令和2年10月21日(月曜日)16時00分~18時00分
文部科学省東館15階 15F特別会議室
江淵 直人 |
国立大学法人 北海道大学低温科学研究所 教授 |
神沢 博 |
国立大学法人 名古屋大学 名誉教授 |
神田 穣太 |
国立大学法人 東京海洋大学副学長・学術研究院長 |
坂野井 和代 |
駒澤大学総合教育研究部 教授 |
都留 康子 |
上智大学大学院 グローバル・スタディーズ研究科 教授 |
松岡 彩子 |
国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所 准教授 |
道田 豊 |
国立大学法人 東京大学大気海洋研究所附属国際連携研究センター 教授 |
山口 一 |
国立大学法人 東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授 |
横山 祐典 |
国立大学法人東京大学大気海洋研究所高解像度環境解析研究センター 教授 |
南 秀和 |
国土地理院企画部 国際課長補佐 |
田中 恵信 |
気象庁観測部計画課 南極観測事務室長 |
氏原 直人 |
海上保安庁海洋情報部技術・国際課 技術・国際官 |
五十嵐 壮雄 |
総務省国際戦略局技術政策課 専門職 |
前野 英生 |
国立研究開発法人情報通信研究機構電磁波研究所 |
岩崎 敦志 |
外務省国際協力局地球環境課上席専門官 |
安生 浩太 |
環境省自然環境局自然環境計画課 |
野木 義史 |
国立極地研究所 副所長 |
伊村 智 |
国立極地研究所 副所長 |
橋田 元 |
国立極地研究所南極観測センター副センター長(観測担当) |
青木 茂 |
第61次南極地域観測隊隊長(兼夏隊長) |
青山 雄一 |
第61次南極地域観測隊副隊長(兼越冬隊長) |
熊谷 宏靖 |
第61次南極地域観測隊副隊長(兼夏隊長) |
福井 俊英 |
文部科学省研究開発局海洋地球課長 |
河野 広幸 |
文部科学省研究開発局海洋地球課 極域科学企画官 |
土井 大輔 |
文部科学省海洋地球課 課長補佐 |
《報告事項》
1.前回議事について
2.第42回南極条約協議国会議(ATCM)の概要について
3.第31回南極観測実施責任者評議会(COMNAP)の概要について
4.第60次南極地域観測隊越冬隊の現況について
5.令和元年度外国基地派遣について
6.令和2年度南極地域観測事業概算要求の概要について
《審議事項》
7.第61次南極地域観測隊行動実施計画(案)について
8.南極条約第7条5に基づく事前通告のための電子情報交換システム(EIES)(案)について
9.第10期6か年計画に向けた検討について
10.その他
主な意見は以下のとおり。
【神沢委員】 プラハ宣言を採択したとあるが、どのような内容か。
【岩崎地球環境課上席専門官】 プラハ宣言の内容としては、新しい事項はなく、むしろ南極条約体制をこれまで守ってきたということで、これまでコミットしてきたことの確認等であった。
【横山(祐)主査代理】 環境保護に関する事項で、マイクロプラスチックが問題になっているが、どのような内容で取組を行っていくのか、具体的な話などはあったのか。
【岩崎地球環境課上席専門官】 議論では、今後どのようにこれに取り組んでいくかということが中心で、排水に含まれるマイクロプラスチックを規制していく方法論をどのように考えていくのかとか、人間の活動から生じるプラスチック汚染の問題もそうで、どのような基準に基づいてどのようにやっていくかということを今後検討して、取り組んでいくということが決議案の内容となった。
【江淵主査】 多分これを真面目にやろうと思うと、我々、日本の観測や設営の部分というのにもかなりいろいろ影響が出てくる。今後情報を交換して、対応できるようにお願いしたい。
【坂野井委員】 観測系装置の制御PCにランサムウェアの感染が見つかり、とあるが、感染経路等は分かっているのか。
【野木副所長】 まだ原因が特定できていない。鋭意努力して原因特定と並行して対応を行っている。
【神沢委員】 成層圏突然昇温現象の10月以降の経過はどうなっているのか。
【橋田副センター長】 8月25日から31日、9月の初頭に掛けて、高度で見ると、例えば10ヘクトパスカルくらいだと、この期間にだいたい70度くらい上昇するくらいの突然昇温が起こっている。
南極空域における成層圏の突然昇温は数字がはっきりしないが、前回起こったのは2002年くらいであったと記憶している。初めての現象ではないが、まれなことだと聞いている。この現象については、重点研究観測を担当する研究者が元々、集中的なPANSY等連動させた高層ゾーンでの観測というプロジェクトを持っており、集中的に高層ゾーンで観測を行っている。
