1.第38回観測・設営計画委員会議事の記録(案)

日時

平成29年10月30日(月曜日)10時~12時

場所

文部科学省5階 5F5会議室

出席者

委員

江淵 直人

国立大学法人北海道大学低温科学研究所長


神沢  博

国立大学法人名古屋大学大学院環境学研究科教授


神田 穣太

国立大学法人東京海洋大学副学長、学術研究院長・教授


坂野井和代

駒澤大学総合教育研究部准教授


都留 康子

上智大学総合グローバル学部教授


道田  豊

国立大学法人東京大学大気海洋研究所附属国際連携研究センター教授


山口  一

国立大学法人東京大学大学院新領域創成科学研究科教授


横山 祐典

国立大学法人東京大学大気海洋研究所高解像度環境解析研究センター教授

オブザーバー

保苅 俊行

外務省国際協力局地球環境課課長補佐


鵜生川太郎

国土地理院企画部国際課長


荻原 裕之

気象庁観測部計画課南極観測事務室長


佐々木健介 

海上保安庁海洋情報部技術・国際課技術・国際官


菅原 章

総務省情報通信国際戦略局技術政策課専門職


前野 英生

国立研究開発法人情報通信研究機構電磁波研究所宇宙環境研究室主任研究員


竹原 真理

環境省自然環境局自然環境計画課係長


岳本宏太郎

防衛省海上幕僚監部防衛部運用支援課南極観測支援班長


神藤 仁

防衛省海上幕僚監部防衛部運用支援課南極観測支援班


中村 卓司

国立極地研究所長


橋田 元

国立極地研究所南極観測センター副センター長(観測担当)


土井浩一郎

第59次南極地域観測隊長(兼夏隊長)


木津 暢彦

第59次南極地域観測隊副隊長(兼越冬隊長)

事務局

阿蘇 隆之

文部科学省研究開発局海洋地球課長


小酒井克也

文部科学省研究開発局海洋地球課極域科学企画官


土井 大輔

文部科学省研究開発局海洋地球課課長補佐


議事

(1)事務局より、当日の議題・配付資料について確認があった。
(2)以下の議題について、報告及び審議がなされた。

≪報告事項≫
1.前回議事について(事務局)
2.第29回南極観測実施責任者評議会(COMNAP)の概要について(国立極地研究所)
3.第58次越冬隊の現況について(国立極地研究所)
4.平成29年度外国基地派遣について(事務局及び国立極地研究所)
5.南極輸送支援ヘリコプター3号機の横転事故について(防衛省)
6.平成60年度南極地域観測事業概算要求の概要について(事務局)
≪審議事項≫
7.第59次南極地域観測隊行動実施計画の概要(案)等について(国立極地研究所)
8.第59次南極地域観測隊公開利用研究・継続的国内外共同観測(案)について(国立極地研究所)
9.南極条約第7条5に基づく事前通告のための電子情報交換システム(EIES)について(外務省)

10.その他(国立極地研究所)


