資料1 ITER(イーター)計画推進検討会(第2回)議事録(案)

1.日時

  平成17年9月1日(木曜日) 14時~17時30分

2.場所

  科学技術館 6階 第1会議室

3.出席者

  有馬座長、高村委員、田中委員、松田委員、本島委員

オブザーバー

  吉田科学官、山田学術調査官

専門家

  阿部委員、岡本委員、小川委員、菊池委員、岸本委員、松井委員、森委員

事務局

  森口研究開発局長、木谷審議官、藤木審議官、板倉核融合開発室長

4.議事概要

(1)ITER(イーター)計画推進検討会(第1回)議事録(案)について

  資料1に基づき事務局から説明を行い、議事録について委員会の了承を受けた。

(2)幅広いアプローチについて

  事務局より資料2‐1~2‐4についてそれぞれ専門家より説明いただき、審議いただく旨、説明を行った。

幅広いアプローチプロジェクト

  資料2‐1に基づき松田委員から説明。以下質疑応答。

【有馬座長】
  ITER(イーター)はいつになったら発電するのか、発電しないのか。ブローダアプローチの前に、ITER(イーター)計画を少し安くした。その結果、将来の予想として原型炉に入るのは、いつなのか。資料2‐1にも2030年と書いてあるが、2030年にITER(イーター)を使った研究は終わり、発電が実現できると今でも考えているのか。

【松田委員】
  ITER(イーター)の建設には約10年かかる。その次の原型炉の設計に取りかかるまでに、どういう要素がITER(イーター)で確認されればいいのか、あるいはブローダアプローチで確認されればいいのかというと、ITER(イーター)で一番重要なのは、やはり核燃焼プラズマの制御ができるかという点である。それは、ITER(イーター)の運転開始後、おそらく7、8年でできるであろう。そういう段階でレビューをして、原型炉の設計に取りかかることができるだろうと考えている。

【有馬座長】
  その場合、Q(エネルギー増倍率)はどのくらいまでいくのか。

【松田委員】
  ITER(イーター)では、最低10を見ている。

【有馬座長】
  その10になるのは、いつごろか。

【松田委員】
  (建設開始から)15、6年。2005年に着手したとして、2015年に完成。それから6、7年後に、Qが10を達成すると思われるので2022~2023年である。

【有馬座長】
  原型炉は無限大なのか。

【松田委員】
  原型炉は、Qが30から50の間と考えている。

【有馬座長】
  それがいつごろか

【松田委員】
  ITER(イーター)による燃焼プラズマの制御確認ができた段階で原型炉の工学設計段階に着手できるので、それから建設まで考えると、すべてが順調につながった場合、発電の実証ができるのが2030年代の前半。

【有馬座長】
  2030年代というのは、40年まで含むのか。

【松田委員】
  いえ、2030年代の前半。

【有馬座長】
  そうすると、大体、2023年にQが10ぐらいになり、10年ぐらいの間に原型炉ができる。これはITER(イーター)を宣伝する上で非常に重要なことなので、お聞きした。

国際核融合エネルギー研究センター

  資料2‐2に基づき、森委員から説明を行った。以下質疑応答。

【田中委員】
  資料2‐2の3ページの原型炉設計・R&D調整センターに関して、この「調整」という言葉がよくわからない、あるいは、14ページを見ると、「予備的R&D活動」という言葉があるのですが、この「予備的」という意味も十分わからない。炉工学のハード的な研究開発を、このブローダアプローチの中でしっかりとやるべきというのが私の主張である。原型炉を早期につくる、あるいは核融合エネルギーを、早期に実現するとすれば、炉工学的な課題が大変重要である。そういうようなときに、ブローダアプローチでどんなものがいいかを考えるときには3つの視点があると思う。1つは、ITER(イーター)本体による実験以外で必要なものかという点。2つ目は、ヨーロッパにITER(イーター)が行って、準ホスト国としての日本で、ほんとうに必要なものは何であるかという点。3つ目は、ITER(イーター)が日本にできないために、日本で技術的にはできないことがある。それをどう考えるかという点。例えば、大量のトリチウムを使ってというようなことがその中に入る。そういうことを考えますと、ここにあるような概念設計ももちろん重要であるが、概念設計だけではなくて、ITER(イーター)を補完し、原型炉に必要な工学技術について、ハード的な研究開発をするものが、ここの重要な要素として必要であると思う。特に原型炉を対象としたブランケット、ダイバータ技術とかトリチウムの取扱技術ということも、この炉工学の中でぜひ検討すべきある。その辺も、幅広くこれから検討していただきたいと思う。

【森委員】
  トリチウムとか、ブランケットもそうであり、もろもろと含んでやっていくことをスコープにすべきである。「予備的」という言葉をつけた理由は、原型炉の建設に着手するまでに必要なR&Dを、すべてここのスコープでやっていくということには必ずしもならないので、その適切なレベルというのがあると思うので、そういう意味で、「予備的な」という言葉をつけた。それから、調整センターという、「調整」という意味ですが、もともと、その名前は、日欧の共同文書の中にそういった名前になっているので、それをそのまま使っている。私の個人的な解釈になるのかもしれないが、どんなR&Dをするのか、それから、設計も日欧で1つの共通概念の設計を調整しながらつくっていくということをここでやるという意味で、「調整」という言葉を使っていると解釈している。

【岡本委員】
  シミュレーションについて質問であるが、できるだけ基礎方程式に忠実に、いろんな物理を全部取り集めて、連結階層的にシミュレーションをやろうと考えると、相当基礎的なことからやっていかないといけないと思う。時間もかかる。そういうことを、この機会にやれると思うが、そのためには、やはり全日本的な共同研究体制を作って、できるだけ学術的なところからやっていき、できればプラズマ核融合とその関連分野の学術的な底上げをしたい。これは非常によいチャンスだと思っているが、そういう観点をお聞かせ頂きたい。

【森委員】
  そのとおりと思っている。1つは全日本的な国内での体制づくりを考える必要があるが、一方で、日欧の共同のプロジェクトなので、日欧でどういうふうに、こういったことをマネージしていくのかといったことも、これから相談しながら決めていく必要があると思う。そういった意味で、今の視点でもって、いろいろ国内的にも議論いただきたい。