【神沢委員】 この現象が起こると、成層圏オゾンが非常に増えることがあるが、それはどうか。
【橋田副センター長】 オゾンホールが今後崩壊し、リカバリーする過程で影響が恐らくあると思われる。その点に関して気象庁が行っているカラムのドブソン分光計等との比較等、どうなっているという話はまだ聞いていないが、そういったことと関連させた研究が進むのではないかと期待している。
【山口委員】 61次隊の活動におけるヘリコプター2機体制は確保できていると、理解して良いか。
【河野海洋地球課極域科学企画官】 しらせに搭載する航空機については、2機、防衛省で現在整備中と聞いている。
【山口委員】 3機目に関しての状況はどうなっているか。
【河野海洋地球課極域科学企画官】 3機目についは、引き続き調整中である。
【山口委員】 いつ直るか等の状況もまだ分からない状態なのか。
【河野海洋地球課極域科学企画官】 現時点で、この場でお答えできる状況ではない。
【松岡委員】 トッテン氷河沖では、普段の南極観測ではやらない特別な観測をする予定があるのか。
【青木第61次南極地域観測隊長】 トッテン氷河沖で実施する観測は、海洋観測と地球物理観測とに分かれている。海洋観測では、船から物を上げ下げして行うと観測と、係留観測という、投入してから、一定時間経ってそれを回収して引き上げるというような観測を行う。こういった観測は通常のオペレーションでも行っているような観測である。
地球物理学的な観測では、氷河の上にレーダーを置いて観測するというような観測を行うが、これも従来やってきている観測である。
大きく違うものとしては、航空重力の観測や、飛行機で海洋観測の機材を投入するというような観測を、アメリカのグループと共同で計画している。これはヘリコプターのオペレーションの重要なところになるが、新しい点なので、アメリカのグループとも鋭意情報交換しながら実施していく予定である。
【横山(祐)主査代理】 ベルギーと共同で行うオペレーションについて、一緒に同行して調査もやるのか。
また、ドームふじ基地・あすか基地でのオペレーションについて、例えば輸送計画が変わった場合にも、この燃料輸送準備に供するルートの確保に必要なロジスティクス等の対応は問題ないと理解して良いか。
【熊谷第61次南極地域観測隊副隊長】 基本的に地質、生物、ドームふじ、全てのチームはプリンセス・エリザベス基地を起点にしてするが、地質についてはほとんど、フィールドのキャンペーンは、日本のチームだけで行う予定である
ただし、アドバンスキャンプを2か所ほど出す予定であり、そのロジスティクスの部分で、ベルギーの協力を得ながら進める予定である。
生物調査については、同じタイミングで、ベルギーの生物調査のチームも入っており、モニタリングの点も持っているとのことなので、そちらの調査などを一緒にする予定である。
ドームふじへの燃料輸送については、ベルギー側で車両の準備もしていただいており、ベルギーから2名、日本から2名の計4名で、完全に共同のオペレーションで実施する体制になっている。
【横山(祐)主査代理】 今説明があった車両の燃料などは、ベルギー側から提供いただけるということだったので、基本的には影響ないと判断したが、その理解で良いか。
【熊谷第61次南極地域観測隊副隊長】 そのとおりである。今回ドームふじに輸送する燃料は、既にベルギーの基地に準備してある状況のため、今回のしらせの輸送オペレーションによってドームふじへの燃料輸送が影響を受けるということはない。
【江淵主査】 幾つか質問等あったが、特にこの実施計画(案)の修正を必要とするような意見はなかったため、本案を本委員会として承認し、次回、11月6日の本部総会に諮ることとしたい。(委員了承)
【江淵主査】 特に意見等はなかったため、本案を本委員会として承認し、次回、11月6日の本部総会に諮ることとしたい。(委員了承)
【道田委員】 トッテン氷河沖での観測結果を踏まえて、海洋観測プラットフォームとしてのしらせと、定常観測を実施する海洋観測専門船との役割分担について、今回の結果を踏まえて検討をしてほしい。
また、次の第10期にちょうどフェーズが一致する動きとして、国連海洋科学の10年というのが2021年から2030年まであるので、その動きも踏まえて計画に反映できると良いかと考える。
【江淵主査】 第9期からの申し送り事項という話で、PANSYレーダー観測の安定的な実施、ドームふじでの新しいコア掘削、「しらせ」を使わなければできない観測等がある。
