1.第41回観測・設営計画委員会 議事の記録

1.日時

令和元年6月14日(金曜日)16時00分~18時00分


2.場所

文部科学省東館13階 13F1―3会議室


3.出席者

(委員)

石川 尚人

国立大学法人 京都大学大学院人間・環境学研究科 教授

江淵 直人

国立大学法人 北海道大学低温科学研究所 教授

神沢 博

国立大学法人 名古屋大学 名誉教授

神田 穣太

国立大学法人 東京海洋大学副学長・学術研究院長
学術研究院海洋環境学部門教授

坂野井 和代

駒澤大学総合教育研究部 教授

都留 康子

上智大学大学院 グローバル・スタディーズ研究科 教授

松岡 彩子

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所 准教授

道田  豊

国立大学法人 東京大学大気海洋研究所附属国際連携研究センター 教授

山口   一

国立大学法人 東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授

横山 祐典

国立大学法人東京大学大気海洋研究所高解像度環境解析研究センター 教授

(オブザーバー)

南 秀和

国土地理院企画部 国際課長補佐

田中 恵信

気象庁観測部計画課 南極観測事務室長

氏原 直人

海上保安庁海洋情報部技術・国際課 技術・国際官

菅原 章

総務省国際戦略局技術政策課 専門職

前野 英生

国立研究開発法人情報通信研究機構電磁波研究所
宇宙環境研究室 主任研究員

岩崎 敦志

外務省国際協力局地球環境課上席専門官

藤原 淳一

環境省自然環境局自然環境計画課課長補佐

中村 卓司

国立極地研究所 所長

野木 義史

国立極地研究所 副所長

榎本 浩之

国立極地研究所 副所長

伊村 智

国立極地研究所 副所長

橋田 元

国立極地研究所南極観測センター副センター長(観測担当)

木津 暢彦

第59次南極地域観測隊副隊長(兼越冬隊長)

原田 尚美

第60次南極地域観測隊副隊長(兼夏隊長)

青木 茂

第61次南極地域観測隊隊長(兼夏隊長)

青山 雄一

第61次南極地域観測隊副隊長(兼越冬隊長)

熊谷 宏靖

第61次南極地域観測隊副隊長(兼夏隊長)

(事務局)

福井 俊英

文部科学省研究開発局海洋地球課長

河野 広幸

文部科学省研究開発局海洋地球課 極域科学企画官

土井 大輔

文部科学省海洋地球課 課長補佐

4.議事

(1) 事務局より、当日の議題・配布資料について確認があった。
(2) 以下の議題について、報告及び審議がなされた。


《報告事項》
1.観測・設営計画委員会について
2.南極地域観測事業の概要について
3.第35回南極研究科学委員会(SCAR)総会の概要について
4.第59次越冬隊・第60次観測隊の活動結果及び現状について
5.2019年度南極地域観測事業予算の概要について


《審議事項》
6.第61次南極地域観測実施計画の概要(案)等について
7.第62次南極地域観測計画の概要(素案)等について
8.南極条約第7条5に基づく事前通告のための電子情報交換システム(EIES)(案)について