【岡本委員】
  コンピューターが100テラというのは、これは何か根拠があるのか。どれほどのコンピューターが必要かということは、多分何をやるかで決まると思うが。

【森委員】
  今後の計算機の進展、それから核融合の世界で必要と予想される計算機性能、大体勘案すると、ここら辺が魅力があって、アベイラブルな計算機能力と考えている。機種を確定しているとか、そういったわけではないので、どれぐらいの性能がぜひとも必要だといった部分、これは予算との兼ね合いも今後出てくると思うが、ご意見なり、いろいろと言っていただければと思う。

【小川委員】
  遠隔実験センターについて、5ページの図で、ITER(イーター)の実験設備がカダラッシュにあり、そして、遠隔実験センターがある。それから、遠隔研究拠点がある。この遠隔実験センターというのを、もしこれをつくるならば、これをより有効に、よりよきものにするという観点から、私としては以下の点を考えていただきたい。まず、ITER(イーター)の施設に行って実験しないといけないということにならないようにしなくてはいけないと思う。従って、ここに人が集まらなくてはいけない。特に、アジアの中国、韓国などの人が、わざわざフランスに行かなくて、ここに来るようなものでなくてはいけない。それから、10年近く後に建設・運営されるものになるので、この辺の設備というのが、最新のものでなくてはいけない。それから、もう一つが、研究者はわざわざそこに行かなくても、自分の研究室とか部屋から、データなどを見れる可能性がどんどん出てくる。そうすると、ここの遠隔実験センターが形骸化する可能性があるので、ここに人が集まるような魅力あるものでなければいけない。その辺を考慮していただきたい。つまり、ある意味では、ここにどのくらいお金をかけるかの、費用対効果というのをそれなりに考えながら後押ししていかなければいけないのではないかと思う。それから、もう一つの私の個人的なコメントとしては、先ほど、前のページで、結局、ここで何が抜けているかというと、安全関係、「安全性・装置の健全性の確認、運転等」というのが、日本に来なかったことにより、いろいろな意味で、トリチウム利用も含めて手薄になると思うので、これに関する情報収集を含めて、例えば、このような課題にはなるべく、日本からも人を派遣して、人として、ここで経験を積んで、そして、ノウハウを取得するようなことをやっていかなければいけないのではないか。紙の上のデータだけを見て、どうなっているかと、設計書のみ見ているのではなくて、現場での経験を積んでいくことをしなければいけないのではないかと思う。

【有馬座長】
  まず、皆さんに伺いたいのは、遠隔実験センターは要るのか。フランスに行って、そこでやればいいのではないか。遠隔実験センターに一体幾らぐらいお金をかけるか。それから、どのくらいほんとうに必要なのか。その点、ひとつお教えいただきたい。それから、その前に、200人とおっしゃったのは、全部通じて200人ということか。

【森委員】
  200人というのは、すべてのセンター合計で、しかも、時間的には、多いとき、少ないときとあるが、ピークのときと考えている。資金については、遠隔実験センターの設備のために、大体20億円ぐらいを想定している。

【有馬座長】
  その中の日本人はどのくらい、外国人はどのくらいになるのか。

【森委員】
  あくまでも、私の試算のレベルであるが、半々と思っている。

【有馬座長】
  その次の質問は、ITER(イーター)遠隔実験センターというのはほんとうに要るのか。アジアの人たちとかが、やはり旅費の上でここへ来たほうがはるかにいい、時間的にこっちのほうがいいということで使うということがはっきりすれば大いにいいと思うが、そこはどうだろうか。

【森委員】
  まず、絶対必要かという意味でいうと、なければITER(イーター)の運転ができないということではないが、例えば、同じことをやろうと思うと、カダラッシュのほうに研究者が行って、例えば、夜の運転もやるといったようなことも不可能ではないが、かなり研究者としては、夜の労働を強いられるという部分がある。そういう意味で、日本のセンターに来られた方にとって、非常に実験を進めやすい環境が整うということで、非常に意義があるだろうと思う。

【有馬座長】
  これは10年間か。

【森委員】
  先ほどのスケジュールで申しますと、最後の2年間ぐらいで設備をつくるので、それに必要な金額と思っている。

【有馬座長】
  この質問をする理由は、CERNなどで国際共同利用になっているセンターがたくさんあるが、日本にセンターを置いたということはない。全くないわけではない。実は、東京大学に置いたことがある。CERNの大型センターを使うために、小柴さんたちのグループがセンターを置いたが、あれ、計算機だけ持っていたが、データ処理をやっていた。だけど、一般に言って、こういう大型センターを非常に遠くから遠隔実験するというのは初めてだと私は思うが、違いますか。いろんな巨大装置があるが、多分、そうなんじゃないかな。だから、そういう意味で、新しい工夫をいっぱいしなきゃいけないし、こういうものを、しかも200人、これは200人の中でITER(イーター)遠隔実験センターに何人かわからないが、まあ50人、それくらいの人がここに集まって、本格的に外にある、外国にあるセンターを遠隔操縦、操縦ではないにしても、そこでかなりやれるというのは初めてだと思う。そういう意味で非常におもしろいが、逆に、ほんとうに要るのかな。要するに、何となくブローダープローチの中に放り込んだということはないのでしょうね。そこのところ、やっぱりほんとうに重要だということをちょっと考えていただけると幸いである。

【森委員】
  遠隔地から実験に参加するという考えについては、そもそもITER(イーター)の最終設計報告書の中にも、そういう可能性について触れている。今回、初めて出てきた話ではない。先ほど、有馬座長も言われたように、遠隔から操縦するわけではない。それは装置の安全性とか健全性ということを確保しないといけないので、あくまでも実験条件を送るということであるが、そういう意味で、ITER(イーター)参加国全体で相談をして、例えば、安全性に関することをどう担保するのかということは十分に議論しないといけないと思うが、かといって、こういったことをやることで安全性が損なわれるとかいうことはない。十分可能性があると考えている。

【有馬座長】
  もう一つ重要なのは、遠隔でデータがとれること。ITER(イーター)本体からのデータを日本へ持ってこられるということ。そして、そこでほとんど分析できること。そこがやっぱり重要だと思う。現場に行ってやるのではなくて、やはり日本できちっと、単にこういうことをやりたいということの指示だけではなくて、データがとれて、そこでしっかりと分析ができることが重要ではないか。