特に氷河と海洋との相互作用というところが温暖化に伴って、海面上昇や温暖化、低塩化、そういうものとのどういう絡みになるかというところで、新しい展開が出てくると非常に大きなテーマになるだろうということは予想できるが、例えばそれ以外に全く新しいテーマであるとか、もう不要であるという意見など、いろいろな面で御意見を伺いたい。
【横山(祐)主査代理】 深層掘削を行っていくというのは一つ柱としてあると思うが、海にも注目したい。今回の観測でもトッテン氷河の近くというのは海と氷床との関係で、温暖化プラス、グローバルな気候変動という絡みでも非常に注目されているところだと思う。
氷床の方でも浅いコアというか、海の方とのインタラクションがどうなっているか。グリーンランドではそういうコアがとられて、その中に含まれているダストがどういうところから来ているから、どの地域が溶けていると、過去にそういうのが繰り返し起こったという研究がネイチャーの姉妹紙に出ていたが、そういうたくさん浅いコアを掘って、海と陸域、氷床とのインタラクションなどを見ていくという部分というのは、大気と海洋と雪氷と、どれも関わってくる領域である。
そのあたりも見据えて、プランの中に入れていっていただければ、おもしろいかなと思う。
【神沢委員】 今、主査が指摘された3ページの2番目の○の項目のところに、第10期計画での3つの計画が記されている。すなわち、昭和基地におけるPANSYレーダー観測、内陸での氷床深層掘削、ドロンイングモードランド沿岸部での広域的な調査・観測。それぞれの観測目的を記載すべきではないか。PANSYおよび氷床掘削でどういうことができるというのは目に浮かぶが、ドロンイングモードランド沿岸部に展開する広域的な調査・観測というのは、何を目的に何を調査し観測するのか。
要するに、場所と調査・観測という一般論なので、何をターゲットにして何を調査・観測するということになるのかを記載すべきではないか。
【野木副所長】 従来、プリンセス・エリザベス基地やドロンイングモードランドの広域では湖沼の掘削等もやってきたこともある。
一方で、隕石のような段差や、しばらく行っていないやまと山脈など、そのあたりでのいろいろな地殻変動のデータ等は非常に広域で必要になってくるので、そのような展開であるとか、あとは生物の多様性に絡むようなところで広域の観測は必要である。
ここに書いてあるのは一般論だが、そういう大義に関わるところや第9期のコアに関わること以外に必要な生物調査である。それから一般的なものがもっと広域に展開することによって、宙空圏もそうだが、広域での、今回、外国でもあったように、無人観測を展開するようなことも一つあるかと思っている。
それを10期の間にどのようなことをどうターゲットを絞っていくかというのはまた別かと思うが、ここで書いてあるような内容はそのような内容とお考えいただきたい。
【江淵主査】 スケジュール的には、5ページ目にあるように、まず、外部評価委員会から中間評価が上がってきて、この3年間どうだったかという話が一つのベースになる。
それから、12月の初めに極域科学シンポジウムがあり、そこでサイエンスの議論をしていただき、またいろいろな新しいテーマなどが加わってくるだろうということを予測しつつ、来年の6月にはメインテーマを決めなければいけない。ということは、その前に我々はメインテーマを出さなければいけない、ということになる。その後、来年度の後半には、骨子案を作成し、11月までに決定する必要がある。
そこで本委員会の任期が切れ、その後実際の詳細な計画案ができていってというスケジュールになると思う。そのため、少なくとも、来年6月までにメインテーマを決めなければいけない。
なかなかこういう自然科学の話というのは、6年やったからすぐ新しい話に、もうこれで終わり、それでは次、という話ではないが、実際に外に向けてのアピールを考えると、前回と同じではさすがに厳しいと思う。
いろいろなところを新しく、うまくいったこと、新しく発展したところをどんどん取り込んで、どんどん研究の進展が分かる計画案になるように、配慮しながら進めていきたいと思う。
【都留委員】 私も海を中心に研究しているので、そちらが中心の争点になるかもしれないが、国民へのパブリケーションというものは大いに必要で、その場合、今、何に関心があるかというと、環境保全についてはものすごく配慮が必要というか、そこにすごく関心が高いと思うので、ここについてはかなり研究をすることによって何かマイナス面はないのかというようなところも、十分配慮をしていくとよいかと思っている。