主な意見は以下のとおり。
(議題2)
【道田委員】
専門家グループの中に、次回は音響観測の海洋哺乳動物への影響も考慮してということが書かれているが、具体的に論点が見えているといったことはあるか。
【橋田副センター長】
この話題がCOMNAPで取り上げられたのは今回が初めて。音響探査の主に海洋物理的な装置を使うケースがあり、それが動物・生物にどのような影響が出るのかというところを、研究者が評価をすべきではないかということで、船の運航を担っている研究所などのグループで具体的な情報、エビデンスを集めていくというところから始めることが最初なのではなかろうかということで、双方が意見交換をしっかりしていくというところが今回の始まりであった。
【横山主査代理】
今、ちょうど世界情勢がいろいろ変わりつつある中で、アメリカのNSFの方が議長になられたということで、全体としてはエンカレッジできる動向かなと思うが、例えば海洋の方だったりすると、結構ファンディングが削られたりとかというのは、NSFなどが大きく取り上げられているが、各国のファンディングの状況は、どちらかというとサポーティブな感じで動いているのか。
【橋田副センター長】
必ずしもどの国の南極観測事業も右肩上がりということではなく、NSFにしても、数年前に大きな基地の計画を出したが、研究者側から、そういった予算は本当に適正なのか、もっと研究に回すべきではないかという批判などもあったりして、アメリカ自体も、この計画に関して、決してコンセンサスができていないという状況がある。
一方で、例えばイギリスなどに関しては、新しい砕氷船、2船を1船にしたが、その船を使ってロゼラ基地やハリー基地をどのように有効に使っていくかということで、比較的大きなプランが予算上も載っていると報告を受けている。
それから、中国・韓国に関しては、現在もかなり積極的に進めていると。それ以外の国に関しては、余り大きな変化は聞いていない。
【神沢委員】
COMNAPとSCARとの関係は。
【橋田副センター長】
SCARは、ICSU傘下の学術団体。日本では、学術会議がその窓口になっている。
COMNAPは、南極観測の実施責任者ということで、南極観測を実施している国の主に設営を担う機関、政府系の機関がほとんどだが、その代表が集まっている。
【神沢委員】
SCARでサイエンスの計画を立てると、その計画に対して実施可能かどうかというのをCOMNAPで議論するということはあり得るのか。
【橋田副センター長】
それぞれの国が個別にやっていることでもあるが、SCARからCOMNAPに対して、こういったところの設営面のサポートをもっと進めてほしいというサジェスチョンなどもあるし、例えば南極条約から、環境影響に絡んで、観測を進める上でも、こういった部分で環境影響保護を進める活動になるような観測隊あるいは基地設備をするようにというリコメンデーションや、無人機を扱う上で、例えばこういったレギュレーション、規則をCOMNAPで定めるようにとか、そういった情報の流れがある。

(議題5) 
【江渕主査】
59次に関しては支障なしということでよいか。
【岳本南極観測支援班長】
そのとおり。
【江渕主査】
今後、1機体制になる可能性はあるのか。
【岳本南極観測支援班長】
可能性としてはあるが、今のところ明確に、いつ1機になるということについては、まだ現在のところはわからない。

