3.我が国で実施すべきプロジェクトについて

(1)選定に係る基本的考え方

  我が国として幅広いアプローチのプロジェクトを選定するに当たっては、1)核融合エネルギーの早期実現の視点、2)我が国で幅広いアプローチを実施することにより、ITER(イーター)を通して、かつ原型炉に向けて我が国の実力と存在感が一層向上するという視点、3)国内のみならず海外の研究者にとっても魅力のあるものかという視点、4)複数のプロジェクトの連携により相乗的な効果が発生することや長期にわたる人材育成の観点から、あるプロジェクトに特化するのではなくバランスよく実施するという視点、といった4つの視点が重要である。
  また、我が国と欧州の間で、幅広いアプローチの実施期間がITER(イーター)の建設期間(2006年~2016年(予定))に概ね合致する期間とする旨合意されていることや、必要な資金は日欧の双方がそれぞれ460億円程度を負担することとされていることを踏まえ、どのようなプロジェクトをどの時期に行うことが効果的か、また総額920億円程度という資金の中でどのプロジェクトを実施することが先の4つの視点に照らし合わせて効果的かという点を十分考慮する必要がある。

(2)各プロジェクトに対する考え方

  この基本的考え方を踏まえて、各候補プロジェクトに対する本検討会としての意見を以下のとおりとりまとめた。これを踏まえて、文部科学省において我が国として実施すべき候補プロジェクトを選定し、極めて厳しい財政状況にあることを十分踏まえながら、費用対効果、プロジェクト間の連携、実施スケジュール、研究の継続性等も勘案し、欧州との間で計画の具体化に向けて協議を進めていくことを期待する。その際、国内の核融合研究者等からの意見の反映に努めるとともに、日欧以外のITER(イーター)関係極の理解を得ながら進めていくことが重要である。
  なお、幅広いアプローチの実施に当たっては、我が国の研究者・機関が学際的に連携協力するとともに、専任の研究スタッフ及び支援スタッフの採用形態やポスドクの採用方策を明確化するなど、我が国全体で活用できるような体制を構築することが重要である。
  さらに、遠隔実験センターとITER(イーター)機構との関係など、プロジェクトを実施していく上での責任管理主体を明確化することも必要である。

1.国際核融合エネルギー研究センター

  • センターを構成する遠隔実験センター、計算機センター及び原型炉設計・研究開発調整センターのそれぞれが、核融合エネルギーの早期実現や我が国の実力や存在感の向上といった視点から意義があるとともに、これらの施設を一つのセンターとすることにより大きな相乗効果が見込まれ、アジアのセンターとして国内外からの研究者の集積が期待できる。
  • また、これらの対象とする研究分野も、プラズマ物理から炉工学R&Dまで広範にわたっており、人材育成の観点からも効果があると考える。
  • 以上のことから、本センターの整備を幅広いアプローチのプロジェクトとして実施することは意義があると考える。
  • なお、研究センターの規模、調整センターで実施する炉工学に関する研究開発の内容、整備するスーパーコンピュータについてスカラ型かベクトル型かも含めたスペックに関して更なる検討を加える必要がある。

2.サテライトトカマク装置

  • サテライトトカマク装置は、ITER(イーター)における試験研究を効果的・効率的に行うとともに、原型炉に向けたITER(イーター)の補完的研究を国際的に行うことにより、核融合エネルギーの早期実現を図るという視点から意義がある。
  • また、韓国や中国が新しく超伝導プラズマ装置を建設している中で、JT60の超伝導化等により臨界プラズマ条件下でそのスペックを向上させることは、我が国の実力や存在感の向上に資するとともに、国内外の研究者の集積並びにITER(イーター)運転期に活躍する人材育成という観点からも意義があると考える。
  • 以上のことから、サテライトカマク装置の整備・研究を幅広いアプローチのプロジェクトとして実施することは意義があると考える。その際、国際核融合エネルギー研究センターとの連携を図り、より効果的・効率的な研究開発が行えるように工夫することが重要である。
  • なお、本施設の整備に当たっては、運転段階において、我が国のこれまでの投資を踏まえた国内プロジェクトと国際協力プロジェクトの運転時間の適切な配分や運転経費の負担の在り方について、さらなる検討が必要と考える。

3.国際核融合材料照射施設

  • 核融合材料の開発は核融合エネルギーの実現に向けた重要な課題の一つであり、そのためには実際の核融合炉条件下での材料の照射データが不可欠であることから、この施設の意義・重要性は小さくはないと考えられる。
  • しかしながら、施設本体の建設については、
    • 技術的に現時点で建設の可否を判断できる状況ではなく、まずは工学設計や要素技術開発を行い、その結果を評価し建設への移行を判断すべきこと、
    • 幅広いアプローチの枠組みで当該施設の建設を行うことにより他のプロジェクトが実施できなくなること
      等から、幅広いアプローチで実施することは適当ではないと考える。
  • ただし、他の主体により本体施設の建設が行われる十分な見通しがあり、かつ、我が国が工学設計活動に貢献することにより本体での照射試験に一定の参加ができるということが確保されるのであれば、工学設計活動への貢献を幅広いアプローチの枠組みで実施することは意義があると考える。

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研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当)

(研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当))

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