9.その他


主な意見は以下のとおり。


(議題4)
【石川委員】
 Ⅸ期計画について、59次・60次の終わった段階では観測計画・設営計画共に順調に進んでいるということか。今後次期計画の案を審議することになるので、変更や改善するようなことがあれば教えてほしい。風力発電の件が気になった。
【野木副所長】
 基本的には順調に進んでいる。風力発電に関しては、まだ原因究明ができないので、早急に対応したい。発電機の更新も含めて見直し等も考えたい。
【山口委員】 
 資料4-5について、帰路に流氷縁の端が乱氷帯になって、「しらせ」が立ち往生した。これは観測計画にとっても重要事項だが、天気予報があれば事前予測がある程度可能な現象である。天気予報を利用して、乱氷帯の発生を考えて、数日先の観測計画の変更に対応するといった計画はあるか。
【橋田副センター長】
 2月6日と8日のブリザードが来る前の状況は、海氷密接度が低く、ほぼ困難なく航行できるような状態であり、海氷観測もスムーズに行われていた。
 特に夏の間は観測データも多いので、2日ほど前からこういったブリザードが来るということは分かる。しかしそういった予報に基づいて、開放水面に出て待機した方が良いかというと、実は海氷に囲まれていた方がうねりの影響等が少なくて済むということもある。
 今回は「しらせ」にとっても、これまで経験していないような状況になった。今後、もしこのような状況になったときには、何らかの対策は取る可能性が高い。
【山口委員】
 今の状況について、クラックが入って動いているのは多年氷域か。
【橋田副センター長】
 昨年から残っている部分もあるが、新しく生成されたものが西に流されたものも含まれている。クラックのかなり西側のところは多年氷の部分もあるかと思うが、それが全てというわけではない。
【山口委員】
 クラックの東側というのは、多年氷と一年氷の間が割れたということか。多年氷範囲は去年と同程度か。
【橋田副センター長】
 それに近い状況と思われる。
【山口委員】
 オングル海峡の部分は、今年はまだオープンウォーターになっていないのか。
【橋田副センター長】
 なっていない。来年行けば、2年目の氷となる。
【神沢委員】
 5~6年前、海氷の状態が悪く輸送が非常に困難な状況があり、越冬の規模を縮小するか否かといった議論が行われた。その際の停留点は2ページ目の図では大体どの辺りにあったのか。
【橋田副センター長】
 一番海氷が厚く輸送が困難だったのは、53次、54次。そのときは、昭和基地の周辺は全て多年氷だった。昭和基地周辺のみならず、広い領域が全て多年氷だったため、弁天沖からさらに離れた地点までしか進入できなかった。この図の中には入っていない。
【松岡委員】
 資料4-6について、これまで12回同行したということだが、問題点が今回初めて見つかったというようには見えない。これまでの同行時にも要改善という指摘はあったが改善されず、改めて指摘しているのか。その経緯と、これをどのくらい重く受け止めて改善しなければいけないのかという点を御説明いただきたい。
【藤原自然環境計画課課長補佐】
 これまで12回同行しているが、毎回同じ地域に行っているわけでは無いため今回初めて見つかったところもある。
 隊員宿舎の汚水の問題についてはこれまでも問題意識は持っており、徐々に改善されてきている。しかしまだ全て解決していないため、この場で報告した。
【神沢委員】
 動植物相等の調査に関して、これは南極観測でずっと生態系の観測部門が行ってきた基本観測との関係あるか。
【藤原自然環境計画課課長補佐】
 (2)の南極地域環境調査の動植物相の調査については、環境省の職員が行って確認している。
【神沢委員】
 極地研を中心に生態系部門は基本的な観測をしているが、その情報は取り入れていないのか。
【環境省自然環境計画課安生係長】
 環境省では外来種の調査をメインで行っている。特段環境上問題のあると思われる動物植物に関して、重点的に調査している。
【江淵主査】
 つまり極地研やほかの研究者が対象とするものと、環境省で対象とするものは、異なる観点で異なるものを見ているということになる。
【横山(祐)主査代理】
 環境省からの報告について、ASPA41自体、どの程度周知されていて、レクチャーがされてきているのか。ほかの地域と比較して、この41地域ではどの程度管理保全のようなことが行われているのか。また国際的に見て、どの程度まで改善をどのぐらいのスパンでやるといった取り決めがあるのか。
【藤原自然環境計画課課長補佐】
 レクチャーという点について、管理計画が5年に1回改訂される。その都度、南極条約協議国会議や環境委員会などに諮る。それにいては、パブリックコメント等を提供し、また普及啓発として、環境省として広く周知している。
 他国と比較してという点について、他国の状況については分かりかねるところがあるが、改善する状況等については環境省の職員が同行して、保護すべき内容を確認した上で、進めていく。
【横山(祐)主査代理】
 観測隊で行くメンバーについての教育はどうか。船の中で何度か教育の機会があったそうだが、周知がしっかりできて十分継続的に行われているのかどうか。
 例えば汚水の問題も継続的にあるという指摘だったので、極地研の方にアドバイスをして、そのプライオリティを上げていくといった緊急度についての尺度があるのか聞きたい。
【藤原自然環境計画課課長補佐】
 観測隊や「しらせ」乗員への周知等について、時間が限られているため資料3に書いているとおりとなっている。
 これまでも継続して南極の環境保護の重要性について説明し、南極に長く行っている隊員については、その意識は十分浸透しているかと思う。しかし初めて南極に行く隊員については引き続き周知を徹底していかなければいけない。そのプライオリティについては、極地研の皆様に話して進めたい。
【伊村副所長】
 観測隊に対しては、ASPAについての情報は徹底して流している。ここに入るためには許可も取らなくてはいけないので、入る人数や活動も絞っている。
【石川委員】
 環境省からの指摘の件で、この指摘があったことを受けて、極地研側では今後どういう対応をどういうタイムスケジュールでやるつもりでいるか。
【野木副所長】
 撤去は既に開始している。
【神沢委員】
 WMOが主導するラジオゾンデの基準観測網(GRUAN)に昭和基地が2番目に登録されたということだが、1番目はどこか。
【木津第59次南極地域観測隊副隊長】
 隣のデービス基地だが、デービス基地の方は観測データをまだ流していないので、実質的には、今、昭和基地が世界に貢献しているナンバーワンとなる。今のところ、南極では2地点のみとなる。
【神沢委員】
 GRUANという観測網の認証は昔からあるのか。
【木津第59次南極地域観測隊副隊長】
 今から15年ほど前から気候変動ということを提唱する人が多数出てきて、こういう観測することになった。当時のラジオゾンデでは精度が良くないので精度のいいラジオゾンデを作る事となり、ラジオゾンデ自体の認証もGRUANというところで始めた。
【神沢委員】
 日本では立野にあるのか。
【木津第59次南極地域観測隊副隊長】
 立野と、昭和基地と、南鳥島にある。 立野に関しては、サイト自体が認証されている。