【松田委員】
  それから、もう一つ、非常に重要なのは、実験計画をここで立てられるということ。当然、ITER(イーター)機構長の管理調整のもとですが、得られたデータをベースに、ここで集まった研究者が次の実験計画を立てる。その機能というのは、遠隔実験センターでしか許されない。データを取り込むだけだと、コンピューターが発達し、いろんなところで欲しい、欲しいという話が出てくるかもしれないが、むしろ非常に重要なのは、そこで研究者が集まって計画を練る。計画を練る中で、非常に新しい考えなり、先進的な研究なり、人の知恵というのは生まれてくると思うので、そういう意味での、人が集積して、そこで実験をつくるという、その機能は非常に重要であると思う。多分、ヨーロッパとの激しい議論になるのは、そういう点だと思う。

【高村委員】
  核融合フォーラムから意見を頂いており、こういう新しい運転形態、これは今まで世界にあまり例がなかったということで、非常に先駆的な効果が1つあり、場合によっては、産業界とか工場、現在非常にグローバル化しつつあるが、そういうところで、工場の運転などに技術革新をもたらす可能性があると指摘をされる方がいる。そのような意味から、世間からも非常に高い関心を集めるのではないだろうかという指摘があった。

【本島委員】
  1つ前の遠隔センターについて、私なりに解釈すると、箱物の議論ではだめだと思う。例えば、このセンターが箱物の議論だと、必要か、不必要かということになる。やはり200人規模というのは非常に大きな研究所ですから、希望として非常に学術的にも立派な研究所をつくるべきである。シミュレーションのところでも出ていたが、100テラフロップスというのが先に来るのは、議論としてはどうであろうか。
  遠隔センターについても、そこに研究者が集り、外国からも来て、レベルの高い核融合炉の開発といっても、サイエンスをやるわけである。そういったことをぜひ検討していく必要があるのではないか。そういう点で明らかに遠隔センターが日本にあるということの意義は出てくると思う。

【吉田科学官】
  補足的であるが、時系列的に考えてみる必要がある。ブローダアプローチは、直ちに始まるアクティビティーだ。ITER(イーター)の建設は10年かかるので、カダラッシュは10年間工事現場になる。その間、さきがけて日本には200人規模の研究所が出現する。このことをアグレッシブに考える必要があるだろう。日本に大きな研究拠点が、国際的に多くの人が集まる研究拠点ができる。理論屋もいれば、シミュレーションもある。この10年が頑張りどころであり、アカデミックな拠点をいかにしてつくっていくかだ。重みをもった拠点ができれば、10年後からITER(イーター)のデータが集まる遠隔センターは、単なる箱ではなく、世界的に重要な意味をもつ様になるはずだ。そのことについて、日本の研究者が中心になって、いろいろなアイデアを出していただきたいと思う。

【岸本委員】
  シミュレーションセンターや遠隔センターとも関係するが、この100テラフロップスというのは、スカラーをベースに象徴的に出されたもので、これは、岡本先生が言われるように、何をやるかということで、いろいろな選択の余地があり、今後、コミュニティーで議論していくべきものだと思う。ただ、この100テラフロップスとは、これを見てわかるように、非常に大きな計算機であり、世界的にも非常に注目される。前の議事録を拝見すると、吉田科学官が「学術研究から開発研究の移行のフェーズで、これは単純な問題ではない」という、非常に象徴的なことを言われているが、シミュレーションが多階層・複合系としての学術的な意味に加えて、現実にITER(イーター)や燃焼プラズマを予測し、さらに将来の核融合炉を予測するということになれば、世界的に注目される重要な観点をシミュレーションが持つことになることから、コミュニティーを含め日本全体で盛り上げていきたいと思う。米国の場合は、SciDAC(Simulation discovery through advanced computation)のようなプロジェクトとか、国策としてコンピューター技術の向上に力を入れている。それに加えて、シミュレーションコードを開発できる人的パワーというものも非常に大きいものがあり、日本もスポット的には、核融合プラズマを予測できる世界のトップレベルのシミュレーションコードが幾つかあるが、それにしても、まだその人口というのは、米国に比べれば1桁少ないと思う。1桁以上かもしれない。そのようなことも含め、幅広い議論をコミュニティーでしていきたいと思う。それから、もう一つは、3年先から計算機をスタートさせるということだが、計算機は非常に進歩が速く、5年たつと、その計算機は古くなってしまう。そのあたりの時系列の戦略と、先ほど遠隔実験センターの話が出ていたが、ITER(イーター)の拠点であるフランスにはこういう計算機はないので、例えば、前期フェーズ、後期フェーズというように分けて、後期フェーズでは計算機シミュレーションと遠隔実験を強くリンクさせて研究を行う等、日本独自の研究戦略を立てることが、時代背景を考えても非常に重要な課題であり、それが遠隔センターの魅力に直結すると思う。

【有馬座長】
  時系列の話を吉田先生が言っていたが、ITER(イーター)遠隔実験センターは、ITER(イーター)が動かないと意味がないのか。

【森委員】
  そうです。

【有馬座長】
  先ほど、最後の2年ぐらいと言ったが、それはITER(イーター)が相当程度までできたところで始めるということか。それから、原型炉設計は、ITER(イーター)がかなり動いて、実験データが出たところで始まるのか、それとも、原型炉はもっと早くから設計するのか。

【森委員】
  原型炉は、もっと早くから始められると思う。10年間のうちの前半は、EU、日本双方とも設計を進め、意見交換から始まると思うが、後半は、共同で1つの原型炉を設計する。それはITER(イーター)の実験開始前から可能だと思う。

【有馬座長】
  それは、しかし、ITER(イーター)で実験をすることが重要で、ITER(イーター)の結果を相当反映して原型炉をつくらないとおかしい。

【森委員】
  もちろんそうです。ここでは、概念検討という範囲に10年間はとどまると思う。ITER(イーター)のデータが入り始め、いわゆる概念設計と呼べるようなものはITER(イーター)のデータを反映しながら、やはり共同でやっていくということが続くと考えている。

【有馬座長】
  ただ、それに反して、核融合計算シミュレーションセンターは早くつくったほうがいい。これは、岸本委員が指摘したようにITER(イーター)の実験を予めシミュレーションで確かめ、そして、それをまた改めて分析するという意味では非常に意味があると思う。時系列で言うと、一番早く作った方がいいのは核融合シミュレーションセンターだと思う。