(議題6) 
【江渕主査】
これが通ればマルチビームが治るという期待をしてよいか。
【土井課長補佐】
事務局としても期待している。

(議題7) 
【横山主査代理】
先遣隊のオペレーションだが、南極航空網を利用するということで、「しらせ」と並行してすごく効率的にオペレーションができる有効な運輸手段だと思うが、どういうルートで行くかや南極に着いた後の動きなどを教えていただきたい。
【土井第59次隊長】
まず、経路について、現在、先遣隊は南アフリカのケープタウンに到着しており、11月1日に、南極大陸のロシアのノボラザレフスカヤ基地に向かう。その後、二つに分かれ、フィーダーフライトという小型の飛行機に分乗し、ドームふじ基地方面へ向かうチームが、まず11月2日に昭和基地に入る。それから、残りのメンバーが、11月3日に昭和基地に入る予定。
その後、ドーム隊のメンバーは11月10日前後に内陸に向けて出発するという予定になっている。それから、沿岸の調査に向かうチームは、まずは昭和基地から西オングル島で調査のテストも含めて行う予定になっており、その後、ラングホブデやスカルブスネスに向かう。それから、ペンギンの調査をするチームは、58次隊と一緒にラングホブデの袋浦に行って観測、調査するという予定になっている。
【横山(祐)主査代理】
関連して、先遣隊で航空網を使う人員と「しらせ」で行く人員の区別は、例えば観測のシーズンとか湖沼の氷の張り具合とか、そういうことで分けているのか。
【土井第59次隊長】
ドーム隊は、少しでもたくさん日数を取りたいということで、早めに行く。それから、湖沼のチームなどは、氷が張っているときに行って調査する必要があるということで、早く出発する。
【神沢委員】
一般研究観測の「絶対重力測定とGNSS観測による南極氷床変動とGIAの研究」という、このGIAとは何か。
【土井第59次隊長】
Glacial Isostatic Adjustmentといって、主に過去の氷床が減ったことに伴い、地殻が隆起したりしているので、その辺を観測する予定である。
【神沢委員】
海氷の状況を自然科学として、年々変動、あるいはトレンドなり、そういう目で分析するということと、こういう設営的な観点と、うまくマッチすればいいと思う。例えば何年前か危機的な状況で、輸送が大丈夫かと心配されたが、それはなぜだったかということとか、そういう状況になぜなったのかということとか、それがまた何年後かに来るのかどうかとか、そういう大きい観点での自然科学系の把握とこういう設営的な検討というのがうまくマッチするといいと思うが、その辺りはどのように考えているか。
【橋田副センター長】
極地研究所には、海氷の専門家がおり、こういった分析をする上では、そういった研究者の意見を反映させつつロジスティクスの方に生かすという体制をとっている。
例えば四、五年先にまた多年氷で非常に厚いものが来るということが分かれば、それに応じて砕氷しなくてもいいような輸送計画を立てるとか、そういったことが可能になるが、実際、多年氷が逆にいつ溶け始めるかというところに関しては研究は進んでおり、一つ例を申し上げると、海氷の物性ということで言えば、海氷は海水が凍っていったものだが、積雪の効果が大きくないと、そこまで厚くはならない。上に積もった雪がどんどん氷化していくということになる。
海氷自体は、熱収支から言えば2メートルぐらいまでは成長するが、厚くなると、今度、寒冷が伝わらないので、海氷としては成長できない。その上に積雪が積もっていくことで、これが雪氷となって成長していくというプロセスが、今回の多年氷に非常に影響していたと。どんどん雪氷が増えていくと、下の方の海氷であった部分は逆に溶けていくというプロセスで、海氷が雪氷に相対的に移り変わっていくと、そういったプロセスが明らかになっている。
海氷の強度で言えば、海氷よりも雪氷の方がもろいというところまで分かっており、そういった雪氷を主成分とする海氷、厚いものに置き換わってなったときに、あるところで脆弱性というものが、何らかのきっかけであれば大きな割れ込みが発生して、昨年のような状況というのが出るのかというところまで学術的には進んでおり、そういったところが物性として年々の周期に関わるところだろうと思っている。
それから、総観規模で申し上げると、リュツォ・ホルム湾という大きな中で、海氷が、現在も起こっているような割れ込みがどういったところで生じるかというところは、これも長年来研究されているが、それが分かれば、野外での行動というのに生かせるが、一つその中で、直接は関係しないが、海氷がどれだけ生産されるか生産されないかというところが、これは一義的には風とか気温なのかなとはあるけれども、それ以外にも、例えば沖合の大きな氷山の影響やどれぐらい遠くまで海氷が張り出しているかというところが、定着氷の氷縁の変化に大きく関与しているというところも研究で進んでいるので、海氷の専門家に予測してくださいとお願いしても、非常に精度、確度というところで、それで越冬隊の活動が大きく影響されるというところになると、そこは慎重に判断せざるを得ないという状況がある。研究者も、そういった方向に向けて生かせるように、今、進めている。
【神沢委員】
数年前、越冬成立するかどうかという心配があったが、そういう状況は起こり得るのか。
【橋田副センター長】
今言われているのは、過去にも35次で接岸できなかったことがあった。そういったところを踏まえると、周期的という言葉を最近は使い出しているので、例えば今、10期とかを考えるときに、ある時点で接岸が非常に難しい状況が来るというのを念頭に置いた、これは観測もそうだが、輸送の手法を用意しておくということが必要なのだろうと考えている。
【江渕主査】
暑さ寒さにしろ、雪がどれぐらい降るというのを何年も先まで予測するというのは、今の技術では多分無理だと思う。ただ、ある程度の確率では起こるということは覚悟をして、長期的にそういうものが1年2年あったとしても観測が持続できるような準備をするという形が好ましい。
【横山主査代理】
持ち帰り物資に深層コアが含まれているが、今、どの程度残っていて、今回で何%ぐらい持ち帰りが可能で、将来的にはいつぐらいに全部持って帰れそうだということについて、教えていただきたい。
【土井第59次隊長】
今回、ドーム基地に保管されているコア8トンを持ち帰る予定になっており、おそらく残っている分の半分ぐらいかと思う。
【横山主査代理】
ということは、あと2年ぐらいでは全て帰ってきそう。2期コアだったかと思うが。
【土井第59次隊長】
そのとおり。
【横山主査代理】
次のドームの計画が始まる前に、できれば持ち帰ることができればいいかなと思う。
【道田委員】
極夜前の観測活動等が十分できなかったけれども、極夜後のカバーで準備は完了したという話を聞いて安心したが、第9期の全体の進捗という観点から見たときに、58次あるいは59次で、特段事情変更はなくて予定どおり進むと想定しておられるということでよろしいか。
【橋田副センター長】
まず、ドーム深層掘削は10期から開始するが、そこに向けた準備を9期中に整えるというところが、9期の一番大きなポイント。その始まりが、59次隊。これに関しては、ほぼ計画どおりに準備はできた。もちろん旅行中に車両が不具合を起こすとか、そういうことは当然あり得るかもしれないが、59次隊のドーム旅行は、必要な計画を行うことができる体制で、新しい掘削点に向けたレーダー探査や第2期のコアの持ち帰りは十分行える体制は整っている。
【江淵主査】
第59次行動実施計画(案)を本委員会として承認し、11月7日の本部総会に諮ることとしたい。
(委員了承)

