4-4.第60次南極地域観測隊越冬隊の現況(2019年2~4月)

1. 気象・海氷状況

2月

 上旬から中旬にかけては全体的に晴れ間が少なく、8-9日には外出注意令・禁止令を発令する荒天となって60次隊初のブリザードに認定(A級ブリザード)された。下旬は晴れ間の多い天気となったが、21-22日には注意令を発令するC級ブリザードとなった。2月末段階において昭和基地周辺では、向かい岩前の水開きエリア以外には氷盤の割れや開放水面などは発生していない。

3月

 中旬は晴天日が多く最低気温がマイナス20℃近くまで下がる日があった。上旬・下旬は悪天日が多く、特に下旬は晴れ間が少なかった。6日および22日には外出注意令を発令し、30日は視程悪化のため注意喚起状態とした。3月にはブリザード認定された悪天はなかった。昭和基地周辺の海氷は2月からの目立った変化はない。

4月

 前月下旬から継続して悪天が多く、月の後半はやや回復したが、全5回(4-5日、6日、9日、11-12日、29日)の外出注意令を発令した。5日、11-12日および29日の悪天は、それぞれC級、B級、C級のブリザードに認定された。リュツォ・ホルム湾の海氷の割れは先月から徐々に進み、下旬には弁天島の北西方向から大きく進行して、月末には弁天島までの距離が10km足らずとなったことが衛星画像から確認された。今後の野外活動は慎重に行う必要がある。


2.基地活動

2月

 1日に原田副隊長および宮﨑艦長の臨席の上、越冬交代式が執り行われた。同日、59次越冬隊は全員が「しらせ」に帰艦した。1日午後には第1回となる越冬隊の全体会議を行い、越冬体制および60次隊内規を確認した。11日午前には、最終便で残留夏期メンバーもすべて帰艦し、越冬隊31名のみに よる実質的な越冬生活を開始した。20日午前、越冬成立を宣言し、福島ケルン前にて福島隊員慰霊祭を執り行い、これから1年間の活動の安全を祈念した。22日には60次隊の第一回目となる消火訓練を実施した。25日から27日にかけて、観測部会、設営部会、生活部会、オペ会を行い、28日に第2回全体会議を開催して、観測設営計画の2月の作業を報告し3月の予定を確認した。

越冬交代


3月

 各種観測・設営作業に加え、本格的な冬到来に向けた準備を隊全体として進めた。11日には消火訓練を実施した。全員を対象に消火器を実際に使って火を消す訓練を行った。20-21日には全員を対象とした健康診断を実施した。2月から行っていた各所の本格除雪作業はひとまず終了し、必要に応じた一般除雪体制となった。

4月

 各種観測・設営作業に加え、野外行動に向けた講習やルート工作を行った。22日には放水作業を伴う消火訓練を実施した。4月全体を通して晴れ間が少なく、常に最新気象情報を気にしながらの活動となった。4月後半は5月からの冬日課への移行期間とし、朝食を30分後ろにシフトした。


3.観測

2月

 夏期のヘリ利用の野外観測オペレーションは3日で終了した。59次隊から引き継いだ観測機器の運用を順調に開始した。下旬からは宙空部門の光学観測を開始した。

3月

 各観測を概ね順調に、細かな不具合対応を行いながら実施した。14日から、PANSYレーダーの精密観測と連動した10日間のラジオゾンデ集中観測を、重点研究観測隊員を中心に多くの隊員の協力のもと実施した。26-27日には24時間連続VLBI観測を実施した。また観測系隊員による週例打ち合わせを開始し、月例会議だけではカバーできない細かな対応が取れる体制を整えた。

4月

 各観測を細かな不具合対応を行いながら実施した。電離層定常観測用のデルタアンテナ1機のエレメント故障が上旬に確認されたが、予備系統が用意されているため欠測はない。修理については来夏となる。


4.設営

2月

 1月中の天候不順と最終便の前倒しに伴い、当初の夏期設営計画の内、倉庫棟屋上の防水工事については越冬明けまで延期することとした。最終便後は越冬メンバーによる残作業および越冬に向けた準備作業を継続して行った。

3月

 装輪車の立下げ作業など冬期間に向けた準備が進められた。基本観測棟については、管理棟側からの配管延長を行い、さらに電設工事など次第に屋内にシフトしながら作業を進めた。24日には風力発電機2号機が羽部分の一部破断により運用停止となった。原因について南極観測センターおよびメーカーと供に究明を進めており、相談の上、1号機についても安全を考慮して運用を停止した。今後、60次越冬期間中の風力発電機運用については国内側と相談しながら進めることとした。

4月

 日々のメンテナンスやワッチ作業を続けながら、基本観測棟の内部設備工事や新焼却炉の組立工事などを行った。8日には終日かけてスノーモビル・雪上車の講習を実施した。月後半にルート工作を開始し、西オングルルート、見晴らしルート、続いてS16までのルートを月末までに完成させた。S16ルートの仕上げは宿泊オペとし、S16から圧雪車(PB302)を昭和基地まで持ち帰った。


5.その他

 夏期宿舎の早期立下げおよび各種作業・生活の効率化のため、2月2日以降に残留する夏期メンバーすべてが居住棟の空部屋を使って寝泊まりする体制とした。教員派遣プログラムに伴う南極授業は、60次の第1回目となる1月29日の授業を59次の支援を受けて実施した後、2月3日、8日、9日の計4回実施した。この内、3日と8日分は、当初計画では2月中旬実施予定であったが、海氷状況を鑑みた最終便の早期実施に伴い、国内側との相談の結果、日程を早めて実施した。越冬交代直後の忙しい時期であったため、夏期メンバーを中心に、特に越冬経験・南極教室経験のあるメンバーに協力を依頼して、夏期南極授業用の特別体制を整えて対応した。
 新聞係など各生活係は2月初めから順次活動を行っている。スポーツ大会や誕生日会などがこれまでに開催された。3月17日にはシドニー入港前の「しらせ」側との最後の定時交信となり、多くの隊員が参加して盛り上がった。3月下旬には国内側と接続したアウトリーチイベントを開催した。4月下旬には越冬隊初となる南極教室が開催され、関係者の努力により成功裏に終わった。また、各生活係の活動に加えて、各種レクリエーションなども活発化し、ミッドウィンター祭に向けた準備も4月末に開始された。
 なお、この間の傷病者数は延べ43人であった(歯科7、内科6、外科10、整形外科11、眼科2、皮膚科6、産婦人科1)。うち、外科の1件は右手背熱傷(浅達性Ⅱ度)であり、ドラム缶廃棄作業中に受傷し、3週間で治癒した。また、整形外科の1件は右第Ⅳ指末節骨骨折であり、モーターサイレンの修理作業中に指を挟み受傷し、4週間で治癒した。

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