【森委員】
  同じ考えでできるだけ早く立ち上げたいが、建物をつくったりするために時間がかかるので、速やかに立ち上げるという考え方である。

【有馬座長】
  その際に1つ、山田調査官と吉田科学官に伺うが、グリッドコンピューティングの計画は文科省で検討してきており、地球シミュレータを上回る計算機をつくろうという計画もあるが、これとは全くけた外れですか。こっちのほうが小さいと思っていいですか。

【吉田科学官】
  小さいです。

【有馬座長】
  あれはもっとはるかに大きいものだから、これとは全く競合しないと思っていいのか。

【吉田科学官】
  私は専門外で、競合しないという言い方が適当かわからないので、岡本先生に解答していただきたい。

【岡本委員】
  全然けた違いに小さい。競合しない。

【有馬座長】
  小さい。それで、これは、今やっているグリッド計画の中で完成する、グリッド計画の中にはめ込めばいい。

【岡本委員】
  これは、我々が考えている核燃焼プラズマのシミュレーションにとっては、もしこれがスカラーマシンでしたら、非常に小さい。

【有馬座長】
  それから、もう一つ、これは日本製でいいね。

【森委員】
  それは、日本製と限定して考えているわけではない。

【有馬座長】
  けれども、日本が十分やれ、むしろ日本が進んでいるところ。

【吉田科学官】
  ハードウエアがどうかということもさることながら、ソフト面、とくにシミュレーションのスキームに関する学術的貢献も重要だ。プラズマ核融合の分野で、例えば、パーティクル・イン・セルのように宇宙のシミュレーションなどにも普遍的に使われるスキームがつくられてきた。先ほど、コメントがあったスケール階層の問題は、いろいろな分野で注目されている重要なテーマであり、これについて、プラズマ物理がリーダーシップをとるべきだ。そのために専用の大きい計算機があることは、核融合にとっても非常に重要であり、同時に学術的な意義も大きいと思う。
  ハードウエアについては、さまざまな角度から慎重に検討していく必要があると思う。このコミュニティーにその専門家はたくさんおり、地球シミュレータでの経験も生かされるだろう。

【本島委員】
  時系列ですが、フィードバックはきっちりやる。先ほどの田中委員も指摘したが、炉設計でも、炉工学でも、かなり前から進めておく必要がある。そうしないとフィードバックをITER(イーター)からかける際、かける受け皿が育ってないことになり、結果として遅れて、2030年代の最初に原型炉をつくることができなくなる。

【松田委員】
  原型炉の概念検討なり概念設計を早く始めるのがなぜ重要かというと、これが様々な計画を引っ張っていくことになる。試作開発に何が必要かとか、ブレークスルーはどこかというのを示せるのは、やはり概念検討をしているからであり、例えば、建設の開始については、ITER(イーター)の結果をフィードバックし、設計変更なしか、設計変更が必要かがわかる。両方並行して進めることにより、スムーズに次の計画への移行できると思う。

【田中委員】
  概念設計をどんどん進めていくということはあるが、ハードな試験等も行うことにより、それがよりスムーズにいくということもある。例えば、幅広いアプローチプロジェクトの中で、ITER(イーター)を用いて、原型炉のブランケットの試験をすること。ブランケットをITER(イーター)に持ち込む前には総合試験をしなければならないので、概念設計とハードな試験とをコンバインしてやっていくことが必要かと思う。

【小川委員】
  2点だけ、簡単にコメントする。設計という観点で1点。設計して、評価して、R&D調整することについて、私の個人的な感覚から、設計は、1つの部隊で行い、評価は、自分たちが評価するのではなく、より広いところに評価を問わなくてはいけない。それを踏まえてR&Dの調整をするので、評価までこの部隊がするかどうか疑問である。それから、もう1点のコメントは、200人規模の施設ができるに当たり、それを含めたインフラ、宿泊施設などをしっかりと整備していただき、キーは人がここに集まるということ、集まれるようなにインフラ整備をしていただきたい。

【高村委員】
  原型炉設計・R&D調整センターに関して、ITER(イーター)計画が始まると同時に、物理R&Dから始まったが、その経験が非常にうまくいったと私は評価している。ITER(イーター)計画が始まると共に、概念設計から工学設計の手順を踏んでおり、今度は対象が原型炉になる。非常に早く始めることは大変意味がある。

【森委員】
  小川委員のコメントについて、評価という部分ですが、ここで「評価」と書いたが、検討といった意味合いである。

【岸本委員】
  シミュレーションの100テラフロップスと関係して、先ほど議論になったように、「何をすべき」という要請から「このような計算機が必要である」という正当論的なアプローチでいくと、そのような議論を通して計算機の規模や予算、あるいは予算配分というようなものも検討されることになる。そのような考えでいいのか、あるいは、すでにある程度、予算配分等は決まっているということなのか、そこを簡単にお伺いしたい。

【森委員】
  新たに計算機を開発することは考えていない。市販レベルで、リースで導入できるものと考えている。ニーズや性能については、これから議論いただければと考えている。

【山田調査官】
  研究センターは200人の規模で、100人は海外からということであるが、海外の研究者を招くメカニズムをどのように考えているか。

【森委員】
  来年から直ちに100名、全体の規模が200名になるとは思っていない。ブローダアプローチ全体で、サテライトトカマクとかIFMIFのEVEDAが始まり、建物が建ったあたりから、原型炉の設計とR&Dの調整、シミュレーション関係の人が徐々に増え始めると考えている。
  具体的にどういう仕組みかは、日本・EU間でどういう協定をつくるかというこれから解決していく課題なので、今の段階では回答を持っていない。

【有馬座長】
  人件費等々も、この460億に入っているのか。外国人を呼ぶときは、また別にお金が要るのか。

【森委員】
  支援スタッフ的なものは考えており、研究者自身については入っていない。外国人が来る場合、その外国人の費用は派遣元がもつと理解している。

サテライトトカマク

  資料2‐3に基づき菊池委員から説明。以下質疑応答。

【田中委員】
  ブローダアプローチと国内重点化との関係について、資料2‐3の5ページに国内重点化装置計画の説明があり、計画の必要性の3行目に「我が国独自に進める」とある。ブローダアプローチは日欧でやるが、それとの関係はどうなるのか。日本独自の施設、あるいはマシンタイム等どうなるのか。また、JETとの関係をどう考えているのか。

