8-2.第64次南極地域観測計画の概要(素案)

 第64次南極地域観測隊では、重点研究観測サブテーマ1「最古級のアイスコア採取を軸とした古環境研究観測から探る南極氷床と全球環境の変動」による最古級のアイスコア採取を進めるため、ドームふじ近傍で掘削拠点建設を行うことを計画の中心に据えて実施する。

 令和4年度の第64次南極地域観測隊の観測計画(以下「第64次計画」という)は、「南極地域観測第10期6か年計画(以下「第10期計画」という)」(令和3年秋決定予定)の初年度の計画となる。
第10期計画では、第9期重点研究観測を更に発展させ、南極域における氷床、海洋大循環、大気大循環や超高層大気等の過去と現在の変動の把握とその機構の解明を目的として、重点研究観測メインテーマ「過去と現在の南極から探る将来の地球環境システム」が決定された。更に、サブテーマ1「最古級のアイスコア採取を軸とした古環境研究観測から探る南極氷床と全球環境の変動」、サブテーマ2「氷床―海氷―海洋結合システムの統合研究観測から探る東南極氷床融解メカニズムと物質循環変動」及びサブテーマ3「大型大気レーダーを中心とした観測展開から探る大気大循環変動と宇宙の影響」がメインテーマの下に設定されており、サブテーマ間で連携してメインテーマの推進に取り組むこととしている。
第64次計画では、基本観測を着実に実施しつつ、重点研究観測サブテーマ1による最古級のアイスコア採取を進めるため、ドームふじ近傍において掘削拠点建設を行うことを計画の中心に据えて実施する。また、南極観測船「しらせ」による本隊に加え、南極航空網を利用した先遣隊を派遣し夏期の観測適期の有効活用を図る。更に、定常観測の海洋物理・化学観測については、「しらせ」以外の観測船による別動隊で実施する。
なお、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行状況が収束しない場合には、その状況下で最大限の成果が得られるように、必要に応じて計画を変更する。

1.観測計画

1.基本観測は、定常観測とモニタリング観測に区分して実施する。

(1)定常観測では、電離層観測、気象観測、海洋物理・化学観測、海底地形調査、潮汐観測及び測地観測を実施する。
(2)モニタリング観測では、宙空圏変動のモニタリング観測、気水圏変動のモニタリング観測、地圏変動のモニタリング観測及び生態系変動のモニタリング観測を実施する。


2.研究観測は、重点研究観測、一般研究観測及び萌芽研究観測の三つのカテゴリーに区分して実施する。

(1)重点研究観測はメインテーマ「過去と現在の南極から探る将来の地球環境システム」の初年度の計画として、全球的な視野に立った社会的要請の高い先端的研究観測を実施する。本メインテーマを推進するため設定された、サブテーマ1「最古級のアイスコア採取を軸とした古環境研究観測から探る南極氷床と全球環境の変動」、サブテーマ2「氷床―海氷―海洋結合システムの統合研究観測から探る東南極氷床融解メカニズムと物質循環変動」、サブテーマ3「大型大気レーダーを中心とした観測展開から探る大気大循環変動と宇宙の影響」のもと計画を立案する。サブテーマ1においては、最古級のアイスコア採取を進めるため、ドームふじ近傍において掘削拠点建設を行うとともに、昭和基地周辺での浅海海底堆積物の掘削を行う。サブテーマ2においては、南極氷床の質量損失過程の詳細、その海洋環境や物質循環への影響の実態を解明するため、トッテン氷河沖での海洋観測や大気観測等を行うとともに、昭和基地周辺氷河下で最新鋭のAUV(自立型無人潜水機)による観測を実施する。サブテーマ3では、気候変動の主要因の1つである大気大循環変動を定量的に理解することを主目的として南極昭和基地大型大気レーダーを中心とした多角的な複合観測を実施するとともに、宇宙環境変動とその地球大気への影響の解明に向けて宇宙線観測や極冠域でのオーロラ撮像ネットワーク観測の充実を図る。

(2)一般研究観測は、公募により採択した、研究者の自由な発想に基づく計画を実施する。
(3)萌芽研究観測は、公募により採択した、将来の研究観測の発展につながる挑戦的な計画を実施する。

2.設営計画

第64次計画においては、昭和基地整備計画に基づき、発電機の更新に向けた設備機器類の設計に着手すると共に、新夏期隊員宿舎建設に伴う道路整備、基礎工事を実施する。合わせて老朽化した電気設備および機械設備の点検及び更新、老朽化した建物の解体工事を引き続き行う。また、観測活動に起因する環境負荷の低減を進めるため、再生可能エネルギーの積極的利用に向けた実証試験に取り組むとともに廃棄物埋立地の処理を進める。更に、ドームふじ近傍におけるアイスコア掘削に伴う燃料と物資の輸送並びに掘削場の建設作業を行う。これらの計画を遂行するために、燃料・車両・重機等の大型物資、観測機材、設営資材等を可能な限り輸送する。

3.その他計画

南極の特殊環境下を利用して民間事業者等の技術開発等に向けた動きを支援するための昭和基地利用プログラム(仮)を開始し、第64次計画で実現可能な計画があれば南極で実施する。また、教員派遣プログラムを第9期に引き続いて実施する。

 

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