それともう一つ、自分が最近思っていることとしては、宇宙と海洋など、そういったことは考えられないのかということを思っている。
【野木副所長】 宇宙と南極というのは、前も医学の話があって、閉鎖空間の話があり、次の成果のところで一つ、公開利用研究で、成果の5ページにあるように、南極移動基地という、JAXAと極地研とミサワで共同開発をしているもので、そういう視点は十分あると思うので、そのあたりは検討しながらやっていきたい。
【江淵主査】 あとは環境への配慮という点も必要である。隔年で環境省から同行者として、南極地域観測に参加してもらい、指摘事項があって、懸案事項もたくさんあると思うので、そこのところをどのようにクリアしていけるかというのは大きな課題だと思っている。
それから、各研究成果のフィードバックという意味では、前回のプランにも少し書いているが、SDGsやフューチャーアースなど、自然科学のサイエンスだけやっていればいいというものではもうないだろう。
その観点から、人文社会学との連携というか、より多くの関係者へのアウトリーチをきちんと伸ばすように、うまく持っていくというのが大事かと思う。
【坂野井委員】 メインテーマを決定することがこの委員会だということを理解したが、それはその重点研究観測メインテーマという理解で良いか。計画の段階に携わったことがないので、一応確認したい。
それからもう一つ、現在、重点研究観測であるとか、一般研究観測であるとか、萌芽研究観測であるとか、いろいろと公開研究であるとか分類されているが、基本的にこのシステムを続けて第10期にいくという理解で良いか。
【河野海洋地球課極域科学企画官】 1点目、例えば重点についてもこの委員会で決めるのかということだが、ある意味この第10期の計画、骨子のところについては、先生方の御意見で、例えば重点も見直した方がいいと、こういった新しい観点でこういうのをやるべきであると、そういった意見もあれば、そういった点を踏まえてまた書き加え、また修正していくという作業になるかと思う。
それと、重点以外にも、一般とか萌芽とか、例えば一般の研究者の方々に公募している事業もあるが、そういったものも、公募してやるのかどうか、又はもっと間口を広げた方がいいのではないかなど、対象をもっと絞るなり、例えば海外との共同研究なども含めて、もっと積極的に広める等、いろいろな御意見があるかと思う。
そういった全体的な改革含めて、御意見を頂ければということで、考えている。
【江淵主査】 いろいろな御意見を伺ったということで、この意見を事務局で整理をして、今後、計画策定に向けて進めていただきたい。
スケジュール案を踏まえると、まだまだ決定までは長い道のりがあると思うので、皆さんの御協力をお願いしたい。
【山口委員】 前回議事録のフォローアップになるが、最後にポスト「しらせ」の指摘をさせていただいて、検討するとお答えいただいたが、その後何か進展はあったか。
【河野海洋地球課極域科学企画官】 ポスト「しらせ」については、具体的に何か動いたということはないが、しらせの運航も、そろそろ10年を超えてくるので、初代しらせが25年、今回10年なので、新たな建造を含め、検討するにはこれからがちょうどいい時期だと思っている。
【山口委員】 関連して、12期か13期とかの時期の話になると思うが、現「しらせ」と海鷹丸の体制では、こういう観測はどうしてもできないということがある。
そういったことを10期計画の検討の際にクリアにして、では現実的に次の船はこうあるべきであると、第10期計画とは別の何かとしてでも良いが、一緒に検討していただく良い時期なのかなという気がしている。
IPCCの雪氷と海洋の特別報告というのが出たばかりで、かなり世間をびっくりさせるようなことが書いてある。
極域研究は、これからもますます重要になってくるし、社会や政策とのキャッチボール、これをもっと効率的に素早くやらないといけない。これは間違いない。
極地研としては、そういう点をしっかり把握されていると思うので、そういうことも含めて第10期計画の検討をできればと思う。
【野木副所長】 特に、プラットフォームとしての現状をしっかり把握して、次の第10期と、また御相談させていただきたいが、御指摘の点もしっかり検討していきたいと思う。
【江淵主査】 第9期の時も第10期に向けてなどという、今リファーしたような部分はあるので、今後の長期的な展望のようなところで加えておくということも可能であるし、いろいろな検討を早めに始めるというのは非常に良いと思う。
── 了 ──
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