(議題5)
【山口委員】
 海上輸送部門4億減、ヘリが1機減ったという理由だが、国内で整備・訓練に必要なためヘリは基本1機しか持っていけない。整備と訓練が重なったときは、2機体制だとゼロになる年が出る。それは観測事業にとって非常に大きな問題なので、早急に3機目の対策をお願いしたい。
【河野海洋地球課極域科学企画官】
 南極観測事業に航空機等は必須で、この支援がないと事業自体も停滞するということになる。航空機支援を行っている防衛省とも協力しながら、対応を検討する。

(議題6)
【道田委員】
 研究観測について、海底地形測量が復帰するということだが、南極海は海底地形のデータの絶対量が少なく海洋環境や海洋循環の研究にとっては基盤情報なので、是非継続的に行っていただきたい。
 設営関係について、気象棟を解体するということだが、これは61次で完了させて、廃材は持ち帰るということか。
【野木副所長】
 その予定である。その年に廃材を持ち帰るということにはならないが、持ち帰りはする。
【神沢委員】
 ドームふじのアイスコアの100万年オーダーの採取の計画は何年頃になりそうか。
【野木副所長】
 59次、60次で掘削点の選定のため、アイスレーダーの観測を重点的に行い、現在選定中である。次の62次では掘削点の拠点形成に向けた物資輸送を開始する予定にしている。可能であれば、その翌年にはパイロットの掘削までは行いたい。
【石川委員】
 同行者である教育関係者の方が今回1名とのことだが、これは人数の関係でそうせざるを得なかったということか。
【野木副所長】
 今回、昭和基地の滞在期間が若干短くなるため、1名をしっかりとサポートしたいということになった。

