優先するので、その他海洋観測関係で航路が変わるということと、110度ラインのいわゆるモニタリング観測は継続したい。
それから重点のサブテーマ2が今回全くできなくなるため、その意味でこのオーストラリアの南側の観測をすることによって、IX期計画があと今次と次の隊次だけとなるので、可能な範囲で観測計画を、観測の目標、観測研究計画の目標を達成したいというところで、このような観測項目になる。ただし、今後のシップタイムの調整等で観測項目を絞るような検討段階に入るかと思う。
 

(議題8)

【小山内委員】 越冬隊も夏隊もずいぶん縮小であるが、例えば今回、越冬隊では14名ということで、残りの十数名はどのようなプロセスで今後決定していくのか。
【野木総括副所長】 健康判定がクリアになった段階でこちらから本部の方に推薦させていただく。
【河野極域科学企画官】 例年6月の本部総会で隊員が決定しない場合は、9月いっぱいくらいまでに、国立極地研究所等から推薦いただいた隊員候補者について審議の上、本部連絡会で決定し、公表している。今回、残りの隊員と先ほど交代要員ということも説明したが、そういったメンバーを含めて国立極地研究所、南極地域観測統合推進本部として調整の上、決定したいと思っている。


(議題9)

【永原委員】 第63次は予定通りというか例年どおりできるという大前提であるが、これは保障の限りではない。さらに気になる点は、今年度は、つまり当初計画通りにできなかった、来年、63次でやれば2年分を1年でできてしまうというような大前提に立っている。
もしそうだとするならば、当初立てた計画というのは何だったんだというふうに逆に思ってしまう。素案であるため、この件に関してはまだ不確定要素は大きいといえば大きいが、やはりもう少しもしものときを考えたセーフティネットというか、こういう時にはこういう風に見直す、いついつの段階で見直すということを考えた方がよいと思うがいかがか。
【河野極域科学企画官】 ご指摘のとおり、62次の行動計画がどうなるかというのは今後の状況を踏まえ、またさらに変わる可能性がある。また、観測計画についても、現在X期の6か年計画の検討もしている。そういったものにどのように影響するのか、そういった状況を踏まえつつ、計画の変更等を実施機関と調整しながら進めたいと思っている。
【野木総括副所長】 計画に関して62次においてできなかったものをすべて63次にというわけではなく、可能な範囲で、航空機をできるだけ活用するようなことも考えて、このようにしている。62次の実績を見ながら、ある程度63次で可能な範囲をやっていくということかと考えている。


(議題10)

【青木委員】 5ページ目の2.3.3のところで、LocationでShowa stationと書いてあるが、ここはSyowaではないか。
【岩崎上席専門官】 他の部分との整合になるため、確認のうえ、訂正をさせていただく。


(議題11)

【永原委員】 地球環境、環境変動ということで、過去を調べた、それから現在を調べた、なので今度は将来予測というような全体としてはそういう流れになっており、ある意味自然と言えば自然であるし、本来、過去や現在を知ることは将来予測に役立てなくてはならないということは必然ではあるが、実際問題は地球の将来予測というのは非常に難しいことで、少し言葉だけが独り歩きをしている。本当にこれを学問的にできるかという、アイスコアを調べたり、その他いろんな観測をすることと、予測ということの間には、学術的に考えた場合には相当なギャップがあるわけだが、もう少しVIII期、IX期計画の総括の上に立って、本当に実現可能な研究計画に絞りこんだ方が良いのではないかと若干の不安を感じる。また今これも議論が始まったところ。これから具体化するかと思うが、やはり総括の上に立ったきちっとした計画に絞り込んでいただけたらと希望する。
【河野極域科学企画官】 南極地域観測事業については、6か年計画ということで、3年毎の中間評価も実施している。そういった中間評価の結果、また、今、先生からいただいた指摘等を踏まえて、今回はメインテーマを決定し、その内容をまた更に1年かけて議論していくということで、実施機関等と内容の精査を行い、次回の本部総会にあげる案について検討したい。
【野木総括副所長】 将来予測が難しいということは仰るとおり。そういう意味でこの将来予測としたところも予測に資する観測を、過去と現在の観測を実施していくという観点から、このようなタイトルになったと考えている。
【藤井委員】 南極観測の6か年計画というのはやはり、南極観測、南極での観測計画を主に論じるもの、述べるもので、その後の国内計画等々は、観測の結果、資料、データは国内でのその後の研究に資するというスタンスでよいと思う。
そこで第X期の重点メインテーマで少し弱いと思ったのが、ドームふじにおける、過去100万年にさかのぼる深層コア掘削が第Ⅹ期で計画されている。ここの書き方が少し弱いのではないか。これは世界で最もチャレンジングな、この氷床コア掘削というのは色んなところでやられているが、100万年さかのぼる計画というのは具体的に着手するのは日本が初めての意欲的な計画であると思う。余談であるが、70数万年前の地球磁場の反転、チバニアンという名前がそのはじめについた。それを十分含む100万年という計画。地球磁場の変動が地球に、あるいは地球の生命にどう影響を及ぼしたのかなどの発展する課題もたくさんあるので、是非これをもう少し全面的に出していただきたい。
またそれと関連することで、アイスコアを使って過去の太陽活動の変遷を探るというのは、おそらくアイスコアを研究しているグループではターゲットに入っているのではないかと思う。非常に長期の、できれば100万年のスケールでの太陽活動の変遷を明らかにするというようなことがほとんど記述されていなかったため、今後の検討していただければと思う。
【野木総括副所長】 今後、X期の策定では、しっかりその辺りの表現も入れて検討したいと思う。
 

(4)事務局から次回の総会は令和2年11月を予定しており、それまでの間、緊急を要する案件などについては、本部連絡会に一任いただく旨の連絡があった。

 

―― 了 ――

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