【菊池委員】
  平成15年1月8日のワーキンググループの報告では、国内装置として、我が国単独でつくることを想定していたが、予算状況などから両方の側面を持たさざるを得ないと考える。マシンタイムの半分ぐらいは国内重点化装置としての研究計画に充てる。欧州は、高ベータ定常ということに必ずしも興味を持っているではなく、ITER(イーター)にどのように貢献するかということにかなり興味があると思う。残り半分ぐらいを日欧のブローダアプローチとして使っていく。現状の境界条件の中では、国内の研究分で最大限独自性の高い研究を進めていくことができると思う。JETは、ITER(イーター)が完成するまでは運転すると理解している。

【田中委員】
  JT‐60の改修はブローダアプローチの予算だけでやるのか、日本独自の予算もつぎ込んでやるのか。

【松田委員】
  いろいろな考えがあると思うが、装置をつくったり、改造したりする予算をブローダアプローチで、運転は国内予算でというコンビネーションを考えるのが1つの案だと思う。そういう中で、マシンタイムの半分は国内専用で、残りはブローダアプローチ、という主張が可能だと思う。

【有馬座長】
  田中委員の質問は、非常にデリケートなところで、今までも相当のお金をJT‐60に費やして、さらにどれだけつぎ足すか。非常に極端なことを言えば、JT‐60は、日本で全部行い、わずかだけブローダアプローチで金を頂く。遠隔実験センター等に欧州のお金も含めて入れるという考えもあるのか。そうすれば、JT‐60に関しては日本のイニシアチブでできることになる。逆に、欧州のお金をJT‐60に相当費やせば、ある程度譲歩せざるを得ない。また、お金をどういう分配にしていくかも含めた上で、田中委員の疑問に、少し討論したい。今のJT‐60は、どのくらい人数を増やす予定か。特に外国人を含めて、どのくらいの人数を考えているか。今、原研でやっている人員だけでもやれるのか。

【菊池委員】
  欧州と相談になるので、現時点ではっきりとどれくらいとは考えていない。原研だけでさせていただけるなら、十分させていただく。

【有馬座長】
  JT‐60を完全にブローダアプローチの中に入れたとき、どこまで日本はイニシアチブを持ち得るか、デリケートな問題なので、改めてきちっと議論をしたい。

【小川委員】
  ITER(イーター)が日本に来なかったことで、DTの実験に関する経験が日本に欠ける。将来の原型炉のため、DTの実験をこの装置でやるかどうかある程度頭の中に入れなければいけないと思う。ただし、この装置は、DT装置としては、Qは1ぐらいでJETやTFTRぐらいのパラメータである。JET、TFTRのDT実験の追実験ぐらいにしかならない可能性はある。新しいDT実験にならない可能性があるので、プラズマとしてどの程度意味があるのか疑問であるが。DTを行う場合に考慮しなければならない点としてDT反応で発生する中性子の超伝導コイルに対する遮へいができるかであり、具体的には遮蔽として約四、五十センチ必要になる。昔の設計だとこの遮蔽厚は厳しいと思ったが、例えば、資料2‐3の9ページのITER(イーター)模擬プラズマ配位を見ると、内側に50センチぐらい遮へいを置ける。ITER(イーター)模擬配位でやれば、DTもできないことはない。サイエンティフィックな意義ということも含め、あと、エンジニアリング的なフィージビリティーも含めて十分に検討しなければいけなが、必ずしも排除しなくいいと思う。

【菊池委員】
  かなり厚い遮蔽を入れないとDTはできないので、基本的には、この装置でDTをやるのは非常に困難と思う。非常にショートパルスでトリチウムガスパフをやることはゼロではないが、多分、JET、TFTRで行った以上のことはできないと思う。DTとしての科学的成果はほとんど出ないと考えている。むしろITER(イーター)の燃焼模擬としては、違う方式を原研としては考えおり、大学からも違う方式の燃焼模擬の提案があるので、そちらを進めたほうがいいと思っている。

【小川委員】
  DTとしては、パフォーマンスとしてはなかなか厳しいと思うが、日本としての経験としてどの程度意味があるのか、そういう観点である。

【松田委員】
  プラズマとしての意義は、菊池委員の答えたとおりと思う。一方、プラントとしてのトリチウムの経験は確かに重要であるが、これこそまさに日本がITER(イーター)をとれなかったことのデメリット。それはアクセプトしないといけないと思う。同じようなことをやろうとしたらお金がかかり、それはITER(イーター)に譲り、そこに行って経験を積むという、そういう組み合わせで、むしろJT‐60の改修は、DDでやることによるフレキシビリティーを高くキープしたほうがいいと思う。

【岸本委員】
  この改修装置のベータ値とか先進性は非常によく理解できる。一方、シミュレーションや学術性との関係で言えば、プラズマの中で何が起きているのか把握するためには、資料2‐3の最後のページに計測系の概要があるが、ミクロからマクロまでの様々な揺らぎやMHDモード等の物理量を実際に計測して、理論やシミュレーション結果と照らし合わせながら研究を進める必要がある。そのような環境があってはじめて世界的にも多くの研究者がこの改修装置に興味を持ち、結果的に改修装置による研究を牽引する大きな力になる。計測系は時間を要するし、開発に予算も投入しないといけないので、そのあたりのバランスや方策に関してコメントがあればいただきたい。

【菊池委員】
  岸本委員から大変重要なことを指摘いただいた。現在の原研では競争的資金をかなり獲得しており、先進的な計測器を、例えば、リチウムビームなどの科研費を獲得できている。それから大学との協力研究の中で、非常に物理的な学術性の高い計測を一緒にやっていきたいということで、現在、170人ぐらい、要するに、スタッフが倍増というイメージになってきており、非常にすぐれた論文もたくさん出ているので、今後とも核融合科学研究所と強い連携を保ちながら、広く大学コミュニティーと一緒にシェアしていくということをやっていきたいと考えている。