(議題7)
【道田委員】
 往復路航空機による観測を実施するために、何か設営上またはオペレーション上の特段の配慮が要るということはないか。
【野木副所長】
 早期の航空機の昭和基地近辺への着に関しては、海氷状況などが左右するので、そこを注視しながら行っていく。また行動範囲等も考えながら、適宜柔軟に対応していきたい。
 【道田委員】
 夏オペの最中に飛行機が来ることになるが、そのために隊員側に何らかの負担が生じないか。
【野木副所長】
 これまでも航空網の利用は行われているため、特段の負担にはならないと考えている。
【神田委員】
 先ほど環境省からの報告にあった汚水処理装置の設営計画が61次にも62次にも出てこない。何か長期的な計画のようなものはあるのか。
【野木副所長】
 汚水処理に関しては改善は常に考えている。環境省からアドバイスをいただきながら進めていきたいと考えている。
【神田委員】
 処理済みの処理水について、掘る位置を変えたところ、その後藻が生えたり、バイオフィルムが出たという話だったので、処理のクオリティはあまり高くないように見える。しかし処理のクオリティを上げれば、オペレーションが複雑になって負荷が掛かる。最適解というのがどこかということを考えて計画することが必要である。
【野木副所長】
 そういった点も含めて検討を進めてはいる。
【神沢委員】
 最近、観測隊の一部の方が航空機で直接南極に入るということは多いが、どの隊がどのような目的でどの場所から南極に入るといった情報は、この計画の中に書いてあるのか。
【橋田副センター長】
 現時点の観測計画案の中では、そこまで細かい情報の提供は無い。秋の部会でもう少し具体的な情報を含んだものを提供している。
【江淵主査】
 62次隊は、まだ素案の段階なので固まっていないということか。
【橋田副センター長】
 そうである。
【松岡委員】
 60次で、PANSYレーダーで国際協力を行い、さらに広域の観測をするという紹介があったが、61次、62次で国際協力というようなことは触れられていない。もし何かあれば御紹介いただきたい。
【野木副所長】
 今後、国際協力についても検討しながら実施いきたいと考えている。

(議題8)
【木津第59次南極地域観測隊副隊長】
 今回提出する資料の年次報告の中入っているが、飛翔体とはどこまで含まれるのか。ラジオゾンデやドローンも含まれると思うが。
【橋田副センター長】
 ロケットや、いわゆるサイエンティフィックバルーンや、ゴムによるゾンデ関係、UAV等の無人飛行機も含まれる。
【神沢委員】
 資料の英文の2ページ目にDome Fujiというのがあるが、マックスポピュレーションが14人、その下には、「9 buildings below snow surface. 9 people can be accommodated.」と書いてある。5人の差があるがどういう意味か。
【野木副所長】
 推測だが、マックスポピュレーションは夏の期間の雪上車等で14人まで入ったということ。「9 buildings below snow surface.」というのは、氷下にあるビルディングでは9人収容できるアコモデーションがあるという意味である。

(議題9)
【山口委員】
 4月の終わり頃にある新聞で、海上自衛隊が「しらせ」の運用から手を引くことを検討していると出ていた。輸送計画委員会でも、防衛省からそれを認める発言があったと聞いている。
 法律改正等が必要なので、来年再来年という話ではないだろうし「しらせ」は自衛隊仕様の船になっているので途中で投げ出すような無責任なことはないだろう。しかし長期的には自衛隊が手を引きたがっているというのは確かだろう。
 これはより良い観測サポートシステム、ポスト自衛隊、ポスト「しらせ」を検討するいい機会だと思う。こういう大型のインフラというのは、検討に非常に時間が掛かる。そのため文科省・極地研には今から検討を始めていただきたい。
【河野海洋地球課極域科学企画官】
 輸送計画委員会の方でもそのような発言は出ていた。また近年中というわけではなくある程度継続していくということは、防衛省からも発言があったので、近年の動きも踏まえて、どういった場でどういったことを議論していくかということを含めて、事務局としても、先生方の御意見を伺いながら検討を進めたい。



(3)事務局から、次回の会議日程については、委員の都合を確認の上、連絡する旨の説明があった。

── 了 ──

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