(議題8)
【道田委員】
「しらせ」及び「海鷹丸」が南極に行く、極めて貴重なプラットフォームとしての価値があるということは、60年たっても変わっていないと思うので、もちろんオペレーションの許す範囲だと思うが、範囲内で積極的に国際貢献も含めてやっていただきたい。
【江渕主査】
継続的国内外共同観測というのは、基本的には機関同士のMOUがベースということは、一般公募というか、申込みとか受付の体制というのは、特別に何かネゴシエーションが必要なものと理解してよいか。
【橋田副センター長】
継続的国内外共同観測は、公募等はしておらず、現在行っているオーストラリア気象局の漂流ブイ、それから海洋研究開発機構のARGOフロートに関しては、第8期では公開利用研究として行っており、毎年申請を受ける形で、実績を積んだ上で、なおかつ、機関同士のMOUもあるという、実質的にはそういった条件で行っている。
【江渕主査】
ということは、国際的な共同研究にしても、公開利用研究に一般公募に応募するということは可能ということ。
【江淵主査】
本案を本委員会として承認し、11月7日の本部総会に諮ることとしたい。
(委員了承)

(議題9)
【神沢委員】
これは大分前から実施されているのか、それとも、今回新しくフォーマットが決まったのか。
【保苅課長補佐】
毎年、報告は行われている。
【神沢委員】
例えば1、背景の(1)の(b)の、自国の国民が占拠する南極地域における全ての基地とあるが、例えば昭和基地は日本とか、そういう理解か。
【保苅課長補佐】
これは条約の規定そのまま書いており、つまり自国の国民が使用している基地という趣旨。
【神田委員】
2ページ目、一番下、「しらせ」、Vesselsのところで、R/VでResearch Vesselという略でよいか。
【橋田副センター長】
経緯は把握していないが、従来、こういった観測船という位置付けで、南極条約の中では「しらせ」の活動をこういった形でレポートしているとお考えいただければと思う。
【江渕主査】
背景を見ると、2008年から始まっており、その後ずっと、R/Vと記載していると思われる。
【橋田副センター長】
はい。今の「しらせ」が2008年就航なので。
【江渕主査】
我々の解釈としては、そういう形でやっているということ。
【橋田副センター長】
例えばフランスの新しい観測船も、今まで民間だったのが海軍が運航するようになったが、船名は同じで、同様な記載になっている。
【神沢委員】
私も30年前ほど南極に行ったときに、Research Vesselというのが使われていたのを思い出としてある。
【江淵主査】
本案を本委員会として承認し、11月7日の本部総会に諮ることとしたい。
(委員了承)

(議題10)
【神沢委員】
こういう科学的成果を出すのが本来の目的で、そのために委員会があると思うので、今回の紹介は非常に有意義ではないかと思う。
【江渕主査】
抜粋でもこれだけプレスリリースが次々出ていて、いろいろな国際誌に成果がどんどん発表されているというのは非常にいいことだと思うし、こういう事業をちゃんとサポートしてもらうためには、成果をどんどんアピールしていくということが必要だと思う。

(3)事務局から次回の会議日程については、委員の都合を確認の上、連絡する旨の説明があった。

―― 了 ――

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