【高村委員】
  この改修や国内重点化装置計画は、随分昔から議論がされている。私も関与して、かなりシビアな議論をコミュニティーの中でやり、ワーキンググループや原研内含めていろんな委員会でかなり議論を積み上げてきたので、十分に練られた計画と思う。それで、第1回の本会合のときに、私はITER(イーター)を通して、かつ原型炉へ向けて、日本の実力と存在感が一層向上するという面から見ていく視点が必要であると言ったが、まさにJT‐60の改修によって、日本がリーダーシップをとっていけるという面が非常に強化されると思う。それから、先ほど岸本委員が言われたが、シミュレーションと結びつけていく視点、これも大変重要で、ITER(イーター)の物理R&Dを6極集まって検討しているITPAでリーダーシップをとっていくことが大変重要で、特に実験結果だけではなくて、それをシミュレーションと結びつけて示していくことで非常に説得力がある。特にその辺はヨーロッパとか米国は非常に得意であり、若干日本はシミュレーションがおくれている。ここで議論されているシミュレーション研究センターと、このサテライトトカマクが結びつけば、大変強力になっていくと思う。

【阿部委員】
  世界のトカマク装置は全部ステンレスでできている。ITER(イーター)の補完装置としては、工学的に見ると、例えば、低放射化フェライト鋼を対向材料として持ち込んで、磁場特性などを調べることは大変意義があると思う。将来的には、基本構造材料として、フェライト鋼でかなりの構造体をつくることになると、ITER(イーター)のかなり前につくって実験し、それから、原型炉に対しても非常に貢献できると思うが、その点についてはいかがか。

【菊池委員】
  安定化板というのがあるが、それをできるだけフェライト鋼を使って進めていく。特に低放射化フェライト鋼の大容量溶解などなかなか進んでないこともあり、この装置でできるだけ低放射化のフェライト鋼が素材としてつくられて使われていくということは非常に重要だと考える。コスト的な問題もあり、十分に大学のコミュニティーと意見を交わしながら進めていきたいと思っている。

IFMIF‐EVEDAについて

  資料2‐4に基づき松井委員から説明を行った。以下質疑応答。

【有馬座長】
  どこまでを日本がやって、どこまでをヨーロッパがやるのか。それから、総経費はどのくらい予想されているのか。

【松井委員】
  総経費については、140から160億円程度と試算されている。どの国が何を分担するかについては、今後の協議によるが、大まかな考え方として、加速器部分はヨーロッパが技術的に得意であり、意欲を示している。液体リチウムターゲットの部分は、特に日本原子力研究所とサイクル機構が統合するので、サイクル機構の液体ナトリウムの技術、これを活用し、日本でやるほうが得策と考えている。テストセルの部分は、日本、ヨーロッパ、両方とも非常に力があるので、どのように分担するかは、今後の協議によると考えている。

【田中委員】
  これまではIEA協力でやってきて、今回、ブローダアプローチでEVEDAは日欧でやるとなると、さらにその後の建設はどうなるのか。また、資料の中で加速器、プロトタイプ、リチウムモデルループとあるが、これらを集中してやるのか。

【松井委員】
  まず、活動の枠組みですが、もともとEVEDA活動はIEAの活動の中で、新しい枠組み、実施協定をつくって、実施することを想定して準備を進めてきた。ブローダアプローチの中でもし実施すれば、ブローダアプローチは日欧なので、IEAのアクティビティーそのものは今後も並行して続け、例えば、ユーザーからのインプットとか、あるいは、意見交換の場として、IEAの枠組みは今後も利用し、それの意見を適宜ブローダアプローチの活動の中に取り込んでいくことが適切と考えている。また、米国等が今後活動に加わる意志がある場合に、協定の中でこれを配慮することが必要である。

【田中委員】
  そのときに、今後の建設判断はどうするのか。

【松井委員】
  建設判断のやり方については、私が判断することではないが、もしブローダアプローチでEVEDAまで進められれば、それが終わった段階で、日欧で建設判断を行うか、あるいは、建設に意欲のあるパーティーがそれを判断することになると思う。EVEDAとしては、建設判断の基準に十分足るようなデータをきちんと提供するというところまでが活動のミッションと考えている。どこでやるかと、どこにつくるかであるが、先ほどの核融合エネルギー研究センターで、ここにEVEDAのオフィスを設けるという案があったが、例えば、加速器の、もし作るとすれば、プロトタイプもそこに置いて試験をすることを想定する。その場合、ヨーロッパで加速器を作ると、作る前のいろいろな作業については、それを製作する国で行う必要があるだろう。でき上がったものをそれぞれ現地で試験し、それを日本に搬入して全体を組み立てし、試験する。研究開発はそこのジョイントサイトで行うと思う。実際の建設のときに、プロトタイプを活用することについて、例えば、我が国でEVEDAを実施して、それを実際の建設サイトに輸送することに関しては、十分工学的には成り立つと試算している。それから、液体リチウムターゲットに関して、そのサイトとしては、サイクル機構のサイトのほうが適切であり、そのサイトだけは別になることを想定しているが、私の個人的な考えと受けとめていただきたい。

【阿部委員】
  3点ほどコメントする。第1に、ITER(イーター)計画の具体化についていろいろな議論がされて、大事な点が認識されたと思うが、基本的な構造材料として、14MeV(メガ電子ボルト)の中性子に耐える材料があるか、開発できるか、そこが非常にポイントである。もう一つのポイントは、核融合の場合には、放射性廃棄物の大部分が中性子による誘導放射性物質で、そこを格段に下げる材料を開発することにより、核融合の特色を最大限生かせることになる。このように基本的な2つのポイントから、低放射化構造材料の開発は、核融合エネルギーの実現に対して非常な牽引役になると思うので、そこのところを認識し、ぜひブローダアプローチとかそういう形の具体化に反映させていただきたいと思う。それから、第2点であるが、実際にエネルギーを取り出すのはブランケットで、中性子を利用して、トリチウムを生産して熱に変換する、そういうことですから、ブランケットの開発とあわせて、例えば、構造材料であっても、冷却材との両立性とか溶接特性を調べるなどブランケット開発と組み合わせた材料開発という形で、IFMIFの利用など検討する必要がある。第3点であるが、これまでIFMIFのR&Dについては、日本の中の様々なアクティビティーが生かされてきたと思う。例えば、液体リチウム関連技術については、核融合研とか、大阪大学や東京大学などの大学が協力して、オールジャパンでやってきた。日本全体の関連する研究とか技術のレベルは高いので、日本が中心的にかかわるというポテンシャルは非常にあると思うので、ぜひご検討いただきたい。

【松井委員】
  3つ、順にお答えします。まず、最初の低放射化の構造材料に関して、原型炉の材料としては、一番成熟度の高い低放射化鉄鋼材料を中心として開発が進められており、いろいろなシミュレーション照射を使った研究から、原型炉の性能を満たすと想定しているが、実際の核融合環境での試験という意味で、IFMIFを使った試験が必要であるという認識。それから、2番目のブランケットの開発に関して、IFMIFの仕様から、ITER(イーター)のテストブランケットモジュールのような大きいものは入れられないが、機能だけは果たすような小型のものを入れることは十分可能である。例えば、トリチウムの放出の実験だとか、やはりブランケットの試験、開発という意味でもIFMIFが非常に重要である。3番目。要素技術確証(KEP)を、2000年から2002年、少し延ばして2004年まで実施した活動であるが、日本原子力研究所と核融合科学研究所を通じて、大学連合がタスクを分担して、オールジャパンという形で活動してきた。しかも、非常にうまくいったので、次のEVEDAフェーズになっても、やはりできるだけオールジャパンという体制で、こういった活動を展開していきたい。

【本島委員】
  IFMIFが必要なことは全く異論なし。あとは、いかに実現するか、そういう点でEVEDAというのは非常に大事である。それで、EVEDA、ターゲットを既に定めて計画を立てているが、そのプロセスでいろいろなアウトプットが出てくると思う。また、加速器そのものを小型化する検討も数年前に松井委員自身もやっており、そのようなことを総合的に判断できる余地が残っている必要があると思う。それから、もう一つは、加速器としての付加価値をやはりもっと高める必要が絶対あり、ほかの分野から引き出す必要がある。シミュレーションについて、シミュレーションはあまり重視されていない印象を、この仕様で受けた。シミュレーションというのは、プラズマだけではなくて、当然、材料についても、ものすごく今後、威力を発揮すると思う。そこは重要な研究手法として、もっと重視される必要があると思う。

【松井委員】
  シミュレーションは、非常に材料、特に照射された材料の分野では、理論シミュレーションというのは非常に重要視されていて、核分裂ですと、例えば、原子炉を全然使わず、コンピューターの中だけで材料を照射して、最終的に、その材料がどういうふうに振る舞うかというところまで計算で出してしまうような意欲的な試みもある。核融合の分野でも、当然そういった試みがいろいろされており、そういう意味で、今日は全くご紹介できなかったが、理論シミュレーションの重要性は、おそらくプラズマ閉じ込め技術のほうとほとんど同じか、あるいは、それ以上かもしれない。ただ、材料の場合、一番難しいのは、不純物など我々が意図してないで入っているものが、時には非常に大きな影響を及ぼしたりするので、シミュレーションの結果がほんとうにそうなるかということに関しては、やはり実際の実験とポイント、ポイントで合わせて検証していきながら、シミュレーションの結果を検証していくということが必要と思う。いずれにしても、そのアクティビティーは非常に重要で、私も一生懸命やっており、いろんな先生方が熱心に取り組んで、年に何回もそのようなワークショップあるいは国際研究会が開催されているので、ご指摘のようなことはないと認識している。

【本島委員】
  モデル計算では十分な精度を得ることはできないと、はっきり書いておられたものですから、ちょっと気になりました。例えば、レーザーにしても、小さいところのシミュレーションが、ある種の大きなシミュレーションにもなるし、それから、ヘリウムと同じという意味ではないが、ブローニンのドーピングでダブルアブソーションが起こって吸収効率がよくなるとか、シミュレーションと実験というのは非常に小さいスケールで合わせられる可能性も出ている。材料もおそらく、今後の科学の発展で同じなんじゃないか、こういう期待を持っている。

【松井委員】
  いわゆるマルチスケールモデリングと呼ばれて、時間スケールと空間スケールと両方で、非常にスケールの違う現象をいろんなモデルでつなぎ合わせながら材料の特性を評価するというやり方が、今、いろんな先生方が頑張ってやっている。

【岸本委員】
  先ほどの本島先生の加速器の付加価値に関する部分であるが、この加速器自身のビームのエミッタンスとか、あるいはエネルギースプレッド等で、どの程度制御性があり、あるいは、他の目的に対して付加価値が実際にあるのかどうか、その点だけお聞きしたい。

【松井委員】
  加速器は専門ではないので、適切な答えができないかもしれませんが、全部で250ミリアンペアという非常に多量の電流を発生する装置で、放射性物質の使用済み核燃料の、いわゆるインシネレーションですとか、多量のビームを必要とするようなアプリケーションに関しては、こういった技術がスピンオフして使えるのではということも考えている。それから、IFMIFそのものではそういうふうに計画されていないが、ビームエネルギーを変えることにより、ニュートロンのスペクトルも広範に変えることが可能なので、いろんなスペクトルのニュートロンによる、例えば、材料の挙動を調べるとか、あるいは、例えば、医療用のRIをつくるとか、そういったことにもアプリケーションとしては使えるかなと考えている。

議論全般について

【田中委員】
  ブローダープローチで、我が国にいろいろな装置、施設をつくっていくときに、このような施設、装置の管理主体はどこになるのか。

【松田委員】
  予測であるが、ブローダープローチは日欧の共同事業になるので、いろいろな計画を決めるのは、多分、日欧の運営会議と思う。ところが、運営会議は、実際に実験なり研究開発をやるわけではないので、そこが研究機関に委託することになると思う。各研究開発の管理は、委託先がなると思う。ただ、例えば、核融合研究センターのようなセンター自身の委託というのは、これは全体としてまとまっているので、例えば、今度、統合される新法人がやりなさいとか、もちろん、これは政府の委託次第であるが、どこかの国内の法人に施設の運営をやってくれという形で進むのではないかと思う。

【高村委員】
  先ほどの付加価値に戻りますが、ほかの原子炉、革新的な原子炉とか議論されていると思うが、そういうものに対して、共通的に使えるという部分はないでしょうか。

【松井委員】
  特にそういうことを考えていないが、例えば、加速器そのものと原子炉とのつながりは、加速器ドリブンの原子炉とかということであれば少しは関係があるかもしれないが、直接、革新的原子炉などとの関係という視点ではないように思われる。

【有馬座長】
  先程、松井委員が言われた使用済み核燃料の処理などには使えるだろう。本当はもう少し強いといいと思う。だから、そういう使用済み核燃料をどうするかというのは、かなり興味のある装置になる。

【高村委員】
  全般的な内容に戻って、どういうふうに議論していくのか。幾つかの候補が出ているが、できれば順位づけ的なところにまでいければという意見があり、それは1つの考え方であろう。私もそういう意見には賛成である。

【阿部委員】
  ここで議論することというよりは、全体にかかわることであるが、核融合エネルギー開発のITER(イーター)とかブランケットとか中性子源などの段階は、原子力技術と非常にリンクが強い。原子力のいろいろな技術がきちんと根づいて、それの先に見通せると思う。したがって、国内の原子力の技術、サイトとか研究者とか国民的な理解とかも含めて、原子力技術との共有部分が非常に強いことを認識して進める必要がある。

【岡本委員】
  順位をつけるのは、ある意味で当然と思うが、単純な順位だけではなくて、時系列的なものがあると思う。今日の話しを聞くと、どの分野でもシミュレーションというものが共通の問題で、かつ、すぐに手をつけられるものではないかと思う。これに関して、この問題は、どの分野でも日本全体でやるべきと思っているので、早い機会に関係者を集めて協議してほしい。

【小川委員】
  コメントとしましては、取捨選択された課題を、よりよきものにしなければいけないと思います。先ほど、私がコメントした実験センターもそうですが、できるのならば、コミュニティーからのいろいろな意見をより積極的に反映させたい。核融合科学ネットワークで世話人をやっているので、ネットワークに情報を流しながら、また、これらを生かして、具体的にどういうニーズをコミュニティーが持っているのかということを吸い上げていきたいと思っている。

【菊池委員】
  今回の幅広いアプローチというのは、いわゆる次の段階、核融合原型炉開発に向かって非常に重要な計画と思う。そういう面で、この委員会できちっと、プライオリティーとか、それから、ほんとうにカバーしなくていいのか、いろんなことを、田中委員の意見もあったと思うので、賢明なご判断をいただければと思う。

【岸本委員】
  ITER(イーター)の遠隔実験やシミュレーション、あるいはJT‐60をベースにした改修装置が個別にあるのではなく、それらの間の相乗効果やソフトウエアの部分を含めたリンケージが重要であると思う。先ほど岡本先生も言われたが、シミュレーションや改修装置による実験、あるいは材料研究がどういうようにリンクすれば研究を効率的に推進できるかという視点に立って、シミュレーション自身の計画も幅広い意見を集めて、なるべく早い時期に検討すべきである。

【松井委員】
  ブローダアプローチの予算が920億円という中で、いろんなことをやろうというので、なかなか選択が難しいと思うが、1つ残念に思うのは、IFMIF本体の建設に関しては全く予算的な目処が立っていないこと。ITER(イーター)が我が国に来なかったので、せめてIFMIFを日本に建設できればと望んでいるが、なかなかそれが難しい状況ということで、その辺が残念である。ただ、もしこれが海外に建設されれば、その試料を持ち帰り、我が国で試験できるような試験センターをぜひ整備してすることが必要と考えているので、その辺もあわせてご配慮いただきたい。

【森委員】
  ここに幾つかあるブローダアプローチの個々の計画ですが、単独にとか1個だけやればいいということではなくて、一緒にやるから魅力が出てくる、または、人の吸引力が出てくるといったところがあると思うので、そういうファクターをよく考えて、判断なり、議論していただきたい。

【本島委員】
  今日の議論というのは大変参考になる議論が多かったと思う。政府の方々もお聞きになっていたので、一番我が国の利益になるような形で判断する資料をつくるという観点でいいと思う。個々の委員がある程度個人的に順位をつけるということは、これは有馬座長の判断ですが、そういう意見書を出す、出さないということは可能な範囲には入るかもしれないと思う。あとは、その意見を、もちろん財務省もあるわけですし、今の時点でできること、できないこと、いろいろな幅広い観点があると思うので、これは申請主義では決してない委員会と思うので、少し幅広い答申を書くということになれば、察していただくのがいいのではないかと思う。

【松田委員】
  単純に1、2、3位と順位をつけられる性格のものではないように思う。JT‐60改修については、ITER(イーター)で活躍する人材というのは、ここでしか育たないし、ITER(イーター)がない場合の国としてのステータスというのは、ここは非常に重要なマシンと思う。IFMIFというのは、材料科学として必要というのは当然であるが、だから、そういう意味でEVEDA計画に参加するという必要性は当然あり、どの程度の深さで参加していくかというのは若干幅があり得る。それから、国際核融合エネルギー研究センター、これはまさに人材を集められるかどうか、将来に向かって、核融合がピカピカ光るものであるという視点で、若い人材をいかにして集められるかという意味で、ここが非常に重要な役目をすると思う。それで、資金全体では920億円というのは決まっているので、IFMIFの建設は別途、将来考えるということにすれば、非常に適切な配分というのは、私は可能と思う。

【有馬座長】
  順番をつけることについては、少し議論を深めた上で議論します。それから、IFMIFに関しては、1つ気になることは、あとの2つは、日本の判断で完全にできる。それに対して、IFMIFを日本がやろうと言ったときに、ヨーロッパとの合意はどうやってとるのか、ここが一番気になる。これはかなりヨーロッパの意向もあると思うので、そこのところだけ、ほかの2つとは違う。予算の問題は、また別として、決定プロセスにおいて、どこまで我々だけで決められるか。特に加速器をヨーロッパから持って来るとなると、この場合にはどうここで判断するか。これだけ3つの中で1つだけやや他と違う気がした。今後、この点をまたゆっくりご議論させていただきたい。

【田中委員】
  ブローダアプローチは10年ですが、核融合エネルギー開発は、もっと長いスパンですから、長いスパンの中で、この10年に、または、ITER(イーター)が来なかったということのために、こういうお金がかなりあるわけですから、それをほんとうに有効に使えるようなことを考えていただきたい。

(3)今後の日程について

  事務局より、今回の検討会の意見を踏まえ、幅広いアプローチの内容について、考え方の案を取りまとめ、これを次回の検討会で示した上で、その内容について議論をいただきたい旨説明。また、次回検討会は9月中をめどに調整することを説明。

お問合せ先

研究開発局原子力計画課核融合開発室

(研究開発局原子力計画課核融合開発室)

-- 登録:平成21年以前 --